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建設業の簡易課税制度における事業区分 第3種or第4種?そのほかのケースもあり

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建設業の簡易課税制度における事業区分 第3種or第4種?そのほかのケースもあり

建設業を営む事業者は、簡易課税制度を利用している場合も多いでしょう。簡易課税の場合、事業区分によって「みなし仕入率」が定められています。建設業の事業区分は原則として第3種事業に該当しますが、業務内容や資材の提供方法によっては、第4種事業に分類されるケースもあります。消費税を正しく申告・納税するためには、自社の業種がどの事業区分に該当するのかを把握することが重要です。

この記事では、建設業で特に問題となる第3種事業と第4種事業の判定ポイントや、簡易課税制度のメリット・デメリットを解説します。

簡易課税制度の概要

まずは簡易課税制度の基本を整理しましょう。簡易課税制度は、年間の課税売上高が5,000万円以下である中小事業者が、消費税の計算を簡略化できる制度です。ここでは、簡易制度が選ばれる理由や事業区分など基本事項を解説します。

消費税の納税で簡易課税制度を利用する目的

簡易課税を選択する目的は主に3つあります。計算が簡単なだけでなく、本則課税の場合と比べて節税になる可能性もあり、上手に活用すればメリットの大きい制度です。

計算がシンプルで手間が少ない

仕入控除税額の計算が簡単に行えるのが簡易課税制度の特徴です。本来の計算方法である「本則課税」では、仕入れや経費ごとに消費税額を集計する必要がありますが、専門知識がない方には難しいのが実情です。

一方、簡易課税は業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って仕入れにかかる消費税額を計算する方法です仕入れや経費の個別の取引にかかる消費税額を計算しなくてよいため、消費税の税務処理にかかる時間や手間が大幅に削減できます。

納税額が少なくなる場合がある

利益率が高く経費の少ない業種では、簡易課税が有利に働くことがあります。本則課税では、仕入れや経費が少ないと控除できる消費税額も少なくなるため、利益率が高い業種では納税額が多くなりがちです。「課税売上高×みなし仕入率」で求められる金額よりも実際のk課税仕入れ額が少ない場合、簡易課税を選択することで納税額が減る可能性があります。

仕入れに関するインボイス(適格請求書)が不要

本則課税では、仕入れにかかる税額を控除するためにはインボイス(適格請求書)の保存が必要です。取引先が適格請求書発行事業者でなければ、仕入れの際に支払った消費税額を控除できません。

簡易課税の場合、みなし仕入率によって控除額を決定するので、個別の取引についてインボイスの保存が不要です。適格請求書発行事業者として登録していない免税事業者などと取引をしても税計算上の不利益がありません。

参考:No.6505 簡易課税制度(国税庁)

簡易課税制度における3種や4種などの区分とは

簡易課税制度では、業種ごとに6つの事業区分があり、それぞれに定められたみなし仕入率が適用されます。建設業は多くの場合、電気業や製造業と同じ「第3種事業」に区分され、みなし仕入率は70%となります。

ただし、建設業であっても、材料の無償支給を受けて作業だけ請け負うなどは「第4種事業です。第4種事業のみなし仕入率は60%と、一般的な建設業が該当する第3種事業よりも低い点に注意が必要です。材料が施主負担の場合や、役務提供がメインの場合は第4種事業に該当する可能性があります。

建設業を営む事業者が簡易課税制度を利用する際には、自社の業務内容が第3種と第4種どちらに該当するのかを確認しましょう。事業区分の判定ポイントは次に詳しく解説します。

関連記事:簡易課税とは?事業区分や計算方法・メリットとデメリットを解説!

建設業における事業区分の判定ポイント

足場工事

建設業は多くの場合、第3種事業または第4種事業に区分されます。事業区分によってみなし仕入率が異なるため、どちらに該当するかを正しく判定することが大切です。ここでは、資材の調達や役務提供など、事業区分の判定ポイントを解説します。

建設業は基本的に第3種事業

建設業の大部分は第3種事業として扱われます。工事に使用する主要な資材を事業者が自ら調達し、工事を行って引き渡す場合は第3種事業です。例えば、電線や配線器具などを購入して電気設備の設置工事を行う場合や、壁紙や床材などを購入して内装の仕上げ工事を行う場合などがあります。

主要な資材を自ら調達していることが、第3種事業と判定されるためのポイントです。主要な資材とは、建物を建てる際の木材、鉄骨、コンクリート、壁材、屋根材、電気配線、配管などを指します。釘や接着剤などの資材は、工事を行うために必要ですが、工事全体のコストに占める割合が低いため主要な資材には含まれません。

第4種事業に該当する業務の具体例

「第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」は第4種事業として扱われます。建設業の中でも、役務提供が中心となるケースは第4種事業です。具体的には、仮設足場の組立・解体を行うとび工事や、建物などを壊す解体工事が挙げられます。成果物を納品するのではなく、労務が中心であることが特徴です。

施主や元請け業者から無償で資材が提供される場合も第4種事業に該当します。ただし、資材の提供を受けている場合でも、工事全体を包括的に請け負い、完成した建築物を引き渡す場合は第3種事業として扱われる場合があります。

3種と4種の判定で注意すべき事項

第3種と第4種の区分を正しく判定するためには、資材の調達方法や契約内容を確認することが重要です。2種類以上の事業を行っている場合、事業区分ごとに売上を管理し、仕入控除税額を計算した方が有利な場合があります。具体的な計算方法については後述します。

事業区分の判定を誤ると、本来とは異なるみなし仕入率を適用することとなり、税額の過少申告などのリスクがあります。取引内容や契約条件を総合的に考慮した判断が必要となるため、迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。

参考:No.6509 簡易課税制度の事業区分(国税庁)

関連記事:簡易課税とは?事業区分や計算方法・メリットとデメリットを解説!

建設業の簡易課税におけるみなし仕入率

一人親方 建設業

建設業の消費税計算におけるみなし仕入率の概要と、実際に適用される具体的な仕組みについて詳しく解説します。仕入率の違いや適用条件など、実務で役立つポイントも含めて説明します。

3種と4種のみなし仕入率の違い

建設業に適用されるみなし仕入率は、第3種事業と第4種事業のどちらに該当するかによって異なります。前述の通り、主要な資材を自社で購入して工事を行い、成果物を納品する場合は第3種事業に該当します。この第3種事業の場合のみなし仕入率は70%です。

これに対し、足場の組立や解体工事などの役務の提供が中心となるケースや、発注者から資材の無償提供を受けて工事を行う場合は第4種事業に該当します。第4種事業のみなし仕入率は60%と、第3種よりも低くなります。みなし仕入率が違うと、課税売上高が同じでも納税額の計算結果に差が出るため、自社の事業区分を正しく把握しましょう。

5種や不動産業との関連性

建設業や建築設計に関連する業種の中には、第5種事業に該当するケースもあります。第5種事業は、主に運輸通信業、金融・保険業 、飲食店業を除くサービス業です。建築設計事務所の業務や、土地・建物の測量、地質調査などの業務はサービス業に該当するため、第5種事業になります。みなし仕入率は50%と、一般的な建設業の業務よりも低くなります。

また、不動産業は第6種事業として分類され、みなし仕入率は40%と最も低い水準となっています。主な事業が建設業の場合でも、自社所有の土地や建物を賃貸するのは不動産賃貸業にあたります。自社の賃貸用物件の建設工事を自社で行う場合など、事業区分の判断が難しい場合は、税理士などの専門家に確認すると安心です。

関連記事:不動産業の節税対策まとめ|仕組みや注意点も解説

簡易課税制度のメリット

簡易課税はその名の通り、計算が簡易であることが特徴ですが、それだけではありません。ここでは簡易課税制度を利用するメリットを3つ紹介します。

事務負担の軽減

簡易課税制度は計算が容易なため、事務負担を大幅に軽減できる点がメリットです。本則課税では、仕入れの取引ごとの消費税額を正確に計算する必要があります。経営者や経理担当者は、記帳や請求書の管理など事務作業の負担が大きくなりがちです。

簡易課税の場合は、決められたみなし仕入れ率を使って簡単に仕入控除税額を計算できます。また、課税売上高さえ分かっていれば専門知識がなくても納税額を概算できるため、資金繰りの見通しも立てやすくなります。

複数事業者の特例

複数の事業を営んでいる場合、売上を事業区分ごとに分けているかどうかで計算方法が異なります。事業区分ごとに売上を分けて管理していない場合、すべての課税売上高に対して、最も低いみなし仕入率を適用します。

事業区分ごとに売上を分けて管理している場合、仕入控除税額も事業区分ごとに分けて計算するのが一般的です。ただし、特定の事業の課税売上高が全体の75%以上を占める場合に選べる計算方法があります。最も売上割合の高い事業のみなし仕入率を全体に適用できる特例です。

以下は、計算方法によって仕入控除税額の計算結果が異なるケースの具体例です。

A事業:第3種事業 課税売上高 3,200万円/みなし仕入率 70%
B事業:第4種事業 課税売上高 800万円/みなし仕入率 60%

【売上を事業区分ごとに区分していない場合】

最も低いB事業のみなし仕入率60%を全体に適用
仕入控除税額 (4,000万円× 10% )× 60% = 240万円

【売上を事業区分ごとに区分している場合】

<事業区分ごとに分けて計算する場合>

A事業の仕入控除税額 (3,200万円 × 10%) × 70% = 224万円
B事業の仕入控除税額 (800万円 × 10%) × 60% =48万円
合計仕入控除税額 224万円+48万円 = 272万円

<特定の事業の課税売上高が全体の75%以上を占める場合(特例)>

A事業は全体の売上の80%を占めており、特例が適用できる
A事業のみなし仕入率70%を全体に適用
仕入控除税額 400万円 × 70% = 280万円

売上を区分して計算した方が仕入控除税額が大きくなり、結果的に納税額が少なくなります。さらに、このケースでは売上が大きい事業のみなし仕入率が高いため、特例を適用することでより納税額を減らすことができます。

関連記事:消費税の簡易課税方式はどうやって節税する?基礎知識や節税のポイントを解説

税務リスクの低減

簡易課税制度を利用することで、仕入控除漏れや計算ミスによる税務リスクが低減できます。本則課税の仕入控除税額の計算は、日々の正確な記帳の積み重ねがあってこそ正確に行えるものです。税務や会計の専門知識がない場合でも、簡単に正しい税額が計算しやすいのが簡易課税の良さであると言えます。

簡易課税制度のデメリット

簡易課税にはメリットがある一方、事業者によってはデメリットのほうが大きい場合もあります。メリットとデメリットを比較して、自社に合った課税方式を選択することが大切です。

仕入れ税額控除の制限と還付不可のリスク

簡易課税制度は、実際の仕入れにかかる消費税額にかかわらず、みなし仕入率を用いて控除額を計算します。多額の設備投資などを行い、実際に支払った消費税額がみなし仕入率による控除額を上回る場合でも、その差額分の還付を受けることはできません。特に大規模な仕入れや投資を予定している事業者は、簡易課税を選択する前に試算して比較検討することをおすすめします。

関連記事:消費税還付とは?仕組みや申告・仕訳の方法、必要書類を解説

納税額増加の可能性

売上高に占める仕入れの割合が高い事業者の場合、簡易課税を選択することで、本則課税の場合よりも納税額が増加するケースがあります。仕入れや外注費の割合が高く、みなし仕入率を上回る場合、税額の面では簡易課税のメリットを受けられない可能性が高いでしょう。

関連記事:消費税対策として有効な節税方法は?インボイス制度との関連も解説

業種区分判定の難しさ

簡易課税の場合、業種ごとにみなし仕入率が定められており、適用するみなし仕入率を誤ると納税額の計算も大きく変わってしまいます。意図的ではなくても結果的に過少申告となれば、税務署の指摘を受け、過少申告加算税などのペナルティを受ける可能性もあるため要注意です。

特に、複数の事業を行っている場合は、事業ごとに事業区分を判定する必要があります。建設業のみの場合も、すべての取引が第3種事業に該当するとは限りません。第4種に該当する取引が含まれていないか、契約内容や業務内容を確認しましょう。

2年間は原則課税に戻れない

いったん簡易課税制度を選択すると、原則として2年間は本則課税に変更できません。今年度は簡易課税が有利でも、売上や経費の変動によっては、次年度以降は簡易課税が不利になる場合もあります。簡易課税を選択する前に、中長期的な事業計画や経費構成を十分に分析することが重要です。

判定で悩む場合は税理士に相談

建設業は、簡易課税の事業区分において、第3種事業に該当するのが一般的ですが、第4種事業に該当する場合もあります。契約内容や取引の性質を把握して正しく判定することが求められますが、判定が難しい場合も多いです。自己判断で誤った判定をしてしまうと、消費税額の計算にも大幅なずれが生じるリスクがあります。

簡易課税を選択するべきか、どの事業区分に該当するのかなど、簡易課税について判断に迷ったら税理士に相談することをおすすめします。

簡易課税の事業区分についてお悩みの方は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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