補助金適正化法とは、補助金に係る不正行為の防止や交付決定の適正化を図るための法律です。補助金の不正受給をはじめ、補助金適正化法に反する行為には厳しい罰則が定められています。意図的な違反行為が厳禁なのは当然ですが、意図しない違反を防ぐためにも、法律への理解を深めるべきでしょう。今回は補助金適正化法について詳しく解説します。
目次
補助金適正化法とは
補助金適正化法とは、補助金に係る不正行為の防止や交付決定の適正化を図るための法律です。正式名称は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」といいます。
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補助金適正化法における「補助金等」の内容
補助金適正化法における「補助金等」に含まれるものは、国が国以外の者に対して交付する以下の4つです。
- 補助金
- 負担金(国際条約に基く分担金を除く。)
- 利子補給金
- その他相当の反対給付を受けない給付金であつて政令で定めるもの
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律|e-GOV法令検索
ここで注意するべきなのが「国が国以外の者に対して交付する」の部分です。
すなわち補助金適正化法の適用対象となるのは、国が運営する補助金等のみとなります。都道府県や市町村といった地方自治体による補助金は適用外です。地方自治体が主体となる補助金は、両者の合意に基づく民法上の契約関係とみなされます。
当然ですが、補助金適正化法の適用外の制度であっても不正受給等は認められません。不正行為は罰則の対象になる可能性が高いです。
なお補助金適正化法は間接補助による補助金も対象となります。すなわち補助事業者からは地方自治体によって運営されている制度にみえても、実際は補助金適正化法の適用対象になることがあります。
参考:令和2年度法定経営指導員講習~地方公共団体の行政事務に関する基礎的知識~|中小企業庁経営支援部小規模企業振興課
【参考】地方自治体による補助金の根拠となる法
地方自治体による補助金の根拠として挙げられるのは以下の2つです。
- 憲法第94条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる - 地方自治法第232条の2
普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
ただし前述のように、地方自治体が主体にみえても実際は補助金適正化法の対象となる制度も存在します。また、地方自治体独自の条例が適用されるケースもあるため注意が必要です。
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補助金適正化法違反に該当する行為および罰則の内容
続いて補助金適正化法の違反行為の具体例と、それぞれの行為に対する罰則について解説します。
参考:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律|e-GOV法令検索
虚偽申請・不正受給
虚偽申請および不正受給に対する罰則は第二十九条で定められています。罰則は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、もしくはこれらの併科です。
補助金の目的外利用
第三十条で、補助金等を他の用途に使用した場合には3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定められています。拘禁刑と罰金の併科となる可能性もあります。
命令違反や成果報告の怠慢
原則として、補助金の交付を受けた事業者は補助事業等の遂行状況について報告が必要です。
報告書の内容から事業遂行をしていないと判断された場合、交付元から事業遂行をするよう命令が出されます。この命令を無視した場合は3万円以下の罰金を科されます。補助事業等の遂行状況の報告を怠った場合の罰則も同様です。
成果報告の義務は第十二条、事業遂行の命令については第十三条、罰則は第三十一条で定められています。
補助金適正化法の違反行為すべてに共通する処分
前章では、補助金適正化法違反とみなされる行為の具体例と違反行為ごとの罰則について解説しました。違反の内容によって拘禁刑の年数や罰金の額が異なります。
しかし、すべての違反行為に共通する処分が存在します。具体的な内容は以下の3つです。
- 補助金交付決定の全部または一部の取り消し(第十七条)
- すでに交付済みの補助金の返還(第十八条)
- 加算金および延滞金の支払い(第十九条)
加算金は返還命令を受けた補助金等を受領した日から納付する日までの日数、延滞金は返還期日を過ぎてからの日数に応じます。利率はいずれも年10.95%です。
参考:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律-第十九条|e-GOV法令検索
また、違反行為の内容や悪質性によっては、詐欺罪などに問われる恐れもあります。
補助金適正化法について事業者が押さえるべき注意点
補助金適正化法に限らず、意図せず法律違反となる行為をしてしまうケースがあります。これより、意図しない違反行為を起こさないために押さえるべき注意点を3つ紹介します。
【注意点1】対象事業および交付決定の内容を入念に確認する
補助金適正化法の違反を避けるために必ず行うべきなのが、対象事業および交付決定の内容の入念な確認です。目的外利用を起こさないために行う必要があります。
対象事業の確認は、申し込もうとする補助金が目的に適したものであるか判断するために欠かせません。目的に合わない補助金は仮に交付決定を受けても活用できないため、申し込みの前に目的に当てはまるか確認をする必要があります。
交付決定の内容についても確認する必要があります。申請した内容のうち、補助金の交付決定が行われるのは一部の事業のみというケースが有り得るためです。確認不足や勘違いによる目的外利用をしないため、交付決定の内容は徹底的に確認しましょう。
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【注意点2】補助金に関する事務作業を後回しにしない
補助金に関する事務作業を後回しにしないことも大切です。
補助事業の成果報告をはじめとした作業には期日が設けられています。作業着手から期日までの時間が短いほどルール等を確認するための余裕がなく、誤りや違反行為のリスクが高くなります。厳格な対応が求められるからこそ、早めに着手し余裕をもって進めることが大切です。
また、補助金に関する事務作業を早めに行なえば、万が一違反行為をしてしまっている場合に早く気付ける可能性もあります。違反行為を避けるためだけでなく、すぐに対応し罰則を最小限に抑えるためにも、補助金関連の対応は早めに行いましょう。
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【注意点3】専門家のサポートを受ける
補助金適正化法違反を起こさず補助金の適正な受給・活用を行うため、専門家のサポートを受けるのも1つの手段です。
補助金申請にあたり、補助金適正化法の内容について深く理解しているのが理想ではあります。しかし法律には複雑な部分もあり、専門知識のない人が完璧に把握するのは難しいのも事実です。
法律で「知らなかった」「わざとではない」は通用しません。違反行為のリスクを最小限に抑えるためには、事業者自身がすべて対応するのではなく、補助金に詳しい専門家のサポートを受けるのが安心です。
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補助金の適正利用のために補助金適正化法の内容を押さえよう
補助金適正化法は補助金に係る不正行為の防止や、補助金交付決定の適正化等のために定められた法律です。補助金適正化法に違反した場合は拘禁刑や罰金などの罰則を科されます。また、交付決定の取り消しや交付済みの補助金の返還命令、加算金や延滞金の支払命令なども行われます。
補助金制度の健全な運営のためには、事業者による補助金適正化法の遵守が欠かせません。しかし補助金適正化法に限らず、意図せず違反行為をしてしまうことがあるのも事実です。
補助金適正化法の違反行為を起こさないよう、今回紹介した注意点をしっかり押さえましょう。