0120-469-383平日 9:00~18:00 税理士に相談(相談無料)
会社設立の基礎知識

【フリーランス新法】特定受託事業者と個人事業主の違いとは?発注者が押さえるべき契約ポイント

公開日:

【フリーランス新法】特定受託事業者と個人事業主の違いとは?発注者が押さえるべき契約ポイント

2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)」は、発注者に対し、従業員を持たない特定受託事業者と個人事業主を区別し、契約条件や報酬の支払い期日などを明示する義務を課しました。この記事では、両者の法的立場の違いや下請法との比較、違反時のリスク、報酬支払いのポイントなど、発注者が押さえるべきポイントを解説します。ぜひ最後までお読みください。

フリーランス新法とは

フリーランス新法

2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(通称フリーランス新法)」は、発注者とフリーランスを含む特定受託事業者との取引を適正化するために新たに設けられたルールです。

報酬の支払い遅延や契約内容の不明確さなど、従来グレーゾーンだった部分に法的なガイドラインを示すことで、双方が安心して取引できる環境づくりを目指しています。

特定受託事業者とは

特定受託事業者は、従業員を雇わずに1人で事業を営む事業者を指します。個人・法人の区別はなく、代表者1人で運営する法人(いわゆる一人社長)や一人親方も含まれます。

なお、同居している家族従業員や短期アルバイト、派遣スタッフは従業員数に含めないとされています。

フリーランス新法において、特定受託事業者とは主に、個人のフリーランスが企業からBtoBの業務委託を受けるケースを想定した制度上の定義です。

この一人事業者を保護するため、発注者に対し契約内容の明示や報酬の支払い期日などを義務づけています発注側が相手は特定受託事業者だと認識し、法律に沿った手続きを行うことで、契約トラブルや支払い遅延を防げるでしょう。

受託事業者とは

受託事業者とは、業務委託を受けて遂行するすべての事業者を指し、個人事業主でも法人でも該当します。

発注者にとって受託事業者は契約相手です。業務内容や報酬額、支払い期日などを契約書に明確に盛り込み、双方で合意しておく必要があります。

フリーランス新法では、受託事業者が個人なのか法人なのか、また従業員を雇っているかどうかによって、発注者に課される義務や取引ルールが変わります。

取引を始める前に相手の事業形態を確認し、適切な契約条件を設定することが、法令遵守とトラブル防止につながるでしょう。

委託事業者とは

委託事業者とは発注者側を指し、従業員を雇って事業を行う法人や個人事業主が該当します。委託事業者が特定受託事業者に業務を依頼する際には、仕事内容や報酬、支払い期日を明示し、約束通りに支払わなければなりません。

加えて、募集情報を正確に掲載したり、ハラスメント防止に取り組んだり、育児・介護と両立しやすい働き方に配慮したりする必要もあります。

これらをしっかりと守ることで、発注者は受託事業者から信頼され、長期的なパートナーシップを築くこともできるでしょう。

参考:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ|厚生労働省

関連記事:フリーランス新法とは?法律の内容や適⽤対象・目的も解説

特定受託事業者と個人事業主の違い

個人事業主の開業費のイメージ

ひと口にフリーランスと言っても、法律上は特定受託事業者と個人事業主に分けられます。一見似ていますが、保護される法律や契約における扱いに異なる点があるため、発注者は両者を区別しておきましょう。

法的な位置づけの違い

特定受託事業者は、フリーランス新法で保護対象として明確に定義されています。法人・個人を問わず、従業員を雇わずにひとりで事業を営んでいれば該当し、取引の透明性を確保するためのルールが適用されます。

一方、個人事業主は法人格を持たず、自分の名義で事業を行う点で従来から法的保護を受けてきました。ただし、フリーランス新法の施行により、個人事業主も特定受託事業者に準じた取り扱いを受ける場面が増えています。

結果として、発注者は取引相手がどちらの区分に当たるのかを判断しやすくなり、それぞれに応じた責任範囲や法令遵守事項を把握しやすくなりました。

契約関係のポイント

特定受託事業者と契約を結ぶ際は、フリーランス新法に沿って業務内容、報酬額、支払い期日などを具体的に記載することが義務づけられています。発注者は条件をあいまいにすることはできず、契約書で明確に示さなければなりません。

個人事業主との契約も基本的な流れは同じですが、従業員を持たない特定受託事業者の場合は、報酬の支払い遅延が直接生活に影響するため、より一層の透明性と確実な支払いが求められます。

取引前に相手の事業形態を確認し、それぞれに合った条件を取り決めることで、トラブルを防ぎ安心して業務を進められるでしょう。

参考:下請法の概要|公正取引委員会

関連記事:個人事業主とフリーランスの違いとは?どっちがいいか収入・税金・働き方の観点で解説

フリーランス新法で発注者に求められる主な義務

フリーランス新法は、発注者が特定受託事業者に業務を委託する際、取引を公正・透明に行うための具体的な義務を定めています。ここでは、発注者が特に押さえておきたいポイントをまとめましたので、押さえておきましょう。

取引条件の明示義務

まず、契約条件をはっきりと示すことが必須です。業務内容や報酬額、支払い期日はもちろん、成果物の検収日や支払い方法など細かな取り決めを行い、契約を結んだら速やかに書面または電子データで通知しなければなりません。

条件をあいまいにしたまま契約を進めることはできず、発注者には言った・言わないを防ぐ責任が課されています。

報酬支払い期日の設定義務

報酬は納品から原則60日以内に支払うのが目安です。再委託が絡む場合でも元請けの支払い期日から30日以内というルールがあり、検収が入る場合でも同じ期限が適用されます。

これによりフリーランスのキャッシュフローが守られ、生活や事業運営への影響を最小限に抑えられます。

適切な募集情報の表示義務

ウェブサイトや求人媒体に掲載する募集情報は、実際の条件と一致していなければなりません。募集が終わった案件を掲載し続けたり、報酬を実際より高く見せたりする表現は禁じられています。

委託業務の内容、報酬の支払い方法、事業者名、契約期間などの情報を正確に提示することで、応募者は安心してエントリーでき、トラブル防止にもつながるでしょう。

妊娠・育児・介護と業務両立への配慮義務

6ヵ月以上継続して業務を委託する場合、発注者は妊娠、育児、介護といった事情を抱えるフリーランスが業務を無理なく続けられるよう配慮しなければなりません

納期延長などの要望があれば、可能な範囲で柔軟に対応することが望ましく、どうしても応じられない場合は合理的な理由を説明する必要があります。

ハラスメント防止体制整備義務

特定受託事業者も職場の一員として尊重されるべき存在です。発注者は、パワハラやセクハラなどあらゆるハラスメントを防ぐ体制を整え、安心して働ける環境づくりに努める責任があります

また、相談窓口の設置やガイドラインの周知など、具体的な取り組みも必要です。

中途解除時の事前予告義務

契約期間中に業務委託を解除する場合、発注者は相手に事前通知を行う義務があります。

突然の契約打ち切りはフリーランスの収入に直結するため、一定の猶予期間を設けるなど、経済的損失を最小限に抑える配慮が必要です

通知の方法やタイミングについては法令で基準が示されており、これを守ることでトラブルを防ぎ、フリーランスと公正な取引関係を保つことができます。

個人事業主・フリーランスが業種変更したら開業届の変更は不要?新業種を始める際に知っておきたいポイントをご紹介!

フリーランス新法と下請法との違い

フリーランス新法と下請法は、ともに取引上で弱い立場にある事業者を守るための法律ですが、対象範囲や規制の内容には異なる点があります。それぞれの特徴を押さえておくことで、発注者としてどの点を意識すべきかが見えてくるでしょう。

下請法の適用範囲

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、主に資本金が一定額以下の中小企業を保護するために設けられた法律です。

製造業や建設業などの物品・役務提供を行う受注企業を対象としており、元請事業者が下請事業者に対して不当な取引条件を押しつけることを防ぐための規制が定められています

ただし、下請法には資本金による適用範囲の制限があるため、発注者と受注者の双方が一定規模以上の場合には適用されないケースもあります。

また、個人事業主やフリーランスのように従業員を持たずに単独で活動している事業者は対象外となることが多く、報酬遅延や契約条件の不明確さなどに十分な法的保護が行き届かないという点も課題です。

フリーランス新法の適用範囲

一方、フリーランス新法は従業員を雇わない個人事業主や、代表者ひとりで運営する法人(一人社長)を幅広くカバーします。資本金や業種による制限はなく、特定受託事業者という区分で保護対象を明確にしたのが大きな特徴です

発注者側は役職員を雇用する法人や団体など組織的な事業者が該当します。フリーランス新法により、報酬支払いの期日設定や取引条件の書面化など、従来の下請法ではカバーし切れなかったフリーランスとの取引にも具体的な義務が課されました。

その結果、単独で働く事業者との契約でも公正さと透明性が一段と高まり、トラブルを未然に防ぎやすくなっています。

関連記事:個人事業主と起業の違いは?メリットや手続き、税金の違いも解説

フリーランス新法に伴い発注者が注意すべきポイント

ポイント

フリーランス新法の施行によって、フリーランスと委託契約を結ぶ発注者は取引の進め方を見直す必要があるかもしれません。ここでは、発注者がどのような点を注意するべきかポイントを説明します。

特定受託事業者に当たるか確認する

取引する相手が特定受託事業者に当たるかどうかを確認しましょう。週20時間以上かつ31日以上継続して働く従業員がいなければ、その事業者は特定受託事業者とみなされる可能性が高くなります。

なお、法人であっても代表者ひとりで事業を回していれば該当する場合があり、副業として活動している個人や一人親方も同様です。従業員の有無と事業形態をセットで確認しましょう。

委託事業の確認は委託する前に行う

委託する前に相手の事業形態や従業員数をヒアリングしましょう。必要に応じて書面で確認を取ることをおすすめします。

その際、特定受託事業者であれば、フリーランス新法に基づく契約書面の作成や報酬支払い期日の設定などのルールがあることを念頭に置きましょう。もし判断が難しい場合は、専門家に相談するのも有効です。

違反するとペナルティの可能性がある

フリーランス新法に違反した場合、民事トラブルにとどまらず、行政指導や命令の対象になる場合があります

報酬の遅延や契約条件の不備が続けば、損害賠償請求を受けたり、公正取引委員会の調査や是正勧告を受けたりするリスクが高まります。なお、悪質な違反が認められた場合は行政処分に発展する恐れもあり、企業の信用失墜は避けられません。

法令遵守はもちろん、トラブルを未然に防ぐという観点からも、ルールは徹底しましょう。

自営業を始めるには?必要な準備や注意点、メリット・デメリットを解説

まとめ

2024年11月に施行されたフリーランス新法により、発注者は特定受託事業者と個人事業主の違いを正しく理解したうえで、契約や取引を適正に管理することが求められます。

フリーランス新法では、①契約条件の書面による明示②納品後60日以内の報酬支払い③正確な募集情報の表示④育児・介護・妊娠への配慮⑤ハラスメント防止⑥中途解除時の予告など、発注者側に明確な義務が課されています

なお、下請法と異なり、資本金や業種の制限がないため、従業員を持たないフリーランスや一人社長も保護の対象です。

発注者は法令に沿った契約対応を行うことで、報酬トラブルや不当な取引のリスクを減らし、安定したパートナーシップを築くことができるでしょう。

フリーランス新法についてのお困りごとやご相談は、ぜひ小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
  • 会社設立の基礎知識 特集「法人のための確定申告」
税理士「今野 靖丈」

会社設立専門の税理士による
オンライン面談を実施中!

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

相談無料会社設立の相談をする 24時間受付中

税理士変更のご検討は
オンライン面談でもお受けします

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

税理士変更の相談をする 24時間受付中
オンライン面談