税金には納付期限があるため、期限内に税金を納めなければなりません。納付期限内に税金を納めなければ「滞納」している状態になり、最終的には差し押さえ処分になります。個人事業主や企業が税金を滞納すれば、すぐに差し押さえ処分を受けることになるのでしょうか?この記事では、税金滞納から差し押さえまでの流れや対処法を解説します。
目次
税金を滞納したらどうなる?
税金の納付は国民の義務です。個人事業主ならば所得税や住民税などを納税し、法人ならば法人税や消費税などを納税しなければなりません。税金にはそれぞれ納付期限がありますが、期限内に支払わなければ「滞納」という扱いになります。仮に、税金を滞納したらどうなるのでしょうか?
延滞税が発生する
納付期限までに税金を支払わなければ、「延滞税」が発生します。
延滞税は税金を滞納したことへのペナルティであり、納付期限の翌日から発生します。滞納している日数に応じて課されるため、滞納が長引くほど延滞税額も増えていきます。
延滞税の計算方法は、【延滞税 = 本来支払う税額 × 税率 × 延滞期間】です。
延滞税の税率は、滞納する税金の種類によって異なります。地方税は滞納が1ヵ月を過ぎると税率が上がり、国税は2カ月を過ぎると税率が上がります。
すぐに差し押さえを受けるわけではない
税金を滞納すれば、最終的に差し押さえ処分になります。とはいえ、税金を滞納してすぐに差し押さえを受けるわけではありません。
差し押さえが実際に起こるまでには税務署からの電話や書面による督促があり、最終的に差し押さえが行われます。
つまり、滞納しても差し押さえまでには猶予があるため、それまでの期間に納税をすれば差し押さえを回避できます。ただし、延滞税は納税が遅れたことに対して発生するため、差し押さえを回避できても支払わなければなりません。
税金の滞納から差し押さえまでの流れ
個人事業主や法人が税金を滞納した場合、上述したようにすぐに財産が差し押さえられるわけではなく、手順に沿って手続きが進められます。税金の滞納から差し押さえまでの流れを解説します。
督促状の送付
税金を滞納すると、まず督促状が送付されます。督促状は、納税するように促すことが書かれた書面です。
督促状は滞納してすぐに送付されるわけではありません。税金の種類によって督促状が送られてくるタイミングは異なります。個人事業主は、住民税で20日以内、所得税は50日以内に送付することが法律の規定です。法人税の場合は50日以内と定められています。
催告
督促状を無視していると、電話や訪問などによる催告が行われることが一般的です。催告をしなくても差し押さえ処分に進むことはできますが、税務署や役所が意思確認をする目的で催告の段階を設けています。
そのため、催告で納付の意思が見られなければ、差し押さえに向けて手続きが進んでいきます。
財産調査
督促状が届いて10日以内に納税しなければ、本来であれば差押えを行うことができます。
しかし、すぐに財産の差し押さえを受けるのではなく、財産調査を先に行うことが一般的です。この財産調査は滞納している税金を回収する目的に加え、利益の隠匿や不正行為などがないか調査する目的もあります。
税務署や役所には、滞納者の財産を把握できる権利があるのです。滞納している個人事業主や法人といった債務者だけではなく、取引先や金融機関などにも財産調査ができます。この時点で取引先や金融機関に税金を滞納していることがバレてしまうため、今後の事業や信用面へ影響する可能性があります。
差し押さえ
財産調査をもとに、滞納している税金や延滞税に見合った資産の差し押さえが行われます。
差し押さえ処分の対象になる財産は、個人事業主であれば個人事業主が所有する財産、法人であれば法人名義の財産です。どのような財産が差し押さえになるのかは、現場の裁量になります。
滞納している金額によるものの、売掛債権や不動産、車、備品などが対象です。差し押さえされるものによっては、事業活動が止まってしまう恐れもあります。
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税金滞納による差し押さえの注意点
税金を滞納した場合の差し押さえまでの流れを紹介しましたが、税金滞納による差し押さえで注意すべき点がいくつかあります。税金滞納による差し押さえの注意点について知っておきましょう。
差し押さえまでの期間は短い
税金滞納後は督促などの期間はあるものの、督促状から10日経過して納税しなければ差し押さえ処分が可能です。
催告や財産調査などを挟むことになりますが、最短でも1カ月程度で差し押さえ処分が執行されると考えられます。
そのため、「差し押さえまでには猶予があるから大丈夫」と、対応を後回しにすることは危険です。差し押さえ処分を避けるためには、できるだけ早く対処する必要があります。
税務調査も入ることになる
税金を滞納すると、未納の税金を回収するための財産調査が行われるだけではなく、税務調査の対象にもなります。
税務調査が入ればこれまでの会社の利益や所得、確定申告なども全て調査されます。これまでの確定申告で何らかの問題が発見されれば、さらに追徴課税が課されるでしょう。
また、実際の納税額よりも少ない金額で申告していた場合は「過少申告加算税」、無申告だった場合は「無申告加算税」が課されます。また、悪質な不正などがあった場合は「重加算税」が課されます。
そのうえ、追徴課税は、一括で支払わなければなりません。
個人事業主が税金滞納による差し押さえを回避するための対処法
個人事業主が税金を滞納した場合、差し押さえを回避するために利用できる制度があります。個人事業主で税金の支払いが難しくなった場合、以下の制度の利用を対処法として検討しましょう。
減免制度
税金を払うことが難しい場合、減免制度を利用することで税金の軽減や免除を受けられます。
減免制度は、生活保護を受けている場合や、風水害などで被災された場合など、事情に応じて適用される制度です。国や自治体が定める制度なので、利用可否については税務署へ確認しましょう。
ただし、納付期限が過ぎていると減免制度は利用できません。納付期限が過ぎる前に制度の利用を相談する必要があります。
延納制度
個人事業主で所得税の納税が困難な場合に利用できる制度として、延納制度が挙げられます。
延納制度は納税期限を延ばす制度で、2回に分割して納税できるのが特徴です。納付期限までに納付額の半分以上を納付し、残りの納税の期日を延長するという仕組みです。
ただし、延納制度を利用すれば、延納期間中に利子がかかります。利子は年7.3%もしくは特例基準割合のどちらか低い割合です。
また、延納制度を利用するには、確定申告書へ延納制度を利用することを記載しなければなりません。
猶予制度
納税するために経済状況を立て直す時間の猶予を得られる「猶予制度」も存在します。
災害や傷病、事業での大きな損害などで一時的に納税が難しいという場合には、納税が猶予される制度です。猶予される期間は、最大で1年間です。
猶予制度を利用するには、税務署へ申請します。延滞税は発生するものの、税務署に申請していれば延滞税も軽減されます。
関連記事:税務調査は個人にいくらからくる?個人に及ぶケースとその対策とは?調査対象となる金額の目安
法人が税金滞納による差し押さえを回避するための対処法
法人が税金を支払えない場合、会社だけではなく従業員や取引先など多くの人に影響が出てしまう可能性があります。法人で税金が払えないような場合、差し押さえを回避するために次のような対処を行いましょう。
源泉徴収税と消費税を優先する
法人が支払う税金にはさまざまな種類があり、金額も高額です。税金は期限内に払うことが大前提ではあるものの、事情により払えない場合は、源泉徴収税と消費税の支払いを優先しましょう。
なぜなら、源泉徴収税と消費税の2つの税金は、短期間で差し押さえ処分に繋がりやすいと言われているからです。
源泉徴収税と消費税は消費者や従業員から一時的に預かり、法人が後でまとめて支払う税金という性質を持っています。そのため、他の税金よりも差し押さえのリスクが高いとされています。
万が一、全ての税金を支払うことが難しい場合、差し押さえのリスクを軽減するためにも源泉徴収税と消費税の支払いを優先しましょう。
資金調達をする
法人の税金滞納は倒産のリスクが生じるため、資金調達するという手段もあります。手元に資金が増えれば、納税もできるようになるでしょう。
しかし、税金を滞納した状態で金融機関から融資を受けることは難しいのが現状です。
金融機関からの資金調達が難しい場合には、不動産売却やリースバック、ファクタリングなどの手段で資金を調達することになります。状況に最適な資金調達できる手段について検討する場合は、専門家である税理士に相談すると良いでしょう。
猶予制度を利用する
法人の税金に関しても、個人事業主と同様に納税の猶予制度を利用できる場合があります。
ただし、猶予制度を利用するには、一定の要件を満たさなければなりません。主に事業における大きな損害や廃業、休業、盗難や横領による財産の損失、災害など特別な事情があって納税できない場合に認められる制度です。
利用の可否については、税務署や地方自治体へ猶予制度の利用について相談してみてください。
関連記事:【税理士監修】法人税の滞納は危険?滞納のリスクや支払いが難しい場合の対処法を解説
税金滞納による差し押さえを回避するための相談先
個人事業主や法人が税金を滞納すると、差し押さえ処分になって最終的に事業を廃止することになる可能性があります。
差し押さえを回避するためには、できるだけ早い段階で対処することが大切です。差し押さえを回避するためには、誰に相談すれば良いのでしょうか?
税務署や自治体
差し押さえを回避するためには、まず税務署や自治体など税金の管轄先に相談しましょう。所得税や法人税は税務署が管轄の税金で、住民税や固定資産税は自治体の管轄です。
税務署や自治体に相談することで、納税や換価の猶予などの対処を提案してもらえる可能性があります。
また、税務署や自治体に相談することで、税金を支払う意思があることを伝えられます。そのまま放置すると納税する意思がないと判断されて差し押さえ処分になる可能性がありますし、最善の対処を取る時間が無くなってしまいます。
納付期限までに支払えないことが分かった時点で速やかに相談しましょう。
商工会や商工会議所
中小企業や小規模事業者の場合であれば、商工会や商工会議所へ相談するという選択肢もあります。
無料相談窓口があるので、事業状態に寄り添ったアドバイスを得られます。債務超過などの負債によって税金を滞納しているのであれば、弁護士を紹介してもらえることも少なくありません。
商工会や商工会議所では、税理士が常勤しているわけではありません。しかし、確定申告の時期が近づくと税理士による相談サービスが提供されることもあります。
税理士などの専門家
差し押さえを回避するために、税理士や弁護士などの専門家のサポートを受けるという手段もあります。専門家に相談すれば、状況に応じた適切なアドバイスを得ることができ、最善の対処ができる可能性が高まるでしょう。
税理士に相談すれば、事業の財務状況を把握した上で税金の支払いや滞納に対しての対処法を導き出せます。顧問税理士がいない場合は、スポットで税理士に相談することも可能です。
また、税金を滞納する背景には払いきれない負債を抱えていることも多いため、弁護士に相談して債務整理で負債を根本から解決するという選択肢もあります。
税金滞納での差し押さえを避けるために税理士へ相談しましょう
個人事業主や法人が税金を滞納して放置し続ければ、財産を差し押さえられることで事業が停止する恐れがあります。場合によっては事業者が債務整理しなければならない状況に陥ることもあるため、滞納する前の早い段階から対処することが大切です。
税金を滞納するような事態を避けるには、日頃から税務業務を適切に行う必要があります。税務業務は知識や経験が必要になるため、専門家である税理士に任せておけば税金を滞納にするような事態は避けられるはずです。
小谷野税理士法人では知識と経験が豊富な税理士が多数在籍しており、さまざまな業界の税理業務を過去に担っています。日常の税務業務から確定申告、税金問題など幅広いアドバイスやサポートが可能です。
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