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飲食業で簡易課税を利用する際の事業区分は店内飲食・テイクアウトで違う?

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飲食業で簡易課税を利用する際の事業区分は店内飲食・テイクアウトで違う?

簡易課税制度とは、基準となる期間の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者に対する納税事務負担を軽減するものです。特に飲食店の場合は、店内飲食とテイクアウトで課税の扱いが異なるため、簡易課税制度に対する正確な理解が求められます。

本記事では、具体的な事業区分や注意点について詳しく解説します。

飲食店における簡易課税制度とは

消費税の申告方法は原則課税簡易課税の2種類が存在しますが、簡易課税方式の方が比較的手順が簡単で、手続きをスムーズに行えるのが特徴です。実際の経費に基づいた計算の手間を省き、みなし仕入率を用いることで効率よく税額を算出できます。

簡易課税制度の基本ルール

簡易課税制度は、消費税の計算を簡便化するための制度として多くの中小事業者に利用されています。飲食店を経営する事業者においては、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である場合に適用が可能となっています。実際の仕入れに対する詳細な記録を保持する必要がないため、帳簿管理の手間を省けるだけでなく、計算作業も効率的に行うことができます。

飲食店が対象となる理由

飲食店が簡易課税制度の対象となる理由は、飲食業界が事業者数の多い分野であり、中小企業が大部分を占めているためです。飲食店は特に日々の消費税申告や会計業務が煩雑になりがちです。上手く活用できれば時間的にも助けられる面が多いでしょう。

また、近年ではキャッシュレス化の流れにより、入金と出金のタイミングがズレやすい面もあるので、みなし仕入れ率によって計算可能な簡易課税制度は経営の安定を図る上でもメリットが大きいと言えます。

飲食店の事業区分と消費税のポイント

お弁当のテイクアウト

飲食店経営では、その飲食形態によって「事業区分」と「みなし仕入率」が変わります。事業区分は主に店内飲食、テイクアウト、デリバリーなど、サービスの提供方法によって分別されています。そして事業区分ごとでみなし仕入率は決まります。このみなし仕入れ率を用いて納税額を計算することになるため、ご自身の飲食形態がどれに該当するかしっかりと把握しておく必要があります。

店内飲食とテイクアウトにおける事業区分

事業区分は第1種から第6種まで存在しますが、飲食店は一般的に「第4種事業」に該当します。しかし、テイクアウトや店内調理をしない飲食物の販売については事業区分が異なるため注意が必要です。

以下の表は、店内飲食、テイクアウトそれぞれの事業区分の判定基準とみなし仕入率をまとめたものになります。

飲食形態

主な例

事業区分

みなし仕入率

店内飲食

店内の飲食スペースで提供されるサービス/宅配

第4種事業

60%

テイクアウト
(店内調理あり)

自店で調理した弁当や加工食品のテイクアウト

第3種事業

70%

テイクアウト
(店内調理なし)

未加工の商品
(例えば、飲料や野菜)の販売/宅配

第1種事業
(または第2種事業)

90%
(または80%)

参考:国税庁「簡易課税制度の事業区分」 

店内飲食を提供する場合、直接的なサービスが伴うため第4種事業に該当します。一方で、テイクアウトの際にはその内容によって分類が異なりますので注意が必要です。例えば店舗で仕入れた食材を調理なしでそのまま販売する場合、第1種事業または第2種事業に該当し、90%または80%という高いみなし仕入率が適用されます。

逆に、自店で調理したものをテイクアウトとして提供する場合は、第3種事業に該当し、みなし仕入率は70%となります。これらの差異を把握し、適切な事業区分を選択することが重要です。

消費税率の違いと事業区分の適切な設定について

現在、日本の消費税率は一般的に10%ですが、軽減税率の適用により、持ち帰り(テイクアウト)やデリバリーの場合は8%になります。例えば、あるお店でハンバーガーを提供した場合、店内で食べる顧客には10%の消費税がかかりますが、テイクアウトやデリバリーを選んだ場合は軽減税率として8%が適用されます。

ただし、価格が変動すると顧客の混乱を招く恐れもあるため、「店内飲食の税抜き価格を下げる」、もしくは「テイクアウトの金額を上げる」対策を行い、同じメニューの料金を一律にしているお店も少なくないようです。

より正確に仕訳を行うためには、事業区分において売上がどの提供形態に該当するのかを明確にすることが重要だと言えるでしょう。

さらに、調理した食材を使用したメニューの提供か、仕入れた食材をそのまま販売する形態かによって事業区分が異なる点にも注意しなければなりません。また、取引内容や営業形態が変化した場合には、事業区分の見直しを適宜行う必要もあります。これにより、税務手続きにおいても混乱を防ぎ、正確な申告を行うことができます。

関連記事:飲食店で使うべき経営指標7選!経営を成功させるポイントも解説

複数業種を展開する場合の取扱い方法

カフェ・飲食店・レストラン・バーで働く男性

先ほど、同じ飲食店でもサービスの提供によって事業区分が異なることをお伝えしました。では、1つの飲食店で店内飲食とテイクアウトを行った場合はどうでしょうか。また、宿泊を伴う飲食の提供を行うといった事業形態もあるでしょう。このように複数業種を展開する際、業態ごとに消費税の取り扱いや会計処理を把握しなければなりません。

次からは店内飲食・テイクアウト・デリバリーなど具体例を挙げながら、トラブルを防ぐために必要な対応策と注意点を詳しく解説します。

複数の業種を扱う場合の課題

1つの飲食店でも、店内飲食とテイクアウトの両方を提供するケースでは、提供するサービスごとに事業区分とみなし仕入率を適用することなります。また、異なる複数の業種を同時に運営する際には、売り上げがどの業種に該当するのか、かかった仕入れがどの事業区分のものなのかを帳簿にしっかりと記録しておきましょう。

また複数の業種を扱う場合、消費税の計算も煩雑になります。店内飲食とテイクアウトではお客様からいただく消費税率は異なるため、提供するサービスごとに分けて計算しなければなりません。

このように複数の業種を扱う場合、経営者はこれらを正しく仕訳をしなければなりません。税務処理にも時間がとられ、また判断間違いや計算ミスも起きやすくなるため、税理士や会計士などの専門家に相談をすることも検討しましょう。

簡易課税制度や仕入額控除の適用については、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

異なる事業区分がある場合の対応策

異なる事業区分が存在する場合は、それぞれの業種や業態に応じた取り扱いを明確にすることが重要です。特にサービス業を含む多様な業界では、部門ごとに売上や仕入れを分け、適用される税率や事業区分を正確に管理する体制を整えられるよう努めましょう。このような管理体制により、複数の業種間での混同を防ぎ、適切な消費税の申告が可能になります。

また、サービス業を含めた事業全体の業務プロセスを定期的に見直すことも有効です。これにより、事業環境の変化に柔軟に対応できるだけでなく、社内の効率性が向上します。顧客ニーズを細かく精査する機会にもなりますから、クレームの予防や顧客満足度の向上などに繋がる可能性もあるでしょう。

複数事業を含む場合の「特例」も存在する

飲食店では一般的に該当する第4種事業のほかに、デリバリーや仕入れ商品の販売など第3種、第2種といった異なる事業区分を取り扱う可能性もありますよね。そのようなケースでは、「全体の課税売上高の中で、1種類の事業の課税売上高が75%以上となる」場合のみ、その事業のみなし仕入れ率を全体の課税売上に適用できるという特例も存在します。

これは3種以上の事業区分を含む飲食店であっても、「全体の課税売上高の中で、特定の2種類の事業の課税売上高の合計が75%以上となる」のであれば適用可能です。その場合、2業種のうち仕入れ率の低い方に合わせて計算することができます。

関連記事:消費税の簡易課税方式はどうやって節税する?基礎知識や節税のポイントを解説

宿泊施設における飲食サービスの提供について

宿泊施設では、朝食が含まれている「朝食付きプラン」や、夕食が提供される「夕食付きプラン」など、飲食サービスが宿泊プランに含まれている場合が多いでしょう。こうした場合、提供される食事は宿泊に付随するものと見なされ、全体の売上を「第5種事業」として処理されるのが一般的です。

ただし、ホテルやレストラン、バーなど宿泊客以外でも利用できる施設の売上は、通常の飲食店と同じく「第4種事業」に該当するため、お客様の利用方法についても注意が必要です。

またこのようなサービス形態では消費税にも違いが生まれます。例えば宿泊施設が調理した食事を宿泊客に提供する場合、これは「店内飲食」とされ、通常の飲食店での提供と同様に10%の課税対象となります。

また、宿泊施設の食事といえばビュッフェスタイルやルームサービスなど多様な形がありますが、客室内で食事を摂るルームサービスであっても、店内飲食として10%の課税が行われるようです。

ただし、ホテルがテイクアウト(持ち帰り)メニューを提供している場合や、備え付けの飲料を飲んで帰りに別途料金を支払うような場合には消費税は8%となります。このように、宿泊施設内での飲食サービスは、宿泊と一体であるかどうかで事業区分や消費税の扱いが異なってきます。

関連記事:ホテル経営の財務分析方法を解説!経営指標や利益を上げるポイントまとめ

まとめ:正確な事業区分設定が飲食店経営の鍵

飲食店経営において正確に事業区分を把握することは、透明性の高い会計管理や税負担の最適化、効率的な申告業務を実現するための重要な基盤です。

適切な事業区分を設定することにより、消費税の正確な計算が可能となり、不必要な負担や過剰な支払いを回避することができます。飲食店の運営において、正しい事業区分を基に正確な消費税申告を行うことは、長期的な経営の安定に欠かせない要素となるでしょう。

しかし、経営者自身が自ら知識を身に着けるのには限界もあります。そこで、不安が生じた場合には、税理士や会計士などの専門家に相談するのもおすすめです。彼らは日々変化する税法や飲食業界特有の課税制度を熟知し、その専門知識を活かして最適なアドバイスを提供してくれます。

また、専門家の助けを借りることで、時間と労力を節約しながら、適切な税務処理を行うことも可能です。自店の状況に合った最良の選択を確保し、リスクを軽減するためにも、ぜひプロの支援を受けましょう。

飲食業の簡易課税による仕訳や税務処理でお悩みの際は、ぜひ「小谷野税理士法人」へご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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