合同会社を運営するうえで、経費の適切な管理は法人税の負担を軽減し、資金繰りをスムーズにする重要なポイントです。しかし、どの支出が経費として認められるのか、どのように処理すべきか悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、合同会社における経費の基本的な考え方や、計上できる経費の種類、節税対策のポイントについて解説します。
目次
合同会社における経費とは?
合同会社は、株式会社と同じ法人格を持つ会社形態ですが、経営の仕組みに違いがあります。
株式会社では、株主が出資し、選ばれた取締役が経営を行いますが、合同会社では出資者(社員)が直接経営に関わります。この仕組みにより、意思決定のスピードが速く、設立費用や運営コストを抑えられるのが特徴でしょう。
合同会社の経費とは、事業運営に必要な支出のことを指し、法人税の計算時に認められると、利益から控除され、税負担を軽減できます。
ただし、すべての支出が経費になるわけではなく、「業務に直接関係しているか」「合理的な支出か」が判断基準となるため、適切に管理することが重要です。
関連記事:株式会社を設立するメリットとは?デメリットや合同会社との違いについても解説
関連記事:合同会社はトラブルが多い?よくある問題や設立・運営のポイントを解説!
合同会社で計上できる経費
合同会社における経費計上の考え方は法人として共通しており、適切に処理することで税負担を軽減できます。合同会社で計上できる経費について、項目ごとに具体的な例を挙げながら解説します。
事務所関連の経費
経費項目 | 内容 |
家賃 | 事務所や倉庫の賃貸料、共益費などの支払い |
光熱費 | 事務所や倉庫の電気代、水道代、ガス代などの光熱費 |
通信費 | インターネット回線や電話代、クラウドサービスの利用料 |
事務所運営にかかる固定費は、合同会社の経費として計上できます。特に賃貸オフィスを利用する場合、家賃や共益費のほか、保証料なども経費として計上できます。
また、光熱費や通信費も事業運営に不可欠な支出のため、経費として認められるため計上しましょう。ただし、事業用と個人利用が混在する場合は、業務割合を明確にし、適切に按分して計上することが重要です。
人件費・役員報酬
経費項目 | 内容 |
従業員給与 | 社員やアルバイトの給与・賞与、残業代、福利厚生費など |
役員報酬 | 出資者(社員)が役員として受け取る報酬で、事前に決定した額 |
社会保険料 | 法人が負担する健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料 |
従業員への給与や賞与、福利厚生費は、法人の経費として計上可能です。社会保険料の法人負担分も同様に経費となります。ただし、役員報酬は毎期一定額を継続する必要があり、変更する場合は、原則として期首から3ヶ月以内に変更が必要です。
適切な報酬設定を行い、事前に計画を立てることが大切です。また、給与や報酬の支払いに関する記録を適切に管理し、税務調査時に説明できるようにしておきましょう。
交際費・接待費
経費項目 | 内容 |
取引先との飲食費 | 取引先やビジネスパートナーとの打ち合わせや接待での飲食費 |
会議費 | 社内外の会議、打ち合わせ時の飲食費やカフェ利用費など |
取引先との関係を円滑にするための接待や会議費用は、交際費として計上できます。ただし、税制上の上限があるため、過度な支出は経費として認められない可能性があるでしょう。
特に業務関連性が不明確な飲食費や贈答品は、税務調査で否認されるリスクがあるため、適切な範囲内での利用が求められます。領収書には利用目的や参加者を記録し、業務に必要な支出であることを明確にすることが重要です。
交通費・出張費
経費項目 | 内容 |
電車代・バス代 | 業務での移動にかかる交通費(定期券、ICカード利用含む) |
宿泊費 | 出張時のホテル代、宿泊先での朝食代などの関連費用 |
レンタカー費用 | 出張や業務上での車両レンタル費用(燃料代を含む場合あり) |
業務上の移動にかかる交通費や出張費は、経費として認められます。電車やバスの利用はもちろん、業務上の宿泊費やレンタカー代も計上可能です。
ただし、個人的な移動と混同しないように、経費対象となる範囲を明確にし、領収書を適切に保管するようにしましょう。長期の出張や海外出張の場合は、宿泊費や食費の合理的な範囲を超えないよう注意し、社内ルールを整備しておくと安心です。
備品・消耗品費
経費項目 | 内容 |
パソコン・タブレット | 業務用PCや周辺機器、ソフトウェアライセンス費用 |
文房具 | ノート、ペン、プリンターインク、コピー用紙などの消耗品 |
事業で使用するパソコンやタブレット、文房具などの消耗品費は、合同会社の経費として計上できます。
ただし、高額な設備投資は固定資産となり、減価償却の対象となる場合があるため、購入金額に応じた適切な処理が必要です。特にソフトウェアライセンスや業務用ツールの購入は、費用計上の方法を事前に確認しましょう。
関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
広告宣伝費
経費項目 | 内容 |
Web広告 | Google広告、SNS広告、リスティング広告の費用 |
チラシ・パンフレット | 印刷や配布、デザイン制作にかかる費用 |
自社のサービスや商品を広めるための広告費用は、経費として計上可能です。Google広告やSNS広告などのWeb広告、チラシ・パンフレットの印刷費、デザイン制作費などが含まれます。
広告宣伝費は、集客や売上向上に繋がる重要な投資ですが、過度な広告費は税務調査の際に指摘される可能性もあるため、業務の実態に合った適切な支出を心掛けましょう。
保険料
経費項目 | 内容 |
法人向け保険 | 事業用の損害保険、生命保険、火災保険などの保険料 |
賠償責任保険 | 業務上の事故やトラブルに備えるための賠償責任保険料 |
法人契約の保険料は、リスク管理の一環として経費に計上できます。業務用の損害保険や生命保険、火災保険のほか、取引先や従業員への賠償責任をカバーする保険も対象になります。
ただし、法人契約の生命保険については、契約内容によっては全額損金計上できない場合があるため、事前に確認しましょう。会社のリスク管理を踏まえ、適切な保険を選択することが重要です。
その他の経費
経費項目 | 内容 |
税理士報酬 | 税務申告や財務管理を依頼する費用、顧問契約の料金 |
各種会費 | 商工会議所、業界団体、ビジネス交流会などの会費 |
税理士報酬や業界団体の会費など、経営管理に必要な支出も経費として計上できます。特に税理士への顧問契約は、経理や税務申告の適正化に役立ち、法人運営をスムーズに進めるために欠かせない費用と言えるでしょう。
合同会社の経費を活用した節税対策4選
合同会社の経費を活用した節税対策には、適切な経費計上や税制優遇制度の活用が欠かせません。合同会社が実践できる以下4つの節税対策を紹介します。
- 経費を適切に計上することで法人税を抑える
- 法人向け保険の活用
- 設備投資の即時償却
- 役員報酬の最適化
経費を適切に計上することで法人税を抑える
経費を正しく計上することで、法人税の課税所得を抑え、税負担を軽減できます。業務に関係する支出はすべて経費に計上し、領収書や請求書を適切に保管するようにしましょう。
特に、曖昧な経費やプライベートな支出との区別を明確にし、税務調査で指摘されないようにすることが求められます。法人カードを活用し、経費の仕訳を適正に管理することで、無駄な税金を支払わずに済むでしょう。
関連記事:会社設立は税金対策に効果的?期待できる節税効果と会社設立のポイント
法人向け保険の活用
法人向け保険を活用することで、一定の掛金を損金算入し、法人税の負担を軽減できます。特に、経営者の退職金準備や万が一のリスクに備えながら節税ができるため、計画的な導入が重要です。
ただし、全額損金算入できる保険は近年の税制改正で減少しているため、適用範囲や税務処理を事前に確認しておきましょう。適切な保険を選択することで、税務リスクを回避しながら効果的な資産形成が可能になります。
設備投資の即時償却
業務用設備や機器の購入費用は、一定の条件を満たせば即時償却の対象となります。これにより、通常は数年間にわたって減価償却する費用を、購入年度に一括で経費として計上できるため、法人税の負担を大幅に抑えられるでしょう。
特に、中小企業向けの税制優遇制度を活用することで、設備投資をしながら資金繰りを改善できます。即時償却の対象範囲や要件を確認し、適切なタイミングで設備投資を行うことが重要です。
関連記事:少額減価償却資産の特例とは?いくらまで経費にできるのかを解説!
役員報酬の最適化
役員報酬は法人の利益と税負担のバランスを考慮して決定する必要があります。報酬額が低すぎると法人の利益が増え、法人税が高くなる一方、高すぎると個人の所得税負担が増加します。
適切な役員報酬の設定を行うことで、法人税と所得税の最適なバランスを実現できるでしょう。
ただし、期中の変更は税務上認められないため、事前に綿密な計画を立てることが不可欠です。税理士と相談しながら、適切な役員報酬額を決定しましょう。
関連記事:役員報酬を経費にするには?ルールや判断基準・注意点を徹底解説!
合同会社の経費計上における3つの注意点
合同会社の経費計上では、適切な処理を行わないと税務上のリスクが生じる可能性があります。経費計上の重要な以下3つのポイントについて解説します。
- 役員報酬の変更は慎重に(期中変更のリスク)
- 過度な交際費は否認リスクあり
- 個人利用と法人経費の線引きを明確に
役員報酬の変更は慎重に(期中変更のリスク)
合同会社の役員報酬は、原則として事業年度の開始から3ヶ月以内に決定し、途中で変更することができません。
これは、法人税法上「定期同額給与」として認められるために必要な条件であり、期中で変更すると損金算入が認められない可能性があります。適切な報酬設定を行い、計画的な経営を意識することが重要でしょう。
過度な交際費は否認リスクあり
交際費は事業活動の一環として計上できますが、過度な支出は税務調査で否認されるリスクがあります。
特に、業務関連性が不明確な飲食費や贈答品は指摘を受けやすい項目です。交際費として計上する際は、取引先の情報や目的を明確にし、領収書や議事録を適切に管理しましょう。
個人利用と法人経費の線引きを明確に
合同会社では、個人の支出と法人の経費の区別を厳格に行うことが求められます。特に、役員や従業員が法人名義のクレジットカードを使用する際には、業務に関連する支出であることを証明できるように記録を残す必要があります。
個人利用と疑われる費用は、税務調査で否認される可能性があるため、プライベートな支出は法人経費と混同しないように注意しましょう。
合同会社の経費処理でお悩みの方は専門家に相談
合同会社の経費処理に不安がある場合は、専門家に相談することが重要です。適切な経費計上は、法人税の負担軽減だけでなく、財務の透明性を確保し、税務リスクを回避するためにも欠かせません。
不適切な処理は税務調査で指摘され、追徴課税のリスクを伴う可能性もあるでしょう。
小谷野税理士法人は、法人税務や会計処理に精通し、多くの企業の経費管理や節税対策を支援してきた実績があります。合同会社特有の経費処理のポイントを理解し、適切なアドバイスを提供できますので、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。