税金を期限までに納めなかった場合、延滞税が発生します。延滞税の額は、延滞した日数やその年の利率に応じて変わります。例えば所得税30万円を納付しなかった場合、60日後に納付すると1,100円、90日後に納付すると3,200円の延滞税です(2025年の利率)。この記事では延滞税がいくらになるかの計算方法や、納付方法、税額を抑える手段などを解説します。
目次
延滞税とは「納付が遅れると科されるペナルティ」
延滞税とは、税金の納付が間に合わなかった場合に発生する国税です。遅れた日数に応じて自動的に発生します。
税金は、期限までに納付するよう税法で定められています。納付が遅れると国の予算が予定通り使えなくなり、行政サービスに支障が出るためです。よって、遅れた分は損失補填として延滞税で回収する必要があります。
参考:延滞税について|国税庁
確定申告を期限内にしたけれど納付だけが間に合わなかった場合、遅れた日数次第で延滞税が発生します。一方、申告自体をしなかったり申告内容をごまかしたりした場合は、延滞税と併せて「加算税」も科されてしまいます。
加算税について詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説
延滞税の計算方法は「未納額×利率×日数÷365」
延滞税の金額の計算する方法は下記の通りです。
延滞した期間 | 計算式 | 備考 |
①納付期限の翌日から2ヵ月以内 | 未納額×利率A×日数÷365 (2025年の利率Aは2.4%) | 1円未満切捨て |
②納付期限の翌日から2ヵ月よりも後 | 未納額×利率B×日数÷365 (2025年の利率Bは8.7%) | |
合計 | 延滞税の額=①+② | 100円未満切捨て |
※10,000円未満の未納額は切捨て
参考:延滞税の計算方法|国税庁
参考:振替納付日について|国税庁
例えば以下のモデルケースだと、延滞税の額は1,000円です。
【モデルケース】
2024年分の所得税10万円を確定申告したが、納付を忘れていて、91日後に納付した場合
【条件の整理】
- 納付期限:2025年3月17日(月)
- 納付日:91日後=2025年6月16日(月)
- 未納額:10万円
日数内訳は、下記の通りです。
- 納付期限の翌日から2ヵ月以内:3月18日〜5月17日→61日間
- 納付期限の翌日から2ヵ月よりも後:5月18日〜6月16日→30日間
【計算】
①=未納額10万円×0.024(利率A2.4%)×61日÷365≒401円(1円未満切捨て)
②=未納額10万円×0.087(利率B8.7%)×30日÷365≒715円(1円未満切捨て)
延滞税額=①+②=401円+715円=1,116円
100円未満は切捨てにより、納めるべき延滞税額は1,100円
計算の際は、納付期限の翌日から2ヵ月以内か否かで変わる利率に注意しましょう。この利率は年によって異なります。具体的には2021年の利率Aは2.5%、利率Bは8.8%でしたが、2022年ではそれぞれ2.4%と8.7%に変更されています。
年を跨いだ場合、期間ごとにその年の利率が適用されます。例えば延滞した期間が2021年と2022年に跨る場合、2021年中の延滞日数には2021年の利率、2022年の延滞日数には2022年の利率が使われます。
年ごとの利率は、下記の国税庁ホームページをご確認ください。
参考:延滞税の割合|国税庁
延滞税は大体いくら?金額別・日数別シミュレーション
ここでは、延滞税が「実際にどれくらいかかるのか」をイメージできるよう、金額別・日数別の早見表をご用意しました。延滞税の目安としてご活用ください。
【前提条件】
- 対象年分:2022年分の所得税(期限内申告済み)
- 納付期限:2023年3月15日(水)
- 納付期限の翌日から2ヵ月以内の利率:年2.4%
- 納付期限の翌日から2ヵ月よりも後の利率:年8.7%
※100円未満の延滞税額は切捨て
※1,,000円未満の延滞税は納付不要
未納額→ | 10,000円 | 50,000円 | 10万円 | 30万円 | 50万円 |
延滞日数↓ (利率) | |||||
15日 (2.4%) | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
30日 (2.4%) | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
60日 (2.4%) | 0円 | 0円 | 0円 | 1,100円 | 1,900円 |
90日 (61日×2.4%+29日×8.7%) | 0円 | 0円 | 1,000円 | 3,200円 | 5,400円 |
120日 (61日×2.4%+59日×8.7%) | 0円 | 0円 | 1,800円 | 5,400円 | 9,000円 |
1年 (61日×2.4%+305日×8.7%) | 0円 | 3,800円 | 7,600円 | 23,000円 | 38,300円 |
2年 (61日×2.4%+670日×8.7%) | 1,600円 | 8,100円 | 16,300円 | 49,100円 | 81,800円 |
※この表は、期限内申告・自発的納付を前提に試算した目安です。期限後申告や修正申告などの場合、額が変わる可能性があります。詳細は税務署にご確認ください。
なお、国税庁のホームページには、申告納税額や納付日を入力すると延滞税が計算できるツールがあります。
参考:延滞税の計算方法|国税庁
延滞税はどうやって納める?納付の流れと注意点
延滞税の額が分かったら、納め方を確認しましょう。
延滞税の基本は「自分で気付いて納付する」
延滞税は、税務署からの通知を待つのではなく、自分で気づいて納付するのが基本的な考え方でしょう 。なぜなら延滞税は納付が遅れた時点で、自動的に発生する仕組みになっているからです。通知の有無に関係なく、納付の事実がなければ延滞税は科されます。
「まだ通知が来てないから」と様子を見ている間にも延滞税は増え続けてしまいます。税額を最小限にするために、延滞税は気付いたらすぐ納めましょう。
納付せずにいると財産差押えに繋がる場合もある
延滞税を納めず長期間放置すると、財産調査や差押えなどに繋がる可能性もあります。これは、他の納税者との公平性を保つためです。
延滞税の基本は自分で気付くことですが、対象者から納付されない場合、税務署は督促状で通知し納付を促します。その上で納付されないと行われるのが、対象者の口座や居宅などに対する財産調査です。さらに無視し続けると財産の差押えに至る場合もあります。
少額な延滞税でも甘く見ず、早めに対応しましょう。
参考:国税を納期限までに納付することができない場合には|国税庁
所得税など他の国税と同じ方法で延滞税も納付できる
延滞税は、他の国税と同じ方法で納付できます。延滞税は所得税や消費税などと同じ「国税」に分類されるためです。
例えばインターネットバンキングやクレジットカードを利用した納付方法などが選べます。
参考:【税金の納付】|国税庁
現金で納付する場合は、税務署や金融機関に備え付けられている納付書が必要です。詳しくは下記の国税庁ホームページをご確認ください。
参考:現金に納付書を添えて納付(金融機関又は税務署の窓口)|国税庁
延滞税に時効は「実質ない」ので逃げずに納付する
延滞税には原則5年の時効がありますが、現実的には「時効はない」と考えましょう。なぜなら税務署が「督促状を送る」などの一定行為を行うと、その時点で時効がリセットされるからです。これにより、何度でも時効が延ばされます。
法的には時効があっても、現実的に逃げ切るのはほぼ不可能です。「いつか時効になるかも」と楽観せず、気付いた時点ですぐに納付しましょう。
延滞税を最小限に抑える方法
延滞税は、いつ気付いて、どう動くかで負担額が大きく変わります。
未納に気付いたらすぐに、できる限り2ヵ月以内の納付を目指す
税金の未納に気付いたらできる限り早く納付すると、延滞税を最小限にできます。
延滞税は納付期限の翌日から発生し、遅れた日数に応じて日割りで加算されます。その上、納期限から2ヵ月を超えると、延滞税の利率が一気に上がる仕組みです。
参考:延滞税の割合|国税庁
例えば2025年の利率は2ヵ月以内だと2.4%ですが、2ヵ月超過後は8.7%です。この利率で30万円を納め忘れていた場合、60日後(2ヵ月以内)に納付すれば延滞税は1,100円です。
しかし、90日(3ヵ月)後に納付すると3,200円の延滞税となり、1ヵ月間で2,100円も増えます。
税負担を抑えるためには、気付いたらすぐに、可能なら納期限2ヵ月以内の納付を目指しましょう。
納付が難しい場合は猶予制度を利用して延滞税を軽減させる
税金の納付が困難な場合、猶予制度を利用できるケースがあります。税務署に申請して猶予が認められると、延滞税の全部もしくは一部が免除され、税金の分割払いなどが可能になります。
納付できない原因が一時的な資金不足なのか、病気や災害などやむを得ない事情なのかにより使える猶予制度が異なります。いきなり申請書を出すのではなく、まずは税務署に相談しましょう。
猶予制度の種類や詳細は下記の記事をご確認ください。
関連記事:個人事業主必見!所得税の納付期限と延納制度・延滞税について解説!
自力での延滞税対応が難しそうな方は税理士にご相談ください
延滞税や猶予申請手続きに不安がある方は、税の専門家である税理士に早めにご相談ください。
延滞税のルールは複雑で、状況によっては加算税や猶予制度などへの対応も必要です。自分ひとりで調べて判断すると、手続きが遅れて延滞税が増えたり、本来より多く払ってしまったりする可能性もあります。
税理士は正確な延滞税額の計算や、現状に合った制度の活用、税務署とのやりとりまでサポートいたします。