投資信託をして得た分配金を受け取るとき、分配金を再投資するときに税金はかかるのでしょうか?投資信託の運用によって得られた利益は、決算のときに投資信託の購入者に分配します。分配金は、そのまま受け取る、もしくは再投資した場合も税金の支払い義務が生じます。この記事では、投資信託の分配金の概要と受け取り方、分配金と税金、再投資のメリットなどについて詳しく紹介します。
目次
投資信託の分配金の概念
投資信託の運用で得た分配金は、投資家に支払われます。少額から始められる、専門家が運用することなどから、投資信託は投資初心者でも比較的手をつけやすいと言われています。これから投資信託を始める、現在運用中であれば、分配金を適切に活用し、正しく税金を支払うためにも、分配金についてしっかりと理解しましょう。
分配金とは
運用で得た収益について、信託会社が定めた日に投資信託投資家に分配するものです。投資信託の投資額に応じた分配金から、信託報酬を含めたさまざまな経費を差し引いた額が支払われます。
投資信託は債権や株式といった複数の投資商品を組み合わせて運用するのが大きな特徴です。さまざまな商品を運用して利益を得たり、売却したりすることで収益につなげます。
また、投資信託の投資家に対して支払われる利益は、純資産額に応じて計算される点に注意が必要です。例えば、預金の利息は、元金に対して利息を計算します。
一方で投資信託の分配金は、投資した投資信託の時価評価額に売却益、利益配当などをプラスしたものを基に、必要経費を差し引いて導き出します。
分配金の支払いがないこともある
分配金(正式名称は収益分配金)ついては、必ず支払いがあるとは限りません。運用している商品によっては支払い自体がないこと、もしくは少額であることが、予め定められているからです。
分配金自体を支払わない、もしくは少額にすることで、分配するはずだった分を投資信託に組み込んで運用する商品などが当てはまります。
投資信託を請け負っている信託会社との間で、配当金や売却益についてルールがあるはずです。
その取り決めにおいて、分配金を支払わないとしている場合は、分配金の支払いがありません。
分配金に関する取り決めは、投資信託の分配方針に明記されています。どのように分配金を受け取りたいのかを検討したうえで、適切な投資信託商品を選びましょう。
分配金の種類
運用によって得られた利益を投資信託購入者に支払った場合、受け取り額に応じた税金が課されます。そこで、投資信託会社から支払われる分配金の主な種類と、種類ごとにかかる税金について詳しく紹介します。
普通分配金
資産の運用や売却で得られた収益のうち、購入した投資信託の元本を上回る部分から支払われるものが、普通分配金です。配当としての支払いがあった場合、投資をして収益を得たと解釈されるため、全額課税対象です。
元本払戻金
購入した投資信託の元本以下の部分から支払われるのが元本払戻金で、特別分配金とも呼ばれます。元本を下回るということは、投資で利益を得られたわけではないため、税金はかかりません。また、元本払戻金が支払われたとき、受け取った額に応じて元本が減少します。
分配金の受け取り方法
投資信託で得た利益を受け取る方法として、主に2つの選択肢があります。1つ目があらかじめ定められた決算日に受け取る方法、2つ目が自動で投資を継続する方法です。
定められた日に受け取る
投資信託会社が定めた日に分配金を受け取る場合は、投資で得た収益から各種手数料や税金が引かれた金額を受け取ります。決算日とは、投資信託の決算をする日のことです。毎月、一年に数回、年に一回といったように、運用商品によって決算日が異なります。
自分がいつ分配金を受け取れるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
分配金を自動的に再投資する
分配金の受け取り方法のうちの一つとして、分配金を受け取らず、再投資に回す「自動継続投資」があります。
分配金として支払われた分だけ、運用可能な額が減ります。しかし、再度投資することで運用効率を高め、価値が下落した分をカバーできる可能性が高まるのです。
投資信託の分配金を受け取るメリットとデメリット
投資信託の分配金は、受け取る、もしくは分配金を再投資するかを選択できます。それぞれのメリット、デメリットを理解し、自身にとって最適な選択をしましょう。ここでは、投資信託の分配金を受け取るメリットとデメリットについて紹介します。
メリットは定期的な収入が期待できること
分配金を受け取ることで、定期的な収入が期待できます。分配金で得た収入を、生活費や欲しいものの購入に充てたり、他の金融商品に投資したりと、さまざまな用途に使えます。
デメリットは収益減少の可能性があること
分配金を受け取ることによって、運用による収益が減ることがあります。分配金の受け取りを選択すると、領収した額に応じて運用額が減少するかもしれません。運用額が減少することにより、得られる利益が下がる可能性があるからです。
運用で得た利益を再投資して運用額を増やした方が、長期的に多くの利益を得られる公算が大きいでしょう。
分配金を再投資するメリットとデメリット
分配金を、再度投資に回した場合のメリットとデメリットは何が挙げられるのでしょうか。以下から詳しくご紹介します。
メリットは投資による複利効果
手数料や手続きの負担が少なく、投資による複利効果が期待できるのが大きなメリットです。分配金を受け取ってから、再度同じ投資信託商品に投資可能ですが、再投資時に手数料の支払いや手続きをしなくてはいけません。自動的に再投資することで、事務的な負担と手数料の支払いがなくなります。
投資信託は、長期間運用することでより多くの収益が期待できる金融商品です。定期的な収入を期待するよりも、再投資を選択した方が、長期間で利益を増やせる可能性が高いのです。
デメリットは定期収入が得られないことと税金の負担
決算日に定期的な収益を得られないこと、再投資でも税金がかかることがデメリットです。
再投資を続ける限り、定期的な収益を得られません。しかも、利益として受け取らず投資に回した場合でも、一旦は利益を受け取ったとみなされてしまいます。そのため、税金も支払わなくてはいけないのです。
確定申告手続きの必要性
投資信託で得られた利益を、分配金として受け取る、再投資をした場合でも税金がかかりますが、確定申告の必要性は状況によって異なります。ここでは、確定申告が必要な場合と不要な場合について、詳しく紹介します。
確定申告をしなくてはいけないケース
以下のケースで、運用していた投資信託を売却した場合、確定申告が必要となる可能性が高いです。
- 特定口座(源泉徴収あり)以外の口座で投資信託を運用している
- 特定口座内で繰越控除や損益通算を行っている
- NISA口座で非課税枠以上の利益が出た
上記に該当する場合は、納税の義務が生じるため、確定申告が必要です。確定申告をしない、申告額が誤っていた場合、ペナルティが課せられます。適切な納税をするためにも、確定申告の必要性の判断が難しいときは、税理士に相談してみましょう。
関連記事:確定申告を税理士に頼む際の費用とは?相場と費用対効果を知ろう
確定申告が不要なケース
以下のケースに該当する場合は、原則、確定申告が不要です。
- 特定口座で投資信託を運用し、繰越控除や損益通算を行っていない
- NISA口座で投資を行い、非課税枠の範囲内で利益が収まってる
先ほど、確定申告が必要なケースで紹介したように、特定口座内で繰越控除や損益通算を行った場合は、確定申告が必要です。
投資信託の再投資で支払う税金を少なくするための対策
投資で得た利益から税金が引かれると、損をした気分になるでしょう。そこで、少しでも支払う税金を少なくし、投資信託でより多くの利益を得たいなら、NISAの活用を検討してみましょう。
NISAとは
個人の投資家に向けた税金の優遇制度です。2024年からスタートした新しいNISAは、これまで制限のあった非課税期間が無制限になるなど、より節税効果が高まっています。
NISAが節税に効果的と言われるのは、以下の3つの理由があるからです。
- 投資によって得られた利益が非課税(無期限)
- 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が併用できる
- 非課税保有限度額が1,800万円(一生涯)
また、つみたて投資枠と成長投資枠の違いは以下の通りです。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間で投資できる額(上限) | 120万円 | 240万円 |
非課税で保有できる限度額 | 1,800万円 | 1,200万円 |
対象となる商品 | 投資信託(長期の積み立てや分散投資に適したもの) | 上場株式、公募株式投資信託など |
つみたて投資枠と成長投資枠を最大限利用することで、年間で360万円(最大)の投資が可能です。
参考:金融庁 NISAを知る
節税しながら資産を増やせるNISA
投資信託をNISA口座で運用するメリットは、一般的な投資よりも節税しながら資産を増やせること、さらに自身に合ったやり方で投資ができることです。
NISA口座で投資を行った場合、非課税で保有できる投資枠は1,800万円です。しかし、さまざまな都合により、投資資産の一部を売却することもあるでしょう。
資産の売却によって非課税保有枠が空いた場合、翌年度からその空いた分を新たな投資枠として再利用できるのです。
自身のライフスタイルに合わせた運用を実現できるため、長期にわたる資産形成をサポートしてくれるはずです。
投資信託の再投資にNISAを活用
投資信託で得た収益を再投資する場合、NISA口座で再投資することで税負担を軽減できます。原則、投資信託で得た利益を再投資するとき、利益を受け取り、その利益を再投資に回したことになるため、税金の支払い義務が生じます。
しかし、非課税枠が大きいNISAにすることで、非課税枠内での分配金であれば、税金を支払うことなく再投資に回せます。
決算日ごとに配当金や売却益を得ずに、長期的な運用を目指すなら、新NISAの活用で資産を大きく増やせる可能性が高まります。
関連記事:修正申告とは?税務調査で修正申告が発生するのはどんな時なのか詳しく解説
投資信託の再投資をNISA口座で行う際の注意点
NISAは、非課税枠の範囲内であれば、再投資で本来かかる税金をなくし、利益の最大化に貢献してくれます。利益を増やすために、NISAの活用で注意しておきたい点を紹介します。
元本割れのリスクがあることを理解する
NISA口座を通じて購入できる金融商品は、元本割れの可能性があることを理解したうえで、投資信託を始めましょう。
NISAでは、さまざまな金融商品の中から自分に合ったものを選べますが、元本保証はありません。
NISAで投資信託をしているからといって必ず利益を得られるわけではなく、元本割れが起こり得るリスクも考慮し、資産を運用しましょう。
損益通算ができない
複数の口座で投資をしている場合に適用される損益通算が、NISAでは適用できません。NISA口座以外の特定口座や一般口座を複数所有している場合、複数の口座で発生した損益を通算できます。
NISA口座は、複数口座での損益通算ができませんが、損益通算ができないからといって、NISA口座を活用しない、運用資産を売却するのは得策とは限りません。節税効果などを考慮すると、損益通算よりも減税や収益の増加につながることがあるからです。
分配金の受け取りよりも再投資を選択すること
NISAで投資信託を運用するなら、配当金や売却益について、決算日の受け取りよりも、再投資を選択しましょう。
配当金や売却益を引き出した場合、その分だけ非課税で運用できる投資枠が減ります。定期的にお金が必要ではないのなら、再投資した方がより効率性の高い資産形成に結びつくからです。
投資信託の購入時期で課税の可否が決まる
新NISA制度の導入は、2024年の1月からのため、2023年の12月31日までの再投資は、課税対象となることに注意が必要です。
2024年1月1日以降に購入した投資信託の再投資は、非課税枠が残っていれば、課税なしで再投資できます。
投資信託の分配金の再投資には税金がかかる!NISAの活用で資産を増やそう
投資信託の分配金を再投資するときは、原則、税金がかかります。決算日ごとに受け取るという選択肢もありますが、再投資することで効率良く資産を増やせるかもしれません。投資信託を長期間運用して資産を形成したいなら、非課税枠の範囲内で分配金への課税がないNISA口座の活用が適しています。分配金の受け取りや再投資の際に発生した税金や確定申告に関して不安があるなら、税理士に相談してみましょう。