中小企業の社長にとって、税金対策は会社の経営を安定させ、将来の成長につなげるために欠かせない取り組みです。法人税や個人税など税金の負担は、資金繰りや投資に大きく影響するためです。無理のない形で税負担を減らすためには、正しい知識を身に付け、戦略的に対策を講じる必要があります。税金対策にお悩みの社長は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
なぜ中小企業で節税対策が必要なのか?
大企業と比べて中小企業は資金に余裕が少なく、税金の負担が経営に直結するケースが多くあります。特に利益率が低い業種では、少しの税負担でも経営を圧迫してしまう可能性があるのです。そのため、経営を安定させるうえで税金対策は重要だと言えるでしょう。
中小企業が支払う主な税金と特徴
中小企業が負担する主な税金には、次のようなものがあります。
- 法人税:企業の所得に対して課税される税金です。中小企業には軽減税率が適用されることもありますが、所得が大きい年にはその分税負担も増えます。
- 法人住民税:地域の行政サービスを支えるための税金で「均等割」と「法人税割」の2つから成り立っています。
- 法人事業税:法人の所得に基づいて課税され、地方自治体の財源となる地方税の一つです。
- 消費税:商品やサービスの提供に関する売上に課税される税金です。計算方法には「一般課税」と「簡易課税」があり、業種や年間売上高によって最適な方法を選ぶ必要があります。
関連記事:消費税対策として有効な節税方法は?インボイス制度との関連も解説
節税対策のリスク
税負担を抑えることは資金繰りの改善にもつながりますが、やり方を間違えるとリスクを伴う場合もあることを覚えておきましょう。
例えば、短期的な利益追求のために無理に経費を増やしたり、ルールを無視した節税対策を行ったりした場合、税務調査で否認される可能性もあります。
また、日本の税制は頻繁に改正されるため、古い情報のまま対策を続けていると、適切な判断が難しくなることもあるでしょう。
こうしたリスクを避けながら節税を実現するためには、税理士や会計士などの専門家からアドバイスを受けると良いでしょう。助言に基づき、自社の状況に合わせた節税対策を計画的に進めていくことが、健全な経営へつながるのです。
法人におすすめの節税対策4選
法人の節税対策は、会社の経営資源をムダなく使い、健全な資金繰りを維持するために欠かせません。ここでは、すぐに取り組める代表的な4つの節税方法をご紹介します。
適切な役員報酬を設定する
役員報酬は、会社の経費として計上できるため、適切な額の設定が重要です。ただし、報酬額は、業績や役員の仕事内容に見合った金額を設定をしなければなりません。
企業全体の資金繰りや経営目標とのバランスを考慮し、高すぎたり低すぎたりしないよう、慎重に検討しましょう。
一般的には、「定期同額給与」や「事前確定届出給与」などの形態で支給することで、税務上のリスクを回避できます。正しく制度を使えば、企業全体の税負担を減らしつつ、役員の報酬も適切に管理できるでしょう。
固定資産を見直す
会社が保有している固定資産の中に、現在利用していないものがある場合、それに対する固定資産税も発生してしまいます。定期的に資産の見直しを行い、不要なものは売却するなど、適切に対応することで無駄な税金をカットできます。
また、固定資産の状況を把握すると、不要なコストを削減するだけでなく、資産管理の効率化も進められることにもつながるのです。
中小企業退職金共済を活用する
中小企業退職金共済に加入すると、従業員の退職金の準備をしながら節税も実現できます。この制度は、退職金を計画的に積み立てる仕組みであり、掛金は全額損金として経費計上できるため、法人税の軽減につながるのです。
退職金の準備を計画的に進めることで従業員の安心感を高められ、定着率向上にもつなげられるでしょう。
関連記事:損金とは?損金算入・不算入の項目や法人税の計算に必要な損金処理について
社用車を活用する
社用車の導入は、節税にも有効です。購入費やリース料だけでなく、ガソリン代、整備費、保険料、駐車場代なども業務に使うものであれば経費として処理できます。
ただし、業務利用とプライベート利用をしっかりと区別することが求められる点に注意が必要です。業務利用としての正確な記録は、税務調査の際に必要な証明となるため、日々の管理と記録が欠かせません。
経営者個人向け!知っておきたい節税対策
企業だけでなく、経営者個人にも知っておきたい節税方法があります。これらを上手に取り入れることで、税負担を軽くするだけでなく、将来に備えた資産形成にもつながるでしょう。ここでは、経営者自身のライフプランにも役立つ節税ポイントをご紹介します。
小規模企業共済を活用する
小規模企業共済は、経営者が自身の退職金を積み立てるための制度です。掛金は月額1,000〜70,000円まで自由に設定でき、支払った掛金は全額所得控除の対象となるため、節税としても有効です。
さらに、将来的には積み立てたお金を「共済金」として受け取ることができ、老後資金として活用できます。個人事業主や中小企業の経営者が安心して取り組める、信頼性の高い制度と言えるでしょう。
参考:小規模企業共済とは | 共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
役員報酬と退職金のバランスを調整する
役員報酬は、法人の経費として計上できるため法人税負担の軽減につなげられます。しかし、役員報酬を多くもらえばその分収入は増えますが、所得税や社会保険料の負担が増加します。
報酬を低めに設定しておき、将来の退職時にまとまった金額を退職金として受け取ることで、税負担を分散することも可能です。長期的な視点を考慮しながら「もらい方」を工夫することで、賢い節税と資産形成が実現します。
自宅を社宅として活用する
一人社長や小規模な会社を運営している場合、自宅を社宅とすることで一部の費用を経費として計上できるようになります。会社が経営者の自宅を社宅として扱うには、いくつかの条件を満たす必要があります。
しかし、この仕組みをうまく活用すれば、経営者自身の住居費を抑えながら、会社としても経費削減ができるというメリットを得られるのです。
ただし、この方法は個人の所得税と法人税の双方に影響が及ぶため、慎重な運用が必要です。自宅の居住用スペースと社用スペースの利用区分を明確にし、契約書や賃料の支払い記録など、必要な書類を整えておきましょう。
関連記事:社宅を経費にするには?要件や節税方法、メリット・デメリットを解説
節税対策を進めるときの注意点
節税対策は企業運営にとって大切な取り組みですが、無計画に進めると逆効果になることもあります。計画を立てて行わないと、かえって資金が減ってしまうなど想定外のリスクを引き起こす可能性も。ここでは、節税対策を進める際に気をつけたいポイントを紹介します。
無駄な投資を避ける
税金対策の名のもとに、設備を急いで購入したり、新規事業を始めたりするケースは多く見られます。しかし、実際には不必要な支出である場合もあり、結果的に企業の資産を減少させる要因にもなりかねません。
例えば、使い道が曖昧な設備投資や、将来的に利益を生まないような新規事業への投資は、会社の資産を減らすだけになってしまいます。投資を行う際には、利益を上げる見込みがあるか、自社の現状に合ったものか、長期的にプラスになるかどうかを慎重に見極める必要があるでしょう。
税制変更に対応する
税制は毎年のように見直されるため、常に最新情報を把握するようにしましょう。以前は有効だった節税方法が、制度変更によって使えなくなったり、反対に新たな優遇制度が導入されたりすることもあります。
特に中小企業は、大企業のように税務担当者が社内にいないこともあるため、税制の変化に早く対応できるかどうかが経営に大きな影響を与えます。
そのため、定期的に税理士など専門家に相談しながら、自社に合った最新の節税策を取り入れると安心です。プロのサポートを受けることで、無駄なリスクを避けつつ、有利な制度をしっかり活用できるようになるでしょう。
まとめ
中小企業にとって、節税対策は資金繰りの改善や、将来の安定基盤を支える大切な手段です。役員報酬の最適化や固定資産の見直し、中小企業共済への加入、社用車の活用といった方法は、実行しやすく、効果も見込める方法です。
しかし、計画的に行わなければかえって損をしたり、リスクを引き起こしたりする可能性もあります。専門家のアドバイスを受けながら、戦略的に節税を進めていきましょう。