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特定口座の取引における損益通算の方法とは?確定申告をした方が得になるケースと注意点

公開日:

特定口座の取引における損益通算の方法とは?確定申告をした方が得になるケースと注意点

特定口座を利用した株式取引では、損益通算を活用することで税負担を軽減できます。損益通算とは利益から損失を差し引いて税額を抑える制度で、確定申告が必要です。申告義務がない場合でも還付を受けられるケースがあるため、制度の仕組みを理解しておくことが大切です。この記事では、特定口座における損益通算の仕組みや、確定申告のメリットや具体的な計算方法についてわかりやすく解説します。

特定口座と一般口座の基本的な仕組み

証券会社で株式などの取引を行う際、選べる口座は特定口座(源泉徴収あり・なし)と一般口座の3種類です。

種類

特徴

確定申告

おすすめの人

特定口座

(源泉徴収あり)

証券会社が税額の計算・納税を行う

原則不要

(損益通算などを

行う場合は必要)

税務処理を手間なく

済ませたい人

特定口座

(源泉徴収なし)

証券会社が取引報告書を作成、納税は自分で行う

必要

他の所得と損益通算

したい人、節税したい人

一般口座

すべて自分で

記録・計算・申告する

必要

税務に慣れていて、

柔軟に管理したい人

特定口座を選べば取引記録や税額の計算を証券会社が行ってくれるため、投資が初めての方にもおすすめです特に源泉徴収ありの特定口座は確定申告が不要なケースも多く、手間を最小限に抑えたい方に向いています。

参考:国税庁特定口座制度

関連記事:特定口座(源泉徴収なし)の利益が20万円以下でも必要な申告は?

損益通算とは

損益通算とは異なる投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる所得を減らす制度です。正しく活用すれば、納税額を抑えることができ、より効率的な資産運用が可能です。

ここでは、損益通算の仕組みやメリットについて解説します。

損益通算の基本的な仕組み

損益通算とは株式や投資信託などの取引で生じた利益と損失を合算し、課税所得を調整する制度です。

例えば、A株を売却して30万円の利益が出た一方で、B社の投資信託を売却して20万円の損失が出た場合、差し引き10万円が課税対象になります。

このように、複数の投資商品で生じた損失を調整し、納税額を軽減でき、賢く投資することが可能です。

特定口座での損益通算の仕組み

特定口座では取引内容が自動で記録され、年間取引報告書としてまとめられます。源泉徴収なしの特定口座では、確定申告を行うことで、他の投資で発生した損失との損益通算や、過去の損失を翌年以降に繰り越す繰越控除も可能です。

損益通算を活用すれば、前年に出た損失を最大3年間にわたり繰り越したり、将来の利益から控除したりすることもできますそのため、長期的な節税対策としても有効です。

損益通算を行うメリット

損益通算を行う最大のメリットは税負担の軽減です。損失をうまく相殺すれば、実際に手元に残る金額を増やせるでしょう。

また、損失が大きく1年で控除しきれない場合でも、最大3年間にわたって繰り越しが可能です。よって、翌年以降の利益と相殺することで節税効果を持続させることができます。

複数の証券口座を持つ投資家にとっては、異なる口座間での損益を通算することで、全体の収益状況をより正確に把握できることもメリットです

参考:国税庁上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

関連記事:株式売却の確定申告はいくらから?申告方法は?

確定申告が必要な場合

確定申告のイメージ

株式などの投資で得た利益は、口座の種類や他の所得の有無によって確定申告が必要です。

源泉徴収ありの特定口座を利用していても、申告が必要な場合もありますので注意しましょう。

ここでは、源泉徴収あり・なしに分けて確定申告が必要なケースを解説します。

源泉徴収あり特定口座で確定申告が必要になるケース

源泉徴収ありの特定口座では証券会社が税金を計算し、源泉徴収もしてくれるため、基本的には確定申告は不要です。

しかし、以下のようなケースでは申告が必要になる場合があります。

  • 株式などの損失を翌年以降に繰り越したい場合
  • 他の口座や所得と損益通算をしたい場合
  • 医療費控除やふるさと納税など、他の控除を受けたい場合
  • 所得の合計額が一定額を超えており、申告により税額が変わる可能性がある場合

源泉徴収ありでも、申告によって節税できるケースもあるため、自分の状況を考慮して判断しましょう。

源泉徴収なし特定口座で確定申告が必要になるケース

源泉徴収なしの特定口座では証券会社による税金の徴収は行われないため、原則として確定申告が必要です。

また、損失が出た場合は確定申告を行うことで、損失を翌年以降の利益と相殺できる繰越控除が適用され、将来の税負担を軽くすることも可能です。

給与所得がある場合も投資で得た利益と合算して確定申告し、より正確に納税できます。納税額が変動する可能性があるため、年末の取引状況を確認して早めの準備を進めましょう。

参考:国税庁 給与所得者で確定申告が必要な人

確定申告をした方が得になるケース

確定申告は必要な人だけが行うイメージがありますが、申告をすることで税金の還付や負担軽減につながるケースも少なくありません。

ここでは、確定申告を活用することで得られるメリットについて、ケース別に解説します。

損益通算による還付が見込めるケース

損益通算とは投資による利益と損失を相殺し、課税対象を軽減する仕組みです。

例えば、ある年に株の売却で利益が出ていたとしても、過去の損失と通算し、課税対象が減り、納付した税金の一部が還付される可能性があります

さらに、損益通算で控除しきれなかった損失は、最大3年間にわたって繰り越すことが可能です。

配当金還付を得られるケース

配当金は20.315%の源泉徴収税が自動で差し引かれますが、確定申告を行うと払いすぎた税金が戻ってくるケースがあります

例えば、配当金を含む所得が一定額以下のケースや、配当所得を総合課税として申告することで配当控除が適用され、税金が軽減または還付されるケースです。なお、収入が比較的少ない方や扶養控除などがある方は、還付される可能性が高まります。

他社口座や一般口座の取引があるケース

他の証券会社の特定口座や、一般口座で取引をしている場合、各口座の損益を合算するために確定申告が有効です。

例えば、A証券では利益が出ているが、B証券では損失が出ている場合、申告によって通算することで、全体の税負担を軽減できます。

また、一般口座はもともと確定申告が必要ですが、特定口座も含めて一括で申告することで、控除や還付を受けられる可能性があります。

関連記事:非上場株式の配当金、上場株式との違いは?確定申告が必要になる条件

確定申告の手続き方法

税務相談をするイメージ

確定申告をする際、特定口座を利用している場合は、証券会社から交付される年間取引報告書が必要です。年間取引報告書には、株式や投資信託の取引による利益・損失、配当金などの情報がまとめられています

確定申告をスムーズに進めるためには、必要な書類を事前に整理し、損益や配当金などの情報を正確に把握しておきましょう。ここでは、申告に必要な書類や計算の進め方について解説します。

確定申告に必要な書類

確定申告に必要な書類は以下の通りです。

  • 年間取引報告書
  • 配当金に関する支払調書
  • 取引残高報告書
  • 源泉徴収票(給与所得がある場合)
  • 損益通算・損失繰越控除に関する書類
  • その他、金融機関から発行される報告書類

なお、書類は事前にファイルやフォルダでまとめて保管しておくと、申告時のミスや提出漏れを防げるでしょう。

確定申告時の計算方法とポイント

確定申告では、年間取引報告書に基づき、売却益や損失を計算することから始まります。ここでは例を挙げて解説します。

【株式売買の例】

  • 株式の購入額:100万円
  • 売却額:150万円
  • 売却時の手数料:10,000円

この場合は
150万円(売却額)-100万円(取得費)-10,000円(手数料)=49万円(譲渡益)

別の銘柄で年間10万円の損失があった場合、損益通算によって
49万円-10万円=39万円(課税対象の譲渡所得)

よって、課税対象額は39万円です。

【配当金の申告例】

  • 年間配当金:10万円
  • 源泉徴収額:20,315円(20.315%)

どちらの課税方式を選ぶかによって税金の負担が変わります。

課税方式については、以下の点に注意しましょう。

課税方式

特徴

向いている人

総合課税

他の所得と合算して課税

配当控除が受けられる

所得が低めで配当控除の恩恵が

大きい人

申告分離課税

他の所得と分離して課税

税率は一定(20.315%)

所得が高く、合算すると税率が

上がる人

表の通り、申告分離課税の方が有利になるケースが多いため、あらかじめ仕組みを理解しておきましょう

確定申告のシーズンが近づくと、年間取引報告書の到着を待ったり、書類整理に追われたりする方も多く見られます。書類の不備はミスにつながる原因になるため、早めの準備をおすすめします。

確定申告についてのお困りごとやご相談は、ぜひ小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。

一般口座で確定申告が必要な場合

一般口座を利用している場合、確定申告が必要となる主なケースは、下記の通りです。

  • 複数の取引がある場合
  • 投資信託や株式の取引がある場合

一般口座を利用している場合は確定申告が必要となるため、早めに取引内容を整理し、適切な対応を心がけましょう

関連記事:還付申告のやり方は?書類や期間・対象者・確定申告との違いを解説!

知っておきたい具体的な計算例

会社設立のオンライン申請のメリットのイメージ

損益通算の仕組みは、具体的な計算例を見ることでイメージしやすくなります。ここでは、信用取引や配当金など、実際の投資シーンで起こりうるパターンを想定しながら、計算方法を解説します。

信用取引による損益通算の計算例

まずは信用取引での利益の計算例と、損益通算の流れを説明します。

【取引の条件】

  • 株式を信用買いにて、10万円で購入→翌日12万円で売却
  • 手数料:売買それぞれ500円
  • 金利:年率3%、保有期間1日
  • 別の取引で15,000円の損失あり

計算手順

  1. 売買益(表面上の利益)
    12万円(売却)-10万円(購入)=20,000円

  2. 手数料の合計
    購入時500円+売却時500円=1,000円

  3. 金利(1日分)
    10万円×3%÷365=約8.22円→切り上げて9円

  4. 実質の純利益
    20,000円-1,000円(手数料)-9円(金利)=18,991円

  5. 損益通算後の課税対象額
    18,991円(純利益)-15,000円(他取引の損失)=3,991円

実際の取引コストや他の損失を考慮することで課税対象額が把握でき、節税につながります

配当金による所得税・住民税の計算例

配当金を受け取った際には、所得税や住民税が源泉徴収されます。税金が差し引かれる流れを見てみましょう。

計算例(年間配当金30万円の場合)

  • 配当額:30万円
  • 所得税+復興特別所得税(15.315%):30万円×15.315%=45,945円
  • 住民税(5%):30万円×5%=15,000円
  • 差し引かれる税金合計:45,945円+15,000円=60,945円
  • 手取り金額:30万円−60,945円=23万9,055円

配当金は総合課税または申告分離課税のどちらかを選択できます。給与など他の所得と合算して申告する場合、所得額によっては税率が高くなることがあります。

この場合は総合課税を選び配当控除を利用することで、配当金にかかる税負担を軽減できることもあるでしょう。

また、同じ年に株式取引で損失が出ている場合は、その損失と配当金を相殺することで課税対象を減らせます。例えば、50万円の損失があり、配当金が30万円だった場合は課税対象はゼロとなり、税金がかからないケースもあります。

確定申告をうまく活用すれば、節税につながる可能性が高いでしょう。自分に合った方法を選ぶためにも、制度の基本をしっかり押さえることをおすすめします。

関連記事:NISAは利益20万円を超えると確定申告が必要?

特定口座の損益通算のまとめ

特定口座を利用した損益通算は税負担を抑えるための有効な手段です。なお、証券会社が発行する年間取引報告書を活用すれば、株式や投資信託の損益を把握しやすく、確定申告や税務処理の手間も軽減されます。

損益通算の主なメリットは以下の通りです。

  • 損益を相殺することで課税対象を抑えられる
  • 源泉徴収の有無によって申告の手間や還付の有無が変わる
  • 損失の繰越控除により、翌年以降も節税できる可能性がある

こうした仕組みを正しく理解し、状況に応じて適切に活用し、資産運用の効率化が図れます

損益通算についてのお困りごとやご相談は、ぜひ小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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