企業の多くが所有する法人口座ですが、債務整理や税金の滞納などにより凍結されると、資金の引き出し・支払いが行えなくなります。この記事では、法人口座が凍結される理由と考えられる影響、凍結時の解除方法について解説します。経営者の方は、凍結される理由について理解を深め、これまでの使い方を見直す機会にしましょう。
目次
法人口座が凍結される4つの理由
法人口座が凍結される理由は以下4つが考えられます。
- 債務整理
- 税金等の滞納
- 約束手形の不渡り
- 犯罪等の疑い
順に解説します。
➀債務整理
法人口座は債務整理によって凍結することがあります。債務整理とは、財務問題を解決するための手続きのことです。
例えば、企業が負債を減らす目的で債務整理をした場合です。このようなときは、弁護士等が金融機関に送る受任通知が原因となり、口座利用が一時的に制限される恐れがあります。
なお、債務整理には下表のように4種類あり、いずれも受任通知を受領した金融機関はリスクを懸念し、口座を凍結するとしています。
債務整理の種類 | 概要 |
任意整理 |
|
破産手続き |
|
個人再生手続き |
|
特定調停 |
|
任意整理や破産手続きは、一般的に金銭的な悩みを解決するための最後の手段と考えられています。しかし、金融機関側からみるとネガティブな問題にあたるため、実施する際は会計士などのアドバイスを参考にすると良いでしょう。
➁税金等の滞納
税金や社会保険料などの滞納が続くと、税務署や地方公共団体が金融機関に口座の差し押さえを命じ、該当する法人口座を凍結します。
また、企業代表者をやその家族が連帯保証人の場合、連帯保証人である個人が公租公課を滞納しても凍結する恐れがあります。
企業経営とは別のリスクではありますが、資金の引き出し等ができなくなる恐れもあるため、税金等の滞納には注意が必要です。
③約束手形の不渡り
法人が半年のうちに2回不渡りを出した場合、金融機関から取引停止処分を下される可能性があります。不渡りとは、約束手形を発行した者が約束通り支払えない状態のことです。
企業が取引停止処分を受けた場合は2年間、当座預金の取引や貸出取引が行えないほか、銀行からの融資・手形発行もできません。
④犯罪等の疑い
法人口座が犯罪に利用されていると疑われた場合、金融機関は速やかに口座を凍結します。振り込め詐欺などが疑われる場合、警察や金融庁からの通報を受けて凍結措置が取られる可能性もあるため、口座の取り扱いには注意が必要です。
また、法人口座の情報が流出した場合は不正利用のリスクもあります。企業経営者の方は、法人口座のセキュリティ対策を講じることが大切です。
関連記事:個人事業主の屋号付き口座を開設するならどの銀行?必要書類とよく分かる手順
法人口座が凍結|考えられる2つの影響
法人口座が凍結されると、企業運営にさまざまな影響が生じる可能性があります。ここからは法人口座が凍結された場合に考えられる影響を2つ解説するので、今後の参考にしてください。
①取引の停止
法人口座が凍結された場合、企業に関する取引の受付・資金の引き出し等が不可能になります。凍結すると従業員や取引先への給与・支払い等ができなくなるため、企業の経営が麻痺するでしょう。
さらに資源の流れが滞ることで企業としての信用度も低下し、将来的な商機を逃す可能性も高まります。
凍結した時間が長引くほど経営に与える影響も増えるため、企業にとっては長期的な損失となる恐れもあるでしょう。
②他口座の凍結
法人口座が凍結されることによって同じ金融機関にある他の口座も凍結する恐れがあります。例えば、凍結の原因が犯罪に関するものだった場合、別の口座も凍結するなどです。
犯罪を疑われたことで凍結した場合、リスク管理の観点から、金融機関が該当する口座情報を複数の金融機関に共有することもあります。
法人口座の凍結は企業全体の経済状況を大きく揺るがす原因になり得るため、口座の運用方法には細心の注意が必要です。
関連記事:多様な提携先をご紹介
法人口座が凍結される前にできる対応
法人口座が凍結する可能性がある場合には、適切な対応をすみやかに行うことが大切です。ここでは、凍結される前に行うべき対応について解説します。
残金の引き出し
凍結の可能性がある場合は、法人口座の預金を早めに引き出しておきましょう。資金を引き出し別の金融機関に預けることで、事業資金に困るリスクを軽減できます。
ただし、高額な預金を一度に引き出すと「財産隠し」と誤解されるケースもあるでしょう。預金が高額である場合は、引き出す前に税理士等に相談することをおすすめします。
引き落とし口座の変更
公租公課や水道光熱費などの定期引き落としとして法人口座を利用している場合は、別の口座に変更しましょう。
口座が凍結されると、定期引き落としをはじめ取引先への支払いもできなくなります。凍結に気付くのが遅くなるほど滞納のリスクが高まるため、企業の信用度を落としかねません。
引き落とし口座を別の口座に移行することで、企業経営に与える影響を最小限に抑えられるでしょう。
売掛金の給付先の変更
売掛金の給付先を凍結リスクの低い口座に変更することで、入金の滞りを防ぐことができます。
なお、この方法を選択する際は、取引先への請求書に振込先の口座情報を更新する点に注意しましょう。
関連記事:税務調査が来るのはいくらから?開業3年以上1,000万円以上の人は気をつけて!
法人口座が凍結された場合の解除方法
ここでは法人口座が凍結されたときの解除方法について解説します。万が一の時でも冷静に対応できるよう各項目を押さえておきましょう。
税金滞納や不渡りでの凍結の場合
税金や公租公課の滞納や不渡りによって口座が凍結された場合は、すみやかに支払うべき金額を納めるよう心がけましょう。納付書がすでに手元に到着しているのであれば指定された期日までに支払うことで口座の解除が可能になります。
この場合、自治体や税務署などに連絡し、状況を説明する姿勢も大切です。相談内容によっては分割払いの合意が得られる可能性もあります。凍結を早期解除させるためにも、各所に状況を相談するよう努めましょう。
債務整理による凍結の場合
債務整理によって法人口座が凍結されたときは、会計士などへの相談が有効です。会計士をはじめ弁護士や司法書士に相談し、受任通知を金融機関に送付することで解除される可能性があります。
犯罪利用の疑いによる凍結の場合
法人口座が犯罪に利用された疑いがあるときは、まず警察や金融庁に相談してください。犯罪等に利用されている場合、法的な対応が求められるため、弁護士等のサポートを受けることをおすすめします。
さらに、口座に関する書類や取引履歴を整理し、不正利用の証拠を示す準備も進めましょう。必要であれば金融機関と話し合い、口座の凍結解除に向けて動くことも大切です。
関連記事:マイクロ法人とは?マイクロ法人設立のメリットやデメリット、設立の流れを徹底解説
法人口座の使用方法を見直そう
法人口座の凍結原因には犯罪行為の疑いなどもあります。悪用の可能性を踏まえ、この機会に通帳を記帳し内容を確認すると良いかもしれません。
なお、債務整理や税金等の滞納も凍結のリスクがあります。債務整理や税金の滞納をしている方は、この機会にぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。