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病院経営の財務分析で使う指標と経営改善のためのポイントを解説

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病院経営の財務分析で使う指標と経営改善のためのポイントを解説

新型コロナウィルスの流行による影響もあり、病院経営を取り巻く環境は常に変化し続けています。ポストコロナ以降は特に、健全な病院経営の維持は重要な課題となりました。そこで重要となるのが財務分析です。本記事では病院経営で用いる財務分析と主要指標、それらを基にした具体的な経営改善のポイントを解説します。収益の最大化やコストの最適化を目指す病院経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

新型コロナウィルスによる病院経営への影響

病院の外観

新型コロナウイルス感染症は、病院経営に深刻な打撃を与える結果となりました。日本病院会等の調査によれば、緊急事態宣言が発令された4~5月には前年比で医業利益が大幅に減少しました。

宣言解除後は延期されていた手術や健診サービスが再開されたことなどから、全体的には改善傾向が見られます。しかし依然として厳しい経営状況にある病院も多く、今後の動向が懸念されます。

今回の新型コロナウイルス感染症の流行のように、急激な環境の変化によって財務状況が悪化する場合も考えられます。持続可能な経営を維持するためには、一刻も早く具体的な対策を検討し、経営の安定化を図る必要があるでしょう。

参考:新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)|一般社団法人日本病院会 公益社団法人 全日本病院協会 一般社団法人 日本医療法人協会

今だからこそ必要な病院経営の財務分析

新型コロナウイルス感染症の流行は、病院経営に未曾有の危機をもたらしました。患者数の減少、手術や健診サービスの延期、感染対策費用の増加など、多くの病院が厳しい財務状況に直面しています。

このような状況下では財務分析を通じて現状を正確に把握し、未来を見据えた戦略を立てることが最優先課題です。

財務分析とは企業の財務諸表を分析し、企業の経営状況や財務状態を評価する手法です。正しく分析できれば将来予測や戦略立案に役立ち、持続可能な病院経営を支える指標となるでしょう。

病院事業の産業特性

病院事業における産業の特性を以下にまとめました。

  • 高齢化社会を背景に医療ニーズが急増する将来性のある産業
  • さまざまな職種が働く労働集約型産業
  • 国の医療政策に左右される、価格変動リスクのある事業構造
  • 高度な医療設備や設備投資が必要な分野

この中でも特に注目すべき特性は、病院事業が「労働集約型産業」である点です。病院経営において人件費率は5割から7割を占め、多くの専門職種が配置されています。

人材は医療サービスの質と収入に大きく関わり、診療報酬も医師や看護師の配置によって大きく左右される要素です。

財務面でも人に対する費用が最も多く、いかに従業員のパフォーマンスを向上させるかが重要な経営課題と言えるでしょう。

関連記事:医療法人化とは?クリニックが法人化するメリット・デメリットや定義について解説

病院経営における財務分析で重要な指標

ここからは、病院の経営状況を分析するのに欠かせない重要な指標について3つの分野をもとに解説します。

機能性

病院の「機能性」とは、保有する病床や人材といった経営資源を最大限に活用できているかを示す分析方法です。

例えば、1床あたりの平均入院患者数から病床稼働率を把握し、数値が低い場合は病床利用の改善を図る必要があります。機能性を分析する際に用いる指標は以下の通りです。

  • 平均在院日数
  • 外来/入院比
  • 一床当たり1日平均入院患者数
  • 一床当たり1日平均外来患者数
  • 患者1人1日当たり入院収益
  • 外来患者1人1日当たり外来収益
  • 医師1人当たり入院患者数
  • 医師1人当たり外来患者数
  • 看護師1人当たり入院患者数
  • 看護師・職員1人当たり外来患者数

収益性

病院経営における収益性分析とは、病院がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを評価する分析方法です。病院の財務健全性を測り、収益の安定性を高めるための戦略を立てるために用いられます。収益性を分析する際に用いる指標は以下の通りです。

  • 医業利益率
  • 総資本医業利益率
  • 経常利益率
  • 償却前医業利益率
  • 病床利用率
  • 固定比率
  • 材料費率
  • 医薬品比率
  • 人件費率
  • 委託費率
  • 設備関係比率
  • 減価償却費率
  • 経費率
  • 金利負担率
  • 総資本回転率
  • 固定資産回転率
  • 常勤(非常勤)医師人件費率
  • 常勤(非常勤)看護師人件費率
  • 常勤(非常勤)その他職員人件費率

安全性

安全性とは病院が財務的に安定しており、長期的に事業を継続できるかどうかを評価する分析方法です。病院の財務リスクを把握し、経営の安定性を確保するために用いられます。安全性を分析したい場合は以下の指標を使用します。

  • 自己資本比率
  • 固定長期適合率
  • 借入金比率
  • 償還期間
  • 流動比率
  • 一床当たり固定資産額
  • 償却金利前経常利益

病院経営を改善するためのポイント

お金とグラフ

以下では、病院経営を改善するために見直すべき5つのポイントについて解説します。

経営状況を正しく把握する

病院の経営改善のために、まずは経営状況を正確に把握しましょう。特に経営改善を必要とする病院では、経営実態の認識不足が課題となるケースが少なくありません。

病院の理事長は医師であることが多く、医療の専門家であっても経営のプロとは限りません。そのため、客観的なデータに基づいた定量的な評価が重要なポイントとなります。

経営状況を正しく把握するためには、以下のような取り組みが重要な鍵となります。

  • 財務諸表やの詳細な分析(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)
  • 部門別収支の把握と分析
  • 患者数、病床稼働率、平均在院日数などの医療統計データの分析
  • 職員満足度調査や患者満足度調査の実施
  • 外部の専門家による経営診断の活用

これらの取り組みにより病院の強みと弱みを明確にして、改善の方向性を定めましょう。

戦略を見直す

持続可能な病院経営には短期的な視点だけでなく、中長期的な展望に基づいた戦略を立てることも有効な方法のひとつ。戦略策定のポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 地域の医療ニーズや競合状況の分析
  • 病院の理念やビジョンに基づく目標設定
  • 診療科の再編や新規医療サービスの導入
  • 地域連携の強化や医療ネットワークの構築
  • 医療技術の進歩や政策の変化への対応

経営戦略は病院の経営状況を向上させるだけでなく、職員のモチベーションを高める役割も果たします。

職員の生産性を向上させる

病院は労働集約型産業のため、職員の生産性が経営を大きく左右します。特に医師、看護師、薬剤師などの専門職のパフォーマンスは、医療サービスの質と患者満足度に直結する重要なポイントです。職員の生産性向上のためにできる取り組みの一例をご紹介します。

  • 業務効率化のためのITシステムの導入
  • チーム医療の推進や多職種連携の強化
  • 職員のスキルアップのための研修制度の充実
  • ワークライフバランスの推進や働きやすい職場環境の整備
  • 職員の貢献を評価し、モチベーションを高める人事制度の導入

職員の満足度向上のための取り組みを積極的に行うことで結果的に医療サービスの質や患者満足度の向上にもつながります。

コストを適正化させる

病院経営においてはただコストを削減するだけではなく、コストマネジメントの視点から見た経営戦略も必要です。

無駄なコストの削減はもちろん、経営資源を有効活用することで病院の財務体質を強化します。以下では、コストマネジメントのポイントについてご紹介します。

  • 医薬品や医療材料の共同購入によるコスト削減
  • エネルギー消費量の削減や省エネ設備の導入
  • 業務プロセスの見直しによる効率化
  • コスト意識を高めるための職員研修の実施
  • ITシステム導入による業務効率化による人件費の削減

組織の運営形態を見直す

経営改善の実現には、強力なリーダーシップと組織全体の変革が必要です。トップだけでなく管理職や職員一人ひとりがリーダーシップを発揮し、変革を推進できる組織文化を作り上げましょう。

組織変革のためにはまず経営ビジョンや目標を共有してオープンなコミュニケーションの場を設けましょう。このような施策によって職員の意見や提案を積極的に取り入れる仕組みづくりが可能となります。

さらにITシステムの導入や、多職種連携を円滑にするための情報共有システムの導入も効果的です。最新システムを活用することで病院全体のパフォーマンス向上にもつながります。

専門性の高い診療に対応する

病院の収益向上には、専門性の高い医療サービス提供が有効です。血液透析や治験などの対応医療機関が限られる分野を強化することで、広範囲からの患者流入を目指せるでしょう。

例えば最新の透析機器の導入や透析室の拡充や治験コーディネーターおよび治験専門チームの設置といった施策が有効です。また透析や治験情報の積極的な発信や患者への説明会の開催なども病院の認知度を高めるきっかけとなるでしょう。

専門性の高い医療サービスの提供は地域医療への貢献にもつながり、持続可能な経営を実現するための有力な手段となります。

関連記事:医療法人の社団と財団とは?選び方や組織の違いなどについて解説

病院における財務分析を行う際のポイント

開業医のイメージ

病院における経営分析は病院の現状を把握し、将来に向けた戦略を立てる上で欠かせません。ここでは、病院経営分析を成功させるための重要なポイントを2つ紹介します。

国や都道府県の医療政策を常に把握する

医療政策は病院経営に大きな影響を与えます。そのため診療報酬の改定、医療制度の変更、地域医療構想の策定といった国や都道府県の政策動向を常に把握しておきましょう。

情報収集のポイントとしては、まず厚生労働省や都道府県のウェブサイトを定期的に確認することをおすすめします。医療関連のニュースや専門誌を購読したり医療経営に関するセミナーや研修会に参加したりするのもひとつの手段です。

政策動向を把握しておけば将来の経営環境を予測し、適切な経営戦略を立てられるでしょう。

院内の経営分析の体制を強化する

病院経営分析を効果的に行うためには、専門的な知識やスキルを持つ人材が必要です。そのためには組織内に経営分析を専門とする部署やチームを設置し、継続的にデータ収集や分析ができる体制を構築しましょう。

例えば経営分析担当者の採用・育成や、分析結果を経営改善につなげるためのPDCAサイクルを確立する方法などが挙げられます。また院内で体制を整備するのが難しい場合は、外部のコンサルタントや税理士などの専門家と連携するのもおすすめです。

関連記事:開業医におすすめの節税対策9選!経費計上のポイントや税務調査に入られやすいケースもご紹介

まとめ

財務分析は病院経営における価格設定や投資判断、コスト削減など、重要な経営判断を行うための重要な指標です。正しく分析ができれば、リスクを軽減しながら収益性の向上を目指せるでしょう。

病院の財務分析は財務諸表の分析や経営指標の算出など、専門的な手法を用いて財務分析を

行うため煩雑なことが多いです。そのため、もし経営指標の読み方や財務分析に不安がある場合はプロの税理士に相談することをおすすめします。

病院経営における財務分析についてお悩みがある方は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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