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公益法人の財務分析で重要な財務三基準とは?法改正後の変更点も解説

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公益法人の財務分析で重要な財務三基準とは?法改正後の変更点も解説

公益法人の会計や一般企業とは異なる会計基準や税務ルールが適用されるため、財務分析が複雑です。また財務会計において、財務三基準と呼ばれる公益認定基準を理解する必要があります。そこで今回は、公益法人の財務分析で知っておくべき財務三基準と法改正後の変更点について解説します。また、財務分析で用いる財務諸表や指標も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

公益法人会計とは

価格計算

公益法人会計とは国民、行政機関、経営者などに向けて公益法人の活動に関する情報をまとめ、伝える会計です。

公益法人の財政状況と活動状況を明確に示すことで、透明性の高い財務情報を提供することで、公益法人の説明責任を果たします。また公益法人会計は公益法人の活動の成果を測るものであり、財務分析の際にも有益な情報となります。

対象

この公益法人会計は、以下の対象者に向けた内容となっています。

  • 国民
  • 主務官庁など行政機関
  • 経営者
  • 債権者
  • 取引先
  • 課税当局

公益法人は税制上の優遇を受けており、その活動は国民全体の利益に繋がるものであるため、利害関係者が全国民となります。そのため財務情報の透明性を高め、国民への説明責任を果たす必要があるのです。

つまり、公益法人会計は公益法人が国民全体の信頼を得て、その活動を円滑に進めるために、より広範な情報開示を求めるものと言えます。

目的

企業会計と異なり、損益計算ではなく資産・負債・正味財産の増減を明らかにすることです。

これは、公益法人が利益追求を目的としないことが理由として挙げられます。利益を出すことよりも、財産の増減を把握することが重要で、財務管理はむしろ営利法人よりも厳格に行われます。

以上のことから公益法人会計は公益法人の特性に合わせ、財務状況を正確に把握し、透明性を確保することが重要なのです。

会計区分

公益財団・公益社団は以下の3つの会計区分の記載が必要です。

  • 公益事業会計
  • 収益事業会計
  • 法人会計

これらの会計区分は認定委員会への提出資料に必須となります。

公益法人の財務分析で用いられる財務諸表

公益法人の財務分析で用いられる主な財務諸表を以下にまとめました。

財務諸表の種類

概要

目的

貸借対照表

会計期間末日における資産、負債、正味財産の状況を示す

財政状態の把握

正味財産増減計算書

会計期間における正味財産の増減額を示す

経営成績の把握

キャッシュ・フロー計算書

会計期間における現金の増減額を示す

現金収支の状況把握

財務諸表の注記

財務諸表に記載された事項の説明や補足情報を示す

財務諸表の理解を助ける

附属明細書

財務諸表の各項目の詳細な内訳を示す

財務諸表の透明性を高める

財産目録

会計期間末日における財産の詳細な内容を示す

財産の状況把握

公益法人の財務諸表を理解することで組織の健全性や透明性を高められ、社会的な信頼を得やすくなるでしょう。

関連記事:【保存版】決算報告書の種類と書き方

公益法人の財務分析で用いられる財務分析指標

家事按分の割合のイメージ

ここからは、公益法人の財務分析で用いられる主な財務分析の指標について解説します。

指標名

概要

正味財産比率

総資産に占める正味財産の割合

経常比率

経常費用に対する経常収益の割合

総資産当期経常増減率

当期の経常増減額の総資産に対する割合

県財政関与率

経常収益に占める県からの財政関与の割合

補助金収入率

経常収益に占める補助金収入の割合

受託等収入率

経常収益に占める受託等収入の割合

管理費比率

経常費用に占める管理費の割合

人件費比率

経常費用に占める人件費の割合

流動比率

流動負債に対する流動資産の割合

借入金比率

総資産に占める借入金の割合

これらの指標を使うことで公益法人の財務状況を把握し、財務情報の透明性とわかりやすさ

が向上します。

参考:財務分析指標(一般社団、公益社団・財団法人用)|青森県庁ホームページ

関連記事:流動比率は高い方がいい?目安や高すぎる場合の注意点

「財務三基準」の概要

ここからは公益認定基準のひとつである財務三基準を構成する3つの要素について解説します。

収支相償

公益目的事業における収入が、その事業に必要な適正な費用を超えないようにすることを求める基準です。

この収支相償によって過度に利益を出さずに公益性を維持できるようになります。収入が費用を上回った場合、その剰余金を中期的な公益目的事業の実施計画に沿って使用する必要があります。それか、公益充実資金として積み立てる計画を立てなくてはいけません。

公益目的事業比率

法人の全事業のうち、公益目的事業が占める割合を示す基準です。公益法人はメインとなる活動が公益目的事業であるべきという考え方に基づき、一定割合以上の公益目的事業を行うことが求められます。

また、公益認定基準では、この比率が50%以上であることが求められます。

遊休財産額保有制度

公益法人が保有できる事業に使われていない「遊休財産」の額に制限を設ける基準です。これは公益法人が財産を適切に活用し、公益目的のために使うことを促すための制度です。

また遊休財産額は、原則として年間における公益目的事業の経常費用を超えない範囲に抑える必要があります。

公益法人会計の見直し

令和5年6月2日に発表された最終報告を踏まえ公益認定法の改正法が国会で成立し、新制度の施行が令和7年4月から始まります。改正の目的は公益法人が資金を最大限効果的に活用できるよう、財務規律を柔軟化・明確化させることです。

また活動状況や財政状態を明らかにするために、貸借対照表の会計区分別情報の開示が原則となりました。財務諸表における情報開示が充実することに伴い、定期提出書類が簡素化されます。

この改正に伴い、新制度に対応した新たな会計基準を策定・周知し小規模法人の負担について適切な配慮を行うことが求められます。

これらの改正で公益法人の財務情報の透明性とわかりやすさが向上し、説明責任が果たされることが期待されているのです。

参考:令和5年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について|内閣府公益認定等委員会

2025年4月から何が変わる?財務三基準の変更点

法改正

以下では、2025年4月からの財務三基準における変更点について解説します。

収支相償から「中期的収支均衡」への変更

これまでの「収支相償」では、各事業年度における収支の均衡が求められていました。しかし2025年4月からは「中期的収支均衡」という考え方が導入されます。これにより単年度での収支だけでなく、5年間の中期的な視点での収支バランスが重視されるようになります。

この変更により過去の赤字を翌年度以降に通算できるようになりました。例えばもしある年度に赤字になっても、次年度以降の黒字に充当できるようになったのです。

「公益充実資金」の新設

「公益充実資金」とは、公益法人が公益目的事業の質を高めるために積み立てる資金のことです。

この制度により、公益法人は長期的な視野で計画的に資金を活用できるようになりました。この変更で公益法人は将来を見据えた資金計画を立てやすくなり、より効果的な公益目的事業の実施に繋げることが期待されます。

休財産から「使途不特定財産」へ

これまでの「遊休財産」は「使途不特定財産」という名称に変わり、それに伴い、財産額の算定方法も見直されました。

特に、緊急時に備えた財産については、保有制限の対象から除外されることになったのです。また計画的な資産管理と財務情報の透明性も高められ、社会からの信頼性向上にもつながるでしょう。

公益法人会計で知っておきたい税制優遇

公益法人として認定されると会計基準が適応され、以下のような税制優遇を受けられます。

公益法人への優遇

  • 公益目的事業の法人税が非課税
  • 一定の利子等に係る源泉所得税が非課税

寄付をした個人への優遇

  • 所得税・個人住民税の寄附金控除または寄付金税額控除により、税負担が軽減
  • 寄附した財産の相続税を非課税対象

寄付をした法人への優遇

  • 寄附した金額のうち一定額を損金(経費)として計上

つまり公益法人として認定されると法人自体だけでなく、寄付をする個人や法人も税制上の優遇を受けられます。

関連記事:【税理士監修】寄付金控除の上限はいくらまで?ふるさと納税を含めて説明

公益法人の財務分析に関するよくある質問

最後に公益法人の財務分析に関するよくある質問をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

公益法人会計と企業会計の違いは?

公益法人会計と企業会計の違いを以下の表にまとめました。

公益法人会計

企業会計

対象

国民

主務官庁など行政機関

経営者

債権者

取引先

課税当局

経営者
出資者
債権者
取引先

課税当局

目的

正味財産と正味財産の増減を公に対して明らかにするため

資産・負債・純資産・損益を明らかにするため

内容

貸借対照表と正味財産増減計算書をはじめとする財務諸表の作成

貸借対照表と損益計算書をはじめとする財務諸表の作成

売上高は課税対象になる?

公益社団法人・公益財団法人の場合、収益事業には課税されます。ただし、公益目的事業など特定の事業は、収益事業に該当する場合でも非課税となります。

一方で、一般社団法人・一般財団法人のうち、非営利型法人に該当する場合は、収益事業に対して課税されます。

関連記事:非課税とは?非課税となる取引の種類や注意点を詳しく解説

まとめ

令和5年6月2日に発表された最終報告を踏まえ公益認定法の改正法が国会で成立し、新制度の施行が令和7年4月から開始します。そしてこの改正によって公益法人制度における公益認定基準のひとつである財務三基準にも変更点が加えられました。

公益法人の会計や一般企業とは異なる会計基準や税務ルールが適用されるため、財務分析が複雑です。そのため、公益法人の財務分析をする場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

公益法人で財務分析についてお悩みがある方は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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