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会社設立の基礎知識

事業継承に活用したい!事業承継・引継ぎ補助金の全容について徹底解説

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高齢化が進む日本において、中小企業の多くが抱えている後継者問題。従来の日本では主流となっていた親族内承継も、少子化や価値観の変化によって減少しています。事業承継問題が深刻化している中、中小企業の円滑な事業承継やM&Aを推進するために成立したのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。この記事では、事業承継・引継ぎ補助金の全容について、前年度予算からの変更点なども含めて詳しく解説していきます。

事業を継承する先が見つからない!日本の事業承継問題

日本全体の企業数のうち、99%もの割合を占めている中小企業。そんな日本経済を支える存在が、経営者の高齢化によって様々な事業承継問題に直面しています。たとえ黒字企業であったとしても、現経営者の引退時に誰かが後継者とならない限り、会社は廃業せざるを得ません。経営者の平均年齢が毎年上昇している日本において、後継者教育に5~10年程度の期間を要することも踏まえると、事業承継問題は多くの中小企業が取り組むべき喫緊の課題といえるでしょう。

また、「2025年問題」というワードをご存知でしょうか。2025年問題とは、約800万人いる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本が超高齢化社会に突入することで起こる様々な問題のことを指します。国民の4人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会では、社会保障費が増大するなどの様々な問題が発生すると予想されています。そして、中小企業の事業承継問題にも大きな影響を及ぼすとされているのです。

2025年には、経営者が70歳以上となる企業が約245万社にまで増加するといわれています。その中で、約127万社もの企業が事業承継問題によって廃業・倒産の危機に瀕するという予測が発表されました。もし、このまま127万社が廃業・倒産する事態となった場合、約650万人の雇用が失われることに加え、約22兆円ものGDPが消失するといわれているのです。

このように、深刻な経済的損失を被る危険性がある2025年問題に対して、日本政府は様々な対策を展開しています。例えば、贈与税や相続税において優遇措置を設けた事業承継税制や、後継者が見つからない中小企業の第三者承継を支援する政策などが挙げられます。事業承継が思うように進まないという中小企業は、こういった支援策の活用も検討する必要があるといえるでしょう。            

事業承継・引継ぎ補助金とは

そもそも事業承継・引継ぎ補助金とは何か?

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継・事業再編・事業統合を契機として、新たな取り組みを行う中小企業等を支援するための制度です。経営革新にかかる経費や、経営資源の引継ぎにかかる経費を補助することによって、事業承継の促進を図ることを目的として制定され、1年で約550社の中小企業等をサポートすることを目標としています。また、親族内承継のみならず、M&Aによる事業承継を行った場合でも、後継者による事業の存続・発展を目的とした取り組みを支援しています。

補助対象事業となるのは、新商品やサービスの開発・商品の新たな生産方法や販路の開拓・事業転換による新分野への進出などが対象となり、これらの取り組みに必要な経費について補助を受けることが可能です。

さらに、事業承継・引継ぎ補助金は後述する3つの類型に分類されており、中小企業が抱える様々な事業承継問題を支援できる設計となっています。これから益々深刻化していく事業承継問題への対策として、積極的に活用を検討していきたい補助金制度です。

経営革新事業

経営革新事業とは、事業承継やM&Aなどを契機として、経営革新に挑戦する中小企業等を支援する制度です。顧客の新規開拓・新商品やサービスの開発・新規事業の立ち上げなどに取り組む事業の後継者を想定した補助金となっています。さらに、経営革新事業は事業承継の内容によって3つの類型に細分化されています。

創業支援型(Ⅰ型)

まず、創業して間もない中小企業等を対象とした「創業支援型(Ⅰ型)」があります。引き継いだ経営資源を活用し、経営革新に取り組む中小企業等を支援する類型です。ただし、廃業に伴って店舗等のみを承継する場合や、個別の経営資源のみを承継するケースは対象外とされています。

経営者交代型(Ⅱ型)

次に設けられているのが「経営者交代型(Ⅱ型)」です。こちらの類型では経営革新事業への取り組みに加え、新事業展開等要件と生産性向上要件を満たしている必要があります。さらに、事業承継者が個人事業主の場合、事業承継の形態が「事業譲渡」に限られる点も要注意です。

M&A型(Ⅲ型)

最後に、事業再編・事業統合などを行う中小企業等を対象とした「M&A型(Ⅲ型)」があります。人件費・設備投資費用・店舗や事務所の改築工事費用などが対象経費に含まれており、M&Aを契機とした事業拡大を行う中小企業等にとって有益な内容となっています。

これら3つの類型すべてにおいて、補助額100万円~500万円、補助率1/2以内の範囲で支援を受けることが可能です。なお、廃業を伴う場合には、廃業経費について最大150万円まで上乗せされるケースもあります。

専門家活用事業

専門家活用事業とは、M&Aによる事業承継に取り組んでいる、またはこれから着手しようと検討している中小企業等を想定した支援制度です。また、専門家活用事業はふたつの類型に分類されています。

買い手支援型(Ⅰ型)

買い手支援型(Ⅰ型)とは、経営資源の承継者を対象とした補助金です。地域の需要や雇用の創出・維持を図り、経済を活性化させる事業再編等の促進を目的として設けられました。このような目的から、地域経済の発展や、シナジーを活かした経営革新を行うことが見込まれる中小企業等であるという要件を満たさなければなりません。

売り手支援型(Ⅱ型)

売り手支援型(Ⅱ型)とは、事業再編・事業統合などによって経営資源を譲り渡す中小企業等を対象とした補助金です。対象者が、地域の雇用や地域経済全体をけん引する事業を行っており、これらが第三者によっても継続される見込みがあることが要件となっています。

両類型ともに、補助額は50万円~400万円、補助率は1/2以内までとなっています。ただし、売り手支援型(Ⅱ型)の廃業費用に対する補助については、補助上限額が200万円までとなっているため注意が必要です。

廃業・再チャレンジ事業

これまでの事業承継・引継ぎ補助金では、事業承継の際に廃業を伴う場合、補助額を上乗せしていました。しかし、廃業・再チャレンジを行う中小企業を支援する類型として、新たに設けられたのが本補助金です。経営革新事業等とともに申請する「併用申請」と、廃業・再チャレンジ事業のみで申請する「再チャレンジ申請」があり、それぞれ申請要件が異なっています。

補助額は50万円~150万円、補助率は1/2以内となっており、廃業にかかる専門家活用費用や在庫廃棄費などが対象経費に含まれています。事業承継に廃業を伴う場合は、公募要領をしっかりと確認しておきましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の令和4年度当初予算の変更点とは

令和4年7月25日に申請受付が開始された事業承継・引継ぎ補助金(令和4年度当初予算)。令和3年度と比較すると、全体的に補助上限額・補助率が引き下げられていることが大きな変更点となっています。

事業承継・引継ぎ補助金

令和3年度

令和4年度当初予算

経営革新事業 補助上限額

600万円

500万円

経営革新事業 補助率

2/3

1/2

専門家活用事業 補助上限額

600万円

400万円

専門家活用事業 補助率

2/3

1/2

廃業・再チャレンジ事業 補助上限額

150万円

150万円

廃業・再チャレンジ事業 補助率

2/3

1/2

全体的に補助金額は減少する内容となってしまいましたが、各事業の対象経費などは特に変更ありません。要件に該当する中小企業等は、積極的に活用を検討していきましょう。

事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールとは

事業承継・引継ぎ補助金の交付が実際に行われるまでには、長期の日程を要します。ここでは、事業承継・引継ぎ補助金(令和4年度当初予算)が支払われるまでの流れをご紹介していきます。

事業承継・引継ぎ補助金スケジュール

日程

公募要領公開

令和4年7月7日

交付申請受付期間

令和4年7月25日~同年8月15日

交付決定

令和4年9月中旬~下旬

補助事業期間

交付決定後~令和4年12月16日

証票提出・確定検査・補助金交付請求

令和4年12月17日以降~令和5年1月頃

補助金交付

令和5年2月上旬頃

後年報告義務

補助金交付から5年間

まず、令和4年7月7日に公募要領が公開されました。ここで申請要件等を確認しますが、交付申請を行うために必要となる「gBizIDプライムアカウント」を事前に取得しておく必要があります。また、アカウント発行には申請から1~3週間程度の時間を要するため、先に手続きを行うことをおすすめします。その後は必要書類を揃えていきますが、交付申請受付期間が短いため、早めに準備を進めておきましょう。

無事申請が完了して交付決定を受けると、令和4年12月16日までが補助事業期間となり、対象経費の契約・支払いを行っていきます。もし補助金の交付決定前から契約等に着手していた場合、対象経費として認められないため注意が必要です。対象経費の支払いを完了次第、証票提出・確定検査・補助金交付請求手続きにうつります。

そして、補助金交付請求手続きを無事終えると、令和5年2月上旬頃に補助金の交付を受けられるという流れになっています。公募要領の公開から補助金交付までには約7か月の期間を要し、対象経費もいったん自社で立て替えておく必要があるため、綿密なプランを策定しなければなりません。

さらに、事業承継・引継ぎ補助金は交付を受ければ終了というわけではなく、経営状況についての後年報告義務があることも忘れないようにしましょう。

事業承継・引継ぎ補助金のメリット

事業承継・引継ぎ補助金を活用する最大のメリットは、「返済不要な資金調達方法である」という点です。事業承継等を行い、事業拡大や新分野への事業展開を行うためには多額の資金が必要となります。すぐに思い浮かぶ資金調達方法には、金融機関や日本政策金融公庫からの融資がありますが、融資は当然に返済義務があることに加え、利息も支払わなければなりません。返済不要な資金を用いて、新たなチャレンジを行うことができる本補助金は、非常に魅力的な制度であるといえるでしょう。

事業承継・引継ぎ補助金のデメリット及び注意点

事業承継・引継ぎ補助金には返済不要という大きなメリットがある反面、競争率が高く、厳正な審査が行われるという注意点もあります。事業承継・引継ぎ補助金には、5年後の事業継続率を90%に引き上げるという狙いもあるため、少なくとも5年以上は継続可能な事業計画を練る必要があるのです。こういった制度趣旨も踏まえたうえで、採択者を納得させる綿密なプランを検討しなければなりません。

さらに、事業承継・引継ぎ補助金(令和4年度当初予算)では、対象経費の事前着手が認められていない点も要注意です。つまり、交付決定を受けてから対象経費の契約等を行い、補助事業期間内に支払を済ませる必要があります。事業計画は、これらの対象経費にかかる資金繰りも踏まえたうえで策定するようにしましょう。

事業承継・引継ぎ補助金のM&Aにおける有用性について解説

事業承継・引継ぎ補助金は、M&Aによる事業承継を実施した中小企業等が活用できる補助金です。事業譲渡や合併以外にも、会社分割・株式移転・株式交換・株式譲渡などの、様々な組織再編手法が対象となっています。これらの手続きは非常に複雑であり、法律資格者やM&A仲介会社などの専門家によるサポートが不可欠ですが、専門家への依頼費用は決して安くありません。

しかし、事業承継・引継ぎ補助金を活用することができれば、専門家への経費も対象に含まれるため、コスト面での負担を抑えることができます。なお、ここで注意しなければならないのが、「M&A支援機関登録制度」に登録している専門家への経費のみが補助対象になるという点です。本補助金について専門家への相談を行う場合は、M&A支援機関に登録しているか確認しておきましょう。

事業承継・引継ぎ補助金を活用したいなら専門家への相談がおすすめ

ここまでご紹介してきたとおり、事業承継・引継ぎ補助金は事業承継を行う中小企業等にとって大変魅力的であり、要件に該当する場合は是非とも活用していただきたい補助金です。しかし、採択されるまでの道のりは決して易しいものではありません。事業承継・引継ぎ補助金を活用したい場合は、早い段階から専門家へ相談してみることをおすすめします。

この記事の監修者

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