ユーチューバーの方の経費は、チャンネル運営や収益アップに関係する費用であり、プライベートに関する費用は経費にできません。今回は、ユーチューバーの経費がどこまで認められるのか具体的な線引き、対象外の費用、ケース別の事例などを紹介します。最後まで読めば、ユーチューバーとして活動するうえでの、経費処理に関する疑問点を解消できるでしょう。
目次
ユーチューバーの経費はズルい?どこまでが経費?
世間的に「YouTuberは好きなことで稼いでいるうえに、かかる費用を経費にできてずるい」と思われるケースがあります。
実際は、何でも経費にできるわけではなく、収益を得るために必要なものに限られます。ここから、具体例をもとに紹介します。
撮影機材
以下の通り、撮影をするうえで必要な機材は経費として処理できます。
- カメラ
- 照明
- パソコン
- ソフトなど
プライベートでも同じパソコンを利用する場合は、全額経費にできません。動画編集で使う割合を算出するのがポイントです。
取得価額が10万円以上の場合は、耐用年数に応じて処理をする必要があります。以下の通り、取得価額によっては他の方法を選択できるケースもあります。
- 一括償却資産:10万円以上20万円未満の資産が対象
- 少額減価償却資産の特例:10万円以上30万円未満の資産が対象
青色申告をしている方に限られるものの、少額減価償却資産の特例を適用すると、以下の通り一括で処理できます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
備品 | 13万円 | 現金 | 13万円 | マイクの購入費として |
減価償却費 | 13万円 | 備品 | 13万円 |
関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
通信費
ユーチューブの撮影や編集をするときに生じたインターネットの利用料金などは、通信費として処理できます。通信費として処理できるものは、具体的に以下の通りです。
- プロバイダ料金
- 電話料金
- 会計システムの料金
- クラウドサービスの料金など
ユーチューブに関する作業時のみでなく、プライベートでも同じインターネット回線やスマホなどを利用している場合、家事按分するのがポイントです。以下のケースを例に、処理できる割合を考えてみます。
- 1ヵ月のスマホ代:4,000円
- ユーチューブの撮影などで使っている時間:毎日稼働・1日6時間
- 6時間÷24時間=0.25(25%)
- 4,000円✕25%=1,000円
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
事業主貸 | 1,000円 | 普通預金 | 4,000円 | ◯月分携帯料金として |
通信費 | 3,000円 |
関連記事:家事按分とは?経費にできる割合や目安、計算方法を解説
旅費交通費
撮影を目的に、遠方へ行くときなどにかかる料金は旅費交通費として処理できます。具体的なケースは以下に示します。
- 取材や情報収集のためタクシーで移動した
- 常駐型の案件で、クライアントのもとで仕事するため電車やバスなどで出勤した
例えば、取材のためにタクシーを利用したあと、私的な観光目的でバスを利用した場合は対象外です。
バスや電車で現金払いする場合など、領収書をもらえないケースがあります。自分で出金伝票を起こし、目的や経路、運賃などを記載しておくのがポイントです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
旅費交通費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 | ◯社取材時のタクシー代として |
関連記事:確定申告でレシートない場合はどうする?対処法や保管方法を解説!
衣装代
ユーチューブのために特別に購入したコスプレ用品などの服は、経費処理できます。以下の通り、あくまでも動画内で着用するために入手しているのがポイントです。
- 動画出演のときにしか使えないもの
- 役割に応じたコスチューム
例えば、ユーチューブのためのハロウィンで着るために購入したコスプレ衣装は対象です。以下の通り、一般的に事業者によって処理するときの勘定科目は異なります。
- 個人事業主の場合:消耗品費
- 法人の場合:福利厚生費、販売促進費
動画出演のためにプロのヘアメイクさんやスタイリストさんに依頼した場合、発生した費用も衣装代として処理できます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
消耗品費 | 8,000円 | 普通預金 | 8,000円 | 動画出演時の衣装代として |
広告宣伝費
ユーチューブチャンネルのマーケティングやブランディングなどにかかった費用は、広告宣伝費にするのが認められます。広告宣伝費として処理できるものは以下の通りです。
- YouTube内の広告
- リスティング広告
- LINE広告
- SNS内の広告
- タイアップ広告
- インフィード広告
- メール広告
- 純広告など
ユーチューブを始めたばかりの段階では、広告宣伝費が生じる可能性は低いといえます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
広告宣伝費 | 20万円 | 普通預金 | 20万円 | Googleリスティング広告費として |
外注費
以下の通り、ユーチューブの動画制作にかかる作業を外注した場合、発生する費用は経費にできます。
- 企画
- 撮影
- 編集
- 公開
- 分析など
掃除や料理などの私的な家事を代行会社に外注した場合、経費にできません。税理士や弁護士などの専門家への支払が生じた場合は、支払手数料の勘定科目を適用するとよいでしょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
外注費 | 70,000円 | 普通預金 | 70,000円 | 編集代として |
書籍代
動画作りの知識を習得するための書籍の費用は、経費として処理できます。雑学やノウハウなどの情報を発信している方の場合、専門書を活用するケースもあるでしょう。
一方、エンタメ系の動画を作成している方の場合、小説や漫画のストーリー展開など、学びを得るために購入するケースも考えられます。息抜きやストーリーを楽しむことなどを目的に購入している場合は、対象外です。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
新聞図書費 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 | 〇〇の購入費として |
出演者の報酬
コラボ動画の作成など、他のユーチューバーの方に報酬を支払った場合、経費としての処理が認められます。
出演してもらった方に対する報酬に関して、一般的には支払手数料の勘定科目によって処理する傾向にあります。私的な結婚式で、特別出演してもらったユーチューバーに支払う報酬は対象外です。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
支払手数料 | 7,000円 | 現金 | 7,000円 | 動画出演の報酬として |
車
動画の撮影目的で車を購入した場合、車両代やガソリン代など、必要な費用を経費として処理できます。
一般的には、動画のみでなくプライベートでも車を使用すると考えられるため、プライベートの部分と分ける必要があります。
例として、以下のケースで考えてみます。
- 1ヵ月の走行距離:400km
- 動画作成時に走行した距離:100km
- 月のガソリン代:7,000円
- 100km÷400km=0.25(25%)
- 7,000円✕25%=1,750円
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
車両費 | 1,750円 | 現金 | 1,750円 | ガソリン代として |
ユーチューバーの経費にできないもの
経費対象外になる費用は、原則としてプライベートに関するものです。処理できない費用に関して、具体的には以下の表にまとめました。
一部の税金 |
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ペナルティにかかる費用 |
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保険料 |
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医療に関するもの |
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給与 | 本人・家族の給与 ※青色申告の場合、家族の給与を経費にできる |
住宅に関するもの |
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誤って処理すると、納税額が減額となるケースがあり、追徴課税を課される可能性があります。
難しく感じられるかも知れませんが、経費処理は正しくするのがポイントです。不安がある場合は、税理士を頼りにするとよいでしょう。
関連記事:個人事業主が確定申告で経費にできる勘定科目について
【ケース別】ユーチューバーの経費
ユーチューバーとして収入を得ている方の中には、経費になるのかよく分からないと感じているケースもあるでしょう。
迷いやすいユーチューバーとして、以下の方があげられます。
- 商品紹介
- 食レポ
- 収益化前
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
商品紹介
商品紹介をしているユーチューバーの場合、動画内での利用目的のみで購入した商品は、全額経費にできる可能性があります。
一方で、動画内で商品の紹介後、プライベートでも同じ商品を利用する場合は、プライベート部分の割合を算出したうえで処理するのがポイントです。全額経費とすると税務調査で指摘される可能性が高いため、注意が必要です。
食レポ
食レポをしているユーチューバーの方が経費にできるのは、動画内で紹介した料理の支払に限られます。具体的には以下に示します。
- 撮影するための飲食代:取材費
- 飲食店でクライアントとの打ち合わせ:交際費
- 今後の企画を考察するための飲食代:研究費など
原則として、お店で料理を食べたり撮影したりしたものの、動画内で紹介していないものは対象外です。
収益化前
収益化を目指して活動しているユーチューバーの方の場合、収益化前に生じる以下の費用は経費にできる可能性があります。
- 撮影機材の購入代
- インターネット料金
- 動画内で紹介する商品の購入代
- ユーチューブ運営に関するセミナーの参加費用
- 動画制作に関して学ぶための本の購入代など
収益化している方と比較すると、税務調査においてはより明確な根拠を示す必要性が生じるでしょう。
今後の計画やチャンネル登録者数の変化など、ユーチューブ運営や売上をあげるうえで、必要だと示す書類を用意しておくのがポイントです。
収入が低いYouTuberは確定申告がいらない?
収入が低いユーチューバーの方の場合、申告の必要性は、以下の通り本業か副業なのかによって異なります。
- 本業として活動:ユーチューバー以外の収入がなく、所得48万円を超えると必要
- 副業として活動:給与所得を得ている状態で、ユーチューバーの所得20万円を超えると必要
一方、副業所得が20万円以下の場合でも、以下の条件を満たすと申告が必要です。
- 所得の還付申告を希望する場合
- 年間給与所得が2,000万円を超える場合
所得とは、収入から必要経費を引いて算出する金額です。所得金額から所得控除などを引いたあとで、納税額を算出できます。
副業所得20万円以下のユーチューバーの方の場合、各市区町村で住民税の申告は必要となることを知っておく必要があります。
本業として活動しており、所得48万円以下の方の場合、義務はないものの以下の理由から申告する方が望ましいです。
- 賃貸契約時などに提出を求められる所得証明を発行してもらえない
- 金融機関から融資を受けられない
- 扶養控除や医療費控除などを受けられない
収入が低いユーチューバーの方も、しっかりとやるべきことを押さえておくのがポイントです。
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ユーチューバーの方の申告・税務に関する相談は税理士へ
ここまで、ユーチューバーとして活動している方はどこまで経費にできるのかや、ケース別の事例などを解説しました。
ユーチューバーの方の経費の線引きは、動画制作やチャンネルの収益アップに関係があるのかという点です。
プライベートの利用目的で購入したものは、対象外として扱います。プライベートと動画制作のどちらにも関連する場合は、適切な割合を算出したうえで対処するのがポイントです。
そもそも「数字を扱うのが苦手」「税務処理を任せたい」と感じているユーチューバーの方もいるでしょう。
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