フリーランスエンジニアが経費にできるものは、基本的に事業に関連するもののみです。プライベートな費用は経費にできず、正確な処理が求められます。今回は、フリーランスエンジニアの方が経費にできるものとできないもの、経費率の目安、おすすめの節税方法を解説します。最後まで読めば、日々の記帳や正しい節税方法などに関する疑問を解消できるでしょう。
目次
フリーランスエンジニアの経費の内訳と仕訳例
フリーランスエンジニアとして働く方にとって、経費の基準は事業に関連しているかです。ここからは、経費の内訳と仕訳例を紹介します。
関連記事:個人事業主が経費計上できる項目と事例、経費の落とし方を徹底解説!
家賃
経費にできるものの1つは、作業スペースや打ち合わせなどとして利用している部分の家賃です。経費にする部分とプライベートな部分を分けることが「家事按分」で、以下の通り状況によって異なるのが特徴です。
- 賃貸:事務所として利用している面積の割合を経費にできる
- 持ち家:固定資産税や住宅ローンの金利部分を経費にできる
確定申告で住宅ローン控除を適用する方の場合、事務所の部分は経費にできません。基本的に、家賃は当月に翌月分を支払うため、2回処理することが求められます。
- 当月:前払費用として処理
- 翌月:地代家賃に振替処理
【当月】
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
前払費用 | 40,000円 | 普通預金 | 40,000円 | ◯月分家賃として |
【翌月】
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
地代家賃 | 40,000円 | 前払費用 | 40,000円 | ◯月分家賃として |
関連記事:家事按分とは?経費にできる割合や目安、計算方法を解説
水道光熱費
経費にできるものの1つは、水道代や電気代などの水道光熱費です。エンジニアの場合、事業でガスや水道を使うケースは限られるかも知れませんが、業務中に生じるトイレの水道代や、ガス床暖房の費用なども経費にできます。
業務時間から経費にする割合を算出するのがポイントです。例えば、以下のケースで経費を算出してみます。
- 電気代10,000円
- 業務時間1日6時間
- 毎日稼働する
6時間÷24=25%
10,000円✕25%=2,500円
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
水道光熱費 | 2,500円 | 普通預金 | 2,500円 | ◯月分電気代として |
通信費
以下の通り事業で使う通信費に関しても、経費として処理できます。
- 固定電話代
- 携帯電話代
- プロバイダ料金
- 郵便・切手代
- NHK受信料やケーブルテレビの料金
契約時の初期費用や工事費なども経費として処理できます。
一方で、LAN環境の工事に関しては、固定資産や消耗品などで処理するのがポイントです。通信機器の費用も同様で、PCやルーターは固定資産や消耗品費などでの処理が求められます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
通信費 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 | ◯月分プロバイダ料金として |
消耗品費
事業に関する消耗品費を購入した場合、10万円未満のものか、耐用年数1年未満で処理できるものは経費として認められます。消耗品費になるものの一例は以下の通りです。
- 文具類
- コピー用紙
- 掃除道具
- ガソリン代
- キャビネット
- エアコン
- PCなど
以下の通り、会計処理するうえでは、消耗品の購入に関連するものも取得価額として考える必要があります。
- パソコン本体90,000円・周辺機器20,000円の場合:パソコンの取得価額11万円
- エアコン90,000円・工事費用20,000円:エアコンの取得価額11万円
耐用年数1年以上の固定資産を取得した場合、特定の年数で減価償却する必要があります。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
消耗品費 | 200円 | 現金 | 200円 | ノート代として |
関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
交際費
クライアントの接待や取引先へのプレゼントなどの交際費は、経費として処理できます。取引先を対象とするなど、以下の通り事業に関連しているのがポイントです。
- クライアントへのお中元やお歳暮
- 取引先の冠婚葬祭の祝儀・香典
- 接待目的のゴルフ
- ビジネス交流会など
法人の場合、交際費を経費として処理するうえで以下の条件が設けられています。
- 資本金1億円以下:年間800万円までor接待飲食費の50%までが経費の対象
- 資本金1億円超え:接待飲食費の50%までが経費の対象
政治献金など、交際費として処理できそうでできないものについても、把握しておく必要があります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
交際費 | 6,000円 | 現金 | 6,000円 | ◯社へのお歳暮として |
租税公課
国や地方公共団体などへ納める税金や会費などは租税公課といわれており、経費処理が認められています。以下で、租税公課に当てはまるものの一例を示します。
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 軽自動車税
- 印紙税
- 事業所税
- 行政サービスの手数料
一方で、法人税・住民税などの税引前の利益に課税されるものや、延滞金など罰則目的の税金、所得税などは対象外です。租税公課は間違いやすい勘定科目の1つであるため、経費処理をするときに特に注意するとよいでしょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
租税公課 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 | 収入印紙代として |
広告宣伝費
営業や事業拡大のために必要な広告宣伝費は、経費としての処理が認められます。具体的には以下に示します。
- 新聞や雑誌への求人広告費
- ホームページの制作費
- チラシやパンフレットの制作費
広告宣伝費の処理において、押さえておきたいのは以下の点です。
- 広告を出したタイミングで処理する
- 1年以上にわたる契約の場合、原則的に前払費用として処理する
基本的に、一般的な消費者に向けたものが対象で、特定の事業者との関係性を築くことを目的とする費用は、対象外として扱います。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
広告宣伝費 | 15万円 | 普通預金 | 15万円 | ホームページ制作費として |
新聞図書費
事業に関連する情報収集が目的の新聞代や書籍の購入代などは、新聞図書費として
経費処理が認められています。新聞図書費として処理する費用は、具体的に以下に示します。
- 新聞代
- 雑誌代
- 専門テキスト代
- 業界紙の購入代
- メールマガジンの購読料
- 資格のテキスト代など
新聞図書費のほかには、研修費や雑費などの勘定科目で処理するのが一般的です。定期的な新聞購読代に関しては、軽減税率である8%が適用されます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
新聞図書費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 | ◯月分新聞代として |
支払手数料
事業の中で行う取引によって手数料などが発生した場合、支払手数料として経費の処理が認められています。支払手数料として処理できる費用は、以下の通りです。
- クレジットカード手数料
- 為替手数料
- キャッシュレス決済手数料
- ローンの繰上返済手数料
税理士や弁護士など、外部の専門家への報酬も支払手数料として処理できます。支払手数料と似ているものとして、雑費の勘定科目があげられます。頻度が少なかったり金額が少なかったりする経費に関しては、雑費として処理するとよいでしょう。
例えば、プリンターを銀行振込で購入し、手数料が発生したときの仕訳方法は以下の通りです。
借方 | 貸方 | |||
消耗品費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 | プリンター購入代として |
支払手数料 | 550円 | 普通預金 | 550円 | 振込手数料として |
雑費
事業をする中で、上記など以外の出費が生じたときは雑費として処理できる可能性があります。雑費の具体例は以下に示します。
- 証明書の発行手数料
- クレジットカードの年会費
- 書籍購入台
- オフィス機器など期間限定のレンタル代
- 文具や日用品など
固定資産に関しては、雑費として処理できない点を把握しておくのがポイントです。雑費の上限は決まっていないものの、多くとも10%程度にするのが望ましいでしょう。
雑費の割合が高すぎると、税務調査に入られる可能性が高くなると知っておくとよいでしょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
雑費 | 2,000円 | 普通預金 | 2,000円 | クレジットカード年会費として |
フリーランスエンジニアが経費にできないものとは
フリーランスエンジニアの方が経費にできないものは、事業に関係がないプライベートな部分の費用です。具体的には、以下の表に示します。
一部の税金や罰則にするもの |
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プライベートな費用 |
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保険料 |
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国民健康保険料などは経費にならない一方で、確定申告では控除の対象です。条件が細かく決まっているため、初めて確定申告や税務処理をする方は難しく感じられるかも知れません。疑問や不安などがある場合は、税理士へ相談するとよいでしょう。
フリーランスエンジニアの経費率は少ない?
フリーランスのエンジニアの方は、一般的な経費率の目安は50%程度で、少ない傾向にあります。経費率の目安90%の卸売業などとは異なり、エンジニアは仕入にかかる費用が発生しないためです。
経費率が高すぎる場合、「不正な経費処理をしているのではないか?」と税務署に捉えられやすく、税務調査に入られるリスクが高くなります。
一方、一般的な経費率の目安よりも高いからといって、不安になるのは本質的ではないともいえます。税務調査においては、仕事関連のため経費として処理した旨、根拠となる書類をもとに説明できるのかが重要です。
一見、経費率が高いと感じられる場合でも、調査官に納得してもらえる可能性は高いです。
関連記事:フリーランスの売上に占める経費の割合は?経費にできるものも解説!
フリーランスエンジニアにおすすめの節税方法
フリーランスエンジニアとして働き続けるうえで、正しい節税方法を知っておくと、自由に使える資金を増やせる可能性があります。おすすめの節税方法は以下の表にまとめました。
経費処理の基本を押さえる |
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青色申告をする |
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控除を活用する |
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白色申告に比べると、青色申告は節税効果が期待できます。複式簿記をしたり税務署に書類を提出したりする必要があるものの、より大きなメリットを得られるといえます。
フリーランスの方にとってメリットがあるため、青色申告を前向きに検討するとよいでしょう。
関連記事:【節税の基礎知識】所得税や消費税の節税方法やポイントを紹介!
経費処理や節税に関する相談は税理士へ
ここまで、フリーランスエンジニアが経費にできるものとできないもの、経費率の目安、おすすめの節税方法などを解説しました。基本的に、経費として処理できるものは事業に関連のあるもので、プライベートな費用と分けるのがポイントです。
手元に残るお金を増やすうえで、青色申告などの節税方法を活用するのはおすすめです。
一方で、目の前の案件をこなすのに精一杯で、正しい経費処理や節税対策をするのが大変だとお悩みの事業者様もいるでしょう。税理士に依頼すると、業務に費やせる時間を増やしたり節税のアドバイスを受けられたりします。
小谷野税理士法人では、融資・補助金の申請サポートや節税対策のアドバイスなどを通し、4,000社以上に貢献してきた実績があります。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。