補助金や助成金などの支援事業は、国だけではなく各地方自治体によっても実施されています。その中でも、非常に多くの事業を実施している自治体が東京都です。企業から個人にいたるまで、幅広い層が活用できる補助金等を用意している東京都ですが、その実態についてよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、東京都が実施しているおすすすめの補助金や、知っておきたい補助金の基礎知識などについて詳しくご紹介していきます。
目次
東京都の補助金
東京都では、中小企業や小規模事業者等に向けて約1,500種類もの補助金が用意されています。しかし、これだけ豊富な種類の制度が用意されているにも関わらず、その実態をご存知ない方が多いという問題がありました。様々な支援策を実施していたとしても、利用できる補助金を見つけられなければ政策目的を達成することはできません。そこで、東京都はニーズを入力することで補助金を検索できる「TOKYO補助金サーチ見える化ボード」というシステムを導入しました。
このシステムでは、中小企業や都民、市区町村などの利用者区分と補助金分野を選択することによって、ニーズに合わせた補助金名とその概要を検索できます。また、キーワードを入力して補助金を検索することも可能です。このような補助金検索システムが開発されたのは全国初であり、従来の仕組みよりも格段に利便性が向上しています。活用できる補助金がないかお探しの方は、是非とも利用してみてください。
東京都で中小企業向けにおすすめの補助金一覧
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業等が革新的なサービスの開発や生産性アップのための設備投資を行う際の経費を支援する制度です。正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構によって制度化されました。
「ものづくり」というキーワードから、製造業を対象とした補助金というイメージが先行するかもしれませんが、生産性アップにつながる設備投資などであれば、業種に関係なく補助対象となります。実際に、小売業やサービス業、農業などの様々な分野で採択された事例があります。
なお、ものづくり補助金には中小企業の設備投資を支援する一般型・グローバル展開型と、事業計画の策定を補助するビジネスモデル構築型の3つに分類されています。該当する類型によって、補助金額は1,000万円~3,000万円、補助率は1/2~3/4以内となっており、様々な業界から注目を集めている補助金です。
手厚い支援を受けられるため、ものづくり補助金を活用して新しいサービスの開発や設備投資を検討してみてはいかがでしょうか。
感染症対策サポート助成事業
感染症対策サポート助成事業とは、中小企業が各業界団体の感染症防止ガイドライン等に沿った取り組みを行う場合に、対策実施にかかる経費の一部を支援する制度です。東京都中小企業振興公社によって公募されており、新型コロナウイルス感染症対策として行う消耗品や備品の購入、設備の工事費用などが助成対象となります。具体的には、マスクなどの備品や換気設備、サーモカメラや空気清浄機などの購入費用が挙げられます。
対象経費によって異なりますが、助成額は10万円~200万円、助成率は原則として2/3以内の範囲で支援を受けることが可能です。なお、東京都からコロナ対策リーダーまたは認定店として認定された場合、消耗品の購入費用に限り4/5以内までの経費が助成対象となります。また、申請前に購入した経費も対象になる点が嬉しいポイントです。
長期化しているコロナ禍において、感染症対策の見直しを図りたいという中小企業におすすめの助成金となっています。
※感染症対策サポート助成事業は2023年5月7日をもって、新規の申請受付は終了しました。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは、都内の中小企業が経済社会の変化に対応するために、先端技術を用いて持続的な発展を目指すことを支援する制度です。東京都中小企業振興公社によって運営され、新たな事業展開やイノベーションの創出を支援することで、中小企業自らの稼ぐ力を強化することを目的としています。
助成対象事業としては、競争力強化を目指した事業展開、DX推進、産業分野でのイノベーション創出を図る事業、事業承継を契機とした後継者による新たな取り組みなどが対象となっています。これらの取り組みにかかる設備やソフトウェアの導入費用が対象経費となっていますが、1基50万円以上のものに限られるため注意か必要です。
また、助成金額は100万円~1億円、助成率は1/2~2/3以内となっており、事業区分によっては手厚い支援を受けることができます。都内の中小企業を対象として継続的に支援が行われているため、要件に該当する場合は是非とも活用してみてください。
サイバーセキュリティ対策促進助成金
サイバーセキュリティ対策促進助成金とは、都内の中小企業等がサイバーセキュリティ対策を実施するために必要となる、設備や機器の導入費用を支援する制度です。コロナ禍や働き方改革の影響もあり、多くの企業でIT化が進んでいる昨今において、サイバーセキュリティ対策の実施は急務となっています。しかし、多額のコストが必要となるケースもあることから、なかなか実施に踏み切れない企業も多いのが現状です。そこで、都内の中小企業を対象にしたサイバーセキュリティ対策促進助成金が制定されました。
申請要件としては、申請日までにIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する「SECURITY ACTION」の2段階目(★★二つ星)を宣言し、その旨をホームページ上などで確認できる必要があります。その他に、中小企業の場合は都内で1年以上の事業実績があり、過去に助成事業の交付決定取消しを受けていないことなどが要件として挙げられています。
また、助成対象事業となるためには次のふたつの要件を満たす必要があります。まず、都内にある自社の事業所への設置・利用でなければなりません。都内にある中小企業が、都外の事業所へセキュリティ対策機器を設置する場合などは対象外となるため注意が必要です。次に、サイバーセキュリティ対策を実施するために必要な設備やサービスの導入・更新費用である必要があります。
いまや業種を問わず求められるサイバーセキュリティ対策は、しっかりと取り組むことで社会的信用度も大きく上昇します。まだ対策まで手が回っていないという中小企業等は、本助成金の活用も検討してみてはいかがでしょうか。
BCP実践促進助成金
BCP実践促進助成金とは、都内の中小企業者等が策定したBCPを実践するため、その際に必要となる物品や設備の導入費用を支援する制度です。BCPとは「Business Continuity Plan=事業継続計画」のことを指し、企業が自然災害やパンデミックなどによって危機的状況下におかれた場合でも、重要業務を継続できるような対策を定めた計画のことをいいます。
BCP実践促進助成金を申請するためには、このBCPを東京都や東京都中小企業振興公社が実施した「BCP策定支援講座」などにもとづいて策定する必要があります。また、対象経費となる設備や物品の具体例としては、自家発電装置・従業員の安否確認システム・バックアップサーバ・地震対策としての転倒防止装置の導入費用などが挙げられます。これらの経費に対して、助成額は最大1,500万円、助成率は中小企業の場合1/2以内までの支援を受けることが可能です。
近年の異常気象による自然災害の発生やコロナ禍の影響から、緊急時における事業継続の方法を定めておくことは非常に重要となっています。BCPの策定を行う場合は、本助成金の公募要領も確認しておくことをおすすめします。
LED照明等節電促進助成金
LED照明等節電促進助成金とは、都内で製造業を行う中小企業を対象に、策定した節電計画に必要な設備の導入費用を支援する制度です。LED照明等の導入は消費電力を抑える手段として有効な反面、導入費用がネックとなっています。そこで、LED照明等の導入を実施する中小企業等への支援を通じて、環境問題の改善に寄与しています。
LED照明等節電促進助成金の助成対象事業者となるためには、策定した節電計画について診断を受け、導入予定の設備が記載された報告書を受領する必要があります。さらに、製造業に関する要件などが複数設けられているため、公募要領をしっかりと確認しておきましょう。
また、LED照明以外に、デマンド監視装置・進相コンデンサ・インバータの購入・設置に要する費用などが対象経費です。助成額は30万円~1,500万円、助成率は1/2以内の範囲で支援を受けることができます。
なお、助成金申請時と節電診断申請時で必要書類が異なるため、手続きが不安な場合は専門家への相談も検討しましょう。
製品改良/規格適合・認証取得支援事業
製品改良/規格適合・認証取得支援事業とは、中小企業等が自社で開発した試作品や既存製品を、市場ニーズに適合させるために改良・規格適合・認証取得する際にかかる経費を支援する制度です。これらの改良等に要する経費はもちろん、ソフトウェアの改良や設計の工程にかかる人件費も助成対象に含まれることが特徴です。
また申請区分によって異なりますが、助成額は50万円~500万円、助成率は1/2以内となっています。なお、人件費に関しては最大250万円までとなっているため注意が必要です。
国内外の市場ニーズに対応するために、製品の改良やISO規格等の認証取得を検討している中小企業は、本助成金を有効活用していきましょう。
製品開発着手支援助成事業
製品開発着手支援助成事業とは、都内の中小企業等が製品・技術開発を行うにあたり、社外資源を活用した技術検討にかかる経費を支援する制度です。これらの経費を支援することによって、都内の中小企業による製品・技術開発を促進することを目的として設けられました。
また、社外資源を活用した技術検討の実施自体が助成対象になることが特徴です。さらに、技術検討に必要な原材料費や加工・依頼試験にかかる経費、市場調査費用も対象経費に含まれます。創業年数や業種の制限もなく、これから創業を予定している方も申請可能です。
助成額は10万円~100万円、助成率は1/2までとなっています。製品・技術開発の検討段階から支援を受けられるため、本助成金を活用して製品等の開発に着手してみてはいかがでしょうか。
東京都で提供されているユニークな補助金一覧
クラウドファンディングを活用した支援事業
クラウドファンディングを活用した支援事業とは、学生・主婦・高齢者など幅広い層による新製品の開発やソーシャルビジネス等への挑戦を促進し、クラウドファンディングを活用した資金調達を支援するための制度です。クラウドファンディングにかかる手数料を支援するとともに、入門者向けの相談窓口やセミナーへの参加等のサポートも行っています。
助成額は原則として最大40万円、助成率は1/2以内ですが、特例に該当する場合は助成額等の上限が増加します。新たな資金調達方法として注目されているクラウドファンディングですが、新規事業のPRやテストマーケティングにも有効です。本事業を活用することで、リスクを最小限に抑えつつ、新たな挑戦に踏み出すことができます。
高齢者エアコン購入設置費用助成事業
高齢者エアコン購入設置費用助成事業とは、経済的な理由でエアコンを設置していない高齢者世帯を対象に、エアコンの購入・設置にかかる費用を助成する制度です。65歳以上の高齢者のみ、または高齢者と障害者のみで構成される世帯を対象とし、夏季における高齢者の熱中症対策を支援しています。
1世帯1回に限り利用可能で、最大6万5,000円までの助成を受けることが可能です。自宅にエアコンがない、もしくは故障によってエアコンを使用することができない高齢者世帯は、本助成金を活用してみてください。
世田谷区知的財産権取得支援補助金
世田谷区知的財産権取得支援補助金とは、区内の中小企業を対象に、商標権等の知的財産権取得にかかる経費を補助する制度です。知的財産権の出願料・登録料・弁理士費用などが対象経費に含まれています。補助金額は最大20万円、補助率は1/2以内となっており、いずれか低い金額について補助を受けることが可能です。
世田谷区内の中小企業で、知的財産権の取得を検討している場合には、本補助金の公募が行われているかチェックしてみることをおすすめします。
東京都では多数の補助金が申請可能!よくわからない場合には専門家への相談がおすすめ
これまでご紹介してきたとおり、東京都は様々なケースで活用できる補助金を用意しています。さらに「TOKYO補助金サーチ見える化ボード」を利用することで、簡単に補助金を検索することも可能です。コスト面での課題が新たな挑戦のネックとなっている場合、まずは活用できる補助金がないか検索してみてください。また、活用すべき補助金や手続き内容がよくわからない場合は、専門家への相談も検討してみてはいかがでしょうか。