合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員がそれぞれ1人以上いる形態の会社です。合資会社は、株式会社や合同会社とは異なる特徴を持っています。この記事では、合資会社の概要や設立するメリットおよびデメリットについて、詳しく解説します。
目次
合資会社とは
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員から構成される会社形態です。少人数でスタートしやすく、親族や友人同士での起業に向いています。
また、意思決定のフローも比較的スムーズに行えるのが特徴です。株主総会を開く必要がなく「社員総会」として実施することが理由として挙げられます。会社の経営方針の変更や定款の変更、役員報酬の決定などについて、速やかに決定できるのは合資会社の魅力でしょう。
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合資会社と合同会社の違い
合資会社と合同会社の主な違いは、社員の責任構造です。合資会社では、無限責任社員と有限責任社員の両方が存在するため、負債の責任が二分されます。一方、合同会社は、全社員が有限責任社員で構成されているため、負債に対するリスクは出資額に限定されます。
さらに、合資会社は社員が経営に直接関与するため、経営体制が明確で効率的です。一方、合同会社は役員制度を持たないため、出資者の意思決定がより柔軟に行えるのが特徴です。設立プロセスの面でも、合資会社がより複雑な側面を持つのに対し、合同会社は手続きが簡単な場合があります。
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合資会社と株式会社の違い
合資会社と株式会社の主な違いは、出資者の責任範囲です。合資会社の無限責任社員は、負債に対して無制限の責任があるため、経営リスクを引き受ける必要があります。しかし、株式会社の株主は有限責任であり、出資した資金を超えての責任は負いません。そのため、株式会社はリスクを抑えた経営が可能です。また、株式会社はより多くの資金を集めやすく、資本の蓄積が促進されます。
合資会社は社員が経営権を持つため、意思決定は社員間の合意が必要です。一方、株式会社は通常取締役会が意思決定を行います。起業家がどのようなビジネスモデルを目指すかが、会社形態を選ぶ指標です。
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合資会社を設立するメリット4つ
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員から構成されています。合資会社を設立すれば、さまざまなメリットを得られるでしょう。この章では、合資会社の設立で得られるメリットについて、詳しく解説します。
設立費用を抑えられる
合資会社の設立は、他の会社形態と比べて設立費用が大幅に抑えられるのが特徴です。合資会社の設立は約6万円の登録免許税がかかりますが、株式会社は15万円以上を要する場合がほとんどです。設立費用を抑えられる点は、新規の起業家にとってメリットではないでしょうか。
また、合資会社の設立手続きは簡素化されており、時間とエネルギーを節約できるのもポイントです。資金調達が難しい中小企業にとっては、コストの削減が事業計画の実現に貢献すると考えられます。
定款の認証が不要である
合資会社を設立する場合、定款の認証は不要のため、手続きをスムーズに進められます。そのうえ、認証費用もかかりません。株式会社の場合、公証役場での認証が必須です。公証役場にて3~5万円で定款の認証をしなければならないため、コストもかかります。
さらに、定款の内容を迅速に決定できるため、事業の立ち上げや早期の運営開始が実現しやすい点も魅力です。特に、時間的余裕がないスタートアップにとって、メリットではないでしょうか。
資本金が不要である
合資会社の設立は、他の会社形態と異なり、資本金が不要です。株式会社や合同会社の場合、最低限の資本金が必要です。一方、合資会社は、労務や信用を使った出資が認められています。
そのため、設立の際は実際に金額を用意しなくても出資が可能です。資金が限られている創業者にとって、合資会社の設立は金銭的なハードルが低いのではないでしょうか。
定款を自由に設定できる
合資会社は、定款を自由に設定できるのも特徴の一つです。株式会社の場合、株主総会の承認が必要な事項がほとんどです。一方、合資会社では、社員間の合意によって柔軟に定款を変更できます。
そのため、経営環境の変化や社内の事情に応じて、迅速に定款を変更可能です。特に、ビジネスが成長する過程で方向転換が必要となった際、定款の自由度はメリットではないでしょうか。また、会社の運営に関する細かなルールも、自らの判断で定められるため、自分のビジョンに沿った経営が実現しやすいでしょう。
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合資会社を設立するデメリット3つ
合資会社の設立にはさまざまなメリットがある一方で、注意が必要なデメリットも存在します。デメリットをあらかじめ把握し、他の会社形態を検討するのも一つの方法です。この章では、合資会社を設立するデメリットについて、具体的にご紹介します。
1人で起業できない
合資会社は特性上、無限責任社員と有限責任社員の両方を揃える必要があるため、最低2人の社員が必要です。そのため、1人だけで会社を設立するのは不可能です。独立して起業を目指す人にとっては、常に他の社員を探さなければならず、クリアするのが難しい条件ではないでしょうか。
もし、一方が退職したり、急な事情で参加できなくなったり、トラブルが起きた際には、改めてメンバーを見つける必要があります。合資会社の仕組みが、ビジネスの足かせとなる可能性もあるでしょう。
設立時に無限責任社員が必要である
合資会社を設立するには、無限責任社員の存在が必須です。無限責任社員は、経営のさまざまなリスクを一手に背負う必要があります。責任の範囲は広く、万が一会社が破綻した場合、無限責任社員は自らの資産を差し出さなければいけません。
無限責任社員は、経済的なダメージを被る可能性が高まります。特に、資金繰りが厳しい時期には、無限責任が重くのしかかるでしょう。
会社形態として知名度が低く、信用を得られない場合がある
合資会社は、株式会社や合同会社と比較して、一般的に知名度が低いと言えます。知名度の低さが影響し、新規取引先や顧客の信頼の獲得が難しい可能性があります。会社の設立では、多方面の信頼状況が経営の成り立ちに関わります。
時には、合資会社の形態に対して否定的なイメージを持たれる場合もあるでしょう。特に、新規取引や人材募集をする際には、合資会社の存在自体を説明する必要性が生じるかもしれません。
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合資会社の設立は税理士にご相談を
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員が存在する独自の形態を持つため、さまざまな特徴があります。設立コストが低く、定款の認証が不要で、資本金を必要としない点は、資金が限られている起業家にとって魅力的ではないでしょうか。
メリットとデメリットを踏まえ、自分のビジネスモデルや経営方針に合った会社形態を選ぶのが重要です。その他にも、会社の設立にまつわる相談がしたいとお考えの方は、小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。