合同会社の設立を検討している起業家や中小企業の経営者にとって、合同会社の概要を理解するのは重要です。この記事では、合同会社の責任範囲や設立におけるメリット・デメリットなどについて、詳しくご紹介します。
目次
合同会社の責任は有限責任?無限責任?
会社の設立形態によって、出資者が負う責任の範囲は異なります。責任の範囲として「有限責任(出資者が出資した金額範囲のみ責任を負う)」と「無限責任(出資者が負債の総額を払う)」があります。合同会社の場合は、有限責任であるのか、無限責任であるのか、詳しくみていきましょう。
合同会社の出資者は有限責任である
合同会社は、有限責任が原則として適用されます。有限責任の場合、出資者は出資した金額以上の金銭的な義務を背負う必要はありません。
万が一、会社が経済的なトラブルに見舞われても、出資者が個人の財産を失うリスクはほぼないでしょう。そのため、安心してビジネスを展開できます。有限責任はリスクが限定的なため、出資者が新たなビジネスに参加しやすいのが特徴です。
会社規模が小さい場合は実質的な有限責任となる場合がある
合同会社は、小規模事業に適した法人形態です。規模が小さい場合、少人数での運営が一般的で、出資者全員が密接に関与します。そのような状況では、実質的に有限責任が認識されます。
出資者は、自己の出資額以上の責任を負うケースは少ないでしょう。経営に問題がなく、出資者同士の関係も良好であれば、万が一の事態が発生しても負担や不安が軽減されます。そのため、合同会社は小さなチームや少人数の出資者での事業を希望する方に適しています。
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合同会社の代表者が連帯保証人にならない方法
合同会社の設立時、金融機関からの借入の際に、個人の保証を求められる場合があります。合同会社の代表者が連帯保証人の場合、個人の資産をリスクにさらしてしまうため、注意が必要です。合同会社の代表者が連帯保証人にならないため、事業資金の調達方法を工夫しましょう。
物的担保を用意する
物的担保の用意は、連帯保証を免れるための有効な手段の一つです。具体的には、会社が保有する不動産や設備、在庫などが挙げられます。
不動産や設備、在庫などを担保として提供すれば、金融機関に対し信頼性を示せるでしょう。物的担保を提供すれば、会社が所有する資産を元に融資を受けられます。そのため、個人の保証は不要です。また、物的担保の提示は、融資条件がより有利になる場合もあります。
資金調達の柔軟性を向上させるため、事業を行うなかで、物的担保の価値を高めておくのも重要です。
連帯保証人不要の融資を活用する
近年、連帯保証人不要の融資商品が増えています。連帯保証人不要の融資商品は、小規模事業者や新たに起業する方にとって、魅力的な選択肢ではないでしょうか。
代表者が連帯保証人になる必要がないため、個人資産のリスクが軽減されます。連帯保証人不要の融資は、ほとんどの場合、信用情報や事業計画書に基づいて評価が行われます。融資を受ける際には、具体的な事業計画を準備しておきましょう。
信用力を高めるために、過去の実績や具体的な収益予測を盛り込んだ資料を用意するのがおすすめです。
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合同会社を設立するメリット
合同会社を設立すれば、コスト面でメリットを得られます。合同会社の設立時に必要な費用は株式会社と比べて低く、登録免許税も6万円で済みます。合同会社の設立は、資金に余裕がない起業家や中小企業の経営者などに選ばれる傾向があるでしょう。
設立費用やランニングコストを抑えられる
合同会社の設立において、費用や運営にかかるランニングコストはリーズナブルです。株式会社を設立する場合、定款認証に費用がかかるほか、さまざまな手続きや報告が求められます。
一方、合同会社は定款認証が不要で、その分の費用を浮かせられるでしょう。また、法人税の均等割りも株式会社より低いケースもあるため、継続的なコストの削減が可能です。
法人として節税面のメリットを受けられる
合同会社は法人税が適用されるため、利益が出た場合には節税面でメリットを受けられます。合同会社は経費の計上が可能で、実質的な課税所得を減少できます。
法人格を持てば、個人事業主としての収入にかかる税金よりも低い税率で扱われる場合があります。したがって、成長を伴う事業にとって、法人格による税制上の特典はメリットではないでしょうか。
意思決定のスピードを速くできる
合同会社は、出資者が自ら経営に関わるため、意思決定のプロセスが迅速です。出資者同士のコミュニケーションが密に取れるため、合意形成がスムーズに進むでしょう。
特に、小規模事業において、自分たちで迅速な判断を行えば、市場の変化に柔軟に対応できるはずです。競争の激しいビジネス環境において、価値のある要素ではないでしょうか。
定款の認証が不要である
合同会社は、設立時に定款の認証が不要です。手続きを簡素化でき、時間とコストを削減できます。株式会社の場合、定款は公証人による認証が必要で、費用もかかります。
しかし、合同会社では、定款の認証が不要なため、直ちに事業を開始したい場合もスムーズに進められるでしょう。ベンチャー企業やスタートアップにとって、手続きの簡便さはメリットではないでしょうか。
役員任期の更新が不要である
合同会社の運営は、役員任期の更新が定められていません。そのため、長期間にわたる安定した経営に繋がります。
株式会社の場合、定期的に株主総会を開き、役員の選任を行う必要があります。しかし、合同会社は役員任期の更新が不要であるため、事業に専念できる環境が整っています。長期的なビジョンを持って事業を進めたい方にとって、メリットではないでしょうか。
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合同会社を設立するデメリット
合同会社の設立には、いくつかのデメリットも存在します。起業を考える際には、さまざまなデメリットを理解し、適切な選択を行いましょう。この章では、合同会社を設立するデメリットについて、詳しくご紹介します。
株式会社よりも信用度が下がる
合同会社は性質上、株式会社に比べて社会的な信用は低い傾向があります。多くの人が、株式会社の方が法人格としての認知度が高い印象を持っています。そのため、合同会社の場合、資金調達や取引先との関係構築に一定の障害が生じるケースがあるでしょう。
特に、新規事業を始める際、資金調達や取引先と信頼を築くのが難しいでしょう。取引先からの信用を得るためには、自社の信頼性を高める努力が求められます。
株式発行による資金調達を行えない
合同会社は、株式を発行して資金調達を行えません。大規模な資金調達を考えている場合には、選択肢が限られてしまいます。資金調達においては、銀行からの融資や投資家からの出資が主な手段です。
しかし、合同会社は株式の発行が行えないため、多様な資金調達手段を活用できません。そのため、事業拡大を計画する際には、早期から資金調達の戦略を考慮する必要があります。
出資者が業務執行権を有する
合同会社の出資者は、原則として業務執行権を持つため、経営に直接関与します。複数の出資者がいる場合、経営方針や業務の運営について意見が分かれる場合もあるでしょう。
そのため、意思決定のプロセスが複雑化するケースがあります。出資者全員が経営に関与すれば、責任は分担されますが、チーム内での調整や協議に時間がかかります。合同会社は、効率的な経営が難しい局面も考えられます。
権利譲渡・事業承継を行いにくい
合同会社は、出資者全員の同意がない限り、出資持分の譲渡が難しい特性があります。そのため、事業承継や権利譲渡の際に、スムーズに手続きを進められないリスクがあるでしょう。
特に、事業を次世代に引き継ぎたい場合や、出資者の交代を希望する場合などには、事前に十分な対策を講じておく必要があります。株式の流動性が高い株式会社と比べると、合同会社は柔軟性に欠ける側面があります。
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会社設立については税理士にご相談を
合同会社の設立はさまざまなメリットを享受できる一方で、いくつかのデメリットも存在します。信用度が株式会社に比べて低く、資金調達方法が制限される問題点も注意が必要です。メリットとデメリットを総合的に考慮し、自社の事業戦略に最適な法人形態を選択してください。その他にも、会社設立や事業運営について相談がしたいとお考えの方は、小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。