リースは節税対策に効果的なのか、気になっている方は多いのではないでしょうか?事業で必要な設備や備品を、リースで契約することにより、節税につながることがあります。また、リース料と資産の売却益による収益が期待できる日本型オペレーティングリースも減税効果が期待できます。ここでは、リース契約が節税につながる理由、節税効果を高めるための注意点などについて解説します。
目次
リース契約の主な種類2つ
リース契約とは、事業で使用する設備や機器をリース会社が購入し、利用者に貸し出す契約のことです。リースを節税対策として取り入れるためにも、リース契約の種類について理解しましょう。ここでは、リース契約の主な種類である、ファイナンスリースとオペレーティングリースについて紹介します。
ファイナンスリース
ファイナンスリースとは、簡単に言うと立替払いのことです。設備や機器を利用したい企業に代わり、リース会社が設備や機器を購入します。
リースという名目ですが、設備や機器を使用したい企業が、リース会社を通じて設備や機器を分割で購入するのと同じ意味です。そして、企業や個人はリース料を支払って、リース会社から設備や機器を借ります。
自身で設備や機器を購入しないため、手元に資金を残し、資金繰りへの影響を少なくできる点がメリットです。
設備機器の購入代金に加えて、利息、固定資産税や損害保険料などを上乗せしたものを、毎月のリース料として支払います。
ファイナンスリースでは、リース契約満了時にリースとして貸し出した設備や機器の購入金額を回収できるように、リース料を決めています。
そのため、ファイナンスリースで設備や機器をリース会社より借りた場合、設備や機器を直接購入するよりも15%程度高くなることが多いです。
ファイナンスリース契約では、原則、リース契約期間中で途中解除ができません。もし、契約期間途中での契約解除となった場合、違約金(契約解除日から契約期間満了までのリース料相当額)を支払うことを求められることが多いです。
以下の機器や設備において、ファイナンスリース契約を締結することが多いです。
- 情報通信機器
- 事務用機器
- 産業機械
- 工作機械
- 土木建設機器
- 輸送用機器
- 医療機器
- 商業設備
- 環境・エネルギー設備
ファイナンスリースでは契約期間満了後の資産の所有権について、利用者である企業に移転する場合と、リース会社が引き続き所有権を持つ場合があります。
リース契約期間満了後も所有権が移転せず、設備や機器の使用を契約したい場合は、再リース料の支払い、もしくは相当の購入費用を求められるでしょう。
フィナンスリース契約を締結するときは、毎月のリース料はもちろん、リース契約期間満了後の所有権まで、契約内容をしっかりと確認しておくことが大切です。
オペレーティングリース
オペレーティングリースとは、企業や個人が、リース会社から設備や機器を借りる取引のことです。ファイナンスリース以外のリース取引のほぼ全てが、オペレーティングリースに該当します。
オペレーティングリースは、リース資産の契約終了時の価値(価格)から、査定金額を差し引いた金額に基づいてリース料金を計算します。
さらに、資産の購入費用、金利などを上乗せして最終的にリース料が決まります。リース料については、ファイナンスリース契約よりも、安くなるケースが多いです。
オペレーティングリース契約をすることが多い機器や設備は、以下の通りです。
- 半導体製造装置
- 工作機械
- 印刷機械
- 土木建設機械
また、リース契約満了後は、対象となる設備や機器を再度レンタルや転売するため、ファイナンスリースよりも、リース期間が比較的短めです。
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オペレーティングリース契約による節税効果
設備や機器をリース会社より借りるリース契約には、ファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類がありますが、オペレーティングリースの方が、節税対策に効果的であると言われています。ここでは、オペレーティングリース契約が節税効果を高める主な理由について紹介します。
リース料は全額経費計上できる
毎月支払っているリース料は全額経費として計上できるため、課税所得を減らせます。例えば、事業用の車を所有した場合、車を使用、維持するためには以下の費用がかかります。
- ガソリン代
- 自賠責保険料
- 任意保険料
- 税金
- 整備や点検
- 必要に応じて修理代
リース契約をしている資産の維持にかかる費用のほとんどが、リース料に含まれています。
資産を購入した場合も、保険料や税金は発生時に支払い、費用にできます。しかし、支払い時にまとまったお金が必要で、場合によっては資金繰りに影響を与えることもあります。
一方で、リース料には保険料や税金も含まれているため、支払いを分散でき、資金繰りへの影響を少なくできるのです。
設備や機器を購入した場合、耐用年数内で減価償却費を計上するため、購入時の費用を全額経費計上できません。また、ローンで設備や機器を購入した場合、経費として計上できるのは減価償却費と利息のみです。
ローンで借り入れた分については負債として扱われるため、節税効果が薄れることもあります。
減価償却費より節税効果が高いことがある
リース料の総額が、減価償却費よりも高く、節税につながることがあります。10万円以上の資産を購入した際には、資産の種類や耐用年数に応じた減価償却費を計上します。
ファイナンスリースでは、資産の種類に応じた減価償却費を費用として計上します。資産の額などの状況によって異なりますが、減価償却費よりもリース料の方が経費を増やし、課税所得を減らせることがあります。
リースを選択した場合の節税以外のメリット
購入ではなくリース契約を選択することは、節税以外のメリットも期待できます。ここでは、節税以外の主なメリットについて紹介します。
初期費用が要らない
初期費用がかからないため、資金繰りへの影響を抑えられます。設備や機器の購入時には、数十万円から数千万円の費用がかかることがあります。また、ローンを組んで購入する場合も、全てをローンで賄えるわけではなく、購入時にある程度まとまったお金が必要となるケースが多いです。
高額の出費が発生すると、資金繰りが悪化してしまい、経営にも悪影響を及ぼす恐れがあります。その点リースは、初期費用をかけず、必要な設備や機器を導入できます。
経費処理の負担が減る
設備や機器を購入するよりもリースの方が、経理処理が楽です。設備や機器を購入した場合、その維持のためにかかる費用も全て経費として計上できます。しかし、支払いが発生する度に経費として計上しなくてはいけません。
さらに、支払いの内容に応じて適切に勘定科目を使い分ける必要もあり、費用を計上するのに何かと手間がかかります。
リース料には、維持やメンテナンスにかかる費用も含まれているケースが多いため、費用計上の仕訳もシンプルで分かりやすいです。
中途解約ができる
オペレーティングリースは、中途解約が可能です。例えば、赤字が続いたり、資金繰りが苦しくなったりしたとき、厳しい状況を乗り切るために、コストカットを検討するかもしれません。
リース契約を中途解約できれば、費用負担を減らす効果が期待できます。柔軟に対応できることから、もしものときに役立つ可能性が高いです。
ただし、中途解約可能とはいえ、違約金が高額となることもあり得ます。また、特定の条件下で中途解約が認められていることもあるため、リース契約を締結する前に中途解約についてきちんと確認しておくことが大切です。
設備や機器の入れ替えが比較的容易にできる
リース契約は、新しい技術や機能を備えた設備や機器への入れ替えが比較的容易のため、常に最新の設備や機器を使える可能性が高いです。
新しい機器や設備の開発速度は想像以上に早く、新規で取り入れた設備や機器も数年経過すると旧型となり得ます。
最新設備や機器への入れ替えを考慮し、リース契約の期間を設定することにより、充実した機能を持ち合わせた設備や機器を継続して使えます。
子会社への設備貸与がスムーズにできる
子会社や下請け企業に設備を貸与する場合の、管理や事務処理の負担を軽減できます。資産として保有している設備を貸与した場合、販売委託費、下請代金などと賃貸料を相殺するだけでなく、設備の減価償却も行わなくてはいけません。
リース資産にすることで、さまざまな手間を軽減でき、設備の貸与をスムーズに進められるでしょう。
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節税効果が期待できる日本型オペレーティングリースとは?
リースとは、主にリース会社から設備や機器を借りる契約ですが、リース事業を営んでいなくてもオペレーティングリースを行えることをご存知でしょうか?ここでは、節税対策として利用されることが多い、日本型オペレーティングリースについて紹介します。
複数の投資家による出資で匿名組合を運用
複数の投資家から資金を集め、匿名の組合にリース資産の購入や運用を委託するのが、日本型オペレーティングリースシステムです。例えば、飛行機や船舶、コンテナといったように、単独での購入や運用が難しい高額資産を扱っているケースが多いです。
出資額に応じた運用益を得られる
投資家から集めた資金で購入した資産をリース契約し、リース料から匿名組合の運営費を差し引いた額を、出資額に応じて投資家に分配します。
リース資産が高額であることから、長期間のリース契約を締結するのが一般的です。そのため、リース契約を締結している期間は、リース料による収益が期待できます。
リース満了時には売却益が還元される
リース契約が満了した際は、資産を売却し、その売却益が出資者である投資家に還元されます。
匿名組合より資産を借りていた企業が、資産をそのまま買い取るケースが多いのですが、買取りされなかった場合は、中古市場にて売却します。
日本型オペレーティングリース契約が節税対策になる3つの理由
日本型オペレーティングリースは、一般的な投資よりも節税に効果的だと言われています。ここでは、日本型オペレーティングリース契約が節税に結びつく理由を3つ紹介します。
減価償却費の評価損と事業利益を相殺できる
オペレーティングリース契約で使用している設備や機器は資産としてみなし、定められた額を減価償却費として経費計上できます。
経費を増やすことで課税所得が減るため、減税に結びつきます。ただし、オペレーティングリース契約の減価償却費の計算方法は、定率法と定められている点に注意が必要です。
定率法は、資産を取得した初年度の償却率が最も高いため、オペレーティングリース契約を締結した事業年度における減価償却費が増え、節税効果も高まります。
オペレーティングリース契約を始める事業年度を考慮することで、より高い節税効果が期待できるかもしれません。
事業承継での贈与税と相続税を節税できる
事業承継を検討しているなら、オペレーティングリース契約後、一定期間経過後のタイミングに実行することで、節税効果が高まります。
法人の代表がその子などに対して株式などを譲渡するとき、代表の生前であれば贈与税、相続時の事業承継の場合は相続税の課税対象です。
株式を譲渡するとき、非上場会社の場合は会社の資産価値で株価が決まります。オペレーティングリース契約では、一時的に赤字となり会社の資産価値が下がるため、株価も下がります。
会社全体の資産価値が下がったタイミングで事業承継を実行すると、贈与税や相続税の課税対象額を減らし、減税が期待できます。
リース資産の売却益を退職金の資金に充当できる
リース契約が満了した資産を売却した収益を、退職金に充当することで利益を相殺できます。日本型オペレーティングリースで出資した資産は、高額な資産であることが多いため、売却益も高額となる可能性が高いです。
売却で得た収益は課税対象となりますが、役員の退職金とすることで、利益を相殺し課税所得を減らせます。
関連記事:【税理士監修】法人の節税対策ガイド:法人設立から不動産活用まで徹底解説
日本型オペレーティングリースで投資を始めるときの注意点
リース料や売却益による収益を得られ、節税効果も期待できる日本型オペレーティングリースですが、リスクも考慮したうえで投資をするかどうかを決めましょう。
個人事業主は節税効果が期待できない
法人にとって節税効果が期待できるオペレーティングリースですが、個人事業主にとって節税効果は少ないでしょう。
個人事業主もオペレーティングリースを利用できます。しかし、組合から得られた所得は「雑所得」に区分され、損失や収益を他の所得と相殺できないため、法人よりも節税効果が低いです。
資産価値が下落することがある
契約通りに、リース料による収入を得られるとは限りません。トラブルや事故などが発生し、商品価値が下がることがあるからです。
また、資産を借りている企業の経営難や資金繰りの悪化により、リース料による収益が途絶えてしまうこともあります。さらに、海外情勢の影響を受けることも多く、資産価値が下落することもあり得るのです。
相場変動による損失がある
リース資産は海外から購入することが多いため、為替の変動によって損失が発生することがあります。相場変動による影響で、当初に見積もった資産の残存価格を下回ることもあり得ます。
事業承継時の節税対策に適しているとは限らない
オペレーティングリースが、事業承継の際の相続税や贈与税対策になるとは限りません。投資による収益と節税による効果を得るには、専門的な視点からのシミュレーションが必要だからです。
オペレーティングリース以外に、節税効果の高い方法が見つかることもあります。税金のプロである税理士に相談し、節税と収益の両立を目指しましょう。
オペレーティングリースによる節税相談は、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
まとめ | リースを節税に活用し利益の最大化につなげよう
自社で必要な設備や機器をリース契約で借りることで、設備や機器に関するさまざまな費用を経費にでき、節税効果が期待できます。また、法人が投資の一環として日本型オペレーティングリースを行うことで、課税所得を減らせます。リースは賢く活用することで、資金繰りや経営の安定、節税に効果的です。自社に合った節税対策を取り入れるためにも、税理士のアドバイスを活用してみましょう。