山林所得に適用される特別控除についてご存じでしょうか。本記事では、山林所得の特別控除や税率について解説しています。また、山林所得金額の算出方法についても併せて紹介しています。林業従事者や山林の売却や贈与を検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
山林所得とは?
山林所得とは、立木のままの譲渡や山林を伐採し売却または譲渡をした際に得られる所得のことを指します。ただし、山林を取得してから5年以内に売却や譲渡をして得た所得は譲渡所得または雑所得として扱います。また、土地付きの山林を譲渡した場合は、土地部分が譲渡所得、山林部分が山林所得というように2種類に区分されるケースもあります。
所得には不動産所得や給与所得など延べ10種類の所得がありますが、山林所得はこの中の1つです。製材業者の場合は、植林から伐採までの過程で生じた所得は山林所得、伐採から販売までの過程で生じた所得は事業所得として扱う点に注意が必要です。
山林所得における特別控除

山林所得には所得税が課せられますが、特別控除や森林計画特別控除などの制度を利用して税額を抑えられるようになっています。以下では、山林所得における特別控除について解説していきます。
概算経費控除
山林所得における概算経費控除とは、15年以上前から所有していた山林を譲渡した場合に適用される控除のことを指します。この概算経費控除では、決まった計算により算出した金額を経費として認められます。
具体的な計算方法は以下の通りです。
(収入金額-譲渡にかかった経費)×50%+譲渡にかかった経費 |
例えば収入金額が500万円で、伐採や運搬などの経費として200万円使用した場合は、以下のような計算になります。
(500万円-200万円)×50%+200万円=350万円 |
つまり、上記のケースでは350万円を経費として申請できるのです。この概算経費控除を利用する場合は、確定申告書に概算経費控除を利用する旨を記載しなくてはなりません。
特別控除
山林所得の特別控除は、総収入金額から経費を差し引いた額によって算出されます。50万円未満の場合は残額を、50万円以上の場合は50万円を控除として差し引くことが可能です。
例えば、総収入金額が120万円、経費が20万円の場合は以下のようになります。
120万円-20万円=100万円 |
つまり上記のケースでは、差し引き後の金額が50万円以上であるため、控除額は50万円ということになります。
森林計画特別控除
森林計画特別控除とは、森林法により認定を受けた森林経営計画をもとに山林の譲渡または伐採を行った際に適用される控除のことを指します。この森林経営は令和6年12月31日までの限定的な控除となっており、具体的な控除額は以下の1.または2.のいずれか低い方です。
1.収入金額基準
森林計画特別控除が適用される山林の収入額-譲渡費用=A
基準 | 計算式 |
Aが2,000万円以下 | A×20% |
Aが2,000万円超 | A×10%+200万円 |
2.所得基準額
森林計画特別控除が適用される山林の収入額=B
(B-譲渡費用)×50%-{Bに対する経費-(譲渡費用+Bに対する被災損失額)}
参考:措置法第30条の2《山林所得に係る森林計画特別控除》関係|国税税金の控除とは?庁
青色申告特別控除
山林所得を得ている人が青色申告者の場合は、青色申告特別控除が利用できます。山林所得のみの場合は最大10万円ですが、事業所得や不動産所得がある場合は、最大65万円まで控除が適用されます。
関連記事:税金の控除とは?節税のために知っておきたい種類や目的を詳しく解説!
関連記事:青色申告の控除額の違いとは?65万円・55万円・10万円、どの控除額を選ぶべきか?
山林所得金額の求め方
山林所得では、条件を満たすことで概算経費控除や森林計画特別控除、特別控除などの控除が利用できます。この控除後の金額の計算を行う際には、山林所得金額を把握しておく必要があります。以下では、山林所得金額の求め方を段階に応じて解説していきます。
総収入金額を計算する
原則として、山林所得の総収入金額は山林の譲渡によって得た売上金額となっていますが、以下のものも山林所得に含まれます。
- 山林の売買代金
- 山林の損害によって得た保険金または損害賠償金
- 自家消費
- 間伐による収入
自家消費とは、所有する山林を伐採して自宅の建設などを行うケースのことを指します。このような場合では、使用した際の時価が収入になります。
必要経費を計算する
山林所得において経費として認められているのは以下のような出費です。
- 苗木の購入や運搬などの費用
- 山林の購入費用や仲介手数料
- 山林の伐採で生じた人件費
- 伐採した山林の運搬などの費用
- 防虫対策や肥料の代金およびそれらにかかった人件費
- 固定資産税
- 機械等の減価償却費
上記のように、山林の取得から譲渡までの間で生じた費用の累計が必要経費として扱えます。
控除額を算出し山林所得額を求める
すでに解説しましたが、山林所得では特別控除や森林計画特別控除などの控除が利用できます。どの控除が利用できるのかは状況によって異なるため、まずは利用できる控除について調べましょう。なお、山林所得金額については以下の式で求められます。
総収入金額-経費-控除額
例えば、総収入金額が3,500万円で経費が1,500万円、控除額が50万円の場合は次のように計算します。
3,500万円-1,500万円-50万円=1,950万円 |
つまり、上記の例では山林所得額は1,950万円ということになるのです。
山林所得の税額の求め方は?
山林所得には所得税が課せられますが、山林所得に関しては他の所得と分けて税額を計算することになっています。これを分離5分5乗課税方式と呼びます。具体的な計算方法は以下の通りです。
(課税山林所得金額×1/5× 税率)×5 |
所得税の税率は所得額に応じて5%から45%の間で設定されています。所得税の税率に関しては、国税庁のホームページに記載されている速算表を参考にすると良いでしょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、山林所得額が900万円を1/5した金額は180万円のため税率は5%です。この場合の所得税額は以下のように計算します。
900万円×1/5×5%×5=45万円 |
つまり、上記の例における所得税額は45万円ということです。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
参考:No.1480 山林所得|国税庁
山林所得の特別控除や計算方法について理解を深めよう
山林所得には所得税が課されますが、計算の際には他の所得と分けて計算する分離5分5乗課税方式という方式を用いなければなりません。
税額を計算するうえで欠かせないのが山林所得金額の算出ですが、この際に総収入金額から必要経費と各種控除額を差し引くことが認められています。山林所得で認められている控除には概算経費控除や森林計画特別控除などが挙げられますが、条件によって控除額が異なるため予め控除の制度について知っておくことが大切です。
林業従事者や山林の売却や贈与を検討されている方は、本記事を参考に山林所得において適用される控除の種類や特別控除などの適用条件について理解を深めましょう。
ただし、控除や経費の計算、節税対策については難しい点もあるかと思います。どの控除が適用できるのか、また控除を適用した節税については、専門家や税理士に相談をすると良いでしょう。