顧問税理士は、税務申告のみならず日々の事業運営においても頼れるパートナーです。しかし、認識のずれや相性によってはトラブルが起こる場合も。この記事では、顧問税理士と依頼者の間で起こりやすいトラブルや、トラブルが起きた場合の対処法を解説します。さらに、税理士との関係を良好にするために日頃から取り組める対策についてもお伝えします。
目次
顧問税理士とのトラブルでよくある事例5つ
はじめに、依頼者と顧問税理士との間に起こりやすいトラブルの事例を5つご紹介します。
顧問税理士の対応が悪い
よくあるトラブルの1つとして、「税理士とのコミュニケーションの齟齬」が挙げられます。例えば、税理士と連絡が取れない・返信が遅い・高圧的な態度・専門用語ばかりで分かりにくい、などです。
一見些細なことに思えますが、顧問税理士の対応が悪いと、税務申告の遅れや誤った判断につながるリスクがあります。税理士とのコミュニケーションが取れないと税務処理が進まず、以下のような問題が生じる可能性があるからです。
- 連絡が取れない・返信が遅い:申告準備の遅れにつながる
- 高圧的な態度:相談しづらく、税務判断を誤る可能性がある
- 専門用語ばかりで説明が分かりにくい:正しい意思決定ができない
顧問税理士とのコミュニケーショントラブルについては、下記の記事も併せてご確認ください。
関連記事:「税理士が偉そう」は税理士変更の理由になる?トラブルを回避する偉そうな税理士からの税理士変更の注意点
顧問税理士の知識や能力が不足しておりミスをされる
顧問税理士の知識やスキル、スケジュール管理能力などが不足していると、結果的にミスにつながるケースもあります。最悪の場合、依頼者が罰金などを負担するトラブルが起きる可能性もあるでしょう。
例えば以下のような顧問税理士だと、申告ミスやアドバイス不足が発生する可能性があります。
- 税理士が、依頼者の業種に詳しくない
- 税法は毎年のように改正されるのに、税理士が最新の情報に疎い
- 税理士のスケジュール管理が甘く、申告期限ギリギリになったり遅れたりする
たとえ税理士のミスが原因で追徴課税や延滞税が発生しても、それを支払うのは基本的には依頼者です。最終的に税務責任を負うのは税理士ではなく依頼者だからです。
税理士が明らかに間違っている場合は損害賠償を請求できる可能性がありますが、弁護士への相談料など費用と手間が掛かります。
追徴課税について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説
顧問税理士から不透明な追加請求をされる
顧問税理士との契約では、当初の契約にはなかった追加請求が発生するケースがあります。特に「顧問料の範囲内で受けられるサービス」と「追加費用が発生する条件」が明確でないと、トラブルになりやすいです。税理士と依頼者で認識がズレている場合があるからです。
よくあるトラブルとして、以下の例が挙げられます。
- 顧問料に含まれると思っていた税務相談が、回数超過を理由に追加請求された
- 決算申告も顧問契約内だと思っていたら、別料金だった
- 税務調査の対応をお願いしたら、予想以上の高額請求があった
料金体系の不明確さはトラブルの原因になりやすいため、事前に契約内容をくまなく確認する必要があります。
税理士への相談料の目安について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:税理士の相談料について知っておくべきこととは?料金相場と選び方のポイント
期待していたサービスと実際のサービスが異なる
顧問税理士に期待していたサービスと、実際に提供されるサービスが異なると、不満やトラブルに繋がりやすくなります。かえって余計な手間やコストが発生する原因になるためです。
例えば、以下のようなケースがよくあります。
- 「記帳代行もやってもらえる」と思っていたが、実際は自分で入力しなければならなかった
→予想外の手間が増え、本業に支障が出た - 「毎月面談してもらえる」と思っていたのに、年に1回しかミーティングがなかった
→経営の相談をするタイミングを逃した
このような齟齬があると、依頼者側が思わぬ手間や追加料金を負担する羽目になり、業務が滞るリスクがあります。顧問契約の際は対応範囲や内容を細かく確認し、期待と実際のサービスにギャップが生じないよう注意しましょう。
税理士に依頼できる内容や契約形態について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:税理士との契約 契約形態と手順について
関連記事:顧問税理士とは?税理士と顧問契約を結ぶメリットや注意点を解説
顧問税理士の変更がスムーズにできない
顧問税理士を変更しようとしてもスムーズに解約できなかったり、必要な書類を渡してもらえなかったりするケースもあります。
特に繁忙期は他の顧客対応が優先になり、解約手続きが後回しにされる傾向があります。税理士によっては「乗り換えられたくない」と感情的に引き止めるケースも。この場合、事業の税務処理に支障が出る、新しい税理士への引き継ぎが滞るなどのトラブルが発生します。
税理士変更トラブルの具体例やトラブルの避け方は、下記の記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
関連記事:税理士変更のトラブルは断り方が理由?契約解除の文例や引継ぎ方法を解説
顧問税理士とトラブルが起きた場合の対処法を5STEPで解説
ここでは、顧問税理士とトラブルが起きた場合に講じたい対策を5STEPで解説します。
STEP①:業務範囲・報酬・解約条件など、契約内容を確認する
まずは契約書を見直し、自分側に非がないか確認しましょう。自分の認識と契約内容に齟齬がある場合があるからです。
契約書では、以下の点を特に確認しましょう。
業務範囲 | どこまで対応してもらえる契約か |
報酬体系 | 基本報酬と、追加料金が発生する条件 |
解約条件 | いつでも解約できるのか、契約期間、解約予告期間、違約金 |
契約書を確認しても自分側に落ち度がなければ、STEP②以降の対応を検討します。
STEP②:顧問税理士本人に直接改善を求める
顧問税理士と電話もしくは面談し、具体的な問題点と解決策の提案を分かりやすく伝えましょう。誤解や認識の食い違いが原因であれば、対話によって改善が期待できます。
例えば追加請求が発生した場合「契約内容と異なる点があるが、どのような認識か」と確認すると、意外とすんなり解決するケースも。
この際、感情的にならず、事実を元に冷静に伝えましょう。感情的になって侮辱や脅迫をしてしまうと、こちら側が侮辱罪や脅迫罪の対象になる可能性があります。
改善を求めても対応が変わらない場合は、STEP③以降の対応を検討しましょう。
STEP③:顧問税理士が所属する税理士事務所に改善を求める
顧問税理士とのトラブルが解決しない場合は、税理士が所属する事務所に改善を求めるのも有効です。特に税理士個人での対応が難しいケースでは、事務所全体での対応を求めると改善される可能性があります。
「対応が悪い」など税理士個人の問題でも、事務所の所長や上司に相談すると、税理士本人に指導してもらえることもあるでしょう。また、担当税理士の変更や、今後の対応方針の見直しにつながる場合もあります。
その上でなお対応が変わらない場合や、顧問税理士が個人事務所である場合は、STEP④以降の対応を検討しましょう。
STEP④:顧問税理士が所属する税理士会の紛議調停制度を利用する
顧問税理士とのトラブルの際は、税理士会の「紛議調停制度」を利用すると、税理士との話し合いの場を設けてもらえます。
紛議調停制度は、税理士と依頼者のトラブルを調整することが目的です。税理士会は中立的な立場から両者の間に入って調停やアドバイスを行います。調停費用は基本的に無料です。
ただし、税理士会が顧問税理士に直接働きかけることはありません。また、税理士会には強制力がないため、返金請求や損害賠償の交渉も不可能です。あくまで和解の場として、解決の手助けをします。
制度の詳細については、下記の東京税理士会のサイトをご参照ください。なお、この制度は全国の他の税理士会にも設けられています。
参考:紛議調停制度|相談窓口のご案内|一般の方へ|東京税理士会
顧問税理士が所属する税理士会は、下記の日本税理士会連合会サイトで分かります。税理士の名前で検索し、「所属税理士会」の欄をご確認ください。
顧問税理士が紛議調停制度の話し合いに応じない場合や、返金請求に応じない場合などは、STEP⑤の対応を検討しましょう。
STEP⑤:弁護士に相談する
紛議調停で解決が難しい場合や、金銭トラブル・法的問題が絡む場合は、弁護士に相談するのがベターです。弁護士は税理士会と違って法的措置を講じられるため、税理士とのトラブルを法的に解決できる可能性が高まります。
例えば以下のようなケースです。
- 税理士の申告ミスで損害が出た(追徴課税・罰金など)
- 返金請求に税理士が応じない
- 契約解除を巡って金銭トラブルが発生している
- 税理士の不正行為を追及したい(横領・脱税関与・情報漏洩など)
ただし、弁護士への相談には相談料・着手金・成功報酬など高額の費用が発生します。事前に費用対効果を考慮しましょう。
顧問税理士とのトラブルを防ぐために日頃から気をつけること
日頃の意識次第で防げるトラブルもあります。ここでは、顧問税理士との関係を良好に保つために依頼者側が意識したいポイント4点をまとめました。
業務範囲・報酬・解約条件など、契約内容を普段から把握しておく
日頃から契約内容を正しく把握し、不明点は事前に確認しておきましょう。これにより、後々発生しうるトラブルを防げる場合があります。
特に、契約の範囲や報酬体系、解約条件を知らずにいると、認識のズレによってトラブルに発展する可能性があります。
契約時に確認するだけではなく、顧問契約中は定期的に再確認し、新たな不明点がないかチェックしておきましょう。
顧問税理士と定期的にコミュニケーションを取る
定期的に顧問税理士とやり取りしている場合、認識のズレが生まれにくくなり、結果的に円滑な関係を維持できます。長期間連絡を取らない場合、事業の状況把握が疎かになり、申告ミスや節税の機会損失に繋がるリスクもあるためです。
特に、小さな疑問や不満をその都度解決しておけば、後になって大きなトラブルに発展する可能性を低くできます。
定期的に面談し、こまめに業務報告を受けたり、早めに疑問点を潰したりして、税理士との信頼関係を築きましょう。オンライン相談が可能な税理士だと移動時間が省略できるため、さらに気軽に相談しやすくなります。
任せっぱなしにせず自分も当事者意識を持つ
税理士に依頼して終わりにするのではなく、依頼者自身も主体的に税務に関与しましょう。税理士はあくまでサポート役で、最終的な税務責任は依頼者にあるからです。
具体的には、税理士から求められた書類の提出期日を守る、提出書類の控えを残す、などです。書類の提出が遅れると申告期限に間に合わず延滞税が発生する恐れがあります。また、提出書類の控えを残しておけば、何か問題が生じた際に自分でも確認ができます。
税理士に依存しすぎずに依頼者自身も税務に関心を持ち、トラブルを予防しましょう。
顧問税理士と合わないと感じたら早めに税理士変更を検討する
依頼者側がいくら気を付けていても、顧問税理士と相性や性格が合わない場合もあります。自分に合わないな、ストレスだなと感じたら、業務への支障が大きくなる前に、早めに税理士変更を検討しましょう。
税理士変更の全体的な手順は、下記の記事をご確認ください。
関連記事:税理士を「超スムーズに」変更する全手順を税理士目線で解説
新しい税理士の探し方について詳しくは、下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】税理士変更するなら税理士紹介サービス?おすすめサービスは?
関連記事:税理士変更での良い税理士の選び方!個人事業主・法人の選定のポイントや失敗しがちな選び方
変更するタイミングや断り方などは下記の記事をご確認ください。
関連記事:税理士変更の理由とは?税理士を変えるベストタイミングと引継ぎの注意点を解説
関連記事:【税理士監修】[例文付き]税理士変更の断り方!コツと円満に断る方法とは?
顧問税理士とのトラブルにお困りの方はご相談ください
この記事では、顧問税理との間で起こりやすいトラブルと、トラブルが起きた際の対処法を解説しました。
トラブルの原因が誤解や認識の食い違いであれば、対話によって改善できる場合もあります。ただし、こじれた場合は税理士会や弁護士など第三者の介入が必要になるケースもあります。
現在の顧問税理士に疑問があり、他の税理士の意見も聞いてみたいという方は、まずは小谷野税理士法人にお話をお聞かせください。お客様の立場に立ち、共に最適な解決策を考えます。