法人を設立した際は、法務局に印鑑を登録します。登録した印鑑が、いわゆる会社の「実印」です。法人が金融機関から融資を受ける時や不動産会社から事務所、店舗などを借りる時には契約書に実印を押します。契約書に押した実印が本物であることを証明するのが「印鑑証明」です。押印した印影と印鑑証明の印影を比較し、本物の実印かを確認します。この記事では、法人の印鑑登録方法から印鑑証明の取得方法まで詳しく解説します。
目次
法人の印鑑証明の取得方法
法人の印鑑証明を取得する方法はいくつかあります。それぞれの取得方法には、メリット・デメリットがあるため、取得時に最適な方法を選択することが大切です。以下では法人の印鑑登録から取得までの流れを解説します。
事前に法人の印鑑登録を行う
法人の印鑑証明を取得する前準備として、法務局で印鑑登録を行います。印鑑登録は法人設立時に行いますが、代表者印(「代表取締役之印」などと彫られた印章)を登録するのが通常です。
登録した印鑑は法人の実印として認識されるため、金銭消費貸借契約や賃貸借契約など、重要な契約時などに使用します。印鑑登録を行う際は、以下の書類、印鑑を準備しましょう。
- 印鑑届書
- 登録する法人の印鑑
- 登録を行う会社代表者の印鑑
- 登録を行う会社代表者の印鑑証明
- 印鑑カード交付申請書
- 委任状(代理人が印鑑登録を行う場合は必要)
不足があると印鑑登録ができません。とくに、代理人に依頼する場合は、他の書類が揃っていても委任状がないと印鑑登録を受け付けてもらえないため注意しましょう。
印鑑カードの交付を受ける
法務局で印鑑を登録する際、印鑑届書と併せて印鑑カード交付申請書も提出します。印鑑カードは、法人局の窓口や証明書発行請求機で印鑑証明を取得する時に必要なものです。印鑑登録をする際に、一緒に窓口に提出すれば、印鑑カードは5〜10分程度で発行されます。
印鑑カードは大切なものですので、仮に紛失した際は、速やかに法務局に印鑑カード廃止届書を提出しなければなりません。印鑑カード廃止届書を提出することにより、紛失した印鑑カードは無効となります。よって、印鑑カード廃止届書の提出と同時に再交付の申請を行いましょう。印鑑カードの再交付には専用の書式はなく、当初提出した印鑑カード交付申請書を使います。窓口で申請すれば、新しい印鑑カードが5〜10分程度で再発行されます。
法務局の窓口で取得する
法人の印鑑証明を取得する方法はいくつかありますが、以下では法務局の窓口で取得する方法をご紹介します。
- 窓口に備えてある印鑑登録証明書交付申請書に、会社の商号、会社の所在地、印鑑提出者の資格、氏名、生年月日、印鑑カード番号を記入します。
- 印鑑証明の必要枚数に応じた金額の収入印紙を印鑑登録証明書交付申請書に貼付します。収入印紙は法務局内の収入印紙売りさばき所で購入可能です。
- 印鑑登録証明書交付申請書に印鑑カードを添えて、印鑑証明発行の窓口に提出します。
- 印鑑証明が発行されれば一連の手続きは完了です。
時期や時間帯によっては、窓口が混雑することがあります。窓口で取得する際は、時間に余裕を持って手続きに行くことをおすすめします。
証明書発行請求機で取得する
証明書発行請求機を利用して法人の印鑑証明書を取得することも可能です。ただし、証明書発行請求機が設置されていない法務局もあるためご注意ください。印鑑証明の取得手順は以下の通りです。
- 証明書発行請求機の案内に従って画面操作を行います。
- 印鑑カードを機械に読み取らせます。
- 所定の手数料を支払うと、印鑑証明が発行されます。
証明書発行請求機が複数台設置してある法務局の場合は、印鑑証明発行までの時間が短くなるのがメリットです。
関連記事:登記事項証明書とは?法人の登記事項証明書の取得方法と必要な場面について解説!
郵送で申請し取得する
郵送で印鑑証明書を申請し取得することも可能です。以下で郵送による申請手順をご説明します。
- 法務局のホームページから印鑑登録証明書交付申請書をダウンロードして印刷します。
- 印鑑登録証明書交付申請書に必要事項を記入し、収入印紙を貼付します。
- 切手を貼付した返信用封筒、印鑑カードを同封して、管轄の法務局に郵送します。
- 後日印鑑証明書が郵送されてきます。
郵送での申請のメリットは、法務局に足を運ぶ必要がないことです。しかし、印鑑証明書が返送されてくる日が分からないのがデメリットです。遅い場合は1週間以上かかるケースもありますので、郵送の場合は、余裕を持って申請することが大切です。
オンライン申請し法人の印鑑証明を取得する
法人の印鑑証明書は、オンラインで申請して取得することも可能です。オンラインで取得する方法は、下記の通りです。
- オンライン申請の前に、法務局の窓口で「法人の電子証明書」の申請と登録を行います。
- 申請用総合ソフトをパソコンにインストールします。
- 初回のみ申請者情報を申請用総合ソフトに登録します。
- インターネットバンキングなどで発行手数料を納付します。
- 法務局の窓口あるいは郵送で印鑑証明書を受け取ります。
電子証明書とは電子的に身分を証明できるもので、オンライン申請には必ず必要です。そのため、取得時には事前に申請・登録が必須です。また、申請用総合ソフトのインストールが不可欠なため、オンラインで申請をする場合は、事前の準備をしっかりと行いましょう。
関連記事:【税理士監修】会社設立に必要な印鑑4本セットとは?証明書についても解説
法人の印鑑証明の取得に必要なもの
以下では、法人の印鑑証明取得時に必要なものをご説明します。前章で解説した、すべての取得方法で必要になる3つのものをご紹介しますので、忘れずに用意しましょう。
印鑑カード
印鑑カードは法務局で法人の印鑑を登録すると発行されるカードです。会社設立時に会社の代表者印を登録して、実印とするのが通常です。印鑑カードは印鑑証明取得時に必要となりますので、大切に保管しましょう。また紛失時には、悪用されることがないよう速やかに法務局に届け出て、印鑑カードの再発行手続きを行ってください。
印鑑証明書交付申請書
法務局の窓口での法人の印鑑証明取得時、郵送による法人の印鑑証明取得時には、印鑑証明書交付申請書を提出しなければなりません。印鑑証明書交付申請書は法務局や法務局のホームページで入手できます。印鑑証明書交付申請書には以下の内容を記載し、収入印紙を貼付した後、法務局に提出します。
- 窓口に来た人の住所・氏名
- 商号(会社等の名称)
- 本店・主たる事務所の所在地
- 印鑑提出者の資格・氏名・生年月日
- 印鑑カード番号
- 請求通数
- 収入印紙を貼付
郵送の場合は、宛名や使用する切手の金額に誤りがないかを確認してください。宛名や切手の金額が誤っていると、適切に郵送されずに返送されてしまいます。手間や時間、お金がかかるため念入りに確認したうえで送付しましょう。
手数料
法人の印鑑証明を取得する際は、手数料を納付します。法務局の窓口で取得する場合や郵送によって取得する場合は、印鑑証明書交付申請書に収入印紙を貼付することによって手数料を納付します。オンライン申請で印鑑証明を取得する場合は、インターネットバンキング等での納付です。
印鑑証明1通当たりの手数料は、窓口での書面請求の場合は450円、オンライン請求で窓口受領の場合は390円、オンライン請求で会社・自宅受領の場合は410円です(2024年7月現在)。
法人の印鑑証明書を取得するときの注意点
以下では、法人の印鑑証明を取得する際の注意点を解説します。個人の印鑑証明を取得するときとは異なる点もあるため、注意してください。
申請方法によって受付時間が異なる
法人の印鑑証明を取得する際は、法務局に申請することになりますが、申請方法によって受付時間が異なるため注意しましょう。法務局窓口での申請の場合、受付時間は平日の9時から17時までです。郵送による申請の場合は、受付時間の指定はありませんが、印鑑証明の発行までに1週間程度かかることもあるため、時間的に余裕を持って申請することをおすすめします。
また、法人の印鑑証明取得にはオンライン申請が可能です。オンライン申請は申請用総合ソフトがインストールされたパソコンからであれば、24時間いつでも申請できます。ただし、17時15分以降に送信されたデータについては、翌日(翌業務日)の受付となる点には注意が必要です。
コンビニでの取得はできない
法人の印鑑証明は、個人の印鑑証明とは異なり、コンビニエンスストアのマルチコピー機での取得はできません。個人の印鑑登録は各市区町村の役所が管轄しています。一方、法人の印鑑登録は法務局の管轄であり、法務局はコンビニエンスストアでの発行には現時点では対応していません。
まとめ
法人の印鑑証明は、法人が登録した印鑑が正式にその法人の実印であることを証明する文書です。金銭消費貸借契約や賃貸借契約などの重要な契約の際には、契約書に押印した印鑑が会社の実印であることを証明するために印鑑証明を求められることが一般的です。そのため、取得した印鑑証明はもちろん、発行の際に必要となる印鑑カードの取り扱いには注意しましょう。
また、印鑑証明の取得手順を覚えてスムーズに入手することも大切です。法務局の窓口、証明書発行機、郵送、オンラインなど取得方法は複数あります。自社で最良の方法を選択して取得しましょう。法人の印鑑証明取得でお困りの際は、ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。