事業承継税制とは、事業承継にあたり、相続税・贈与税の猶予を受けられる制度です。この制度を計画的に活用すると、経済的負担を抑えながら事業承継を進められます。この記事では、事業承継税制の基本的な知識や手続き、満たすべき条件などについて詳しく解説します。正しい知識を身につけ、スムーズな事業承継を実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
事業承継の基本知識
事業承継とは、企業の経営権や資産を次世代の後継者へ引き継ぐことです。事業承継の基礎知識や、活用すべき事業承継税制について解説します。正しく理解し、計画的に進めましょう。
事業承継とは?
事業承継とは、企業の経営権や資産、ビジネスモデルを次世代に引き継ぐことです。承継においては、ただ単に株式や資産を譲るだけでなく、経営理念や従業員の想い、さらには企業文化をも受け継ぐ点も重要視されます。
市場の動向や業界トレンドの変化をふまえ、現代のニーズに対応しながら会社を成長させる必要があるのです。事業承継を進める際には、時代の変化を考慮し、新しい視点を取り入れましょう。
適切な事業承継が行われれば、新たな課題に直面したとしても企業の成長を促すチャンスとなるはずです。そのためには、早めの計画が欠かせません。経営者は後継者や関係者としっかりと話し合い、円滑に引き継ぎが進められるよう調整することが求められます。
事業承継税制について
事業承継税制とは、後継者が株式を引き継ぐ際に発生する税負担を軽減するための制度です。贈与税や相続税が一定の条件のもとで猶予または免除される特例措置があり、幅広い企業が対象となります。
この税制を適用するには、特例承継計画を都道府県に提出する必要があり、申請には期限も設けられています。事業承継税制を適切に活用すれば、税負担を大幅に軽減でき、承継後の経営基盤を安定させられます。
関連記事:一般社団法人での相続税対策は不可に?従来の仕組みや2018年の改正内容
事業承継税制の特例措置について
事業承継税制の特例措置は、中小企業が株式を引き継ぐ際の税負担を軽減し、円滑な事業承継を支援する制度です。ここでは、特例措置の概要やメリット、特例承継計画の重要性、活用方法について解説します。
特例措置の概要と適用条件
特例措置を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。
- 対象:非上場の企業の株式
- 継承:先代経営者から後継者へ贈与または相続
- 適用期限:令和9年12月31日までに贈与または相続が発生していること
さらに、特例承継計画の提出が必須です。特例承継計画には、事業の将来展望や後継者に関する具体的な情報を記載する必要があります。上記を満たし、計画書を提出しなければ特例措置は適用されないため、理解と準備が必要です。
事業承継特例と一般制度の違い
事業承継税制には、特例措置と一般措置の2種類があり、それぞれ対象となる要件や適用条件が異なります。主な違いは以下の通りです。
税の優遇措置
- 特例措置:贈与税・相続税の猶予または免除が受けられる
- 一般措置:贈与税・相続税は通常どおり課税される
事業の計画策定など
- 特例措置:特例承継計画の提出が必要
- 一般措置:不要
適用期限
- 特例措置:平成30年から令和9年12月31日までの贈与・相続
- 一般措置:なし
対象株式数
- 特例措置:全株式
- 一般措置:総株式数の最大2/3まで
納税猶予割合
- 特例措置:100%
- 一般措置:贈与100%、相続80%
その他にも違いがあるため、事前の確認が必要です。制度の違いを理解し、適切に活用することで、事業承継を円滑に進めることができるでしょう。
参考:非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし
事業承継税制の活用方法
事業承継税制の特例措置を含めた具体的な活用方法について紹介します。正しく理解し、適切な計画を立てましょう。
事業承継税制を利用するメリット
事業承継税制の贈与税・相続税納税猶予を受けるには、特例承継計画を事前に提出し、認定を受ける必要があります。後継者が株式を取得した際、一定の要件を満たせば、贈与税・相続税の納税が最大100%猶予されるため、財務負担を軽減させられるメリットがあります。
制度の適用を受けるには、しっかり計画し、事前準備と適切な手続きを行うことが重要です。事業承継税制を利用すれば、企業の継続的な成長が期待できるでしょう。
5年間の猶予期間中に満たすべき条件
事業承継税制の納税猶予期間は、贈与税・相続税ともに、後継者が最初に特例措置の適用を受けた申告期限の翌日から起算して5年間です。猶予期間中には、特例措置を維持するために一定の条件を満たす必要があります。主な条件は以下の通りです。
- 後継者が実際に経営を行うこと
- 従業員の雇用を一定水準以上維持すること
これによって、経営の安定性が確保され、次世代の経営者がスムーズに環境に適応できるよう支援されます。
また、もしも条件を満たさない場合は、猶予が打ち切られるリスクも考慮し、継続的な改善策を講じることが重要です。的確な指導を受けることで、要件をクリアしやすくなります。
なお、5年間の要件を満たした後も、3年ごとに事業継承の報告を行うことで、納税猶予を継続できます。
事業承継税制を利用する際の注意点
事業承継税制は、事業引継ぎをスムーズに進めるために有益な制度です。適用には一定の条件があり、満たさない場合には計画が頓挫したり、大きな負担が発生したりなどのリスクがあるため、慎重に準備を進めましょう。
適用条件を満たせないとどうなる?
事業承継税制の適用条件を満たせない場合は、特例措置が適用されず、通常の贈与税や相続税が発生します。その場合、後継者の資金繰りが苦しくなったり、事業の存続そのものが危ぶまれたりする可能性があるため気をつけましょう。
関連記事:黒字倒産はなぜ起こる?7つの理由や起こりやすい業種、黒字倒産しないためのポイントをご紹介!
活用には専門家のサポートが必須
事業承継税制を活用するには、税理士や中小企業診断士など専門家のサポートを受けるのがおすすめです。専門家が関与することで、複雑な税制のルールを適切に理解でき、正確な手続きを行えるでしょう。
特に「特例承継計画」の作成や申請の手続きは、専門的な知識が求められます。経験豊富なプロに依頼することでリスクを最小限に抑えられると言えます。企業ごとの状況に応じた適切なアドバイスを受けることができ、計画通りのスムーズな事業承継ができるでしょう。
関連記事:税理士との契約形態|顧問契約・スポット契約の特徴と料金相場
事業承継の準備と手続き
事業承継を円滑に進めるには、まず特例承継計画を作成し、今後の事業の方向性を明確にすることが大切です。
計画には実行可能な経営方針を盛り込み、専門家のアドバイスを受けながら精度を高めていきましょう。以下のステップを進めることで、手続きをスムーズに完了できます。
1.特例承継計画を作成する
まずは、特例承継計画を作成します。この計画書では、今後の運営方針や後継者に関する情報を明確に示す必要があります。特例承継計画は、承認を受けるための基盤を整えるものとなるので慎重に進めましょう。
2.認定機関へ計画の確認を依頼する
作成した特例承継計画を認定機関に提出し、内容の確認を依頼します。この段階で認定が得られなければ、次の手続きへ進められません。
3.都道府県への申請書を提出する
認定機関から確認を受けたら、都道府県に正式な申請書類を提出します。都道府県の審査では、承継計画の適合性や必要条件が満たされているかが精査されます。書類は必要項目を正確に記載し、不備がない状態で提出しましょう。
4.認定書を受け取る
都道府県の審査を通過すると、認定書が発行されます。この認定書は、贈与税や相続税の特例措置を申請する際に必要となる書類です。認定書が発行されてはじめて、税務申請のステップに進めます。
5.税務申請を行う
認定書を取得したら、贈与税や相続税の特例を申請します。認定書に記載された内容が正しく反映されるよう、申請手続きを慎重に進めましょう。
6.年次報告を行う
事業承継後も、年に一度、事業の状況を関係機関に報告する義務があります。報告を怠ると、特例措置が取り消される可能性があるため、必ず報告を行いましょう。
事業承継税制のまとめ
事業承継税制は、中小企業が後継者へスムーズに事業を引き継ぎ、税負担を軽減するための制度です。制度を活用すれば、単なる資産の移転にとどまらず、企業の理念や文化も含めて次世代へ継承できるでしょう。
事業承継の成功には、特例承継計画の作成をはじめとする適切な準備が欠かせません。専門家の助言を受けながら進めることで、リスクを減らし、適切な手続きを進められます。
企業の未来を守るためにも、事業承継の計画は早めに立て、税務処理に関して税理士に相談することをおすすめします。