資本金の額を変更した際は法務局へ変更登記の申請が必要です。登記申請には期限が定められており、遅れてしまうと代表者にペナルティを課される恐れもあります。資本金変更の手続きをスムーズに行うためには、登記について事前に知っておくのが安心です。今回は資本金変更の手続きの流れや、資本金変更の登記申請について詳しく解説します。
目次
資本金を変更する際には登記申請が必要
資本金を変更する際には登記申請が必要です。資本金の額および発行済み株式数は登記事項のため、変更した場合は変更登記を行う必要があります。
変更登記の期日は変更の事実があった日から2週間です。会社がするべき登記を怠った場合、代表者に100万円以下の過料を科される可能性があります。
資本金の変更手続きの流れと必要書類
資本金を変更するには登記以外にも必要な手続きが存在します。以下では資本金の変更手続きを流れで解説します。
資本金の変更手続きの流れ
資本金の変更手続きの流れは、資本金を増やす場合と減らす場合で大きく異なります。
資本金を増やす場合の手続きの流れは以下の通りです。
- 株主総会で増資の決議をする
- 株主総会や取締役会で募集事項を決める
- 増資の申し込みを受ける
- 株式の割当に関する決議を行い割当を決定する
- 出資を受ける
- 新株の発行・株主名簿を更新する
- 資本金の変更登記の申請をする
1〜7の手続きは増資の方法によって多少の違いがありますが、最終的に変更登記が必要な点はいずれの方法でも同じです。登記申請の際には株主総会議事録の提出が必要なため、1と4の株主総会を実施した後に議事録の作成を忘れず行いましょう。
次に、資本金を減らす場合の手続きの流れを紹介します。
- 株主総会の特別決議を行う
資本金を減らす場合は原則として特別決議が必要です - 債権者保護の手続きを実施する
官報公告または債権者への個別催告の手続きを行う必要があります - 株主総会等で定められた効力発生日に減資の効力が発生する
- 資本金の変更登記の申請をする
資本金を減らす場合には債権者保護の手続きが必要です。増資の場合と同様、効力発生から2週間以内に変更登記をする必要があります。
なお、税務署、都道府県税事務所、市町村役場への異動届の提出も必要です。
税務署への届出には添付書類の必要はありません。明確な期限は定められていませんが、国税庁の公式サイトでは「異動等後速やかに」と記載されています。
都道府県税事務所や市町村役場への届出は、自治体によって添付書類や期日が異なる可能性があるため、自治体の案内をご確認ください。
資本金の変更登記に必要な書類
資本金の変更登記に必要な書類は、増資の場合と減資の場合で異なります。
増資の場合に必要な書類は以下の通りです。
- 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録(募集事項や割り当てを取締役会で決定した場合)
- 株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)
- 募集株式の引受けの申込みを証する書面
- 出資金の払い込みがあった事実を証明する書類
- 資本金の額の計上に関する証明書
参考:法務局「株式会社変更登記申請書(募集株式発行)」
減資の場合には以下の書類が必要となります。
- 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)
- 一定の欠損の額が存在することを証する書類
- 公告及び催告をしたことを証する書面
- 異議を述べた債権者に対し、弁済若しくは担保を供し若しくは信託したこと又
- は資本の減少をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面
参考:法務局「株式会社変更登記申請書(資本金の額の減少)」
書類に不備や漏れがあると、登記手続きがスムーズに進まず手間が増える恐れがあるため、必要書類のチェックは入念に行いましょう。
増資と減資どちらの場合でも、法務局に提出する申請書は同じ「株式会社変更登記申請書」です。以下より主な記載事項を紹介します。
- 会社法人番号
- 商号
- 本店住所
- 登記の事由(法務局でダウンロードできるフォーマットにあらかじめ記載されています)
- 登記すべき事項
- 登録免許税の額
- 添付書類(法務局でダウンロードできるフォーマットに記載済みです)
- 日付
- 申請人
- 代表取締役
- 連絡先の電話番号
- 代表者印(オンライン申請の場合は不要)
資本金の変更手続きにかかる費用の内訳・相場
資本金の変更手続きに際して必ず発生する費用が登録免許税です。登録免許税の額を紹介します。
区分 | 登録免許税の額 |
---|---|
増資の場合 | 以下のうちいずれか大きい方
|
減資の場合 | 30,000円 |
書面申請の場合、登録免許税は原則として収入印紙で納付します。法務局の公式サイトで公開されている「株式会社変更登記申請書」のフォーマットに含まれている収入印紙貼付台紙に納付税額分の収入印紙を貼り付けましょう。
オンライン申請の場合は、電子納付または登録免許税納付用紙を用いて納付します。詳しい納付方法は法務省の公式サイトをご確認ください。
参考:法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」
専門家に登記申請手続きの代行を依頼する場合は、専門家報酬の支払も必要です。専門家報酬の額はケースによって異なりますが、5万円前後がひとつの目安となります。
その他にも、書類の印刷代や郵送代などの細かな支出も発生します。
資本金を減らす場合、債権者保護手続きとして官報公告を行う際には、官報掲載料の支払いも必要です。
資本金の変更手続きにかかる費用を抑える方法
資本金の変更手続きで発生する費用のうち、必ず発生するとは限らないものが専門家報酬です。資本金の変更手続きにかかる費用を抑えたい場合は、専門家への登記申請の代行依頼をせず、自社で登記申請を行うのも1つの手です。
資本金の変更登記を自分で行う際の注意点として以下の3つが挙げられます。
- 登記申請書とあわせて提出する書類に不備や漏れがないか入念に確認する
- 収入印紙貼付台紙に貼り付ける収入印紙の額を間違えない、傷や汚れがある収入印紙を使わないようにする
- 変更登記の必要書類を書面で提出する場合、申請書に代表者印を押印するのを忘れない
登記申請の手続き自体は容易で専門知識も不要なため、自分で行うことも可能です。ただし必要書類が多い上に細かなルールが定められており、登記申請の経験がない人が行うとどうしてもミスや漏れが発生しやすいでしょう。
変更登記のミスや漏れが心配な人や自社の手間を最小限に抑えたい人は、多少コストはかかりますが、専門家に依頼することをおすすめします。
まとめ
資本金の額を変更した場合は法務局へ登記申請を行う必要があります。変更登記の期日は変更の事実があった日から2週間以内です。必要な登記を怠ると会社の代表者に過料を科される恐れがあるため、資本金変更の効力が発揮したらすぐに登記申請を行いましょう。
資本金の変更手続きは増資の場合と減資の場合で異なります。増資の場合は株式の割当に関する決議や新株の発行、株主リストの更新などが必要です。減資の場合は債権者保護の手続きを実施する必要があります。いずれの場合も、最終的には法務局への登記申請が必要な点は同じです。
資本金の変更登記にかかる費用を抑えるには、登記申請の手続きを専門家に依頼せず自分で行うのが良いでしょう。ただし、変更登記の必要書類が多岐にわたる上に細かなルールも多いため、登記申請の経験が少ない人が完璧に行うのは容易ではありません。費用と手間のどちらを抑えるかを考えた上で、専門家へ依頼するか否かを決めましょう。