銀行融資の条件変更、いわゆる「リスケジュール」は、資金繰りに悩む企業にとって1つの選択肢となるものです。リスケジュールを行うことで、返済条件を見直し、負担を軽減できます。運転資金の確保や必要な投資に資金を回す余裕ができるだけでなく、経営再建や新たなビジネスチャンスをつかむ可能性が広がるでしょう。本記事では、融資の条件変更(リスケジュール)とは何かを解説します。
目次
銀行融資の条件変更(リスケジュール)とは
銀行融資の条件変更(リスケジュール)とは、銀行などの金融機関に融資を受けている場合の返済条件を変更することです。具体的には、返済金額の軽減や返済期限の延長などさまざまな条件を交渉するのが一般的です。
リスケジュールを適切に行うことで、返済負担を軽減し、資金繰りの改善が期待できます。その結果、企業の経営再建や成長の基盤作りに貢献するケースも少なくありません。
銀行が条件変更に応じる要因
銀行がリスケジュールに応じる背景には、借り手となる企業の経営悪化による、銀行自身のリスク管理という理由が挙げられます。
企業側の景気の悪化や業績不振により、予定通りの返済が難しくなることがあるため、銀行は貸し倒れのリスクを回避し返済条件の見直しに応じることがあります。
特に中小企業の場合、銀行が経営再建を支援することで企業の存続ができ、最終的に安定した回収ができる可能性が高まるのです。
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銀行融資の条件変更(リスケジュール)のメリット
リスケジュールのメリットは、資金繰りの負担を軽減できる点です。銀行と相談し、返済金額を一時的に減らしたり、返済期限を延長したりすることで、経営再建のチャンスが得られやすくなるでしょう。
返済負担が軽減される
資金繰りが苦しい企業にとって、毎月の返済額を減らすことができれば、経営への負担が大きく和らぎます。具体的には、銀行と協議し、元金払いを一時的に見合わせたり、利息のみの支払いに変更したりすることが挙げられます。
リスケジュールをすることで企業は経営の危機を回避でき、他の業務に資金を充てる余裕もできるでしょう。また、従業員への給与支払いや仕入れ費用などの経費にも影響を与えずに済み、事業の継続も可能です。
また、企業は新たなビジネスチャンスを模索する時間も確保することで、将来的な成長基盤を築くための一歩を踏み出す機会にもなるでしょう。
経営再建のチャンスが得られる
リスケジュールのもう一つの大きなメリットは、経営再建のチャンスが得られることです。銀行は企業がリスケジュールを申請する理由を考慮し、経営改善のための時間を確保させる役割を果たします。
猶予期間を活用し、企業は新たなビジネスモデルを考えたり、コスト削減策を実行したりしやすくなるのです。
また、リスケジュール中は銀行が法的な回収措置を取らないため、企業は倒産リスクを一時的に回避できるでしょう。
銀行融資の条件変更(リスケジュール)のデメリット
銀行融資の条件変更(リスケジュール)には、いくつかのデメリットもあります。一時的に融資条件が緩和される一方で、信用力低下の恐れが考えられます。
また、新たな融資を受ける際には厳しい条件が課される可能性があり、融資審査のハードルが高くなるといった影響を受ける可能性もあると覚えておきましょう。
信用力の低下が懸念される
銀行融資の条件変更の大きなデメリットの1つは、信用力の低下です。銀行は借り手の返済能力を厳格に審査します。そのため、リスケジュールの履歴が残ることで、今後の融資条件に悪影響を与える可能性が高まるのです。
例えば、金利が上がったり、借入できる限度額が少なくなったりなど、融資の条件が厳しくなることがあります。新たに融資を必要とした際にも、希望の条件で借入れを行うことが難しくなり、資金繰りがさらに悪化するリスクもあると言えるでしょう。
さらに、リスケジュールの実施により、取引条件が厳しくなるなど取引先や仕入れ先への信用にも影響があると考えられます。デメリットをしっかりと把握したうえで、リスケジュールを行うべきかを慎重に判断しましょう。
新たな融資が難しくなる
リスケジュール中であることが、銀行にとってのリスク要因として捉えられるため、新たな融資を受けることが難しくなる傾向があります。
特に、リスケジュールを受け入れた銀行は、新たな融資を控えるのが一般的です。通常の融資よりも厳しい条件を提示されることが多く、経営に支障をきたす可能性があります。
さらに、リスケジュールは他の金融機関にも共有されるため、別の銀行でも新規の融資を断られるケースも想定しておきましょう。その結果、資金確保が困難になり、経営改善や立て直しが難しくなるリスクを抱えるケースもあります。
関連記事:法人が銀行融資を受けるには?手続きの流れ必要書類、その他の資金調達方法について
銀行融資の条件変更(リスケジュール)中に利用できる資金調達の手段
リスケジュール中に資金調達を行う手段として、不動産担保ローンやリースバックがあります。不動産担保ローンは、自社が所有する不動産を担保に銀行から融資を受ける方法です。
一方、リースバックは所有する不動産を売却しリース契約を結ぶ手段です。それぞれの特徴を解説していきます。
不動産担保ローンを活用する
不動産担保ローンは、自社が所有する不動産を担保に銀行から融資を受ける方法です。銀行の貸付条件が厳しくなるリスケジュール中でも利用可能なため、資金調達の選択肢として重宝します。
不動産担保ローンでは、物件の評価額に応じて融資額が決定します。また、借入金利が比較的低めに設定されるケースが多く、返済の負担が軽減されるメリットも。不動産を活用したローンは、リスケジュール中の資金繰りを実現するための重要な手段と言えるでしょう。
関連記事:銀行融資の担保のありなしでは何が違う?特徴や種類を徹底解説!
リースバックを活用する
リースバックは、自社の不動産を売却し、そのままリース契約を結ぶことを指します。不動産を売却することで一時的な資金調達が可能になり、事業運営を継続できるのがメリットです。さらに、リース契約することで、自社の営業拠点や重要な資産を手放さずに引き続きビジネスを運営できます。
特に銀行の融資審査が厳しくなり、新たな融資や既存の借入金の返済に困っている企業にとって、リースバックは有力な選択肢となり得ます。急な支出や運転資金など、必要に応じて柔軟に活用できるのも利点です。
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銀行融資の条件変更(リスケジュール)のポイント
銀行融資の条件変更(リスケジュール)が必要な場合、まずは十分な事前準備を行うことが必須です。銀行との交渉をスムーズに進めるためには、現在の財務状況を詳細に把握し、問題点を正確に分析しましょう。
交渉準備
リスケジュールの交渉を行う際、まずは現在の財務状況を正確に把握しましょう。過去の収支やキャッシュフローを詳しく確認し、どの部分に問題があるのかを明確にします。この過程で、不安定な要因や改善可能なポイントを整理し、交渉の土台を作るのです。
次に、具体的かつ現実的な改善計画を策定しましょう。銀行との交渉では、どのように経営を立て直し、返済を実現可能な状況にするかを明確に提示する必要があります。銀行は、計画が合理的で実現可能であると判断すれば、条件変更への理解を示す可能性が高まります。特に、収益性やコスト削減の施策を盛り込むことで信頼を得やすくなるでしょう。
銀行との信頼関係
銀行との信頼関係を築くためには、継続的なコミュニケーションが重要です。定期的に銀行へ進捗状況を報告し、透明性を確保しましょう。また、問題が発生した際には、早めに銀行へ相談し、一緒に解決策を考える姿勢を示すことが求められます。
さらに、過去の取引履歴も銀行との関係を左右するポイントの一つです。取引履歴が良好であれば、銀行は追加融資や条件変更へも前向きになる可能性が高まります。そのため、日頃から誠実に対応し、トラブルを避けることが大切です。
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まとめ
銀行融資の条件変更(リスケジュール)は、経営が厳しい企業にとって活用できる選択肢の一つ。銀行と交渉し返済条件を緩和することで、短期的な負担を軽減し、長期的には経営の安定を図れます。
メリットとしては、返済負担の軽減や経営再建のチャンスが挙げられます。一方で、信用力の低下や新たな融資を受けにくくなるといったデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。