税務相談を税理士以外に行うことは、税理士法で明確に禁止されています。たとえ無償の場合も例外ではありません。それは税務の専門性と信頼性を守るためです。本記事では、税理士法を遵守することの重要性や具体的な規定について詳しく解説します。
目次
税務相談とは何か
税務相談は税金に関するさまざまな疑問や課題に、税理士がアドバイスを提供するサービスです。所得税や法人税、節税対策、確定申告など幅広いテーマを扱い、専門知識をもとに法律の枠内で適切な解決策を提案します。
ここでは税務相談とは具体的にどのような内容か、また税務相談の範囲と該当しない範囲についても詳しく解説します。
税務相談の具体的な内容とは
税務相談の内容は多岐にわたりますが、主に以下の4つが挙げられます。
- 所得税の関する相談
- 法人税の取り扱いに関する相談
- 相続税や贈与税に関する相談
- 税務調査に関する相談
以下より、それぞれの相談内容について詳しく解説をします。
1.所得税に関する相談
給与所得者が副収入を得た場合の申告方法や医療費控除、扶養控除の適用などについての相談です。この場合、給与明細や領収書を持参することで、より具体的なアドバイスが可能になります。
2.法人税の取り扱いに関する相談
法人の決算書に基づく税額の計算や減価償却の方法、特別措置の適用に関する相談です。たとえば、事業を開始したばかりの企業が設備投資を行った際に、初年度の減価償却の計算方法について具体的な手段の提示をすることがあります。
3.相続税や贈与税に関する相談
相続財産の評価や適切な控除の利用を通じて、節税を図るための具体的な手法についての相談です。相続税の申告期限や書類の準備についても、専門的なアドバイスを行うことがあります。
4.税務調査に関する相談
税務署からの調査通知が届いた場合の対応方法や、過去の申告内容の見直しについての相談です。適切な対応策を知るためには専門的な知識が必要になるため、税務調査に特化した税理士がアドバイスを行うケースもあります。
税務相談と他の業務の違い
税務相談とは、主に納税者が抱える税金に関する質問や疑問に対してアドバイスや指導を行う業務です。この業務には、一般的な情報提供が中心になるものと具体的な対策について指示や意見を行うものがあります。なお、税務相談によって相談者が不利益を被った場合、損害賠償請求が発生するかもしれません。とはいえ、非税理士が税務相談を受けることは固く禁じられています。
一方、税務書類の作成や税務代理業務は、納税者に代わって実際の手続きや対応を行うものです。また、これらの業務にはそれに伴う法的責任が発生します。誤った税務処理を行った税理士は損害賠償責任を負うことになります。
このように、税金に関する助言を通じてサポートする税務相談と、税務書類作成や代理業務とではその性質や目的が異なるため、適切に理解して区別することが必要です。
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税理士以外の税務相談は違法
先述しました「税務相談の具体的な内容」のような業務について、税理士以外の非税理士が行った場合は税理士法違反となります。また、税理士の資格があっても、税理士名簿に登録されなければ税理士とは認められません。
税理士の内容は「税務相談」「税務書類の作成」「税務代理業務」ですが、これらの1つでも非税理士が行うことは違法とされています。
ただし、そのうちの「税務相談」については、どこまでが税務相談にあたるのか線引きが難しくなります。税理士法では「相談に応じる」の範囲について、「具体的な質問に対して答弁し、指示し又は意見を表明することをいうものとする」としています。この答弁や指示の範囲の解釈がグレーゾーンでありますが、一般的には納税に関する具体的な税額の提示や計算方法についての相談は税務相談と判断されるでしょう。
具体的な違法となる事例については、後述する「税理士以外の税務相談が違法になる事例」で詳しく解説をします。
税務相談に該当しないケース
上記で「税務相談の範囲はグレー」と説明しましたが、ここでは税務相談に該当しないケースとしていくつかの具体例を紹介します。
以下のケースは税務相談には該当せず、税理士法違反にはならないため、適切な情報提供や知識の共有として認められています。
自己申告に関する相談
自己申告に関する内容は税務相談には該当しません。自身の税務申告についての記入方法や、書類のフォーマットに関するアドバイスを受けることは税理士法に抵触しないからです。たとえば、確定申告書の記入例をインターネットで確認したり、友人に業務内容を説明したり、その内容を申告書に反映させたりすることは合法と言えます。
一般的な税務情報の提供
税務に関する一般的な情報提供も、税務相談には該当しません。たとえば、税率や控除額、税制改革についての情報を知人やコミュニティで共有することです。これにより、一般の人々が自らの税務理解を深めることは、合法的な行為として認められています。
法律相談や財務相談との分別
税務関係ではなく、法律や財務相談に関して行われるアドバイスも、税務相談に該当しません。法律に基づいた契約書の作成や資金運営に関する相談は、税理士とは異なる専門的な知識を求めるものであり、この場合は適切な専門家に依頼することが重要です。
教育目的での情報交換
教育的な場で税務についてのディスカッションを行うことも税務相談には該当しません。たとえば、大学のゼミやセミナーなどで税務に関する議論を行う場合、参加者は専門的なアドバイスではなく、知識の共有を目的としています。このような活動は、他者に具体的な税務処理を助言するものではないため、違法ではありません。
税理士以外の税務相談が違法になる事例
税理士法では、税務相談は税理士または税理士法人のみが行うべき業務と定めています。これは公正で専門的な助言を保障し、納税者の利益を守るためです。ここでは、税務相談における実際の違法行為とその理由について詳しく解説します。
無資格者による税務相談
税理士法第2条により、税務相談は税理士という資格を持つ者のみが行うことができます。無資格者が税務相談を行う事例として、たとえば会計ソフトの販売業者が顧客に対し、税務に関する具体的な助言を行うことがあります。
このような場合、相手に誤った情報を提供し、結果的に顧客が不利益を被る可能性が高まります。税理士ではない人が税務の詳細な内容に関わることが違法になるのは、法的に適切な解釈ができないからです。このような行為は税務署からの指摘や追徴課税につながる恐れがあります。
無償での税務相談
税務相談が無資格者により無償で行われる場合でも、違法と見なされることがあります。たとえば、友人や知人に対してタダで税務について相談に乗ることがあるかもしれませんが、その内容が具体的な助言になると法律違反になります。
この背景には、税理士法が税務の適正を担保するために存在していることが挙げられます。報酬の有無にかかわらず、無資格者が税務に関与することは、適切なアドバイスがされないリスクを高めるため法律違反となります。
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インターネットでの税務相談
最近では、オンラインガイドやブログでの税務相談が広まっていますが、これも無資格者が行うと違法となり得る事例です。特に特定の税務問題に対して具体的なアドバイスを行うと、それが法律上の税務相談に該当します。無資格者が不適切なアドバイスを示すことで、誤った納税行動を引き起こすリスクがあります。
信頼性の低い情報源からの助言やアドバイスは、税務に関する間違いや重大なトラブルを招く要因となるため、あらかじめリスクを理解しておくことが重要です。
このように無資格者による税務相談は、さまざまな形態によって実施され、法律違反のリスクを伴います。適切な税務相談を行うためには必ず税理士に依頼をすることです。
小谷野税理士法人ではオンラインによる税務相談も可能です。忙しい中小企業や個人事業主の方におすすめの便利なサービスです。ぜひご利用ください。
このほか、どのようなケースが税理士法違反にあたるのかについては、国税庁のQ&Aを参考にしてください。
非税理士が行う税務相談のリスク
非税理士や無資格者による税務相談を受ける場合、重大なリスクが伴います。以下では、非税理士に相談をした場合の具体的なリスクについて解説します。
誤った申告による修正申告のリスク
無資格者からの具体的なアドバイスが誤っていた場合、顧客は正確な情報に基づいた税務申告を行うことができません。その結果、後日税務署から指摘を受け、修正申告を迫られることがあります。このような事態は追加の税金や延滞税の発生につながり、余計なコストがかかるだけでなく、時間的な負担も増大します。
脱税と判断されるリスク
無資格者による誤った指導を受け、それに基づいて節税対策を行った場合、意図せずして脱税行為とみなされる可能性があります。これにより、税務署から調査や処罰を受けるリスクが高まります。その処罰は、罰金や延滞税といった金銭的負担として顧客にのしかかります。さらに法的問題に発展する可能性もあるため、顧客の社会的信用を損なう重大な結果につながる場合もあります。
適用すべき税制の選択ミス
税務には複数の控除や特例が存在しますが、無資格者はこれらに関する正確な知識を有していない可能性があります。そのため、適切な税制を利用できなかったり、不必要な手続きを指導されたりするケースも発生します。このようなミスにより、受けられるはずの税金の還付が受けられなかったり、本来よりも多くの税金を支払ってしまったりする恐れがあります。
法的責任が納税者にのしかかるリスク
無資格者による情報提供が、不正確だったり古い税制のまま確定申告を行った結果、納税者側に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。
たとえば非税理士のアドバイスに従って申告した結果、税務調査で問題が見つかり、それにより追徴課税やペナルティが発生すれば、その責任は最終的に納税者自身に及びます。
しかし、税理士資格をもつ有資格者に納税業務を依頼した場合は異なります。仮に納税額に誤りがあった場合の法的責任はその税理士にあります。ミスによる損害賠償も税理士または税理士法人にて負うことになり、納税者は守られます。
このようなリスクやトラブルを避けるためにも、税務相談は必ず適正な資格を持った専門家、すなわち税理士に依頼しましょう。
個人情報漏洩のリスク
無資格者に依頼する場合、適切な情報管理が行われていないケースもあります。顧客の個人情報や機密情報が流出するリスクが高まり、その結果、さらなるトラブルや詐欺被害に巻き込まれる可能性があります。
このように、非税理士に税務相談を依頼することで、修正申告の必要性や脱税リスク、税制選択のミス、さらには個人情報漏洩の危険性といった多面的なリスクが生じる可能性があります。これらを回避するためにも、必ず信頼できる税理士に相談することが重要です。
信頼できる税理士を選ぶポイント
納税者が自身の税務を正確かつ安全に行うためには、やはりちゃんと資格をもった税理士に相談をするのが一番です。そのためには信頼できる税理士を見つけることが不可欠です。
ここでは、最適な税理士を見つけるための5つのポイントについてご紹介します。
1.税理士が所属する団体や資格を確認する
まず、日本税理士会に登録されているかどうかを確認することは重要です。これにより専門資格を持ち、適切な認可を受けていることが確認できます。また、登録情報を調べることで、その税理士の活動拠点や専門分野についても知ることができます。
2.口コミや評価を調査する
他の利用者からの口コミや評価を確認することは、その税理士の実績や信頼性を判断する材料になります。具体的には、インターネットの口コミサイトや知人からの推薦を参考にすれば、実際にサービスを受けた人々の意見をもとに比較検討できるでしょう。
また口コミを通して、その税理士の性格や業務に対するスタンスが分かることもあります。この税理士と自分との相性は良いか、話しやすい雰囲気かなどの判断材料となるでしょう。
3.初回相談で専門知識や対応力を確認する
初回の面談や相談時に、税務に関する具体的な質問を投げかけることで、その税理士の専門知識や対応力を観察できます。その際、専門用語ばかりの一方的な回答をする税理士はもってのほかです。依頼者が理解できる明確でわかりやすい説明ができるか、真摯な態度で対応してくれるかどうかも重要なポイントです。
4.専門分野の適合性をチェックする
税理士にも得意分野があるため、自分のニーズに合った専門知識を持つかどうかを確認する必要があります。たとえば、個人事業主向けのサポートに特化した税理士と、法人税務に強い税理士では提供できるサービスが異なります。そのため、自分の目的や状況に最適な税理士を選ぶことが大切です。
5.料金体系の透明性を確認する
料金体系が明確に提示されているかどうかを確認することで、余計なトラブルを防止できます。契約前の段階で料金について詳しく説明してもらうことで、後から予期せぬ費用が発生することを避けられます。透明性の高い税理士は信頼性がより高いと言えます。
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税務相談のまとめ
税務相談は、税理士法に基づき専門資格を持つ税理士に依頼することが不可欠です。無資格者からのアドバイスに従うと、誤った情報で申告をしてしまうなど、さまざまなリスクが伴います。信頼できる税理士に相談することで、トラブルを避け、正確で適切なアドバイスを受けることができます。
また、最新の税制や法律に関する情報を把握するためにも税理士との連携が重要です。税理士と信頼関係を築き、税務知識を深めることで安心して納税を行うことができるでしょう。