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廃業と事業承継の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを解説!

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廃業と事業承継の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを解説!

法人企業、特に中小企業が将来の会社の存続について考える際に重要な選択肢となる廃業と事業承継。それぞれにはメリット・デメリットがあり、企業の状況や経営者の意向によっていずれかの選択を考えなければなりません。本記事では、廃業と事業承継のどちらを選択したら良いのか悩んでいる経営者に向けて、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

廃業と事業承継の違い

廃業と事業承継は、経営者が迎える選択肢の中でも、その目的や手続きの面で大きく異なります。ここでは廃業と事業承継、それぞれの概要について解説します。

廃業とは?

廃業とは、企業や個人事業主が自らの意志で事業を終了することを指します。経営者が経済的な理由や後継者不在などの要因で会社を清算する選択肢です。

その際、事業承継を検討することも重要な要素の1つとなります。適切な事業承継が行われることで、企業の資産やノウハウを無駄にせず次世代へ引き継ぐことができるからです。

廃業には、取引先との契約解消や従業員の退職手当の処理など、さまざまな手続きが必要です。企業を円滑に終了するには、法的手続きをしっかり行い、関係者への十分な説明を行うことが大切です。これにより、トラブルを防ぎ、影響を最小限に抑えられます。

また、廃業後は、新しい事業やライフスタイルを模索するチャンスにもなります。ただし、廃業の決断には心理的負担が大きいため、準備段階から専門家の支援を受けるなど、適切なサポートを整えることが重要です。

関連記事:廃業の手続きと費用、廃業後の確定申告について 

事業承継とは?

事業承継は、現在の企業の技術や意思を新しい経営者に引き継ぐという意味があります。また、事業承継に似た言葉で「事業継承」というものがあります。事業承継は、主に先代の意思や事業姿勢を引き継ぐ抽象的な意味をもつのに対し、事業継承はもっと具体的な内容になります。事業の権利や義務、財産等を引き継ぐという意味があります。

引き継ぐ対象は、主に「経営権」「資産」「知的資産」の3つに大別されます。経営権の引き継ぎとは、新しい後継者に経営を譲渡することです。具体的には代表取締役を選出し、役員変更登記等の手続きが必要になります。資産の引き継ぎには、会社の株や設備・不動産等が該当します。知的資産とは、会社の理念や方針、ノウハウ、顧客など無形資産にあたるものを指します。

事業承継では、基本的には事業をそのまま引き継ぐことになるため、会社の後継者選びがポイントになります。

事業承継の形態としては、以下の3つが挙げられます:

親族内承継

子どもや親族に事業を引き継ぐ形態。日本では伝統的な方法ですが、少子化や後継者不足の影響で減少傾向にあります。

親族外承継(第三者承継)

従業員や社外の第三者に事業を引き継ぐ形態。近年、後継者問題を解決する手段として注目されています。

M&A(合併・買収)

企業や事業を他社に売却して承継する形態。企業価値を評価し、スムーズに経営を引き継ぐ手段として利用されています。

また、事業承継と事業譲渡の違いについては下記の記事で詳しく解説しています。

関連記事:事業継承と事業譲渡の違いとは?それぞれのメリットや注意点も解説

廃業や事業承継を選ぶ基準

事業承継 後継者不足

廃業や事業承継を選ぶ際には、後継者不足や経営の持続可能性など、多くの要素を考慮する必要があります。

以下ではそれぞれの選択肢を検討するための基準と、経営者が直面する課題と解決のヒントを紹介します。

高齢化による引退

企業や個人事業主が廃業に至る理由は多岐にわたりますが、もっとも一般的な理由の一つは経営者の高齢化です。年齢とともに体力的負担や精神的ストレスの増大により、事業の運営が難しいと感じたときには、廃業または事業承継を検討するタイミングになるでしょう。

事業が黒字であっても、個人的な事情や生活の質を重視する考え方から引退を選択する経営者も多くいます。自己のライフスタイルや将来への不安から、事業を畳む決断をすることもあるでしょう。

赤字により継続が困難に

赤字経営や後継者不足は、会社の存続に深刻な影響を及ぼします。

昨今の材料費高騰による利益の減少や、取引先が廃業したことによる売上が減少したという中小企業は多いです。仮に赤字が続く状況では利益を生み出すことが難しく、資金繰りが逼迫し事業運営そのものが困難になってきます。

この状態が長く続くと企業は健全な経営が行えず、最悪の場合、廃業へと追い込まれることも少なくありません。

後継者不足の問題

近年深刻化する後継者不足の問題は、特に中小企業にとって深刻な課題です。2024年の後継者難による倒産件数(負債総額1,000万円以上)は過去最多となりました。

後継者が確保できなければ、事業を継続的に運営する体制が失われ、結果的に経営者の意向に反して事業を終える選択を余儀なくされることもあります。特に中小企業ではこの問題が顕著で、地域経済においても悪影響を及ぼすことが懸念されています。

なお、赤字経営と後継者不足が同時に発生しているケースでは、事業の売却や事業承継の検討もさらなる困難を招くことになります。2024年の休廃業・解散した企業の赤字率は過去最悪となっていることから、赤字経営の企業に対する事業承継の難しさが窺えます。

高齢化・赤字経営・後継者不足といった問題は、国の政策ですぐに解決するものではありません。そのため、企業としては早期検討することが事業の将来を決めるポイントとなります。

参考:2024年の「後継者難」倒産 過去最多の462件 | 東京商工リサーチ
参考:2024年の「休廃業・解散」企業、過去最多の6.26万件| 東京商工リサーチ

廃業と事業承継のメリット・デメリット

起業の成功率のイメージ

廃業と事業承継には、それぞれ異なるメリットとデメリットが存在します。どちらの選択肢を取るにしても、経営者は現状だけでなく将来を見据え、慎重に判断する必要があります。ここでは、廃業と事業承継、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

廃業の場合のメリット

廃業する大きなメリットは、計画的に事業を終了することで、経済的な不安を最小限に抑えられる点です。特に資金繰りが厳しい場合でも、借入金や債務を清算することで経営者としての重責から解放され、新たなステップに進む道が開けます。

さらに、事業の規模にもよりますが、廃業は事業承継と比べて法的手続きや交渉が少ない場合が多く、比較的スムーズにすすめることができるでしょう。ただし、実際に廃業となるまでは最低でも2~3ヵ月ほどかかるので、いつまでに廃業をしたいと決めている場合は、逆算して計画的に進める必要があります。

廃業の場合のデメリット

廃業のデメリットとしては、従業員の未来に大きな影響を与えることが挙げられます。事業を終了することで従業員の雇用が失われるため、経営者は彼らの生活や将来のことを考えなければならず、その重圧は非常に大きいものです。特に長年勤めた従業員がいる場合、その責任感は一層強まります。

さらに、取引先との関係性もネックとなります。廃業することで、それまで築き上げてきた信頼関係が損なわれるだけでなく、取引先の経営状態にも影響を与える可能性もあります。これは、特に長期契約やパートナー企業がある場合において深刻な問題となり得ます。

事業承継の場合のメリット

事業承継の大きなメリットは、既存の顧客やパートナーとの関係を維持できる点です。これにより、築いてきた信頼やネットワークを活用し、事業運営を円滑に進めることが期待されます。また、後継者が業務や運営に関する知識を十分に理解している場合は、経営移行がスムーズに進みやすく、引き継ぎによるロスも少ないでしょう。

「事業承継5ヶ年計画」を導入することで、段階的かつ計画的な移行を進められ、混乱を最小限に抑えることが可能です。この計画により、経営ビジョンを共有し、目標達成に向けた対応策を講じやすくなります。

こうしたメリットから、事業承継は企業の長期的な存続や成長を目指すうえで、非常に重要な選択肢です。事業承継を行うことで、これまで培ったノウハウや顧客基盤を円滑に引き継ぎできるため、経営の移行過程でもスムーズな運営が期待されます。

参考:中小企業庁:「事業承継5ヶ年計画」を策定しました
参考:事業継承ガイドライン|中小企業庁

事業承継の場合のデメリット

事業承継のデメリットとしては、後継者がいない場合に計画が頓挫するリスクが挙げられます。後継者不在が続けば、事業の引き継ぎが滞り、最悪の場合は廃業を余儀なくされる可能性もあります。

事業承継は基本的に会社の方針も含めて引き継ぐ形態ですが、すべてがそのまま引き継がれるわけではありません。新しい経営者に変わることで、経営スタイルも変化する可能性があります。従業員にとっては業務内容や雇用条件が変わる可能性もあり、それが従業員のモチベーションに影響したり不安をもたらすことにもつながります。また顧客にも不安を与え、信頼関係が損なわれるリスクもあります。

そのため、事業承継を成功させるには、十分に時間をかけた準備と適切な後継者の選定が重要になります。特に赤字経営の状態から事業承継を行う場合は、事業の立て直しや事業拡大の計画も含めてすり合わせを行うことが望まれます。

廃業・事業承継にかかる費用

内部留保

廃業および事業承継には、それぞれの手続きにおいて様々な費用が発生します。これらにかかる費用は、どのタイミングでどれだけかかるのか計画段階で把握しておくことが重要です。

ここでは、廃業と事業承継、それぞれにかかる費用の相場を紹介します。

廃業にかかる費用相場

廃業にかかる主な費用は、事業を終了するための法的手続きや資産の処分、従業員の対応などに伴うコストです。

具体的には、解散登記費用(法人の場合のみ必要)や債務整理に伴う弁護士費用、資産売却にかかる手数料、従業員の退職金や解雇手当などです。会社の規模や形態に応じて必要な金額が大きく異なりますが、一般的な目安として数十万円から数百万円を準備する必要があります。

なお、事業承継がかなわず自主的に廃業を選択した企業に対しては、「自主廃業支援保証制度」を利用できる可能性があります。廃業する際に必要となる資金調達の支援をする制度で、売掛金の決済などのつなぎ融資を銀行から借り入れる際に信用保証協会が保証を行ってくれます。

必要な手続きに伴う費用の把握と支援策を上手に活用して、廃業に伴う経済的な負担を軽減できる手段を模索しましょう。

参考:自主廃業支援保証制度|東京信用保証協会

関連記事:廃業の手続きと費用、廃業後の確定申告について 

事業承継にかかる費用相場

事業承継にかかる費用は多岐にわたります。通常、円滑な事業承継を進めるためには専門家のサポートが必要となり、この際、M&A仲介業者やコンサルタントへの手数料が発生します。この費用は数十万円から数百万円に及ぶ場合があります。

また、事業承継に関連して、後継者への教育や知識移転にかかる費用、現行プロセスの見直しなどに伴う費用も必要となるため、事前に十分な準備資金を見積もることが重要です。さらに、事業価値を客観的に算定するための評価費用も、承継の過程で発生する主なコストの一つです。

このように事業承継には多くの費用がかかりますが、政府や自治体が提供する補助金制度を活用することもできます。たとえば「事業承継・引継ぎ補助金」や「M&A支援機関登録制度」などは有名です。また、自治体が提供するさまざまなサービスもあります。これらをうまく利用することで、経済的な負担を軽減することも可能です。

中小企業庁のホームページでは、事業承継の支援策を一覧で見ることができます。自社の事業承継においてどれが活用できるかチェックしてみましょう。

参考:事業承継・引継ぎ補助金
参考:事業承継の支援策 | 中小企業庁

関連記事:中小企業の事業継承|種類や活用できる支援施策まとめ

まとめ

廃業や事業承継は、中小企業の経営者や個人事業主にとって重要なテーマであり、それぞれに異なる課題や利点があります。経営者は自社の状況や業界動向を十分に見極めながら、適切な選択を行うことが求められます。

廃業を選択する場合、迅速に事業を終了させることが可能ですが、従業員の雇用問題や取引先への対応、さらには経営者自身の心理的負担が課題となります。

事業承継を行う場合には、後継者の選定から教育、さらには経営権の移行といったプロセスには計画性と長期間にわたる準備が必要です。そのため、事業承継の円滑な実現には綿密な戦略と専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

廃業・事業承継に伴う手続きや税金対策は、ぜひ「小谷野税理士法人」にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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