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使わない固定資産の除却処理で節税できるのは本当?

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使わない固定資産の除却処理で節税できるのは本当?

使っていない固定資産は、帳簿上から除く除却処理によって節税につなげられます。支出不要でできる節税対策の1つで、なるべく節税したい事業者にとってありがたい仕組みでしょう。今回は、固定資産の除却の特徴や節税につながる理由、廃棄や売却との違い、仕訳事例、押さえておきたいポイント、忘れると発生するリスクなどを解説します。

固定資産の除却処理とは

インボイスと海外取引のイメージ

使わなくなった固定資産を帳簿上から除くことが、固定資産の除却です。お金をかけずに節税できる方法の1つであるため、事業者はよく理解しておくとよいでしょう。

資産の残高を損失処理するうえでは、勘定科目が設定されておらず、特別損失として扱うのがポイントです。適用するうえで、以下の点を押さえておく必要があります。

  • 資産を使用している間は除却できない
  • 減価償却が終わった資産の価額は1円のため、廃棄するときは除却が必要

費用の発生などを理由に廃棄しない資産は「有姿除却」を適用できるケースもあり、うまく活用するとよいでしょう。以下の通り、有形の固定資産が除却の対象です。

  • 不動産
  • 機械装置
  • 器具備品
  • 車両
  • 運搬具

固定資産を除却したあと、税務調査では事実や時期などがチェックされるため、以下の書類の保管が求められます。

  • 廃棄証明書
  • 廃棄した資産の写真
  • 除却に関する稟議書・議事録
  • 廃棄に関する請求書・領収書など

特に新しい機械や設備などの導入において、将来的に使わなくなる資産が発生する可能性は高くなります。

固定資産に限りませんが、ムダなものを持ち続けていると、お金やスペースをムダに消費するのがデメリットです。期末などタイミングを決めたうえで、資産の要不要を考えるのが望ましいです。

少額減価償却資産とは?一括償却資産との違いやメリット、注意点も解説

使わない固定資産は除却処理すると節税できる

使わない固定資産は除却処理すると、以下の通り節税の効果が期待できます。

  • 固定資産除却損を損金として処理できる
  • 税金が発生しなくなる

廃棄するときなどにかかる費用は損金として処理できるため、当期の利益を抑え節税につなげられる可能性があります。所得が発生しているタイミングで除却すると、特に節税効果をあげられるケースがあります。

一方、課税標準額150万円以上の機材、備品などにかかる償却資産税がかからなくなるのも、節税できる理由の1つです。課税額は以下の計算式で算出できます。

課税標準額×税率

税率は各市区町村によって異なるものの、1.4%が適用される傾向にあります。

土地や家屋などにかかる「固定資産税」とは異なり、償却資産税は申告が必要です。申告漏れが発生すると追徴課税を課されたり、土地なども償却資産として誤って申告するリスクが発生したりします。

使っていない資産はそのままにしておくよりも、廃棄や売却など処分をする方が賢明と言えます。

一方で、脱税目的で固定資産の処分が行われるケースが多いため、税務調査でチェックされるかもしれません。除却によって節税が期待できるため、固定資産台帳と現物のチェックを年に1度は実施するのがポイントです。

償却資産申告書とは?書き方や対象資産などをわかりやすく徹底解説!

固定資産の除却処理と廃棄・売却・無形固定資産の除去処理の違い

廃棄や売却、無形固定資産の除去処理との違いは、以下の表にまとめました。

廃棄

いらなくなったものを物理的に捨てること

売却

  • いらなくなったものを企業や個人などに売ること
  • 売却金額に応じて儲けや損が発生する
  • 購入したタイミングではなく、売却時の価額を適用する

無形固定資産の除去処理

  • ソフトウエアなど物理的な形をもたない資産が無形固定資産
  • 固定資産とは異なり、定額法での償却に限られる

無形固定資産のソフトウエアの場合、目的に応じて処理する方法が異なります。現物がないため、客観的な証拠となる書類などの保管が必要であると知っておくとよいでしょう。

固定資産の除却処理の仕訳事例

売掛金と節税に関するイメージ

除却の方法は、事業者の置かれている状況によって異なるのが特徴です。

まずは帳簿価額が1円の場合の事例です。

【減価償却の耐用年数が終わった場合】

借方

貸方

減価償却累計額

109万9,999円

車両運搬具

110万円

固定資産除却損

1円

耐用年数が終わった固定資産を事業で使い続けている場合、1円で処理する点がポイントです。

ここからは、110万円の大型特殊自動車を購入し、90万円減価償却していると仮定したうえで、以下の通り事例を紹介します。

【廃棄時に費用が発生した場合】

廃棄時に22,000円の費用が発生したと仮定すると、具体的な仕訳は以下の通りです。

借方

貸方

減価償却累計額

90万円

車両運搬具

110万円

固定資産除却損

20万円

固定資産除却損

20,000円

現金

22,000円

仮払消費税

2,000円

【譲渡益を得た場合】

譲渡などによって40万円得たと仮定すると、具体的な仕訳方法は以下の通りです。

借方

貸方

減価償却累計額

90万円

車両運搬具

110万円

現金

40万円

固定資産売却益

20万円

【無形固定資産の場合】

無形固定資産を扱う場合、除却は以下に示します。

借方

貸方

減価償却累計額

90万円

ソフトウエア

110万円

ソフトウエア除却損

20万円

物理的にソフトウエアなどが消滅などしていない場合でも、以下の条件を満たすと損金として処理できると知っておくとよいでしょう。

  • ソフトウエアを使用する業務自体がない
  • 他のソフトウエアの導入によって、今後利用する機会がない
  • バージョンアップなどによって、今後の利用がないと社内りん議書などで明らかである

固定資産を正確に管理するうえでも、正しく仕訳するのがポイントです。

参考:「第1款 除却損失等の損金算入」国税庁

固定資産の除却処理のポイント

悩む個人事業主

除却処理をするうえでは、以下の点を押さえておくとよいでしょう。

  • 直接法か間接法かによって仕訳が変わる
  • 状況に応じて有姿除却を適用する
  • 期中に処理する方法を知っておく

ここから詳しく解説します。

直接法か間接法かによって仕訳が変わる

固定資産の償却方法は直接法と間接法の2つがあり、以下の通り除却の仕訳方法に影響を与えます。

直接法

間接法

  • 減価償却とともに固定資産の価額を下げる方法
  • 借方に減価償却費・貸方に固定資産の勘定科目を適用
  • 償却していない固定資産の価額をチェックしやすい
  • 固定資産を取得したときの価額や、減価償却累計額などが分かりにくい
  • 減価償却するときに減価償却累計額に加算し、合計を示す方法
  • 固定資産の取得価額や減価償却累計額をチェックしやすい
  • 償却していない固定資産の価額、キャッシュの動きが分かりにくい
  • 直接法よりも手間がかかりにくい
  • 多くの企業で採用される傾向にある

以下の通りどちらを適用するのかによって、勘定科目が異なることに注意が必要です。

  • 直接法:貸方に建物や機械装置など具体的な資産を適用
  • 間接法:貸方に「減価償却累計額」を適用

基本的に、1度決めた償却方法は安易に変更するものではありません。

状況に応じて有姿除却を適用する

使わなくなった固定資産は除却するのが望ましいものの、廃棄費用などがかかるのを避けたい場合は有姿除却を適用するとよいでしょう。現状のままで固定資産を処理できるのが特徴で、費用を抑えられるためです。

有姿除却を適用するには、以下の条件を満たすのがポイントです。

  • 今後、事業で一切使わないと認められるものである
  • 特定の製品のために作られた金型などで、生産中止などによって将来的に使用される可能性がないと明らかである

処分に必要な見積もりの価格をもとに、帳簿上に適用する流れです。

参考:「第1款 除却損失等の損金算入」国税庁

個人事業主は経費をどこまで切れる?経費にできるものや上限・メリットなどぶっちゃけ紹介!

期中に処理する方法を知っておく

期中に除却する場合、以下の通り法人税と所得税で押さえておくポイントは異なります。

  • 法人税:事業年度末にある固定資産のみ償却
  • 所得税:除却するまでの期間の減価償却できる

法人税はグロス(総額)課税のため、期中に除去処理をしても納税額に影響が発生しません。

一方、所得税の場合は、資産の売却などが生じるまでの数カ月間を減価償却できます。

減価償却によって当期の利益額を抑えられ、節税につなげられます。不動産の貸付けが事業的規模に該当するかしないかによっては、税金に影響するでしょう。

他にも、損益や財務状況を正しく把握できたり、融資を受けやすくなったりするなどのメリットもあるのが特徴です。正しく節税したい事業者は、減価償却の基本についてもしっかりと理解しておくのが望ましいです。

減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!

固定資産の除却処理を忘れると生じるリスク

事業で忙しくしていると税務処理を忘れるケースもあるかもしれませんが、以下のリスクが生じると知っておくとよいでしょう。

余分な納税

帳簿に以下の資産を記載していると、償却資産税がかかるケースがある

  • 門や看板などの構築物
  • 製造設備や建設機械などの機械・装置
  • 机やパソコンなど工具・器具備品
  • 大型特殊自動車など車両
  • ボートなど船舶
  • 飛行機など航空機

※課税標準額✕税率で納税額を算出

固定資産を把握できない

実際の固定資産と帳簿上の数値が合わなくなる

税務調査で不利になる

税務処理を正しくできていないと判断されると、厳しくチェックされる可能性が高い

除却を忘れると、資金繰りの悪化などにつながることから、事業者にとってはデメリットがあります。以下の通り、税務調査で確認される項目も押さえておくのが望ましいです。

  • 資産などの除却日:引き取り業者などが発行する請求書など
  • 有姿除却の資産状況:資産の現物状況など
  • 無形資産の除却理由と状況:新しいソフトウエアの導入など

税務調査に不安を感じている事業者の場合、税理士へ相談するのが1つの方法です。

【税理士監修】税務調査が入る確率は?10~20年は来ないって本当?売上1,000万円弱の申告は注意!

税務処理や節税に関する相談は税理士へ

ここまで、固定資産の除却の特徴や廃棄や売却との違い、仕訳事例、ポイント、忘れると生じるリスクなどを解説しました。支出によって節税につなげるのが基本となるものの、支出をせずに節税できるのが固定資産の除却のメリットです。

一方で、正しく仕訳する必要があったり、忘れると余分に税金を支払ったりするなど注意点もあります。税務調査と節税のどちらも対策するうえでは、税理士を頼りにするのが理想的です。

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この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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