外貨預金とは、ドルやユーロといった外貨で預金を行うことです。外貨預金は日本円以上の利息が得られたり、為替レートの変動によって為替差益が発生したりなど、資産運用上のメリットを期待できます。ただし、為替差益が発生すると、多くの場合は確定申告が必要です。確定申告が必要なケースと不要なケースの違いを理解し、法令を遵守しながら資産運用を効果的に進めましょう。
目次
外貨預金にかかる税金
外貨預金においては、利息と為替差益の2種類に税金がかかります。円預金と同様に外貨預金にも利息がつき、税金が源泉徴収された額が手元に入ります。さらに外貨を円に換えた際に為替相場の変動によって利益が発生すれば、その利益も課税対象です。
それぞれの税金は計算方法が異なるため、外貨預金を始める際には事前に具体的な仕組みを確認しておきましょう。まずは外貨預金にかかる税金2種類を解説します。
利息にかかる税金
外貨預金の利息は、「利子所得」として税金が課せられます。利子所得には源泉分離課税が適用されるため、金融機関があらかじめ税金を差し引いた上で利息を支払います。具体的な税率は復興特別所得税を含めた所得税が15.315%、住民税が5%で、合計20.315%です。
ただし、海外の金融機関を通じて外貨預金を行う場合、税率や税金の取り扱いが異なる可能性があります。海外の金融機関を利用する際は、事前に確認しましょう。
為替差益にかかる税金
外貨預金における為替差益は「雑所得」に区分されます。為替差益とは、外国通貨を購入した際の為替レートと売却した際の為替レートの差により得られる利益のことです。
例えば、1ドル80円で購入した100ドルが売却時には1ドル140円になっていた場合、以下の為替差益が発生します。
為替差益=(140円−80円)×100ドル=6,000円
上記の場合、6,000円は雑所得として課税されます。
為替差益が発生したら確定申告が必要
外貨預金で為替差益が発生した場合には、確定申告が必要です。外貨預金を円または他の外貨に換える場合や、金融商品への投資目的で売却する場合には、為替差益が確定します。
為替差益は雑所得として扱われ、所得税が課されます。確定申告に必要な書類を準備し、正確な情報をもとに申告書を作成しましょう。適切な申告により税務上のリスクを減らし、安心して外貨取引を継続できます。
ただし、外貨を保有しているだけでは利益確定していないため、確定申告の必要はありません。売却時などに初めて課税対象となる点に注意が必要です。
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外貨預金で確定申告が必要なケース
外貨預金を行っていて為替差益が発生したり、為替差損を相殺したりするときには確定申告が必要です。
外貨を購入して保有しているだけでは利益は確定しませんが、売却する際には為替レートの変動によって利益や損失が発生します。換金時には、利益が発生したかどうかを確認することが大切です。
ここからは、外貨預金で確定申告が必要なケースを見ていきましょう。無申告の状態が続くと、後になってペナルティが科される可能性があるため、確定申告が必要かを判断する参考としてください。
為替差益が発生したとき
外貨預金を通じて得た為替差益は雑所得として扱われ、原則として他の所得と合算して確定申告する必要があります。確定申告をしない場合、延滞税や無申告加算税など、追加の税金支払いが発生するため、放置せずにきちんと申告しましょう。
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為替差損を相殺するとき
為替差損を相殺する場合にも、確定申告が必要です。為替差損とは、為替差益の逆であり、外国為替取引によって発生する損失を指します。為替差損が生じた場合には、他の雑所得のプラス分との相殺により、課税対象額の減額が可能です。
ただし、雑所得は他の所得とは相殺できません。仮に為替差損が発生して雑所得が赤字であっても、給与所得や事業所得といった雑所得以外の所得とは損益通算できない点を押さえておきましょう。
なお、個人の外貨預金による為替差損は雑所得扱いとなりますが、サービス提供など事業を通じて為替差損が発生した場合には事業所得扱いとなります。事業所得の損失の場合は、不動産所得や譲渡所得、山林所得などで損益通算が可能です。
企業が財務状況を把握する上では、損益の正確な計算が大切です。必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、正確な損益管理に努めましょう。損益管理や確定申告にお困りの際は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。
外貨預金で確定申告が不要なケース
外貨預金に関して、確定申告が不要な場合もあります。具体的には、給与や年金以外の所得合計額が年間20万円以下の場合や年間の総所得が48万円以下の場合です。ただし、給与や年金収入の額によっては確定申告が必要なケースもあるため、詳しく見ていきましょう。
給与・年金以外の所得合計額が年間20万円以下の場合
給与や年金以外の所得合計額が年間20万円以下の場合、原則として確定申告は不要です。外貨預金で得た為替差益が20万円を下回っている限り、申告義務は生じません。
ただし、給与所得が2,000万円を超える場合や公的年金等の収入が400万円を超える場合は、為替差益が20万円以下でも確定申告が必要です。
また、外貨預金の利益以外にも、他の副収入や雑所得を含めた合計額が20万円を超えると、確定申告が必要になります。資産状況を年に一度見直し、確定申告の要否を確認しましょう。
参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
副業所得20万円以下で確定申告は必要?ポイントや注意点を解説!
年間所得が48万円以下の場合
年間の総所得が48万円以下の場合も、確定申告は不要です。48万円の基礎控除の適用により、総所得金額が課税対象外となるため、税金の支払い義務は発生しません。
なお、基礎控除については、所得金額に応じて控除額の上限があるため、高所得者は注意が必要です。法改正や新規制導入の可能性もあるため、最新の情報をもとに都度判断をしましょう。
確定申告不要制度の対象は?|年金受給者の申告が不要なケースや手続きについて
まとめ
外貨預金で為替差益が発生した場合には、原則として確定申告が必要です。ただし、給与や年金以外の所得合計額が年間20万円以下の場合や、年間の総所得が48万円以下の場合には確定申告は不要なため、ご自身の状況をよく確認しましょう。
金融商品ごとに異なる課税のポイントや申告要件を正しく理解すれば、資産運用を効率的に進められます。最新の情報を追いかけながら税金や確定申告に関する知識を深め、賢い投資家としての道を歩んでいきましょう。