自己破産は、借金や返済負担が重い場合の救済策として広く利用される手段です。しかし、自己破産をしても税金の滞納分は免除されません。税金の滞納については自己破産による解決ができないため、別の対処策を検討する必要があります。本記事では、自己破産後の税金対応について詳しく解説をしていきます。
目次
自己破産しても税金は免責されない
自己破産を行った場合、通常、借金の返済義務は免除されますが、税金に関しては異なります。税金は「非免責債権」に該当するため、自己破産を行ったとしても税金の支払い義務は消えません。つまり、自己破産によって滞納分の税金が免責されることはありません。
具体的には、所得税や住民税、さらには固定資産税などの国や地方自治体へ支払うべき税金は、自己破産の免責の対象には含まれません。これらで滞納している分の税金は、支払うべき債務として残り続けます。
自己破産を検討している方は、税金を含む滞納金がいくらになるのか、破産手続き前にしっかりと計算をしておく必要があります。
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税金滞納を放置すると差し押さえのリスクがある
税金の滞納を放置した場合、まず最初の段階では税務署や市区町村から督促状が送付され、まだ支払う余地が与えられます。
しかし、これを放置し滞納の状態が続くと、最終的には財産の差し押さえが行われる可能性が非常に高まります。国税の場合、滞納後おおよそ50日以内、地方税では20日以内に督促状が送付され、ここで一旦支払いの猶予が与えられるでしょう。
しかし、与えられた猶予期間内に支払いを行わない場合、法的手続きが進行し、最終的には差し押さえが実行されることがあります。ここで恐ろしいのは、差し押さえの通知が届いてから実際に資産が差し押さえられるまでの期間は非常に短いという点です。差し押さえによる滞納処分は、借金の返済以上に生活基盤に直接的かつ深刻な影響を与えるため、納税は放置せず速やかに対応することが不可欠です。
参考:個人事業主必見!所得税の納付期限と延納制度・延滞税について解説!
延滞税の時効は成立しにくい
税金の無申告には時効というものが存在しますが、税金の滞納については時効成立は難しいと言えます。日本の税法では確かに税金の債権に時効は存在しますが、成立には多くの条件があり、容易に達成できるものではありません。
たとえば、住民税や所得税などの税金には納期限が定められています。納期限を過ぎても支払いが行われない場合、時効が進行し始めますが、税務署や自治体から督促状が送付された時点で時効は中断されます。督促状や催告状が届くと時効の進行がリセットされることから、税務署や自治体が徹底した対応を続ける限り、実際に時効が成立するケースは極めて稀です。
税金の滞納を放置することは、多くのリスクを伴う行為であり、督促を無視し続けることで未納額が膨らみ、さらに延滞金が加算されてしまいます。
また、仮に時効を目指して税金の滞納状態を放置したとしても、必要書類や証拠を揃えて税務当局に正当性を示すことは困難です。時効成立のためには長期間の法的な対応が必要であり、多大な労力と時間を費やす必要があります。結果として、法的な手続きを軽視した代償として、滞納分に加えた余分な出費や精神的な負担が増加してしまうことも珍しくありません。
税金を滞納しているときの対処法
税金の滞納をしてしまった場合には、迅速な対応が何よりも重要です。先に述べたように、滞納を放置してしまうと、延滞金の発生や財産の差し押さえといった厳しい措置が取られる可能性もあります。
以下より、税金滞納をしてしまった際にとるべき対処について解説をしていきます。
税務署や自治体の窓口で相談をする
税金の滞納に直面した際には、まず税務署や自治体の窓口へ相談することが効果的です。各種窓口では、事業者のさまざまな事情を考慮し、柔軟に対応してくれるケースもあります。納税が困難な理由を正直に説明することで、現状に応じたサポートや解決策を提示してもらえる可能性があります。
また相談窓口では、納税における具体的な計画や目処を共有することも重要です。たとえば、今後の収入状況や返済の見通しについて話すことで、分割納付や猶予制度といった納税負担を軽減するための選択肢が提案されることもあります。各種サポートを賢く活用しましょう。
納税の猶予制度を利用する
納税の猶予制度を利用するのも、有効な選択肢の一つです。猶予制度は、病気や経済的な困難に直面している方またはその他予期せぬ事情により、納税が難しい状況にある人に対して一定期間の税金支払いを猶予する仕組みです。事業主の場合ですと、休業や倒産、売上の大幅な減少など、経営状況の悪化による納税負担を軽減するために利用できる可能性があります。
納税の猶予制度を利用するには、適切な書類を準備し、税務署や自治体の案内に基づき申請手続きを進めることになります。また、審査を受ける必要もあります。
猶予制度の詳しい条件や手続き方法については、税務署または自治体に直接問い合わせを行うことで詳しく教えてもらえます。また、国税庁のホームページでも確認をすることができます。猶予制度を受けられる条件や手続きについて詳しく知りたい方は、国税庁が公開するFAQでご確認ください。
生活保護受給を検討する
自己破産により経済的に困窮している場合、生活保護の受給を検討することも大切です。生活保護を受けることで、最低限の生活が保障されるだけでなく、税金の滞納に対する督促が一時的に停止する可能性もあります。
ただし、生活保護を受けるためには一定の条件を満たす必要があり、経済活動にも影響を及ぼす可能性があります。受給を受ける前に受給内容と条件をよく確認をして、慎重に判断することが重要です。
また、生活保護は単に一時的な生活費の支援だけではなく、社会的な支援を受ける手段としても役立ちます。特に税金の滞納による生活への影響が大きい場合、生活保護制度を活用することで負担を軽減できるでしょう。受給手続きについては、自治体の窓口や専門の支援機関にてお尋ねください。
法人が税金を滞納するとどうなる?
法人が税金を滞納した場合の影響は、個人事業主とはまた違ったリスクや問題があります。法人が負うべき税金は法人税や消費税、住民税など多岐にわたりますが、税金の滞納が続く場合、財産の差し押さえや登記上の制限が課される可能性があります。特に法人税の未納付の場合、法的手続きが進むことになります。これにより、強制的な財産の差し押さえが実施されるというリスクが生じるため、税金の滞納が法人に与える影響は非常に重大です。
さらに、法人の代表者や役員に対しても責任が及ぶ場合があります。法人が破産手続きを取った際には、代表者に支払い義務が生じるケースがあります。また、税金の滞納は法人の信用や今後の資金調達にも悪影響を及ぼすことを理解しなければなりません。今後の事業運営や融資にも支障をきたす可能性もあるため、早急な対策が求められるでしょう。
法人が滞納リスクに直面した際には、ただちに税務署に報告しましょう。これにより、法人向けに提供されている納税の猶予制度や分割払いの提案をもらえたりします。
また税理士に相談することも有効です。顧問税理士がいる場合、滞納するケースは稀ですが、顧問契約を結んでいない場合でもスポットで依頼することで具体的な解決策を見いだすことができます。専門家のサポートを受けることで、差し押さえなどの法的手続きの開始を防ぎ、財務面での圧迫も回避しやすくなるでしょう。
法人における経済的な負担を抑えるためには、単なる滞納の防止にとどまらず、適切な納税計画の構築が不可欠です。
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税金滞納のリスクを避けるためには専門家にすぐ相談を
税金滞納の放置は延滞税によるダメージだけでなく、差し押さえによる私生活にも影響を及ぼす可能性があります。自己破産を選択した場合でも、税金の支払い義務は消えないため、早急な対処が不可欠です。
個人事業主や法人としては、事業への信用や今後の資金調達にも悪影響を及ぼします。法人の場合は、税金を滞納することで法人そのものだけでなく、代表者個人にも大きな責任が発生します。特に法人は会社経営にもかかわるため、場合によっては従業員の生活にも影響を及ぼしかねません。
税金延滞については早めに税務署に相談、または法人であれば税理士に相談して適切なアドバイスを仰ぐことをおすすめします。専門家によるサポートを受け、法的なリスクを最小限に抑えながら問題を解決していきましょう。
自己破産による税金滞納、法人による税金の返済計画についてはお困りの際は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお問い合わせください。