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給与と報酬の判断基準とは?税務上の違いや申告ミスのリスクを解説!

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給与と報酬の判断基準とは?税務上の違いや申告ミスのリスクを解説!

給与と報酬の判断基準として、雇用関係を結んでいるのかどうか、労働時間・場所などに制約を設けているのかなどの点があげられます。判断基準を知ったうえで、正しく経費として算入するのは事業者にとって重要なポイントです。今回は、給与と報酬の判断基準や税務上・謝礼との違い、裁判事例、誤って申告するリスクなどを解説します。最後まで読めば、給与と報酬の違いに関する理解が深まるでしょう。

給与と報酬の判断基準とは

給与と報酬の判断基準は明確にされており、以下の通り時間的拘束や裁量権の有無などの点が異なります。

  • 給与:雇用契約がある従業員などを対象に、指揮監督下で提供された労働への対価として支払う費用
  • 報酬:雇用関係がない支払相手を対象に、自己裁量のもとで提供された成果に対して支払う費用

原則として、雇用契約書を結んでいる方に対する支払いは給与で、業務委託契約などを結んでいる方の場合は報酬として扱う必要があります。

後述する通り、それぞれの違いを正しく把握できていないと、ペナルティを課される可能性がある点は押さえておきたいポイントです。以下の通り、判断基準は細かく分けられるため、しっかりとチェックしておくのが望ましいです。

代替できる業務であるか

  • 雇用関係にある従業員がいる場合、基本的に外部の事業者に仕事を振るケースはない
  • 下請けなど外部の事業者が代替できる業務に関する支払いの場合、報酬に該当すると見なされる可能性がある

請求書をもらっているか

  • 支払相手から請求書をもらっていない場合、給与と見なされる可能性がある
  • 雇用関係にある場合、原則として請求書の発行はない

指揮監督下においているか

勤務場所の指定や、業務に関するマニュアルのもとでの仕事を依頼する場合、支払う費用は報酬と見なされる可能性がある

組織の一員としているか

就業規則を守らないと懲戒処分などのペナルティを課す場合、支払う費用は給与と見なされる可能性がある

仕事の依頼を拒否してもよいか

仕事を拒否できないとしている場合、支払う費用は報酬と見なされる可能性がある

業務上の危険行為について責任を負っているか

仕事上で発生する危険や損失を相手の責任としている場合、支払う費用は報酬と見なされる可能性がある

時間的な拘束をしているか

  • 勤務時間を指定していたり、時間単位で報酬を算出したりしている場合、支払う費用は給与と見なされる可能性がある
  • 報酬の場合、成果を出すまでにかかる労力や時間などと、支払う費用には関連性がない

成果に関係なく対価を支払っているか

  • 成果に関係なく費用を支払う場合、給与と見なされる可能性がある
  • 報酬の場合、基本的に成果が提供されたあとで費用が生じる
  • 労働時間に応じて費用を支払うのが給与の仕組みである

材料などを支給しているか

  • 仕事で用いる材料や機材などを支給している場合は、給与と見なされる可能性がある
  • 食事手当や通勤手当、制服手当などを支給している場合、報酬と見なされない可能性がある

参考:「源泉所得税における給与等の課税の取扱い」国税庁

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給与と報酬の税務上の違い

給与と報酬では、以下の通り税務上の扱い方が異なります。

  • 所得税
  • 源泉徴収
  • 消費税

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

所得税

給与と報酬では、以下の通り所得税を算出する計算式が異なります。

給与

  1. 給与収入ー非課税手当ー給与所得控除で給与所得を算出
  2. 給与所得ー所得控除で課税所得を算出
  3. 課税所得×税率(5%から45%)ー控除額で所得税を算出

報酬

  • 報酬の支払いが1回あたり100万円以下:報酬×10.21%
  • 報酬の支払いが1回あたり100万円を超える:(報酬ー100万円)×20.42%+102,100円

給与の場合、原則として従業員の代わりに年末調整で申告をするのが特徴です。

一方で、一般的に報酬の場合は、報酬に対する申告を支払相手に任せられます。

源泉徴収

源泉徴収の有無において、給与と報酬は異なります。

  • 給与:従業員の給与から天引きした「源泉所得税」を毎月国に納める
  • 報酬:一定の報酬を除き、原則として源泉徴収の必要がない

源泉徴収とは、毎月の給与などを支払うときに、一定額を納税者本人の代わりに納付する仕組みのことです。

年末にまとめて所得税を支払うと、事務手続きや納税負担が大きくなりやすく、給与支払い時の処理が日本で実施されてきました。

報酬は源泉徴収の対象外となるものの、以下に該当する場合は対象となることを押さえておくとよいでしょう。

原稿料や講演料など

1人当たり1回の金額が50,000円以下の賞金などの場合、対象外である

特定の資格を持つ方への支払い

以下に該当するケースが対象

  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 司法書士など

診療報酬

社会保険診療報酬支払基金(診療報酬の支払いと審査の仲介機関)が支払うもの

プロスポーツ選手・モデル・外交員などへの支払い

プロスポーツ選手として、野球やテニス、サッカーなどがあげられる

演劇やテレビ放送などの出演料・芸能プロダクションを営む個人への支払い

映画や音楽、舞踊、漫才などへの出演料も該当

ホステスやコンパニオンへの支払い

ホテルの宴会などで、接待を担当する方への支払いが該当

一時的に支払う契約金

プロ野球選手の契約金などが該当

広告宣伝のための賞金や馬主への競馬の賞金

  • 広告宣伝の賞金とは、製品やサービスの宣伝が目的の賞金や製品
  • 素人のクイズ番組やのど自慢の賞金などが該当

報酬の支払い対象が法人の場合、「馬主である法人への競馬の賞金」に限られます。以下に該当する報酬に関しては、源泉徴収の義務がありません。

  • 従業員を雇用しておらず、給与支払いをしていない個人が税理士や弁護士などへ支払う報酬
  • 2人以下の家事使用人に対してのみ給与を支払っている個人が、給与として支払う報酬

家事使用人とは、家政婦や家政夫のことで、掃除や洗濯などの仕事をする方を示します。

源泉徴収税の支払いは給与などを支払った月の翌月10日までです。一方で、従業員の数が10人未満で以下の条件を満たす場合、半年分の税金を一括で納められます。

  • 給与や退職金から源泉徴収した
  • 税理士や弁護士などの報酬から源泉徴収した

税務手続きの負担を軽減するうえで、制度を活用するのは有効です。

参考:「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」国税庁

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消費税

消費税に関する給与と報酬の違いは、具体的に以下の通りです。

  • 給与:不課税で仕入税額控除の対象外である
  • 報酬:課税対象で仕入税額控除が適用される

仕入税額控除とは、売上時の消費税額から、仕入などにかかった消費税を指し引ける仕組みを示します。仕入税額控除の対象となる取引は、具体的には以下の通りです。

  • 商品など棚卸資産の購入費
  • 原材料などの購入費
  • 事業用資産の購入か賃借
  • 広告宣伝費
  • 厚生費
  • 事務用品や消耗品の購入費
  • 修繕費
  • 外注費

給与は仕入税額控除の対象外となるものの、以下に該当する費用は認められます。

  • 加工賃
  • 人材派遣料
  • 警備・清掃の委託料など

仕入税額控除の適用で納税額を抑えられるケースがあり、事業者の中には支払い費用として報酬を選びたくなるのが心情かも知れません。

後述する通り、税務調査で給与・報酬の計上ミスを指摘されると、余分に納税するリスクが生じます。複雑に感じる場合は、自分で対処するのではなく、税理士などの専門家に相談すると効果的でしょう。

参考:「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」国税庁

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給与と報酬と謝礼の違いとは

社長の給与の決め方に関するイメージ

給与や報酬と謝礼の違いとは、労働や成果物の対価とするのか、感謝の気持ちを表すためのものであるのかという点です。前述の通り、給与や報酬は従業員・業務委託契約を結んでいる方などを対象に、労働や成果物への対価を示します。

一方で、謝礼とは相手からノウハウなどを提供してもらったとき、感謝の意を表すために渡す金銭や品物などを示すのが特徴です。謝礼の場合は、以下の通り仕事などが終わったタイミングで直接渡す傾向にあります。

  • アンケートの回答に協力してもらった御礼
  • お友達紹介キャンペーンへの参加に対する御礼など

謝礼として渡すものとしては、現金やギフト券、商品券、お菓子などがあげられます。ビジネスで謝礼を渡す場合、以下のポイントを押さえる必要があります。

  • 無地の白で水引きなしの封筒を選ぶ
  • お札の表側を封筒の表に向け、中袋に新札を入れる
  • 表書きとして謝礼や御礼のほか、贈り人の名前を記載する

ビジネスでは特に、謝礼を渡すときにマナーを押さえると、相手からの信頼を得やすくなるでしょう。

給与と報酬に関する裁判例

給与と報酬のどちらに該当するのかを巡り、裁判で争われた事例は以下の表に示します。

裁判の事例

概要

複数の職人と働く一人親方に支払った費用は報酬でなく、給与(昭和58年議決)

以下の理由から、給与と判決

  • 一人親方のほかに複数の職人がおり、個々の独立した事業としては認められない
  • 労務の提供の対価は基本賃金・時間外勤務手当などの基準に基づいている
  • 雇用契約書はないものの、実質的に雇用したうえで給与を支払っていると判断するのが妥当
  • 各職人が一人親方に該当するとしても、請求人の指揮監督のもとで提供された労務の対価と見なされる場合、給与とするのが相当

ストリップショウの出演者に支払った費用は報酬(昭和55年議決)

  • 客の前で踊ったり服を脱いだりするストリップショウは「所得税法施工例第32条第4項」の舞踊に含まれると判断
  • 所得税法第204条第1項第5号に規定の報酬か料金に該当すると判決

経営するキャバクラのキャストへ支払った費用は給与(平成30年)

  • キャストは時間的、空間的な制約を受けておらず、営業で必要な通信費などを負担しており、報酬に該当すると請求人は主張
  • 自己の計算と危険において、キャストは独立して事業を営んでいたとは見なされない:採用後、数ヵ月間の時給保証、売掛金の回収責任なしなど
  • 請求人とキャストは給与や勤務時間、規則などに合意していた
  • キャストの勤務時間や接客時間が管理されていたり、店長の指示で指名客以外の客にも対応したりしていたことから、請求人の管理下にあるとするのが妥当

裁判の事例を通しても、給与と報酬の判断に関しては、個々の状況によって異なるのが分かります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家を頼りにするとよいでしょう。

参考:「『平成30年1月11日判決』国税不服裁判所

参考:「報酬、料金等」国税不服審判所

給与と報酬を誤って申告するリスク

本来は給与として算入すべき経費を報酬として誤って申告すると、以下の通りペナルティを課される可能性があります。

過少申告加算税

  • 税務調査までに修正申告しなかったり税務署から申告税額の更生を受けたりすると生じる
  • 追加で徴収された税額に対し、10%か15%が加算される

重加算税

  • 納税額が少なかったり期限内に確定申告できなかったりするとき、仮装や隠ぺいがあると判断されると生じる
  • 過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%が加算される

不納付加算税

  • 源泉所得税を期限までに納めないと生じる
  • 本税に対して5%か10%の金額が加算される

消費税の増額

仕入税額控除していた分の税金を納める必要がある

期限内に確定申告できなかったり税務調査後に申告したりすると、延滞税や無申告加算税が課されることには注意が必要です。

原則として、追徴課税は一括での納付が求められます。

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ここまで、給与と報酬の判断基準や税務上・謝礼との違い、裁判事例、誤って申告するリスクなどを解説しました。給与と報酬は似ているものの、雇用関係の有無や、労働力と成果のどちらに該当する費用なのかという点などで異なります。

報酬は仕入額控除を適用できるケースがあり、少しでも納税の負担を押さえたい事業者にとって魅力的に感じられるかも知れません。

税務調査で計上ミスを指摘されると、追徴課税のペナルティを課される可能性があり、注意が必要です。事業に専念するうえでは、税務に関する疑問や不安などに関して税理士を頼るのが賢明でしょう。

小谷野税理士事務所では、事業者様のサポートをしてきた実績が4,000件以上あり、安心して利用してもらえます。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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