先物取引やオプション取引で利益を得た場合、確定申告が必要になることをご存知でしょうか?また損益通算や繰越控除などの制度を活用して確定申告をすれば、税負担を軽減できる可能性もあります。この記事では、先物・オプション取引の確定申告のやり方や必要な書類などをわかりやすく解説します。利益を得た方はもちろん、損失を出した場合でも申告することで将来の利益と相殺できる場合があるため、ぜひご覧ください。
目次
先物・オプション取引とは
先物取引やオプション取引をこれから始めたいと考えている方も多いのではないでしょうか。以下では、まず先物・オプション取引の概要について解説します。
先物取引
先物取引とは、特定の期日にあらかじめ決められた価格で商品や金融商品を売買することを約束する取引です。先物取引は商品先物と金融先物の2種類に分けられます。
商品先物は食物から原油・電力まで幅広い商品を対象としています。それに対して金融先物は日経平均株価や通貨や金利などを対象としているのが特徴です。
オプション取引
オプション取引とは、特定の期日にあらかじめ決められた価格で「商品や金融商品を売買する権利」を売買する取引です。
買い手は自分に不利な場合は権利を放棄でき、売り手は買い手から受け取った代金証拠金に充当したり、運用資金として利用したりできます。
先物・オプション取引のメリット・デメリット
先物・オプション取引を実施するメリットとデメリットを簡単に表でまとめました。
メリット | デメリット | |
先物取引 |
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オプション取引 |
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先物・オプション取引は高いレバレッジ効果や豊富な取引戦略があり、魅力的なメリットが多いです。しかしその一方で、損失リスクや価格変動の複雑さなど、注意すべきデメリットもあります。
各取引の特徴やメリット・デメリットを理解して、自身の投資経験やリスク許容度に合わせて運用しましょう。
先物・オプション取引における確定申告の必要性
先物・オプション取引をして利益が出た際に確定申告が必要かどうか、気になる方も多いかと思います。この章では、先物・オプション取引に関する確定申告の必要性について解説します。
利益は「雑所得」扱いで申告分離課税の対象
先物・オプション取引の利益は雑所得として区分され、分離課税の対象となります。この分離課税制度は源泉分離課税と申告分離課税の2種類に分けられます。
源泉分離課税は先に所得税が控除されているため、利益を受け取る際に所得税は納税済みです。しかし申告分離課税の場合、利益があればその旨を自分で申告しなくてはいけません。
先物取引・オプション取引は、後者の申告分離課税にあたります。この場合、税率は所得に関係なく一律で20.315%が課税されます。
20万円を超えると確定申告が必要
先物取引で得た利益が20万円を超えた場合は、確定申告をしなければなりません。ここで言う「利益」とは、取引で得た収入から投資元本や取引手数料といった必要経費を差し引いた純利益です。
逆に先物取引による利益が20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則として必要ありません。しかし、この場合は所得税の申告が不要というだけで、住民税の申告は別途必要なので注意しましょう。
給与所得が年間2,000万円を超える高所得者は、会社で行われる年末調整の対象外となるため、所得税の確定申告が必須です。給与所得以外に先物取引の利益があるかどうかにかかわらず、給与所得が2,000万円超の時点で確定申告の義務が発生します。
損失が出た場合
先物・オプション取引では、利益だけでなく損失が発生することもあり得ます。損失が発生した場合でも、確定申告することで翌年以降の利益と相殺できる「繰越控除」という制度があります。
損失を申告しておけば将来の利益に対してその損失を利用できるため、資金管理がしやすくなるのがメリットです。特に金融市場は予測が難しいため、想定外の損失に対する対策をしておくとよいでしょう。
参考:No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除|国税庁
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先物・オプション取引における確定申告のやり方
先物・オプション取引における確定申告に不備があれば、税務当局からの指摘や罰則の対象となります。以下では税法を遵守して正確に先物・オプション取引における確定申告をするポイントを解説します。
確定申告に必要な準備
先物・オプション取引における確定申告の際に、自分で用意しなくてはいけない書類はこちらです。
- 印鑑
- 源泉徴収票
- 年間損益計算書
また、税務署では以下の書類をもらう必要があります。
- 申告書B(第一表・第二表)
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 申告書第三表(分離課税用)
- 本人確認書類
上記の書類に加えて報告書の提出が必要となるケースがあります。詳細については、所轄の税務署に問い合わせてみましょう。
取引で損失した場合
先物・オプション取引で損失が発生した場合、原則として確定申告は不要です。ただし確定申告によって将来の利益と相殺できる「損失の繰越控除」を利用できるため、申告しておくことをおすすめします。
損失の繰越とは、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せる制度です。繰り越した損失は、翌年以降に発生した利益と相殺(損益通算)できます。繰越控除によって課税対象となる利益を減らし、税金を抑える役割もあります。
- 申告書B(第一表・第二表)
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 申告書第三表(分離課税用)
- 本人確認書類
- 申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
確定申告はマイナンバーカードなしでいい?申告方法や書類を解説!
【初心者向け】先物・オプション取引の始め方と必要書類
以下では、これから先物取引をしたいと考える初心者に向けて先物取引のやり方をご紹介します。
基本の始め方
先物・オプション取引の始め方と基本的な流れを簡単にまとめました。
- 証券口座の開設
- 証拠金を預託
- 取引の注文(取引したい銘柄、数量、期日、価格を指定して注文)
- 取引の成立(注文が市場でマッチングすれば取引成立)
- 決済期日までに反対売買(買った場合は売る、売った場合は買う)を行い取引終了
始め方に不安がある方は、金融情報サイトで市場の動向や関連ニュースを確認するとよいでしょう。先物・オプション取引に関する書籍を読んだり、セミナーに参加したりするのもおすすめです。十分にリスクを理解し、無理のない範囲で取引を行いましょう。
証券口座の開設に必要な書類
証券会社で口座を開設するには、本人確認書類と個人番号(マイナンバー)が確認できる書類が必要です。証券会社によって必要な書類は異なるため、事前に確認しておきましょう。
本人確認書類の例としては、以下のようなものがあります。
- 運転免許証
- パスポート
- 住民票の写し
- 印鑑登録証明書
- 各種健康保険証
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 住民基本台帳カード
- 個人番号カード
口座開設が完了すると、取引に必要な書類として取引報告書や年間損益計算書が発行されます。これらは確定申告において必要となるため、しっかりと保管しておきましょう。
記入方法については、各書類に指示に従って記入漏れや誤りのないよう正確に必要事項を記入してください。
先物・オプション取引のリスク
どちらの取引にも共通して言えるのが、 市場全体の変動によって損失を被る可能性があるということです。予想と反する形で価格が変動すると損失が膨らみ、損失が証拠金を上回ることもあります。
急激な価格変動は売り手が損失の被害を被りやすいため、商品の特性をよく理解してなるべくリスクを抑え取引をしましょう。
先物・オプション取引と確定申告に関するよくある質問
最後に、先物・オプション取引や確定申告に関するよくある質問をまとめました。これから取引を始めてみようと考えている方は、ぜひご覧ください。
取引を始めるのに必要な資金は?
オプション取引で売り手になる場合は担保金である「証拠金」を証券会社に差し入れなくてはいけません。証拠金の金額については証拠金計算システムをもとに決定し、金額は1週間ごとに変動します。
証券会社ごとにサイトで証拠金のシミュレーションができるため、これらのサービスを利用して証拠金を準備するのがおすすめです。
先物取引で申告不要になるのはいくらから?
一般的に年収が2,000万円以下で、給与所得以外の所得合計が20万円以下であれば申告不要です。ただし、この場合も住民税の申告は必要なので注意しましょう。
先物・オプション取引の確定申告に関するまとめ
先物・オプション取引に関する確定申告は雑所得として区分され、一定以上の利益が出た場合は確定申告が必要です。先物・オプション取引を行う際には、税務面での注意を払いつつ計画的に運用しましょう。
もし、多額の確定申告が必要な場合や複雑な取引を行っている場合は、税理士に相談することをおすすめします。
小谷野税理士法人では先物・オプション取引の確定申告に関するお悩みの相談やご依頼が可能です。まずは一度気軽にご相談してみてください。