皆さんは、クラウドファンディングにどのような税金がかかるのかについて詳しくご存じでしょうか?クラウドファンディングには複数の種類が存在し、種類ごとに課される税金の種類が異なります。本記事ではクラウドファンディングの種類と節税対策を解説します。「クラウドファンディングを利用する際の税務処理に不安を感じている」といったお悩みがある方は、ぜひご覧ください。
目次
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する仕組みです。別名ソーシャルファンディングとも呼ばれ、2011年の東日本大震災をきっかけに普及し、2016年ごろから注目を集めるようになりました。
クラウドファンディングと寄付の違いを3つの項目に分けてみると、以下のようになります。
クラウドファンディング | 寄付 | |
目的 | 具体的なプロジェクトの実現 | 社会貢献 |
リターン | リターン提供がある | リターン提供がない |
性質 | 資金を集める | 金銭だけでなく物資の提供も含まれる |
クラウドファンディングは単なる資金調達にはない拡散性の高さやテストマーケティングとしての側面がある資金調達法です。そのため、昨今では新しいビジネスアイディアや技術、製品アイディアなどを持つスタートアップ企業が導入しています。
クラウドファンディングに関係する税金と課税対象
現在実施されているクラウドファンディングは、大きく分けて3つの種類があります。そしてこの種類によって税金の取り扱いもそれぞれ異なるため要注意です。この章ではクラウドファンディング関連の税金および課税対象について、種類別に解説します。
購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングとは、資金調達者が商品・サービスをリターンとして資金調達する方法です。この場合は、資金調達者に所得税が課税されます。
この方法では、資金提供者は「消費者」として商品・サービスを購入したのと同様の扱いになります。資金調達者は商品を販売しているため、当該年度の事業所得を所得税として支払うのが通例です。
寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングとは、資金提供者が無償の寄付をすることで資金提供を呼びかける方法です。資金提供者にとっては何も見返りがなく、資金調達者は寄付される立場として課税対象となります。
税金の種類は法人・個人によって変わり、贈与税や所得税がかかる場合があります。たとえば個人からの寄付は贈与税が発生し、110万円超の場合は適切な申告が必要です。もし法人から寄付を受ける際は一時所得扱いとなり、別途所得税がかかる場合があるのでご注意ください。
寄付型クラウドファンディングの税金は、このように提供者と調達者によって異なることを把握しておきましょう。
投資型クラウドファンディング
投資型クラウドファンディングとは法人や個人に資金提供を実施して、リターンとして配当金を得る方法です。投資型は資金提供者が投資による利益が発生すると課税されます。
事業収入があれば課税となりますが、資金調達の時点では課税対象にならないのが投資型のポイントです。そのため、資金をすべて事業の拡大などに充てられるのが大きなメリットと言えるでしょう。
【資金調達者向け】クラウドファンディング節税対策
この章では資金調達者向けのクラウドファンディングでおすすめの節税対策を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
青色申告をして特別控除を受ける
青色申告特別控除とは個人事業者が受けられる所得税控除のことです。青色申告をするためには、まず税務署に「青色申告承認申請書」を提出しなくてはいけません。
青色申告特別控除によって最大65万円の控除を受けられるため、この控除を所得から引けば大幅に課税所得を減らせます。ただし最大額の控除を受けるにはいくつかの条件をクリアしなくてはいけないので、注意しましょう。
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基礎または特別控除を受ける
個人事業主は基礎控除や特別控除を活用することで節税対策ができます。具体的には、所得の合計額が48万円以下の場合、基礎控除以内の扱いとなって課税されません。
贈与税は1年間で贈与された合計額が110万円以下の場合は課税対象となりません。もし法人から寄附・贈与を受けた個人事業主は一時所得扱いとなりますが、最高で50万円の特別控除が受けられます。
必要経費を計上する
調達した資金の必要経費を計上することも節税につながります。クラウドファンディングを利用する際はもちろん手数料や費用も発生します。資金調達の際にかかった費用はすべて経費として計上可能です。
クラウドファンディングの経費の一例には以下のようなものが挙げられます。
- クラウドファンディングの利用手数料
- リターンの準備・送付のための費用
- ネット回線の料金
むやみやたらに無関係な費用も計上してしまうと税務署から調査が入る場合があります。しっかり事業に関わる経費だけを計上して、正しく節税できるように準備しましょう。
【資金提供者向け】クラウドファンディング節税対策
こちらの章では、資金提供者が実践できるおすすめのクラウドファンディング節税対策を2つ紹介します。
寄付金控除を受ける
資金提供者は、寄付金控除を活用することで節税できる場合があります。寄付金控除を受けるためには、控除対象となる団体に寄付してから領収書を受け取って保管しなくてはいけません。
確定申告の際に合計の寄付額を申告書に記入し、その領収書を添付して提出すれば控除を受けられます。なお、控除額は寄付先の団体や合計寄付額によって異なります。特定公益増進法人への寄付は税制優遇があるため、こちらの優遇もきちんと理解して活用しましょう。
確定申告して還付を受ける
融資型で利益が出て分配金を受け取る場合、その分配金は雑所得とみなされて所得扱いとなります。分配金を受け取る際は源泉徴収が行われているのが一般的です。
つまり、所得税率が20%以下だと確定申告をすれば過払いの分の所得税が還付金として戻ってくることもあります。
ただし課税所得金額によっては、納付になる可能性があるため注意しましょう。
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【種類別】クラウドファンディングの確定申告方法
次はいよいよ、クラウドファンディングの確定申告のやり方について解説します。確定申告方法は煩雑な内容となるので、以下の内容をしっかりチェックしておきましょう。
資金提供者(個人) | 資金調達者(個人) | |
購入型クラウドファンディング | 非課税 | 事業所得または雑所得 |
寄付型クラウドファンディング | 非課税 | (個人からの資金調達)贈与税の申告が必要 (法人からの資金調達)一時所得として確定申告が必要 |
投資型クラウドファンディング | (出資時)非課税 (利子受取時)雑所得として確定申告が必要 | (資金提供時)非課税 (資金運用時)事業所得などとして確定申告が必要 |
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クラウドファンディングを実施する際の注意点
最後に、クラウドファンディングを実施する際の税務上の注意点を解説します。クラウドファンディングを活用する際に絶対知っておきたいポイントなので、しっかりチェックしておきましょう。
源泉徴収されても確定申告が必要な場合がある
融資型クラウドファンディングでは源泉徴収される分配金において、確定申告が必要な場合があります。確定申告が必要になるのは確定申告で所得税を納税しなくてはいけない場合や、還付・他控除を受けたい場合などです。
所得税が納税の対象となるかどうかは、国税庁の公式HPにある「確定申告書作成コーナー」で試算できます。また、所得税の申告が不要でも住民税の確定申告は必要なこともある点に注意しましょう。
購入型は消費税を課される場合がある
購入型クラウドファンディングを利用した場合、消費税が課税される場合があります。課税対象となるものは以下のケースです。
- 国内事業者
- 事業者が「事業」として取引を行うこと
- お金を受け取って物やサービスを提供する取引であること
- 資産の譲渡・貸付・サービスの提供であること
消費税の免税業者であれば、消費税の納税義務は免除されます。クラウドファンディングはその形式によって税金の種類や節税方法が違います。調達者だけでなく提供者にも課税されることがあるため、適切な申告方法や節税方法を理解しておきましょう。
経費書類は7年間保管しておく
クラウドファンディングを使って資金調達した場合は、領収書や請求書などの書類を7年間保管しなくてはいけません。個人事業主は青色なら7年、白色なら5年、法人は7年と定められています。
また書類は、支出の内容や日時、金額を明記したものが必要です。デジタル化が進む中で、スキャンして電子データとして保管している事業者も多くなっています。このような管理方法を取り入れることで、必要な時にスピーディーに書類を提示できるでしょう。
クラウドファンディングに関するよくある質問
最後にクラウドファンディングに関するよくある質問をまとめたので、以下の内容を踏まえて利用するか検討してみましょう。
クラウドファンディングのデメリットは?
クラウドファンディングは目標金額を必ずしも達成できるわけではないのが大きなデメリットです。クラウドファンディングには多くのプロジェクトが掲載されています。支援者を募るためには、創意工夫をこらしてほかのプロジェクトと差別化する必要があります。
またプロジェクト運営に時間と労力がかかったり、資金提供者とのトラブルが起きたりする可能性も考慮しなくてはなりません。
クラウドファンディングに禁止事項はある?
クラウドファンディングにおける禁止事項のひとつとして、不正確な情報提供が挙げられます。プロジェクトにおいてはその内容や目標額、リターンについての正確な情報が求められます。
誇張もしくは虚偽の内容を記載した場合、法的トラブルにまで発展することもあるので注意しましょう。
また資金提供者にリターンを約束しているにもかかわらず商品を提供しないことや、違法商品の提供も禁止事項に当たります。
クラウドファンディングの目標額を達成しなかった場合はどうなる?
目標額を達成しなかった場合、提供支援者には支援金が全額返金されるようになっています。その場合は目標達成できなかった原因を分析して、次のプロジェクトに向けて改善策を考えることが重要です。
また、目標額を達成できなくても支援金を受け取れる形式もあります。この形式を利用する場合は支援者に対する感謝の気持ちとリターンを忘れないように注意しましょう。
クラウドファンディングでは節税対策と正確な申告が重要です
もしクラウドファンディングを活用する場合、受け取った支援金がどのように課税されるのかを理解する必要があります。そして正しい節税対策をすることで、支払う税金を軽減できるようになります。
また確定申告をする際は税務審査に備えて必要な書類をしっかり保存・管理しておく必要があります。非課税枠や控除の範囲を把握して、スムーズかつ正確な申告ができるように準備しておきましょう。
確定申告や節税対策についての詳細なアドバイスを受けるためには、専門家や税理士に相談することをおすすめします。具体的なご相談については、小谷野税理士法人へお問い合わせください。