コロナウイルスによる影響を受けた個人事業主にとって、給付金は事業運営を安定させるための重要な資金源となります。特に経済状況が厳しい局面では、給付金を活用することで事業運営の負担を軽減できるでしょう。本記事では個人事業主が受け取れる給付金や、最大250万円の給付金がもらえる小規模事業者持続化補助金について解説します。給付金で事業の立て直しを図りたい個人事業主の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
個人事業主が受け取れる給付金・支援金
以下では、個人事業主が受け取れる給付金・支援金の種類について解説します。自分が受け取れる給付金について確認して、できるものがあれば手続きを検討しましょう。
小規模事業者持続化補助金
中小企業や個人事業主が持続的に事業発展できるように支援するための補助金制度です。商業・サービス業を中心に、多種多様な業種が支援対象となります。
また令和6年(2024年)から補助額が最大250万円まで引き上げられ、店舗の補修・改装や広告掲載といった経費も対象となりました。
小規模事業者持続化補助金の基本要項の一部を抜粋します。※ほかにも、資本金又は出資金が5億円以上の法人などが該当しますが、今回は個人事業主に焦点を当てるため割愛いたします。
- 会社および会社に準ずる営利法人
- 個人事業主(商工業者であること)
- 一定の要件を満たした特定非営利活動法人
2025年から一般型は以下の4枠に分けられて募集が行われるので、確認しておきましょう。
一般型 | 要件 | 補助上限 | 補助率 |
通常枠 | 経営計画を立てて販路開拓に取り組む予定の小規模事業者 | 50万円 | 2/3 |
インボイス特例 | 免税事業者から課税事業者に転換した小規模事業者 | 補助上限50万円上乗せ | 2/3 |
賃金引上げ特例 | 最低賃金を50円以上引き上げ予定の小規模事業者 | 補助上限150万円上乗せ | 2/3 |
災害支援枠 | 能登半島地震の被災小規模事業者 | 直接被害:200万円間接被害:100万円 | 定額、2/3 |
2025年には通常型に加えて、以下の3つの支援類型でも募集が行われます。
支援類型 | 要件 | 補助上限 | 補助率 |
創業型 | 産競法に基づく「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者 | 50万円 (特例の場合最大250万円) | 2/3 |
共同・協業型 | 地域に根づく販路開拓の支援機関が地域振興等機関となり、参画事業者である10以上の小規模事業者の販路開拓を支援 | 5,000万円 | 地域振興等機関…定額 参画事業者2/3 |
ビジネスコミュニティ型 | 商工会・商工会議所の内部組織など | 50万円 | 定額 |
2025年も小規模事業者持続化補助金の継続が決定されましたが、2024年から以下の3点が変更となります。
- 卒業枠・後継者支援枠を廃止
- 令和6年奥能登豪雨をの被災小規模事業者を対象に追加
- 共同・協業型の参画事業者を「小規模事業者」に限定
参考:持続化給付金|経済産業省
ものづくり補助金
新たなサービスや試作品、商品の開発や生産性改善のための設備投資を支援するための補助金です。新たな技術や設備の導入が可能となり、競争力の向上や事業の成長などの可能性が広がります。
基本要件は以下の通りです。
【以下を満たす3~5年の事業計画書の策定及び実行】
- 付加価値額 年平均成長率+3%以上増加
- 給与支給総額 年平均成長率+1.5%以上増加
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
ものづくり補助金は大きく分けて3つの支援類型に分けられて募集しています。
枠・類型 | 補助上限 ※カッコ内は大幅賃上げを実施する場合 | 補助率 |
省力化(オーダーメイド)枠 | 5名以下:750万円(1,000万円) 6~20名:1,500万円(2,000万円) 21~50名:3,000万円(4,000万円) 51~99名:5,000万円(6,500万円) 100名以上:8,000万円(1億円) | 中小企業:1/2 小規模・再生:2/3 |
製品・サービス高付加価値化枠(通常類型) | 5名以下:750万円(850万円) 6~20名:1,000万円(1,250万円) 21名以上:1,250万円(2,250万円) | 中小企業:1/2 書規模・再生:2/3 新型コロナ回復加速化特例:2/3 |
製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX-GX)) | 5名以下:1,000万円(1,100万円) 6~20名:1,500万円(1,750万円) 21名以上:2,500万円(3,500万円) | 2/3 |
グローバル枠 | 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | 中小企業:1/2 小規模:2/3 |
ものづくり補助金とは?公募要項や採択事例などをわかりやすく解説
IT導入補助金
IT導入補助金は、個人事業主や中小企業が自社の業務に適したITツールを導入する際の経費を支援する制度です。業務効率化や売上向上を目的とし、業種を問わないさまざまな分野でのIT活用を後押しする施策として注目されています。
また相談対応のサポート費用やクラウドサービス利用料も補助対象となります。対象となるソフトウェアやサービスは事務局の審査を受ける必要があるので注意しましょう。
今回は小規模事業者の基本要件のみご紹介します。
- 商業・サービス業業(宿泊業・娯楽業除く)
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業
- 製造業その他
※いずれも常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主を定義
IT導入補助金は大きく分けて3つの支援類型に分けられて募集しています。
枠・類型 | 補助上限 | 補助率 |
通常枠 | 1プロセス以上…5万円以上150万円未満 4プロセス以上…150万円以上450万円以下 | 1/2以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 50万~最大350万円まで | 補助対象経費によって異なる |
インボイス枠 (電子取引類型) | 下限なし~350万円以下 | 中小企業・小規模事業者 2/3以内 その他の事業者 1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円以上100万円以下 | 1/2以内 |
複数社連携IT導入枠 | 最大3,000万円まで | 補助対象経費によって異なる |
参考:IT導入補助金2024
【2024年版】個人事業主が利用できるIT導入補助金について解説
個人事業主が受けられる減免・支払い猶予
続いて、個人事業主が受けられる減免・支払い猶予についてご紹介します。税金や保険料を少しでも減らしたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
- 国民年金保険料の免除・猶予
- 所得税・住民税の支払い猶予
- 健康保険料の減免
- 小規模企業共済の掛金減免・納付猶予
- 地方自治体の支援制度
いずれも減免・支払い猶予には条件・期限があるので、自分が該当するものがあればはやめに申請しておきましょう。
個人事業主が給付金に採択されるためのポイント
続いて、個人事業主が給付金に採択されるためのポイントについて解説します。給付金によって審査基準が厳しいものもあるので、採択されるために以下のポイントをしっかり理解しておきましょう。
審査基準をふまえて申請書類を作成する
個人事業主が給付金に採択されるためには、審査基準をふまえて申請書類をつくることが大切です。審査項目を把握して申請書類を作成すれば、採択率も高くなります。
審査基準は基礎審査・書面審査・加点審査の3点が加味されます。特に書面書類では事業計画や経営計画についての審査があるため、念入りに準備しておきましょう。
実現可能かつ具体的な事業計画を立てる
事業としてきちんと成立しているかどうかも、採択される際の重要な指標となります。あまりに現実離れした数字を売上目標にしてしまうと、計画性がないと判断されて審査に落ちる可能性が高いです。
また、抽象的すぎる事業経営計画だと同様に事業の妥当性が損なわれてしまいます。まずは現状の経営状況をしっかり分析した上で、今後どのような経営方針や目標を立てるのかを検討しましょう。
税理士に相談する
「絶対に給付金を受け取りたい」という方は、税理士に相談する方法もあります。税理士は税務・財務の専門家のため、申請に必要な書類の準備や事業計画書の作成をサポートしてくれます。また申請書類の不備などによる不採択のリスクも減らせるでしょう。
給付金を受給した後の税務処理についてもアドバイスをもらえるため、1人で申請が不安だという個人事業主の方は一度税理士に相談することをおすすめします。
補助金申請は税理士に相談したほうがいい?依頼のメリットやコストについて
個人事業主が給付金を受け取る際の注意点
ここからは、個人事業主が給付金を受け取る際の注意点について解説します。以下の内容を踏まえて、スムーズに給付金が受け取れるように準備しておきましょう。
個人事業主が対象かどうか確認する
給付金ごとに対象者が異なるため、申請を検討している給付金が個人事業主が対象かどうか確認しておきましょう。この確認が漏れてしまうと、申請が通らないのはもちろん時間と労力の無駄にもなってしまいます。
小規模事業者持続化補助金は特に2024年度から次年度に向けて申請の変更点もあります。変更点を踏まえて、個人事業主でも申請できるかどうか公式サイトをチェックしてみてください。
申請期限を厳守する
どの給付金や支援金を申請するにしても、書類を提出する際の期限は厳守しましょう。記載した内容が完璧であっても、期限を守らないと支援が受けられません。
申請には書類を作成するために情報収集の時間も必要です。この行程で思った以上に時間がかかってしまうケースもあるので、余裕をもったスケジュール管理をしましょう。
また人気の給付金については締め切り間近になると申請が集中してシステムが正常に作動しなくなる可能性もあります。こういったトラブルを避けるためにも、締め切りの1週間前には提出できるように準備するのが得策です。
受け取るまでの期間を考慮する
多くの給付金や助成金は後払いのため、申請してすぐに資金を受け取れるわけではありません。そのため、受け取るまでの期間を考慮して資金計画を立てる必要があります。審査や受給の手続きには数か月かかることもあるため、その間に必要な自己資金は用意しておきましょう。
事業の規模が大きいと確認のための作業が増えて期間が伸びることもあります。給付金が振り込まれるまでの間も事業が計画通りに進められるように、十分な資金を用意しておきましょう。
個人事業主の給付金に関するよくある質問
最後に個人事業主で受け取れる給付金に関するよくある質問をまとめました。以下を参考にして、給付金に関する疑問や不安を解消しておきましょう。
これから個人事業主になろうとしている人がもらえる給付金はある?
「申請時点で開業していない創業予定者」は、給付金対象になりません。そのため、もし給付金を受給したい場合は申請よりも先に開業届を税務署に提出しておきましょう。
個人事業主が給付金を使ってパソコンを購入できる?
IT導入補助金を利用すれば、個人事業主でもパソコンを購入できます。ただし一般的な家電量販店で購入したパソコンについては補助金の対象にはならないため要注意です。
さらにパソコンとソフトウェアをセットで購入する必要があるので、会計や決済などの機能があるソフトウェアとまとめて購入手続きしなくてはいけません。詳細はIT導入補助金の応募要項を見ながら進めていきましょう。
個人事業主が開業時に使える給付金はある?
個人事業主が開業時に使える可能性のある給付金は以下の通りです。
- 地域雇用開発助成金
- 創業促進補助金
- IT導入補助金
- 企業支援金
いずれも申請のための詳細を確認し、必要に応じて税理士などの専門家と相談しながら手続きを進めることをおすすめします。
個人事業主が利用できる開業助成金とは?種類や金額について解説
まとめ
個人事業主にとって給付金や補助金、助成金は経営の安定と成長を支えるための大切な資金源です。特にコロナウイルスによる経済への影響は大きく、多くの事業者にとってこれらの給付金は経営再生のための手段となっています。
小規模事業者持続化補助金をはじめとする給付金は申請の手続きが煩雑なことが多いため、早めに準備しておくのがおすすめです。「小谷野税理士法人」では、豊富な知識と経験を持つ税理士が在籍し、給付金申請のためのサポートを行っています。