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開業前にかかった費用を経費にするには?会計処理と節税のポイントを解説!

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開業前にかかった費用を経費にするには?会計処理と節税のポイントを解説!

個人事業主や法人として事業を開始する際、その準備期間中に費用が発生するケースも多くあります。開業日より前の支出であっても、事業開始に必要な費用であれば「開業費」として経費計上が可能です。この記事では、開業費として認められる費用の概要や、扱いについてご紹介します。会計上の処理の仕方次第では節税にもつながるため、経費として計上するポイントについてきちんと理解しておきましょう。

開業日より前にかかった費用は経費にできる?

個人事業主の開業費のイメージ

事業を始める前には、さまざまな準備が必要です。「利益が出てきたら税務のことを考えよう」と思う方もいるかもしれませんが、開業前の準備にかかる費用の扱いについて知っておくことで、経営をスムーズに進める助けになるかもしれません。まずは、開業費の基本と、税務上の扱いについて解説します。

開業前の支出は「開業費」として全額計上できる

開業の準備段階で発生する費用は「開業費」として扱われます。具体的には、書籍・10万円未満の事業用PC・備品などの購入費や広告宣伝費などが該当します。開業した年に全額を経費として計上が可能です。

開業費として認められる期間には明確な規定はありませんが、一般的には開業の半年から1年以内にかかった費用が対象です。数年前の支出が認められない規定はありませんが、明確な証拠がないと認められないケースがあります。準備期間にかかった費用をしっかりと記録し、証明できるようにしておきましょう。

初年度に多額の利益が見込まれる場合、開業費を全額その事業年度に計上することで、初年度の税負担を軽減できます。費用を計上するかしないかで税負担が変わってくる可能性があるため、開業前の支出であっても正しく処理しましょう。

関連記事:開業資金が安い業種14選!フランチャイズ業種も紹介

計上するタイミングを調整してもよい

税法上、開業費は初年度に全額を経費として計上できます。しかし、開業当初は利益が少ないことが考えられるため、このタイミングで経費計上してしまうと節税効果が小さくなってしまう場合も多いです。

そこで、利益が出始めた2年目や3年目に繰り越して計上することで、税負担を軽減できます。計上タイミングを調整することで、節税効果を最大化することにつながるでしょう。

会計上、開業費は「繰延資産」として計上できます。繰延資産とは、支出が発生した年度に必ずしも経費として計上する必要がない資産で、税法上は任意償却が可能です。この仕組みを利用し、利益が多く出た事業年度に経費処理を行うことで、節税対策としても有効に活用できるのです。

ただし、計上タイミングの調整は、税務上のルールに則って行う必要がありますので、専門家と相談しながら判断されることをおすすめします。

参考:繰延資産の範囲について|国税庁

法人は創立費と分けて処理する

法人の場合、「開業費」と「創立費」を区別して処理する必要があります。創立費は法人のみが使用できる勘定科目です。

  • 創立費:法人設立前にかかる費用(例:定款作成費、登記費用、発起人報酬など)
  • 開業費:法人設立後から事業開始までの準備費用(例:広告宣伝費、市場調査費、名刺作成費など)

創立費も開業費と同じく、「繰延資産」として任意償却できます。法人は創立費と開業費を区別し、経理処理をそれぞれ行うことが可能です。

開業費に含まれる費用と含まれない費用

個人事業主の開業費のイメージ

事業開始前に発生した費用だからといっても、すべてが開業費に含まれる訳ではありません。一見すると開業費として計上できそうな費用も認められない可能性があるため、正しく理解し、正しく会計処理を行いましょう。

開業費に含まれる費用の例

事前準備に関わる費用のうち、税務上、開業費として計上できるものには、以下の費用が該当します。

  • セミナーへの参加費用:事業に関連する知識やスキルを学ぶためのセミナーや研修への参加費用
  • 交通費:打ち合わせや市場調査など、事業に関連する活動のためにかかった交通費
  • 免許・資格取得費用:事業運営に必要な免許や資格を取得するための費用
  • 設備・備品購入費:パソコンや事務用品など、事業運営に必要な設備や備品の購入やリース費用
  • 借入金の利息:開業資金を借り入れた際にかかる利息
  • 通信費:書類作成や情報収集のためにかかった通信費
  • 市場調査費:市場調査にかかったガソリン代や交通費
  • 広告宣伝費:宣伝活動にかかった広告費  等

上記の費用は、開業届の提出や会社登記の前日までに支出されたものであれば、開業費として計上できます。ただし、それ以降に発生した費用は開業費として計上できませんので、支出日や記帳の際には注意しましょう。

また、期中に処理し忘れた費用があった場合、その事業年度内であれば追加で計上できます。しかし、翌事業年度になってから発覚した場合は注意が必要です。

開業費の計上に法的な期限はないものの、会計や税法の常識的な判断基準により、通常は翌事業年度で前年の開業費を計上することは推奨されていません。過去の経費を後から計上することが許されると、経費が無限に増加する可能性があるためです。

開業費を計上する際には、領収書や明細書などの証明書類を保管し、事業での用途を明確に示せるようにしておくことが重要です。税務上のメリットを得るためには、該当する費用を適切に管理し、計上しなければなりません。

開業費に含まれない費用の例

事業開始前に支出する費用の中で、開業費として認められないものもあります。認められると勘違いされやすいものも多いため、以下の「開業費として認められない費用」を確認しておきましょう。

  • 10万円以上の備品や仕入代金

会計上、10万円以上の備品や設備投資は、開業費ではなく「固定資産」として扱われます。例えば、高価なコンピューターシステムや特殊な機械を購入した場合は「固定資産」に分類され、法定耐用年数に応じて減価償却費として経費計上する必要があります。

  • オフィスの家賃

準備期間に支払ったオフィスの家賃も、開業費として認められません。家賃は恒常的な支出であり、開業のためだけの一時的な費用ではないためです。開業後の事業活動においても継続して発生する費用であるため、注意しましょう。

  • 領収書が残っていない支出

領収書や明細が残っていない支出は、開業費として計上できません。税務上、支出の証拠となる書類が必要であり、これがなければ経費として認められません。

  • 資産取得にかかった費用

10万円以上の土地や建物などの資産取得にかかった費用も、開業費としては認められません。資産の取得と直接関連しており、開業のための一時的な費用ではないためです。資産取得費用は、資産として帳簿に記載し、減価償却費として経費計上する必要があります。

開業費として計上できると勘違いされがちな上記は、とくに注意が必要です。開業費として認められるものと認められないものを正しく理解し、適切な会計処理を心がけましょう。

また、領収書や契約書、その他の関連する文書など、開業前の支出に関する記録は、すべて正確に保管しておくことが重要です。将来的な税務調査においても、事業主の立場を守るために役立ちます。

「開業費」の会計処理と計上の仕方

個人事業主の開業費のイメージ

開業日より前か後かによって、かかった費用の計上の仕方が異なる場合があります。ここでは、開業費の会計処理について詳しく紹介します。

「元入金」を用いて計上する

事務用品などを購入した場合など、開業日より前の支出で、事業開始に直接関連する費用は「開業費」として処理されます。この場合、資金は事業が開始される前に個人から提供されるため、「元入金」として記録されます。

例えば、開業前に文房具を1,000円で購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方

貸方

摘要

開業費

1,000円

元入金

1,000円

文房具購入

一方、 開業後に事務用品を購入すると、その費用は通常の経費として処理され「事務用品費」として勘定科目に記録されます。支払いは事業の現金から行われた場合、「現金」として仕訳されます。

例えば、開業後に文房具を1,000円で現金購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方

貸方

摘要

事務用品費

1,000円

現金

1,000円

文房具購入

上記のように、開業前後で購入した物品の会計処理は異なります。開業前は「開業費」と「元入金」、開業後は「事務用品費」と「現金」を使用して仕訳することにより、事業開始前後の経費の流れを正確に把握できます。

また、開業にかかった費用は、事業開始後に一定期間にわたって費用として計上することが多いため、税務上の取り扱いにも注意が必要です。開業費の償却方法や期間については、会計基準や税法に従って適切に処理しましょう。

「資産の勘定項目」として計上できる

開業にかかった費用の一部は、会計上では資産の勘定項目である「繰延資産」として扱われます。開業に先立って支払われた費用は、初年度だけでなく将来の年度にも影響を及ぼします。そのため、一時的な経費として処理するのではなく、資産として計上し、毎年一定額を経費として償却していくためです。

税務上の取り扱いは、会計上の繰延資産とは異なる点があります。具体的には、開業前に支出した費用は、全額を勘定科目「開業費」として計上し、税法上の「任意償却」を適用することが可能です。

任意償却を活用することで、赤字の繰越を上手に活かし、節税効果が期待できます。ただし、白色申告の場合は赤字の繰越ができないため、節税効果を得るのが難しい点に注意しましょう。

帳簿付けに際しては、開業前に支出した費用を明細ごとに入力することが望ましいとされています。しかし、エクセルなどで詳細をまとめて集計している場合は、まとめて入力しても問題ありません。ただし、経費の領収書は必ず保管しておきましょう。

開業費の償却については、会計上は5年間で均等償却するのが一般的ですが、税法上は任意償却が認められています。つまり、納税者はその年の経済状況に応じて、償却額を自由に決められるのです。

青色申告を行っている場合は、赤字を翌年以降に繰り越すことが可能なため、開業費の償却を活用すれば節税につながります。

関連記事:個人事業主の入門編!青色申告とは?メリットと手続き方法をわかりやすく解説

開業費を経費として計上するポイント

外注の際の人件費と節税のイメージ

開業費を経費として計上する際には、以下の3つのポイントを押さえましょう。開業費を過不足なく計上することで、節税にもつながります。

発生した費用のレシートや領収書を保管しておく

開業費として計上するためには、発生した費用のレシートや領収書をきちんと保管しておくことが重要です。これらの証拠がないと、開業費として認められない場合があります。

特に、バスや電車の交通費、接待費用など領収書が発行されない場合は、自ら出金伝票を作成して保存しなければなりません。後から見返したときに支出の理由が明確になるよう、心がけましょう。

合計で10万円を超える場合は仕訳帳に記帳する

開業費の合計が10万円を超える場合は、仕訳帳に正確に記帳するといいでしょう。仕訳帳は、すべての取引を日付順に記録する帳簿であり、複式簿記では総勘定元帳と併せて必ず作成する帳簿のひとつです。

仕訳の際は、資産の科目として「開業費」、経費の科目として「開業償却費」や「繰延資産償却」を用いて記帳します。初年度の償却金額は、「開業費の全額 ÷ 償却年数 × 当該年度の月数 ÷ 12カ月」で算出可能です。

例えば、開業日が10月1日で、30万円の開業費を5年かけて償却する場合、初年度の償却費は「30万円 ÷ 5年 × 3カ月 ÷ 12カ月 = 15,000円」です。

借方

貸方

摘要

開業償却費

15,000円

開業費

15,000円

償却費

なお、開業費の合計が10万円未満の場合は、通常の経費計上と同じ記帳で問題ありません。

任意償却を活用する

開業費の償却期間は5年とされていますが、任意償却を活用することで、償却額を自由に設定することが可能です。初年度に全額償却することで、課税所得を大幅に減らし税負担を軽減できます。

ただし、売上が伸びずに赤字が続く場合は、5年で均等償却するのが難しいこともあるかもしれません。任意償却を活用し、開業費を無理なく経費計上しましょう。

関連記事:【税理士監修】任意償却と減価償却とは?法人・個人事業主での違いやメリット・デメリット

開業費を経費計上して事業を賢くスタートさせよう

事業を始めるためにかかった費用を「開業費」として経費計上することで、節税につながります。開業前の費用も含めて、領収書や証拠をしっかり保管し、正確に仕訳帳に記帳することが重要です。開業後数年間の売上見込みに合わせて計上タイミングを調整し、税負担を賢く軽減しましょう。

開業費には、認められるものと認められないものがある上、任意償却の処理は会計に慣れていないと難しいと感じるでしょう。開業費の扱いについて不安や不明な点がある場合は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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