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会社設立の基礎知識

自己株式の「みなし配当」とは?発生するケースや算出方法、注意点を解説!

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自己株式の「みなし配当」とは?発生するケースや算出方法、注意点を解説!

自己株式における「みなし配当」は、所得税などの税金が課される通常の配当とは異なり、自己株式を所有している場合で配当金を受け取っていなくても課税されることがあります。この制度は会社法と税法の考え方の違いから生じるもので、法人株主にとっては税務メリットが、個人株主にとっては税務デメリットが生じます。みなし配当についての正しい知識がないと高額な課税につながる可能性があるため、注意が必要です。

自己株式とは?

疑問を持つ男性

自己株式とは、株式会社が発行した株式のうち、自社で取得した上で保有する株式のことを指し、別名「金庫株」とも呼ばれます。

自己株式を取得することには、主に以下の4つのメリットがあります。

  • 持ち株比率を下げない

自己株式を取得することで、既存の株主の持ち株比率を下げずに、組織再編を行えます。

  • M&Aの対価として利用できる

新株発行の手間とコストを削減できます。

  • 株価対策になる

自己株式を取得することで、市場に出回る株式の数が減少し、相対的に株価が上昇する可能性があります。

  • 事業承継対策ができる

後継者に株式を引き継ぐ際、株式の分散を防ぐ、相続税の納税負担を下げるなどが期待できます。

自社株の取得は、インサイダー取引や株価操作などの悪用を防ぐために法律で原則禁止とされていました。しかし、2001年の改正によって解禁され、無制限・無期限で保有できるようになったのです。

現在では、自己株式の再交付や消却なども認められていますが、一日に注文できる数量や値段などは制限されています。そのため、自己株式の取得は慎重に行い、会社の資金状況や戦略に合わせて検討することが重要です。

参考:金融庁|自己株取得に係る市場規制の緩和について

みなし配当とは

自己株式取得時に発生する「みなし配当」は、会社が利益を出資者に直接配分するのではなく、株式を取得することで間接的に利益を還元する取引を指します。税務上、みなし配当は実際に配当を受け取っていなくても配当とみなされるため、配当所得として課税されます。

みなし配当の定義

みなし配当の取扱いは法人税法24条によって明確に定められています。いわゆる配当には該当しないものの、経済的実態を配当と同一視できるため、税務上配当と同じものとして扱う制度です。

会社法上の配当は利益が発生した場合に株主への還元として実施されますが、みなし配当は税務において配当のように扱われます。

つまり「配当ではないけれど、利益剰余金分から株主への配当と変わらないため、その実態を反映して配当として扱いましょう」という制度です。

個人株主にとっては税務上のデメリットとなり得ますが、将来の税制改正や企業の配当政策にも影響を与える重要な制度としての側面もあります。

みなし配当は、企業の利益に応じて株主に配当が支給されるため、安定的な株主還元や資金の有効活用が可能です。

みなし配当の発生条件

みなし配当は、特定の発生条件下で適用されます。例えば、会社が自社の株を買い戻した場合、その会社は株主に利益を配分したとみなされるケースがあります。その結果、株主は配当としての所得税を支払う必要が生じることがあるのです。

税務処理において、みなし配当は企業と株主双方の税負担に影響を及ぼす重要な要素です。利益をこっそり分配することを防ぎ、公平な税金の徴収を保つために設けられています。

実際の配当との違い

実際の配当は会社が利益を株主に直接分配することです。みなし配当と実際の配当は基本的に収入として株主の所得税の対象となりますが、発生原理と税務処理の詳細が異なります。税務計画において、これらの違いを正しく理解しておくことが重要です。

みなし配当は税法で会社の配当と同等に扱われ、配当収入として課税されます。この法的位置づけは、自己株式取得が実質的に株主への利益還元であると見なすため、税務上重要な意義を持ちます。

関連記事:自社株の配当金には税金がかかる?税額の算出方法も解説

みなし配当の計算方法

ストックオプションの税金のイメージ

みなし配当としての扱いを受けるケースはさまざまで、その計算方法は複雑です。しかし、みなし配当に課税される税金を適切に納めるためには、正しい知識を身につけなければなりません。

基本的な計算方法

みなし配当を求めるには、まず「株式が受け取った金額」から「資本金と資本剰余金」を差し引きます。その結果を「株式総数」で割って「株主の保有株式数」を乗じることでみなし配当にあたる金額を算出します。

数式で表すと以下の通りです。

みなし配当 = ( 受け取った財産の総額 − ( 資本金 + 資本剰余金 ) ) ÷ 発行済株式総数 × 株主の保有株式数

ただし、これはあくまで基本的な計算式であり、取引の種類によって計算方法が異なることがあります。

計算方法は取引ケースによって異なる

みなし配当に関わる取引は多岐にわたり、取引の種類ごとに計算の仕方が変わります。例えば、自社の株を買い戻す場合や、組織の形態変更や他社との合併など、それぞれに詳細なルールがあります。

特に、株式が市場に上場されていない場合は、多くの場合で株の価値が明確に決まっていません。そのため、特に中小企業では会社の価値を多面的に分析して株価を出す必要があります。

自社株を買い戻す場合や、特定の条件を満たさない合併を行う際には、株価をきちんと算出しないとみなし配当の額も決められません。税金の計算には、この株価の算出が欠かせないものとなります。また、企業が自社株を買い戻した時には、所得税と復興特別所得税の源泉徴収の支払い義務があります。

みなし配当の計算には、それぞれの取引の特徴をしっかりと把握し、正しい計算方法を用いることが大切です。これらの計算方法については、税理士などの専門家に相談することを推奨します。

実際の計算事例

自己株式取得時のみなし配当は、株主にとって税務上の注意が必要です。例えば、A社が1株10万円の自社株を買い取り、そのうち5万円が資本の払い戻しに相当する場合、株主はその差額5万円をみなし配当として受け取ったとみなされます。

ここでの税務処理は、具体的には5万円に対して所得税率を適用し計算することになります。

計算上の注意点とよくある誤解

自己株式取得時のみなし配当の計算方法には、特に注意すべきポイントがあります。多くの方が誤解しがちなのが「取得価額と時価の差額が直接配当と同等であると見なされる」という点です。

しかし、実際には財産評価基準に基づく評価額や取得時の純資産額を考慮する必要があります。

正確なみなし配当の計算には、これらの要素をしっかりと把握することが重要です。計算ミスを避け、税務申告で不利益を受けないためにも、みなし配当の正しい理解と計算方法の習得が不可欠です。

関連記事:株式の配当金に確定申告は必要?不要なケースや配当控除を受ける方法を解説!

自己株式取得に伴うみなし配当の税務処理

ストックオプションの税金のイメージ

自己株式取得は、特定の条件下で株主に対する「みなし配当」として税務上取り扱われます。このみなし配当には、株主が受け取る配当と同様の税金が課され、申告が必要です。

みなし配当の計算方法は、取得した自己株式の時価総額から購入に必要な費用を差し引いた額で算出します。税務申告の際には、みなし配当の金額を配当所得として個人の確定申告書へ記入する必要があります。

ただし、特例として、みなし配当に該当しないケースも存在します。適用条件に該当するかどうか、事前に確認しましょう。

自己株式取得時のみなし配当への対応

会社が自社の株を買い戻す際の税務上の扱いは、特に重要です。会社が自己株式を買い戻すとき、特定の条件下では株主に対して実質的な配当があったとみなされることがあります。

このとき、税法では買い戻しに支払った金額が会社の資本金や資本準備金を上回る部分は、配当として扱われるため、株主は税務申告ではその分を配当収入として報告する必要があります。

実際には、自己株式を買い戻した後、すぐに実質的な配当の計算をして、株主一人ひとりに税務上の影響を知らせ、正しい税金の申告と納付を行うよう促さなければなりません。さらに、会社としても、買い戻した自己株式に関して源泉税を徴収し、納める責任がある点にも注意が必要です。

実質的な配当が生じないようにするためには、自己株式の買い戻し価格が資本準備金の範囲内であることを確認しましょう。

税務上の特例とその適用条件

株式会社が自己株式を取得する際には、税務上の特例が適用されるケースがあります。株主の税金に影響するため、特例に該当するか事前に確認しましょう。

参考:国税庁|No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例

自己株式取得とみなし配当の事例

自己株式の取得は、企業にとって資本政策上の重要な選択肢の一つですが、税務上は特に注意が必要です。ここで紹介する事例では、A社が自己株式を取得した際の、みなし配当に関する税務処理の具体例を見ていきます。

A社は財務構造の改善を目的として、市場で自己株式を買い付けました。この取引について、A社の株式取得価格が資本の払い戻し額を上回る場合、その差額は株主に対する「みなし配当」として扱われ、株主の所得税や住民税の課税対象となります。

実務上の注意点としては、まず取引後に会計帳簿に適切に記録することが必須です。そして、みなし配当に相当する金額を確定させた後は、税務申告書にその情報を反映させ、適切な税額を計算し納税する必要があります。

また、税務局への報告漏れが無いよう注意し、必要に応じ税理士への相談も考慮するべきです。

関連記事:株式売却の確定申告はいくらから?申告方法は?

上場企業におけるみなし配当の取扱い

上場企業が自己株式を取得した場合、その取得価額が資本金や資本準備金を超える分については、株主に対する「みなし配当」として処理しなければなりません。このみなし配当は税法上、通常の配当と同様に所得税や法人税が課されます。

税務処理では、株主にとっては利益の分配と見なされるため、配当同様の税務上の取り扱いが必要です。

企業はこの取扱いにおいて、みなし配当に関する税法の規定を遵守し、適切な計算と申告を行う必要があります。

税務調査で指摘されやすいポイント

出資比率のイメージ

自己株式取得時の税務処理は、税務調査において特に指摘されやすいポイントの一つです。みなし配当に関する問題点が調査官の注意を引くことが多いとされています。

例えば、自社の株式を取得した場合、その取得価額が時価を大幅に上回っていたりすると、差額が株主に対する利益配分とみなされ、みなし配当に該当する可能性があります。

税務調査においては、このようなみなし配当が適切に申告されているかが厳しくチェックされるでしょう。したがって、記録の正確性や申告内容の妥当性を事前に把握し、適切な税務処理を行っておくことが重要です。

バランスシート上の自己株式の処理や、取引の背景にある目的なども詳細に説明できる準備をしておきましょう。

自己株式を所有する際はみなし配当に注意しよう

自己株式取得は、企業の財務戦略の一環として行われることがありますが、税務上はみなし配当として扱う必要がある場合があります。この処理を誤ると税務リスクを招くため、適切な理解が不可欠です。

ポイントは、自己株式取得に際しての配当相当額の算出・税率の適用・税務申告書における正確な記載です。税務処理の際には、具体的な計算方法、その適正な申告、配当受取日の区別などを整理し、適切な処理を行いましょう。

みなし配当の算出は取引ごとに定められており、その計算方法は複雑です。どのような取引が行われるかによって、みなし配当の計算が大きく変わる可能性があるため、事前に専門家の意見を求めることも検討しましょう。私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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