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NISAはなぜ損益通算も繰越控除もできないの?わかりやすく解説

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NISAはなぜ損益通算も繰越控除もできないの?わかりやすく解説

NISA口座は利益が非課税となる代わりに、損益通算や繰越控除ができません。つまりNISA口座で損失が出ても、その損失を他の課税口座の利益と相殺できないのでご注意ください。この記事では、なぜNISAで損益通算や繰越控除ができないのか、理由を解説します。また、「じゃあNISAで損失が出たらどうしたらいいの?」という疑問にもお答えします。

なぜNISAは損益通算や繰越控除ができない?理由を解説

法人税 滞納のイメージ

NISA口座は課税口座と違い、損益通算や繰越控除ができません。それはなぜでしょうか?理由を解説する前に、まずは用語の意味を押さえましょう。

NISA制度(少額投資非課税制度)

株式や投資信託などの運用益(配当金や譲渡益)に対する税金が非課税となる制度。一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA、新NISAの4種類がある。

NISA口座

  • 株式や投資信託の運用益に課税されない
  • 年間投資上限額がある
  • 投資対象の制限がある
  • 確定申告が原則不要
  • 損益通算・繰越控除ができない

課税口座

  • 株式や投資信託の運用益に約20%(所得税など)が課税される
  • 年間投資上限額がない
  • 投資対象の制限がない
  • 確定申告が必要な場合も不要な場合もある
  • 損益通算・繰越控除ができる

損益通算

利益と損失を相殺することで、最終的な課税対象となる所得を減らす仕組み。例えば「株式Aの利益と株式Bの損失を相殺する」など。

繰越控除

ある年に発生した損失を翌年以降に繰り越し、その年の利益と相殺することで税負担を軽減する仕組み。例えば「2024年の損失を2025年の利益と相殺する」など。

参考:NISA制度|国税庁

参考:株式・配当・利子と税|国税庁

参考:上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除|国税庁

次に、NISAでは損益通算や繰越控除ができない理由を2つ解説します。これらは、NISAが設計された目的や税制上の仕組みに起因しています。

理由①:利益に課税されないため救済措置の必要性がない

NISAで損益通算や繰越控除ができない理由は、「利益に課税されないから」です。非課税という特別な恩恵を享受できる代わりに、税金負担を軽減する救済措置を設ける必要がないと考えられています。

前提として、損益通算や繰越控除といった税制の救済措置は「利益と損失を相殺して課税対象の利益を減らす」仕組みです。つまり、課税口座は利益に対して約20%の税金がかかる代わりに、税金負担を軽減する救済措置が設けられています。

しかしNISA口座の利益には税金がかかりません。そのため「課税対象の利益を減らす」という救済措置の前提が成立しないのです。よって、NISAでは損益通算などができません。

理由②:制度を簡単にするため

NISAで損益通算や繰越控除ができない理由は、「制度をシンプルにしたいから」です。

NISAが導入された目的の一つに「投資初心者が気軽に投資を始められるようにする」というものがあります。初心者の負担を少しでも減らせるよう、NISAは非課税かつ原則確定申告不要というシンプルな形になっています。

しかし損益通算を適用すると、NISA口座と課税口座を跨いで損益を管理する必要があり、運用が複雑になってしまいます。

以上の理由から、NISAでは損益通算などができません。なお、課税口座での損益通算や繰越控除について詳しく知りたい方は、下記の記事をご確認ください。

株式投資で損をしたときの節税法!確定申告での損益通算のやり方を解説
株の損失は確定申告でお得?節税のための損益通算・繰越控除について

NISAで損失が出たときに検討したい対応

悩む個人事業主

NISA口座は損益通算や繰越控除ができないので、課税口座と異なる戦略が必要です。ここでは、NISAで損失が出た場合の対応策を2点紹介します。

対応①:持ち続けて回復を待つ

損失が出ても焦って売却せずに保有し続けることで、資産価値が回復する可能性があります。一時的な値下がりであり長期的には成長が見込める銘柄なら、持ち続けることも検討しましょう。

ただし一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの場合は非課税期間があります。その期間内で回復するかどうかも判断材料にしましょう。

対応②:損切りして今後の投資戦略を見直す

回復の可能性が低いと判断される場合は、損切りを検討するのも選択肢の一つです。例えば、投資した企業が経営危機に陥ったり、非課税期間が終了間際だったりするケースなどです。

損切りとは、その損失を受け入れて早めに売却することを指します。一時的な損失は避けられませんが、さらなる損失を防げる可能性があります。

ただし、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAは売却しても非課税枠の再利用ができないのでご注意ください。新NISAなら再利用できますが、売却した年には同じ枠の再利用ができません。再利用できるようになるのは売却した翌年以降です。

ここで気を付けたいのは、次こそ損しないようにすることです。では、どんな戦略ならリスクを押さえられるのでしょうか?次の章では、今後の戦略について解説します。

NISAで損するリスクを抑える対策5つ

投資の確定申告の経費イメージ

NISAでは損益通算・繰越控除ができないため、損失を出さずに安定的に利益を得ることが重要です。ここでは、損失を最小限に抑えるための対策を5つご紹介します。

安定した商品を選ぶ

ハイリスク・ハイリターンの商品ではなく、安定したリターンが期待できる商品を選ぶと、リスクを抑えることができます。ハイリスク商品では価格の変動が大きいため、大幅な損失を出す可能性があるからです。

安定した商品の例として、インデックスファンドやバランス型ファンドなどが挙げられます。これらは、個別株やテーマ型投資商品に比べ、市場全体の動きに対するリスクが分散されやすくなります。

長期保有を心掛ける

長期保有すると、リスクを抑えられます。2024年から始まった新NISAの非課税保有期間は無期限です。これを活かして利益が出るまで保有し続け、損失を確定させる事態を防ぎましょう。また、長期保有することで、短期的な市場の変動にも左右されにくくなります。

複利効果が活かせることも長期保有の強みです。複利とは、元利(元本と利益)に利益が発生する仕組みのことです。たとえ元本は少額でも、長く保有すると複利の効果で資産が増える可能性があります。

生活に支障のない範囲で投資する

余裕資金で投資を行うと、リスクを抑えられます。余裕資金とは、貯蓄から生活予備資金を差し引いた「当面使わないお金」を指します。

前述したように、NISAは長期保有が前提です。しかし生活に必要な資金を投資に回すと、急な出費やトラブルが生じた際に保有資産を売却せざるを得なくなります。そうなると長期運用を続けていれば得られたはずの複利の恩恵を受けられません。

また、余裕資金で投資を行うことは、心理的ストレスの軽減にも効果的です。投資に使う資金が生活に直結している場合、市場の下落時に過度なストレスを感じやすくなります。一方、余裕資金で投資を行えば、価格変動に対して冷静に対応できます。

年間投資枠を埋めることを目標にするのではなく、余裕資金の範囲で堅実に投資を続けましょう。

分散投資を行う

分散投資を行うと、リスクを抑えられます。分散投資とは、投資資金を複数の地域・時間・資産に分けて配分する投資手法です。一つの投資対象の価格変動やリスクに資産が大きく影響されることを防ぎます。

地域分散

  • 投資対象を複数の国や地域に分けること
  • 一部の国や地域で経済が停滞しても、他の地域での成長でマイナスを補える

時間分散

  • 定期的に一定額を投資する「積立投資」などの方法で投資タイミングを分けること
  • 一度に大きな額を投資すると高値で購入してしまうリスクがあるため
  • 定期的に一定額を投資することで、購入価格を平均化し、市場の短期的な変動に左右されにくくする

資産クラス分散

  • 異なる種類の資産(株式、債券、不動産など)に投資すること
  • 特定の資産クラスでマイナスが出ても、他の資産クラスで補える
  • バランスの見直しも定期的に行う。例えば、株式の比率が大きくなりすぎた場合は、債券や不動産に一部を移してリスクを減らすなど

分散投資をすると、リスクも分散でき、安定的な運用に繋がります。

相談できる環境を準備しておく

迷ったときの相談先を確保しておくと、リスクを抑えられます。投資には専門的な知識が必要です。よって初心者が自己判断だけで運用する場合、リスクを過小評価したり、感情的な決定を下してしまうケースがあります。

特に注意したいのが、価格の下落や市場の急変動に直面した場合です。しかし「相談相手がいる」という安心感があれば、パニック売りや不必要な損切りを避けられる可能性が高まります。

これから投資を始める場合は、まず個々の経済状況に応じた戦略を立てましょう。金融商品の選択やポートフォリオの構築を専門家に相談すると、自分に合った運用方法が見つけやすくなります。

投資に関する税のお困りごとは税理士にご相談ください

この記事では、NISAで損益通算や繰越控除ができない理由を解説しました。新NISAについてもっと知りたい方は下記の記事も併せてご確認ください。

NISA口座で発生した利益について所得税や住民税は非課税ですが、口座所有者の死亡時に相続税はかかります。また、夫婦でNISAを運用する際には、夫婦間でも贈与税が発生する点に注意を払う必要があります。

資産全体を含めて税務計画を立てる際には、税理士にご相談ください。相続税や贈与税についても考慮し、具体的なアドバイスをご提案できます。

NISAについてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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