起業を成功させるためには、新たに参入する市場で確実に実績を積み上げなくてはなりません。そのためには、ただやみくもに起業するのではなく、事前にしっかりとした計画が必要です。また、その計画の仕方にも方法があります。これから起業を考える場合には、まず事業の軸となるコンセプトを作成しましょう。ここでは、その事業コンセプトの作成方法と、具体的な例を紹介します。
目次
そもそも事業コンセプトとは?
事業コンセプトとはビジネスにおける骨組みや方向性を指します。どのような目的や仕様でまとめられるのか、その具体的な内容を説明します。
事業コンセプトの目的
事業コンセプトを設定すると、起業の際に作成する事業計画書の準備がスムーズに進行し、リサーチすべきポイントも明確に洗い出されます。
また、事業計画書で具体的な内容を示すことで、金融機関からの融資や取引先の支援も受けやすくなる可能性があります。
さらには、事業所の骨組みや方向性をあらかじめ決定しておくことにより、事業を行う上で発生するさまざまな問題やトラブルにも一貫した決断を下せます。
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5W1Hのフレームワーク
5W1Hとは、Who(誰が・誰に)・What(なにを)・When(いつ)・Where(どこで)・Why(なぜ)・How(どのように)のスペルから由来している言葉です。
5W1Hを用い、事業コンセプトを組み立てると、事業所の考え方や方向性を適切に整理できます。
ただし、事業コンセプトの文章は長ければ良いというものではありません。丁寧に説明することは大切ですが、分かりやすさや伝わりやすさを意識して作成することが大切です。
テーマとの違い
テーマは、コンセプトと混同されがちですが、ビジネスにおいては異なる用いられ方をしています。
テーマは「主題」を意味する言葉であり、個人事業主や法人にとっては事業所のモットーや会社スローガンに該当します。
事業コンセプトは、そのスローガンやモットーを具体的に表し、アイディアやアプローチ方法を記したものです。
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事業コンセプトを作成するメリット
ここでは、事業コンセプトを作成するメリットを紹介します。特に、起業の際には有利に運ぶ要素が多いことから、これから個人事業主として開業する場合や、法人化を目指す場合にはメリットを確認してみてください。
起業の準備がスムーズになる
事業の骨組みや方向性を固めた事業コンセプトの作成は、起業の際に必要な要素の整理や選択につながります。
事業コンセプトにより起業準備が進めやすくなり、さらには起業後においても、経営の軸を言語化・可視化することで、事業を成功に導く道筋を明確にします。
起業の際は事業計画書にも使える
事業コンセプトは事業計画書の土台として役立てられます。
事業計画書とは、起業の理由や目的、資金とその調達方法、事業の見通しなどを記載した経営のための書類です。
事業計画書の作成は義務づけられてはいませんが、融資や出資を受ける際に必要となることが多く、また、その内容によって起業や経営を効率的に進められます。
事業計画書には、あらかじめ作成した事業コンセプトそのものを記載したり、コンセプトに基づいた具体的な事業内容を記します。
商品やサービスに一貫した方向性が生まれる
事業コンセプトを作成することで、事業で扱う商品やサービスの方向が決まり、業務の優先度や重要性の選択も一貫します。
例えば、どの分野に資金を投入すべきか、どのような客層をターゲットにするか、事前の意思決定をスムーズにします。
独自性やブランディングにつながる
事業コンセプトの設置は、その事業所の独自性やブランディングの確立へとつながります。
骨組みや方向を固めることで、独自性が明確に言語化され、また、イメージとしてのブランディングも具現化されていきます。
独自性やブランディングにより、ほかの事業所との差別化を図れるのが事業コンセプト作成の強みです。
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事業コンセプトをまとめる上でのポイント
ここでは前述した5W1Hのフレームワークについて、事業コンセプトをまとめる上での活用方法を説明します。
項目 | 内容 |
Who(誰が・誰に) | 誰に提供するのか |
What(何を) | 何を提供するのか |
When(いつ) | いつ提供するのか |
Where(どこで) | どこで提供するのか |
Why(なぜ) | なぜ提供するのか |
How(どのように) | どのように提供するのか |
5W1Hそれぞれの項目にどのような内容を書くべきか、確かめてみてください。
誰に提供するのか(Who)
事業コンセプトにおける「Who」は、対象となる消費者を指します。
現代社会では消費者のニーズが多様化しています。その中で、すべての人に好まれる商品やサービスを展開することは容易ではありません。
そこで、商品やサービスを誰に提供するのか、ターゲットを絞り込むことで、開発や広告の方向性を明確にできます。
また、消費者に対して専門性を強調できるのもターゲットを絞るメリットです。
何を提供するのか(What)
商品やサービスの価値を決めるのは、個人事業主や会社・企業ではなく消費者です。
そのため商品やサービスを提供する際には、消費者が何を求めているか、そこに価値を見出しているかが重要です。
提供する側の立場ではなく、消費者の立場になって商品やサービスの価値を考えましょう。
いつ提供するのか(When)
消費者が求めているタイミングを逃さないことも、事業においては大切です。特に、季節やイベントが影響する商品やサービスであれば、販売期間は入念に考えなくてはなりません。
また、キャンペーンを実施するにしても、競合他社の開催期間を意識するなど、商品やサービスの提供は最適なタイミングで行う必要があります。
どこで提供するのか(Where)
実店舗かオンラインか、また、実店舗であればどの地域か、商品やサービスを提供する場もまた経営にとっては重要です。
その商品やサービスの価値を高めると同時に、消費者が利用しやすい場所で提供されているかどうかも考えなくてはなりません。
なぜ提供するのか(Why)
商品やサービスを提供する際には、消費者がなぜそれらを求めているのか、市場を分析する必要があります。
また、事業コンセプトにおける「なぜ」は、事業所がその商品やサービスを提供する目的やゴールも意味します。
消費者の目線と提供する側の目線、両方からアプローチが必要です。
どのように提供するのか(How)
消費者に商品やサービスをどのように提供するかは、販売促進や集客のための宣伝広告がカギを握っています。
実店舗やオンラインサイトへといかに訪問してもらうか、商品やサービスの宣伝広告をする媒体や頻度も考えなくてはなりません。
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事業コンセプトのテンプレート
5W1Hのフレームワークに沿って事業コンセプトを考えたら、具体的な内容を実際に書き出していきましょう。
ここでは。事業コンセプトのテンプレートを紹介しています。市場・ターゲット・価値・提供方法、それぞれの項目に何を書くべきかを説明します。
市場
低価格帯の市場か、高価格帯の市場か、その商品やサービスをどのような市場で提供するかを決め、事業コンセプトに記しましょう。
また、低価格や高価格にとらわれず、その中間を狙ったり、もっと範囲の狭いマーケットを開発するという手段もあります。
ターゲット
年齢層・性別・職業・家族構成など、その商品やサービスを求める主な消費者のターゲットを絞りましょう。
すべてのターゲットに刺さるような商品やサービスは、めったにあるものではありません。
ターゲットを絞ることでマーケティングや宣伝広告の方向性も把握しやすく、新たな商品やサービスの開発にもつながります。
価値
その事業及び、商品やサービスの提供により、消費者が得られるメリットを事業コンセプトに記します。また、その根拠の説明も必要です。
これにより、その事業所の強みや競合他社との差別化を明確にできます。
提供方法
実店舗やオンラインなど、事業を展開する場所を提示しましょう。
さらには、出店する地域やWebサイト、宣伝広告に活用するSNSの種類についても、具体的に事業コンセプトへと記載します。
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事業コンセプト作成の具体例
事業コンセプトの書き方を把握した上で、実際に作成された具体例を参照にしてみてください。より事業コンセプトの作成方法を理解できます。
事業コンセプト①湘南のカフェ
具体例として、「湘南のカフェ」の事業コンセプトを紹介します。
湘南の海を眺めること自体に価値を見出し、それをどのように活かして集客を行うかが、事業コンセプトでは考え抜かれています。
事業コンセプト |
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市場 |
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ターゲット |
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価値 |
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提供方法 |
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湘南には、海を一望できるカフェやレストランが多数存在しています。
それらの競合と差別化を図るため、コーヒーの品質や落ち着いた雰囲気にこだわっている点が、上記の事業コンセプトからはっきりと伝わってきます。
事業コンセプト②鎌倉の雑貨店
事業コンセプトの具体例として「鎌倉の雑貨店」の場合を紹介します。
鎌倉においても近年急増している外国人観光客とともに、従来からの日本人観光客を取りこぼさない姿勢が感じられます。
事業コンセプト |
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市場 |
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ターゲット |
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価値 |
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提供方法 |
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オリジナル商品を提供し、他店との差別化を図っていることが、事業コンセプトから明確に伺えます。
また、経営者が職人と直接つながりを持っていることや、観光客へのニーズが高い販売会や体験イベントを行い、販売促進につなげているという強みもよく分かる内容です。
適切な事業コンセプトと事業計画書の作成なら税理士へ
起業をスムーズにする事業コンセプトの作成は、事業主にとっても役立つ作業です。
また、事業コンセプトをもとに事業計画書を書き起こすことで、そこに記載する内容をより具体的なものにできます。
ただし、その事業計画書は、金融機関から融資を受ける際に必要となる大切なものでもあります。
そのため、事業コンセプトを個人事業主や会社で作成したとしても、事業計画書は税理士に依頼してみてはいかがでしょうか。もちろん、事業コンセプトそのものも代行してもらっても問題ありません。
税理士に依頼することで、より適切な事業コンセプト及び事業計画書が作成され、その後の資金調達も有利に運ぶ可能性があります。
私たち小谷野税理士法人でも、個人向け・法人向けの両方で、さまざまな支援を行っています。事業コンセプトと事業計画書の作成でお悩みの場合は、お問い合わせください。