法人の決算を自分で対応しようと検討している方は多いのではないでしょうか。多くの会社は税理士に決算業務を依頼していますが、自分の力だけで決算を完結することは可能なのでしょうか?ここでは、法人決算を自分でするメリットだけではなくデメリットやリスクを解説し、判断基準や法人決算をする手順なども紹介します。
目次
法人の決算は自分一人でもできるのか?
法人の決算は税理士に任せるイメージが強いかもしれません。そもそも税理士の資格のない人が、自分一人で決算を完結させることはできるのでしょうか?
法人決算とは
法人決算とは、年間の収益や損益、資産、負債などを計算し、書類を作成する手続きです。これらをまとめた書類を決算書と呼びます。
決算書の作成は法律によって義務付けられていますが、上場している会社と非上場の会社はで作成する書類は少し異なります。
決算書を作成すれば事業の業績が確定されるため、そこから納税額を計算して税金を納めます。
税務署に確定申告をするという点では個人の確定申告と類似していますが、法人の決算申告は期限が異なるので注意が必要です。法人の確定申告の期限は、決算日の翌日から2カ月以内が原則です。
ただし、決算日は法人ごとに異なります。そのため、法人の決算を自分でする場合は、事業年度に注意して決算書の作成を行いましょう。
法人の決算は自分でもできる
法人決算を自分一人で完結させることは可能です。税理士や会計士が行わなければならないという決まりはありません。
ただし、法人の決算は個人の確定申告よりも複雑であり、専門の知識が必要になります。決算書にも複数の種類があるため、知識と経験がなければ決算書の作成に膨大な時間を割くことになるでしょう。そうなれば、本業に集中することができません。
手間と時間を省略し、適切な決算書を作成するためにも、法人決算は自分で行わず、専門家である税理士などに任せるケースが多い傾向にあります。
法人決算を自分でするメリット
法人決算を自分ですることには、メリットとデメリットがあります。まずは、メリットからみていきましょう。
会計や税務の知識が身につく
決算を自分でするためには、会計や税務に関する知識が必要です。決算書の作成にあたって、まずは勉強から始めることになるでしょう。
簿記のスキルも必要になるため、決算を手がけるにあたって簿記のスキルも上がると考えられます。
こうした会計や財務の知識は、経営状況の把握や経営戦略にとって大切なものです。知識を身につけることで、将来的に他の事業などの役に立つ可能性もあります。
経営状況を把握できる
経営者自身が決算書の作成など決算に携わることは、経営状況を細かく把握できるというメリットがあります。
決算書には収益や損益、負債、資産などが記載されています。既に仕上がった決算書を見ても経営状況は把握できますが、自分で作成することでより細かい部分を見ることができます。
決算書から財務状況を把握することで、今後の経営方針を決めることに役立つでしょう。
税理士費用を削減できる
法人決算を税理士に依頼すれば、費用が発生します。自分で全て決算を完結すれば税理士費用を削減でき、コストの負担を抑えられる点がメリットといえます。
税理士費用は、税理士事務所や税理士法人ごとに費用が異なります。法人決算を依頼した場合の費用相場は、15万~30万円が目安です。
税理士には法人決算だけではなく、会社設立のサポートや節税のアドバイスなども依頼することができ、依頼内容によっても費用は変わります。
法人決算を自分でするデメリット
法人決算を自分ですることにはメリットもある反面、さまざまなデメリットやリスクがあります。デメリットやリスクも理解した上で、法人決算を自分でするかどうか検討しましょう。
専門知識を身につけなければならない
法人決算を自分でするためには、まず専門知識を身につけなければなりません。
法人決算で必要なものは、税法や会計、簿記に関する知識です。知識がない場合、決算書を作成しながら、その都度分からない部分を調べて進めることになるでしょう。
しかも、自分で調べながら決算書を作成したとしても、正しい情報から正確に作成できているとは限りません。誤っている部分などがあれば、決算申告にも影響します。
故意ではないとはいえ、決算申告で不備や誤りがあれば税務調査が入る原因になり、ペナルティを受けることになる可能性もあります。
時間と手間がかかる
前述したように、法人決算には専門知識が必要です。
専門知識がなければ調べながら進めるため、非常に時間と手間がかかります。分からない部分を適当に済ませるわけにはいかないため、正確性を高めるためにはより時間がかかるでしょう。
法人決算に時間と手間が取られてしまえば、本業の方に手が回らなくなります。法人決算のせいで本業に集中できなければ、売上に悪影響をもたらす可能性もあります。
効果的に節税ができない
法人決算を自分で行えば、効果的に節税をすることができない可能性があります。
法人にはさまざまな節税方法があり、法人ごとに最適な節税対策は異なります。個人よりも法人は節税対策に多くのメリットがあるため、節税対策を活かせなければ損といえます。
税制の知識がない状態では正しい節税が行えず、税負担が増える可能性があります。最適な節税をするためには、専門家である税理士のアドバイスが必要といえるでしょう。
法人の節税に関する詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。
関連記事:【税理士監修】法人の節税対策ガイド:法人設立から不動産活用まで徹底解説
税務調査に自分で対応しなければならない
決算申告でミスや不備があれば、税務調査の対象になる可能性があります。自分で法人決算を行った場合、税務調査が入っても自分で対処しなければなりません。
知識のない状態で税務調査に臨めば、準備と対応に多くの時間を費やすことになります。精神的な負担も大きいでしょう。
そして、税務調査で適切な対応ができなければ納得のできない結果になる可能性があります。追徴課税を支払うことになれば、膨大な損害が出るかもしれません。
税理士に税務調査の対応だけを依頼することもできますが、税理士が決算申告に携わっていなければ、状況を正確に把握することに時間を要します。そのまま税務調査が入ることになれば、税理士も対応が難しいこともあるでしょう。
関連記事:決算期(月)は変更可能?メリット・デメリットや手続き方法まとめ
法人決算を自分ですべきか判断する方法
法人決算は非常に複雑なものであり、自分一人で行うには身体的にも精神的にも負担が大きいものになります。正確に申告できなければ、税務調査の対象になるというリスクも負わなければなりません。
法人決算を自分ですべきかどうか検討する際には、以下の判断基準を参考にしてみてください。
会社の規模
会社の規模が大きいほど、自分で法人決算をすることのリスクは大きくなります。売上規模が小さい会社であれば、自分で法人決算をしてもリスクは少ないでしょう。
具体的な目安としては、売上高が1,000万円前後で納税額が100万円を超えない規模です。
赤字が出ている場合、自分で法人決算をすることに向いています。万が一、決算申告でミスや不備が発覚しても、納税額に影響しないので追徴課税が発生するリスクは少ないでしょう。
また、創業から間もない状態で、ひとり社長で事業を運営しているような会社もリスクは少ないと言えます。経理が複雑ではないため、税務の勉強を兼ねて決算書の作成に取り組みやすいでしょう。
日々の経理状況
日々の経理業務を自分できちんとできているかどうかという点も、判断基準のひとつです。
法人決算は、日々の経理業務の集大成です。毎日の経理業務がきちんと行われていれば、自分で法人決算をしても問題は起こりにくいと考えられます。
日々の帳簿の記入や収支管理、財務状況を把握できており、丁寧に経理業務をこなせている人でなければ法人決算を自分一人で完結させることは難しいといえます。
節税対策
最適な節税対策を望んでいる場合、自分で法人決算をすることは向いていません。
節税対策をしたいと考えているのであれば、税理士へ依頼することを推奨します。税理士ならば、最新の税制に関する知識があるため、最適な節税を図ることができます。
また、税理士と顧問契約を締結すれば、決算申告時だけではなく中長期的な節税に関するアドバイスなども受けられます。
法人決算を自分でする場合の手順
法人決算を自分でする場合の手順について解説します。日々の経理業務をしっかり行っており、正確な記帳が行えている場合には以下の手順で進めていきます。
試算表を作成する
法人決算を行うにあたって、まず最初に試算表を作成します。
試算表とは、会社の取引や資産、負債などを整理した表です。試算表を作成することで、日頃の記帳が正しく正確にできているのか確認をすることができます。
試算表を作成して借方・貸方の金額の合計が一致しなければ、記帳にミスがあるということです。記帳ミスしている部分を探し、修正する必要があります。
試算表の作成には簿記の知識が必要ですが、会計ソフトで作成することも可能です。
決算整理仕訳をする
試算表の完成後は、決算整理仕訳を行います。
決算整理仕訳は決算の際にのみ必要となる作業で、事業年度をまたぐ取引を調整します。入金や支払いが今期と来期になるものを確認し、帳簿の修正を行います。
また、固定資産の減価償却や、在庫確認のための実地棚卸による評価も行います。
決算書の作成
決算整理仕訳が完了すれば、試算表が確定されます。この確定された試算表を基に決算書を作成します。
法人決算では、以下の書類が必要です。
- 賃借対照表
- 損益計算書
- 個別注記表
- 株主資本等変動計算書
- 計算書類に係る附属明細書
- 事業報告書
- 事業報告に係る附属明細書
尚、上場していない会社の場合は、賃借対照表・損益計算書・個別注記表・株主資本等変動計算書の4種類です。
取締役会・株主総会で承認を得る
作成された決算書は、取締役会や株主総会で承認を得る必要があることが法律で定められています。取締役会と株主総会へ決算書を提出し、承認を得ましょう。
株式会社の場合は取締役会や株主総会で承認を受けますが、ひとり社長で株主も同一人物一人の場合でも株主総会は必要です。
法人税申告書の作成と納税
決算書の承認を得たら、決算書を基にして法人税申告書を作成します。法人が申告する税金は、法人税・消費税・法人事業税・法人住民税などが挙げられます。
法人税申告書は国税庁のホームページからダウンロードすることが可能です。窓口や郵送でも法人税申告書の提出は可能ですが、電子申告が近年は推奨されています。
法人税申告書の提出と同時に、確定した税金を納めましょう。
法人税の申告期限に関する詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。
決算書の保存
決算書や提出した申告書等は、保存や保管しておくことが法律で義務づけられています。保存期間は、税法で7年間、会社法で10年間です。
長期にわたる保管になるため、紛失しないように注意する必要があります。
関連記事:会社設立をしたら決算月はいつがおすすめ?節税を考えた決め方
法人決算は税理士に相談しましょう
法人決算は自分ですることもできますが、知識が必要になります。個人の確定申告よりも非常に複雑であり、正確性も求められます。
赤字の場合やひとり社長で売上が少ない場合は自分で法人決算を完結させてもリスクは少ないですが、安全に法人決算を完結するには税理士に依頼することをおすすめします。
小谷野税理士事務所では、知識の豊富な税理士が多数在籍しており、多岐に渡る業種での法人決算の経験を積んでいます。法人決算だけではなく、日々の税理業務や税務に関するアドバイスなどにも対応可能です。
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