ネットショップも実店舗と同様に仕入れが必要であり、その仕入れ価格と販売価格の差で売上を出しています。そのため仕入れする商品や仕入れ先の選び方が、ネットショップの収益へとダイレクトに影響します。ネットショップを開業する際にはどのような仕入れ先や商品を選ぶべきか、開業するための手続き方法や会計帳簿のつけ方とともに紹介します。
目次
ネットショップ開業におけるおすすめの仕入れ先
ネットショップ開業にとって仕入れは成功のカギを握る重要なポイントです。商品を仕入れたとしても、その値段が定価や市場価格と同じでは利益が生まれません。卸売業者を厳選し、適切な値段で商品を仕入れましょう。
ネット上の仕入れサイトやサービスを活用する
現在、数多くのインターネットを利用し、さまざまな仕入れを行っています。卸売業者が参加している複数の仕入れサイトやサービスを比較し、自分のネットショップに適したところを選びましょう。
また、仕入れサイトの多くは業者以外の消費者は利用できず、登録者だけに卸価格を公開しています。
そのため、必要に応じて事前の登録が必要なケースもあります。サイト・サービスの利用方法をよく確認したうえで、仕入先を検討しましょう。
イベント(見本市・展示会)に行く
仕入れに関しては、商品の見本市や展示会など、さまざまなイベントが行われています。イベントはネットショップを対象としたものや、多様なジャンルを総合的に扱ったもの、アパレルや食品に特化しているものなど多様です。
中には数多くの業者が集まる大型イベントもあるため、自分のショップに合う商品が見つかったり、店舗とのつながりが生まれたりする可能性があります。
イベントには、まだ市場に出していない新商品やサンプルを提供する業者もあります。そのため実際に商品を見てから交渉できることが大きな魅力です。同じ会場で仕入れの交渉も行えるため、当日の契約締結も可能です。
イベント当日は業者との交渉を円滑に進めるように、名刺を準備していきましょう。
メーカーや作家に直接連絡する
気に入った商品が見つかった場合は、メーカーや作家と直接交渉するのもまた効果的です。直接交渉することで、メーカーや作家とのパイプが生まれ、長期的な仕入れ先として確保できます。
大口注文が可能な場合は、たくさん発注し、1つあたりのコストを抑えられることもメリットです。また、大量生産が難しい品だった場合も、契約を結べば優先的に制作してもらえます。
問屋を訪問する
問屋街であれば問屋が並んでいるので効率良く訪問し、仕入れの交渉を行えます。見本市や展示会などのイベントほど多くの業者ではないかもしれませんが、常に営業しているのでじっくりと交渉し、契約へと運べます。
ただし、問屋の多くは一般消費者には商品を提供していません。そのために名刺や、ネットショップを営んでいることが分かる書類を用意してから行きましょう。
海外の仕入れサイトやサービスを活用する
ネットを使えば海外の仕入れサイトやサービスも利用可能です。海外への注文では、国内であまり出回っていない商品を仕入れられるのが魅力です。
ただし、海外のサイトやサービスから仕入れる際には、同時にリスクにも注意を払わなくてはなりません。
まず為替レートや関税という問題があります。関税の割合はどれも一律というわけではなく、商品によって関税率が変わります。
関税は仕組みも複雑なため、海外からの仕入れをスムーズにしたいのであれば、税理士に1度相談をしてみてください。
また、配送までに時間がかかったり、到着に長い期間を要したりと、素早い仕入れには期待できません。品質が劣っていたりバラつきがあったり、返品がスムーズに行かないなどのトラブルが発生するケースも見られます。
そのため、信頼の置ける海外のサイトやサービスを見極める必要があります。
OEMで商品を作る
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、注文側が企画や開発を行い、業者に製造・生産のみを依頼することです。OEMを利用すれば、オリジナル商品をネットショップで販売できます。
似たような言葉にODM(Original Design Manufacturing)がありますが、こちらは企画・開発から製造・生産までを一貫して請け負っています。
ただし、OEMやODMの範囲は業者ごとに異なっているため、OEMを行っている業者が実際にはデザインや設計まで応じている場合もあります。
無在庫販売(ドロップシッピング)を活用する
無在庫販売(ドロップシッピング)とは、注文のあった商品をメーカーや卸売業者から直接顧客に発送してもらうシステムを指します。
ネットショップを通すことなく販売できるため、在庫が不足したり、逆に余剰したり、在庫管理におけるリスクを抑えられるというメリットがあります。
ネットショップ開業における仕入れ先の選び方
前述したように、ネットショップを開業するにあたり、仕入れ先にはさまざまな業者と商品が存在しています。その中から、どのような業者を選び、仕入れる商品を決めるべきかを説明します。
継続的に仕入れられる商品を選ぶ
仕入れ先を選ぶのと同時に、その業者が何を扱っているのかが大切です。商品を選ぶにしても、継続的に仕入れられる商品でなければ、リピーターが定着しません。
気に入った商品があれば、ユーザーは同じ商品を繰り返し購入します。再び購入しようとしているのに、いつまでも欠品が続くと、ユーザーはほかのショップから同じ商品を購入しようとするでしょう。
また、欠品が多いネットショップは新たなユーザーへの印象も良くありません。
連絡が取りやすい仕入れ先を選ぶ
仕入れ先とは発注や納期の確認、支払いなど、頻繁なやり取りを行います。そのため、仕入れ先を選ぶ際には連絡を取りやすい業者がおすすめです。
メールや電話での問い合わせへの対応はもちろん、円滑なコミュニケーションを取れるかどうかも見極めのポイントです。
また、常にスムーズな取引が行えるとは限らないため、発送の遅れや不良品の交換へと迅速に対応してもらえるかも考慮し、選ぶ必要があります。
仕入れ先は1つではなく複数選ぶ
ネットショップに限ったことではありませんが、商品の仕入れ先を1つの業者に絞ることはおすすめできません。
その業者との間にトラブルが起こったり、業者が卸業をやめたりした場合、ネットショップの在庫が不足してしまうリスクがあります。
商品を仕入れる際は、複数の業者と取引しましょう。複数の業者と取引することで、幅広い商品を仕入れられるというメリットもあります。
ネットショップ開業を成功に導く方法
ネットショップを成功に導くためには、さまざまなポイントがあります。ここでは、初心者から経験者まで使える開業のコツを紹介します。
コンセプトや目標を決めておく
ネットショップを開業する際には、あらかじめコンセプトや目標を決めておきましょう。
コンセプトとは、どの商品を扱うのか、どんなショップにしたいのかなどの方向性です。同じジャンルの商品を多く仕入れることで、その購入を目的としているユーザーが集まりやすい傾向があります。
また、個人でネットショップを開業する場合には、あれもこれもと手広く商品を扱うと、返って経営に負担がかかります。
目標も、できる限り具体的に、毎日毎月の売上や成果を設定し、その金額を目指しましょう。
ほかのネットショップと差別化を図る
ネットショップで売りたい商品を決める前に、まずはほかのサイトやサービスを確認し、競合調査を行いましょう。
似たようなコンセプトや、同じジャンルの商品を扱っているネットショップがすでにあった場合は、そちらにユーザーが流れてしまう可能性があります。
また、競合調査はネットショップ開業後も定期的に行うことをおすすめします。新たな競合が現れた場合には、その都度、商品を入れ替えるなどし対応しましょう。
自分も好きになれる商品を扱う
ネットショップの商品は、なるべく自分でも試してみるなどし、気に入った物を扱いましょう。
やはり思い入れのある品物を扱うとモチベーションも高まり、その気持ちは商品の説明文などからユーザーにも伝わります。
旬な商材を扱う
自分の好きな商品だけでなく、仕入れの際には最新のトレンドにも目を向けましょう。人気商品はそれだけ注目になりやすく、ショップの目玉になる可能性もあります。
また、これから流行りそうな商品を選ぶ先見の明も仕入れには必要です。
在庫は適切に管理する
商品が欠品しないようにすることは大切ですが、だからと言って大量な仕入れは経営に悪影響を与えかねません。
仕入れをする際には在庫を抱えすぎないように気をつけましょう。たとえ人気商品であったとしても、それがいつまでも続くわけではありません。適切な在庫管理が必要です。
ネットショップ開業と仕入れに必要な許可と手続き
ネットショップはオンライン上の存在ですが、商品を扱うためには実店舗と同じようにさまざまな許可と手続きを行わなければなりません。
また、そもそも開業そのものにも手続きが必要です。
個人事業主の開業手続きと青色申告
ネットショップを個人で開業する際には、個人事業主として管轄の税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出しましょう。
開業届の提出期限は事業開始日の1ヵ月以内で、青色申告の適用を受けるために必要です。
開業届と同時に税務署へと青色申告承認申請書を提出すれば、事業所得からの青色申告特別控除を受けられます。
食品販売の許可
ネットショップで製造済みの食品を販売する際には、特に許可を必要とはしません。
しかし、オリジナル商品として食品を製造・加工から手掛ける場合には、保健所に食品衛生法に基づく営業許可の申請を行わなくてはなりません。
また、その食品衛生法に基づく営業許可の承認を受けるためには、食品衛生責任者の資格が求められています。
食品衛生責任者になるためには、調理師や栄養士の資格を取得しているか、食品衛生責任者養成講習を受講する必要があります。
酒類販売の許可
酒類販売の許可は、売り方によって一般酒類小売業免許・特殊酒類小売業免許、そして通信販売酒類小売業免許の3つに大別されています。
一般酒類小売業免許は、酒屋を始めとした実店舗で酒類を販売できる免許です。特殊酒類小売業免許は、自社の中で役員や従業員に対し販売を行うといった特殊な要件が該当します。
そして、ネットショップに適用されるのが通信販売酒類小売業免許です。
通信販売酒類小売業免許の許可を受けるためには、人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需要調整要件の4つをすべて満たさなければなりません。
ここでは、その内容を簡潔に説明します。
- 人的要件:アルコール事業法の許可取り消しや、国税・地方税の滞納処分を受けていないこと
- 場所的要件:販売場所が飲食店などと同じではないこと
- 経営基礎要件:安定した経営を行っており、過去1年以内に銀行取引停止処分を受けておらず、3年間で資本の20%を超える欠損がないこと
- 需給調整要件:販売する酒類が規定に沿った商品であること
通信販売酒類小売業免許は、要件さえ満たせば、所轄する税務署で申請可能です。
しかし、提出書類の内容が複雑であるため、ネットショップで酒類の販売を考えているのであれば、手続き方法を税理士に相談することをおすすめします。
化粧品販売の許可
化粧品や医薬部外品の販売には、特に許可は必要とされていません。ネットショップでも自由に販売可能です。
ただし、これは販売に限定した場合で、化粧品や医薬部外品の製造には化粧品製造業許可が、製造・販売のどちらも行う際には化粧品製造販売業許可の取得しなければなりません。
化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可の申請は各都道府県へと届け出ます。
さらに気をつけなければならないのが、化粧品の輸入にも化粧品製造販売業許可が必要である点です。化粧品を海外から仕入れる際には注意しましょう。
中古品販売の許可
ネットショップを含め、店舗で古着や古本などの中古品を扱う場合は、古物商許可が必要です。
古物商許可の申請を行うのは、ネットショップの事業所所在地を管轄する警察署の防犯係窓口です。
また、古物商許可証の申請には審査があり、必要書類を提出したあとにその結果が分かるまで、約40営業日を要します。
以下の記事では、古物商の許可の取り方について触れていますので参考にしてみてください。
関連記事:古物商の許可をとるには?許可申請の方法
輸入品販売の許可
海外から商品を仕入れることは輸入と呼ばれています。輸入を行う場合には、税関にその品物が何かを申告し関税を支払えば、仕入れの許可を得られます。
しかし、輸入品によっては関税の支払いだけではなく、検疫や事前の確認を行わなければならない物が多数存在します。
また、海外では承認されていても、国内では販売が認められていない商品もあります。実際に輸入する前には、その品物の仕入れに問題がないかどうかを必ずチェックしましょう。
ネットショップ開業のための帳簿のつけ方
ネットショップを個人事業主として開業する際には、その仕入れや売上、経費の帳簿づけが義務づけられています。
帳簿のつけ方を大別すると、単式簿記と複式簿記の2種類に分かれているため、それぞれ説明します。
単式簿記
単式簿記は収入と支出のみを記録した簡易的な記帳方法です。身近なものでは預金通帳や家計簿・おこづかい帳などが該当します。
単式簿記はシンプルな記帳方法であるため、誰でも比較的簡単に帳簿づけを行えます。
ただし、単式簿記で帳簿づけを行うと、青色申告した場合に受けられるは控除は10万円のみです。
【ハンドメイド作家の場合の単式簿記(現金出納帳)】
日付け | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
5月1日 | 繰越 | 100,000円 | ||
5月1日 | 売上げ(アクセサリー) | 50,000円 | 150,000円 | |
5月2日 | 仕入れ(材料費) | 15,000円 | 135,000円 | |
5月3日 | 水道光熱費 | 10,000円 | 125,000円 |
単式簿記の場合、売上別や経費別などの集計は、記帳だけでは行えません。
売上別や経費別に集計を行いたい際は、帳簿のデータをもとに、電卓やパソコンなどを使い計算しなければなりません。
複式簿記
複式簿記は単式簿記に比べて帳簿づけが複雑ですが、青色申告では最大65万円の控除を受けられます。
複式簿記ではお金の出入りを取引と表現し、その取引を借方と貸方に仕訳して記録します。
端的に説明すると、借方は資産にプラスとなった分、貸方は資産にとってマイナスになった分を意味します。この場合の資産とは金銭に限らず、商品も含まれます。
例えば消耗品を購入した場合、その消耗品は資産であるためプラスとなりますが、支出により現金はマイナスです。
実際に記帳する際には、借方は表の左に、貸方はそのすぐ右に記載します。
また、複式簿記の場合、帳簿は必ず記帳しなければならない主要簿と、それを補足する補助簿とがあります。
補助簿は単式簿記に用いられる現金出納帳や、売上を管理する売掛帳や、仕入れを記帳する買掛帳などがあてはまります。
主要簿には仕訳帳や総勘定元帳が該当します。ここではその中から仕訳帳について、具体的な例を紹介します。
【輸入品販売の場合の複式簿記(仕訳帳)】
日付け | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
9月1日 | 買掛金 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
9月2日 | 消耗品費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 |
9月3日 | 現金 | 10,000円 | 売上 | 15,000円 |
売掛金 | 5,000円 | |||
仕訳帳では、まず借方から記載を始め、その次に貸方を書き込みます。
買掛金は、商品を売買しているものの、後払いとして扱われた取引です。
仕訳帳は後でまとめて作成すると大変なため、こまめに記載しておきましょう。
関連記事:【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
ネットショップ開業の手続きと仕入れの会計帳簿なら税理士にお任せ!
開業の手続きや仕入れ品の許可など、ネットショップを立ち上げる際にはさまざまな書類の作成と提出が必要です。
また、税制的に有利な青色申告をするためには一般的には複式簿記での記帳が必要ですが、その書き方には専門知識が求められます。
仕入れや販売など、ネットショップの運営に集中したい場合は、そのような手続きと許可、そして会計帳簿を税理士に任せるというのも1つの手段です。
税の専門家である税理士に任せると、確定申告や記帳も正確でスムーズに実施できます。
私たち小谷野税理士法人でも、個人向けの確定申告代行サービスを行なっています。税の相談にももちろん応じておりますので、いつでも気軽に問い合わせください。