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【個人事業主向け】従業員雇用時のガイド|手続きや税務上の注意点を解説

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【個人事業主向け】従業員雇用時のガイド|手続きや税務上の注意点を解説

個人事業主として事業を拡大し、初めて従業員を雇用する際には、多くの手続きと税務上の注意点が伴います。この記事では、従業員の雇用に際して発生する、個人事業主の義務や必要な手続きなど、事業主が知っておくべきポイントを解説します。従業員をスムーズに迎え入れ、適切な事業運営を行うための知識を身につけましょう。

個人事業主が従業員を雇用メリット

レストランのスタッフ

個人事業主でも従業員を雇うことが可能です。従業員を雇うことで、さまざまなメリットを得られます。

業務の負荷を減らせる

従業員を雇うことで、個人事業主は業務の負担を大きく軽減できます。特に、請求書などの書類作成や経費処理を依頼するなど、日常的な作業や時間を要するタスクを分担することにより、事業主自身がより本業に集中することが可能です。

サービスの質の向上を目指せる

専門的な人材を雇うことで、即戦力となることもあります。これまで見過ごされていた顧客のニーズに気づけたり、より質の高いサービスを提供が可能になったりするかもしれません。事業主とは異なる視点や専門知識を活かすことで、サービスの質を向上させ、事業の競争力を強化することにつながるでしょう。

事業の拡大が期待できる

単に人手が増えることで業務量を増やせるだけでなく、事業主一人では難しかった新しい市場への進出や新サービスの開発など、より大胆な事業展開が期待できます。

例えば、営業や顧客サポートが得意な従業員を雇うことで、新規顧客の獲得が可能になったり、顧客満足度が高まりリピート率が上がることで売上増加につながったりするかもしれません。

また、共に働く仲間がいることで、事業主は積極的に挑戦しやすい環境を整えやすくなり、事業を成長させることが期待できます。

運営体制を整えられる

従業員が複数いることで、緊急時や不測の事態にも柔軟に対応可能です。例えば、事業主が急病で倒れた場合でも、従業員が業務を引き継ぎ、事業の継続が可能となります。

リスク管理の観点からも、複数の人材がいることで、事業の運営体制を盤石なものにすることができるでしょう。

人材管理や組織運営のスキルが身につく

人材管理や組織運営のスキルは、事業を大きくする上で欠かせないポイントです。

日々の業務の中で従業員のモチベーション管理や成果を評価することで、公平な人材管理能力が身につくでしょう。また、チームでのプロジェクトを推進する中で、目標設定や進捗管理を行い、チームメンバーとコミュニケーションを図る中でリーダーシップが培われていきます。

従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、チームとしての成果を上げる過程で、個人事業主は人材管理や組織運営のスキルを深めることができるのです。

関連記事:従業員の雇用手続きは?採用後に必要な書類や加入保険について

従業員雇用に際して発生する個人事業主の義務

従業員雇用手続きのイメージ

個人事業主が従業員を雇用する際には、法律に基づくさまざまな義務が発生します。以下は個人事業主が従業員を雇用する際に最低限果たすべき義務の一部です。適切な運営を行うためにも、義務を正しく理解し、遵守することが不可欠です。

社会保険・労働保険への加入義務

社会保険には健康保険と厚生年金保険があります。どちらも従業員が一定の条件を満たす場合、個人事業主に加入義務が生じます。

名称

加入条件

内容

健康保険

従業員が常時5人以上いる場合

病気やケガの際の医療費補助、出産や死亡時の給付金など

厚生年金保険

健康保険に加入する従業員は自動的に厚生年金保険にも加入

老後の年金給付、障害や遺族への給付など

次に、労働保険には労災保険と雇用保険があります。どちらも従業員を雇用するすべての個人事業主が加入する必要があります。

名称

加入条件

内容

労災保険

従業員を1人でも雇用する場合

仕事中の事故や通勤途中の事故によるケガ、疾病、障害、死亡時の給付

雇用保険

週20時間以上働く従業員を雇い、

31日以上の雇用見込みがある場合

失業時の給付金、職業訓練の支援など

上記の保険に加入することで、従業員が安心して働ける環境を整えられます。また、事業主としても、従業員のリスクをカバーし、事業の安定を図ることが可能です。

源泉所得税の徴収・納付義務

源泉徴収とは、従業員の給与から所得税を徴収し、事業主が代わりに国に納める制度のことを指します。この制度に基づき、事業主は従業員から税金を差し引いて納税する義務を負います。事業主は従業員の給与から所得税を差し引き、国に納める手続きが必要です。また、住民税についても条件によっては事業主が納付する責任があります。

労働安全衛生法に基づく安全な職場環境の提供

労働安全衛生法は、従業員が安全かつ健康的な環境で働けるように、事業主に対して職場の安全管理を義務付けています。従業員の人数や業種に関わらず適用され、機械の保守管理・適切な作業服の提供・緊急時の対策などが含まれます。

ハラスメントの防止

労働者の権利を守るため、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの防止策を講じることも事業主の義務です。従業員の人数や性別、年齢などに関わらず、全ての事業主の義務です。対策を怠ると、法的な責任を問われることもあるため、適切な教育や相談体制の整備を行い、健全な職場環境を作りましょう。

関連記事:従業員を雇用した場合の税金は?必要な手続きや確定申告の疑問を解説

個人事業主が従業員を雇用する際に必要な手続き

従業員雇用手続きのイメージ

個人事業主が新たに従業員を迎え入れる際には、以下の手続きを行う必要があります。これらの手続きを怠ると後に法的なトラブルに発展する可能性がありますので、事前にしっかりと理解し、準備を整えておくことが大切です。

雇用契約書の作成

個人事業主が従業員を雇用する際、最初に行う手続きは雇用契約書の作成でしょう。契約書には、労働条件や職務内容・勤務時間・給与・休日・退職に関する規定などを明記し、双方の合意のもとで署名・捺印を行います。

雇用契約を締結することで、後々のトラブルを防ぎ、明確な労働関係を築くことが可能です。契約書は労働基準法に基づいて作成し、必要に応じて専門家の法的なアドバイスを受けましょう。

給与支払事務所の開設手続き

個人事業主が従業員を初めて雇用する際には「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出することが義務付けられています。この届出書は、給与の支払いを行う事務所の所在地・事業主の情報・従業員に関する情報などを記載し、従業員を雇用した日から1ヶ月以内に提出しなければなりません。

なお、個人事業主として事業を開始する際に提出する開業届に「給与支払事務所等を開設する旨」を記載している場合には、この「給与支払事務所等の開設届出書」を作成・提出する必要はありません。

参考:国税庁|A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の加入手続き

従業員が5人以上になった場合、社会保険への加入が義務付けられています。最寄りの日本年金機構、または健康保険組合に連絡を取り、事業所登録に必要な「事業所登録申請書」や従業員個々の「被保険者資格取得届」などの必要書類を準備しましょう。

書類を提出する際には、事業主の印鑑証明書・事業所の所在地を証明する書類・従業員の個人情報を記載した書類などが必要です。加入後は、毎月の保険料の納付が必要となり、その額は従業員の給与に基づいて計算されます。納付漏れや遅延がないよう、注意しましょう。

労働保険(労災保険と雇用保険)の加入手続き

個人事業主が従業員を雇用する場合、労災保険と雇用保険への加入が義務化されています。労働保険の加入手続きは、最寄りの労働基準監督署、またはハローワークで行います。

手続きには、「労働保険関係成立届」と「労働保険料算定基礎届」の提出が必要です。2つの書類には、事業主の所在地や賃金総額の見込み額などを記入し、保険関係が成立した日の次の日から10日以内に提出する必要があります。特に、労働保険料は事業の種類や従業員の給与額によって異なるため、正確に計算しなければなりません。また、年度更新時には「労働保険料申告書」の提出も必要です。

源泉所得税の納付準備

従業員を雇用すると、給与から源泉所得税を差し引く義務が発生します。まず、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、給与支払事務所として登録することから始めます。その後、納税地の金融機関や税務署で源泉所得税を納付します。

税額は従業員の給与額や扶養家族の有無などによって異なるため、税務署が発行する「源泉徴収税額表」を参照し計算します。

原則として、給与支払いの翌月10日までに前月分の源泉所得税を納付しなければなりません。ただし、従業員が10人未満の場合は、税務署へ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、年2回(7月10日、翌年1月20日)の納付が認められます。

参考:国税庁|A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

関連記事:在宅勤務(リモートワーク)の従業員への経費|計上できる範囲や考え方

従業員を雇用せずに個人が仕事を依頼する方法

個人事業主が事業を拡大する際、従業員を雇うことなく業務を進める方法もあります。以下の方法では、労働保険加入の義務を負うことなく、業務のサポートを受けられます。

クラウドソーシングサービスを利用する

クラウドソーシングは、インターネットを介して全国のさまざまなスキルを持つ人材にアクセスできるサービスです。デザイン・ライティング・プログラミングなど、多種多様な業務を依頼でき、コストを抑えつつ、必要な時に適切な人材を見つけることが可能です。

短期間のプロジェクトや一時的な業務増加に対応する際に特に有効で、多くの個人事業主に重宝されています。

個人事業主同士のネットワークを活用する

個人事業主同士のネットワークは、専門性の高い業務を依頼する際に有効です。例えば、ある分野で特化したスキルを持つフリーランスに直接コンタクトを取り、必要な業務を委託することで、高品質な成果を得られます。

また、依頼する業務量が増減した場合でも、依頼先の個人事業主が持つネットワーク内で柔軟に対応してもらうことが期待できます。信頼関係を築きながら長期的なパートナーシップを構築することにもつながるでしょう。

業務委託契約を結ぶ

特定の業務を外部の企業や個人に委託することで、従業員を雇用するよりも柔軟な契約形態を取れます。業務委託契約を結ぶ際には、業務の範囲・期間・報酬などを明確に定めましょう。双方の合意のもとで契約を交わすことで、業務の質を保ちつつ、コスト管理も行いやすくなります。

ビジネスパートナーシップを結ぶ

他の個人事業主や企業とのビジネスパートナーシップは、互いの強みを活かし合うことで、新たな市場への進出やサービスの拡充を目指す方法です。信頼関係の構築が重要ですが、長期的な協力関係を築くことで、それぞれの事業が相乗効果を生み出すことが期待できます。

従業員を雇うことで得られる節税効果

従業員雇用手続きのイメージ

個人事業主が従業員を雇用する際には、経費の適切な計上や税制の活用により、節税を図ることが可能です。ここでは、節税対策ポイントを5つご紹介します。

従業員への給与

個人事業主が従業員を雇用する場合、支払われる給与は事業に必要な経費として計上できます。給与の全額をその年の必要経費として処理でき、税負担を減らすことが可能です。

ただし、給与支払いに関する帳簿の記録は正確に行い、源泉徴所得額の納付も忘れないでください。給与支払いの証拠となる資料は、万が一の税務調査に備え7年間は保管しておきましょう。

社会保険料

個人事業主が従業員を雇用する際の社会保険料は、健康保険や厚生年金保険の事業主負担分として、経費として計上できます。具体的には、給与とは別に事業主が支払う保険料の半分を経費にできるため、税負担の軽減につながります。

正確な計上のためには、保険料の納付証明書などの書類を保管する必要があります。従業員への福利厚生としてだけでなく、事業主の税務上のメリットとしても社会保険料の適切な管理は欠かせません。

雇用保険・労災保険の保険料

個人事業主が従業員を雇用する際には雇用保険や労災保険への加入が必要ですが、これらの保険料も経費として計上できます。

労働保険に関する保険料は事業運営に必要不可欠なコストであり、従業員の社会保障を支えるために支払うものです。経費計上することで、事業主の所得税や住民税の負担を軽減できます。

従業員に対する福利厚生費用

従業員に対する福利厚生費用も経費として計上できるため、活用することでさらなる節税が見込めます。ただし、金額が常識的に考えて妥当な範囲であることが条件となります。例えば、高額な人間ドッグや4泊5日以上の社員旅行などは経費として認められないでしょう。

関連記事:青色申告者がアルバイトした際/雇った際の給料の仕訳は?

従業員のサポートを得て事業を前進させよう

個人事業主が従業員を雇う際には、雇用契約書の作成から社会保険の手続き、給料の計算といった一連の流れを把握することが重要です。特に、税務上の注意点として、源泉所得税の納付や労働保険の加入義務など、細かなルールが多く存在します。

従業員の雇用に関する業務を適切に管理するためには、専門的な知識が必要です。不安や疑問がある場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。従業員の雇用を検討している個人事業主の方は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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