開業時の相談先としては、公的機関や専門家など複数があげられます。それぞれ専門分野などが異なっており、特徴を押さえておくとスムーズに事業を展開させやすくなるでしょう。今回は、開業時に利用できる相談先の特徴や、相談するときのポイントを解説します。最後まで読めば、開業時や開業後に困ったときに利用できる公的機関などについて、理解が深まるでしょう。
目次
開業時に利用できる相談先5つ【公的機関】
開業する時は、以下の公的機関でさまざまな疑問や不安などを相談できます。
- 商工会議所・商工会
- 日本政策金融公庫
- 中小企業基盤整備機構
- よろず支援拠点
- ワンストップ相談窓口Plus One
ここから詳細に見ていきましょう。
商工会議所・商工会
開業時に利用できる公的機関の1つは、商工会議所と商工会です。名前が異なるものの、商工会議所と商工会はいずれも、地域の事業者の経営改善と地域の活性化を目的としています。
商工会議所は全国に1,600ヵ所以上あります。一方で、商工会は全国に515ヵ所あるのが特徴です。商工会議所や商工会で相談できる内容は、具体的に以下の通りです。
- 確定申告
- 労務管理
- 資金繰り
- 販売促進
- 販路開拓など
商工会議所などが主催するセミナーでは、以下の通り起業したい方がすぐ役立てられる情報を提供してもらえるケースがあります。
- ビジネスプラン作成
- 参入市場の探し方
- 顧客の作り方
- 資金計画の立て方など
相談方法として「窓口、電話、巡回」の3つがあげられ、ニーズに応じて柔軟に対応してもらえるでしょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、以下の事業を通して、国民生活の向上の寄与を目的とする政策金融機関です。
- 国民生活事業:小規模事業者などへの事業資金の融資など
- 農林水産事業:農林漁業や食品産業の関連事業者への融資など
- 中小企業事業:中小企業や小規模事業者への融資や信用保険など
全国152支店に「創業サポートデスク」が設置されており、以下の相談に乗ってもらえます。
- 創業計画書の立て方
- 融資制度の利用方法
- 融資申し込みの流れなど
今後開業したい方が利用できる窓口は、以下の表の通りです。
窓口 | 概要 |
全国の支店 | 以下の借り入れや返済の相談ができる
|
ビジネスサポートプラザ | 専任スタッフによる以下のサポートを受けられる
|
対面のみでなく、オンラインでの相談にも対応しているのがメリットです。
参考:「予約相談(お借入またはご返済に関するご相談)【国民生活事業】」日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の創業融資(新創業融資)とは?必要書類や申し込みの流れなどを詳しく解説!
中小企業基盤整備機構
開業を目指している方が相談先として利用できるのは、中小企業基盤整備機構です。提供しているサービスは以下の表の通りです。
名称 | 概要 |
TIP*S(ティップス) |
|
BusiNest(ビジネスト) |
|
起業ライダーマモル(チャットボット) |
|
参考:「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」独立行政法人 中小企業基盤整備機構
よろず支援拠点
開業時に相談先として利用できるのは「よろず支援拠点」で、以下の通りさまざまな特徴があります。
- 開業時に抱えやすい本質的な課題の明確化と、解決策の提案をしてもらえる
- 適切な支援機関の紹介・連携のサポートをしてもらえる
- 基本的にワンストップで解決できる
- 電話・メール・FAXで予約できる
よろず支援拠点は全国に拠点を設けており、地方に住んでいる方も利用しやすいと言えます。よろず支援拠点の場合、開業に関する相談は10%程度で、売上拡大に関するものが70%以上を占めます。開業後も継続して利用しやすいのがメリットの1つです。
ワンストップ相談窓口Plus One
開業時には、相談先として「ワンストップ相談窓口Plus One」を利用するとよいでしょう。政府系の機関を選択・紹介してもらえる窓口で、知識ゼロの方でも適切なサポートを受けられるためです。
本制度に参加する政府系機関の一部は、以下の通りです。
- AMED:医療研究開発の基礎から実用化までの推進などを目的とする
- JST:知の創出から研究成果の還元・整備などを目的とする
- INPIT:知的財産人材の育成支援のサービス提供などにより、産業社会の発展を目的とする
- IPA:IT分野の発展を目的とする
技術開発や知財実用化などの相談にも乗ってもらえるため、ビジネスを成長させるフェーズでも活用できるのがメリットの1つです。
開業時に利用できる相談先【専門家】
開業時は公的機関のほか、以下の専門家も相談先として選択できます。
- 税理士
- 弁護士
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 司法書士
ここから詳しく見ていきましょう。
税理士
開業後に利用するイメージが強いかも知れませんが、税理士は開業時も利用できるのが特徴です。税理士を利用するメリットは具体的に以下の通りです。
- 決算月や役員報酬などの決め方が分かる:株式会社を設立する方の場合、資本金などによって納税額が変わる
- 助成金や補助金の申請サポートを受けられる:国や地方公共団体からもらえるお金で、申請するには条件を満たす必要がある
- 事業計画書の作成のサポートをしてもらえる:創業融資を受ける場合、事業計画書の提出が求められる
- 会社設立の手続きをサポートしてもらえる:書類作成などの時間や労力を削減できる
特に法人を設立する方の場合、税理士と顧問契約を結ぶと、開業後も必要な情報提供やサポートなどを受けられます。
税理士変更での良い税理士の選び方!個人事業主・法人の選定のポイントや失敗しがちな選び方
弁護士
開業に関する相談をしたいときは、弁護士を利用するのが1つの方法です。以下の通り、法律に則ったうえで正しいアドバイスを受けられるためです。
- 事業内容の適法性のチェック:知的財産などに関するトラブル発生を防止できる
- 契約書や規則のチェック:プライバシーポリシーや就業規則などを正しく決められる
- 株式配分のアドバイス:共同創業するとき、配分の比率によって将来的にトラブル発生の原因となる
顧問契約を結ぶほか、1回限りの契約でも税理士や弁護士などを利用できるのは、知っておくとよいでしょう。
自治体や弁護士会によっては、無料相談を実施しているケースもあります。
社会保険労務士
開業するときは、社会保険労務士に相談するのが1つの方法です。社会保険労務士とは、労働や社会保険などに関する専門知識を持っているのが特徴で、以下の面でサポートを受けられるためです。
- 就業規則の作成や届出
- 補助金や助成金の申請に関するアドバイス
- 労務管理のコンサルティング
- 社会保険に関する書類作成など
従業員を雇う予定がある場合、労働保険などの制度を整えたり、書類を提出したりする必要があります。
事業に専念するうえでは、社会保険業務に関して社会保険労務士に任せるのが理想的です。
行政書士
開業時に相談先として利用したいのは、行政書士です。行政書士は、官公庁などへの提出書類の申請や手続きの代行などを主な仕事としており、適切なアドバイスも受けられるためです。
開業時に行政書士に相談できる内容は、具体的に以下に示します。
- 定款の作成
- 許認可に関する書類作成
- 会社運営に必要な書類作成
- 補助金や助成金の申請に関することなど
行政書士は登記の手続きができないものの、各種相談やコンサルタント的な視点からのアドバイスもしてもらえます。
司法書士
開業時は司法書士に対して相談ができます。会社に関する法律や登記の手続きの専門家で、開業時に役立つアドバイスを受けられるためです。登記とは、不動産や会社などの権利関係について、法務局に届出をすることです。
各都道府県に司法書士会が設けられており、無料相談会などを実施しているケースがあります。基本的に事前予約が必要となるものの、登記に関する相談をしたい方は日程などを調べるとよいでしょう。
開業時の相談をするときのポイント
公的機関や専門家に限らず、開業時の疑問点などを相談をするときは、以下のポイントを押さえておくと効果的です。
- 事業計画を考えておく:事業内容やマーケティングの方法、想定したより売上が低いケースの対処法などを練っておく
- 起業の流れを知っておく:個人事業主と法人とでは必要な手続きや流れが異なる
- 資金計画を立てておく:借り入れ予定金額や、申請できる助成金や補助金などについて調べておく
共通する点として、調べてすぐ分かる情報に関しては、自分で調べておくことがあげられます。会社に雇われているとき以上に、開業したあとは主体的に行動することが求められるためです。
事業者を取り巻く環境は変化し続けており、「すぐに人を頼りにする」姿勢では、難しい局面を打開するのは難しいと言えます。インターネットですぐ検索できる恵まれた現代のため、基本的な点は自分で調べる姿勢を持つのは、ビジネスを発展させるうえで重要です。
主体的に行動する方が、より効果的なアドバイスを得られたり、早く開業まで進められたりするなどのメリットを得られるでしょう。
専門家の持つ知識や経験などを最大限引き出すには、「自分から調べたり行動したりしたうえで疑問点を洗い出しておく」のがポイントです。
起業の流れとは?いくらかかるか・起業のやり方や必要なことを詳しく解説!
開業時の相談は税理士へ
初めて開業するときは、疑問点や不安に感じる点などは特に多いものです。公的機関や専門家など、いざというときに頼りにできる場所は複数用意されており、状況に応じて利用できます。
一方で、分からないからと何でも相談するより、自分で調べたうえで専門家などを頼ると、より本質的な問題解決ができます。なるべく自分で解決しようとする姿勢は、開業したあとも重要です。
得意分野が異なっているため、開業に関する相談をするときは、適切な相談先を選ぶのがポイントの1つです。
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