新車と中古車の減価償却について、正しく理解できているでしょうか?ここでは、新車と中古車の減価償却費の違い、計算方法などを詳しく解説します。業務に必要な車両を購入したときは、車両取得時に費用を計上するのではなく、減価償却費として経費算入するのが一般的です。新車と中古車、どちらが節税に効果的で経済的負担を減らせるのか、税務上の注意点やポイントについても紹介します。
目次
減価償却の概念と取得価格
土地や建物、設備などの資産を購入、保有しているときは、耐用年数に応じた減価償却して費用として計上します。ここでは、減価償却の概念と、車の取得金額の計算方法について解説します。
減価償却とは
減価償却とは、購入した資産の取得額を資産耐用年数に応じて分割し、毎年費用として計上することです。減価償却の考え方としては、資産は長期間にわたって使用することで年々その価値が減少し、最終的に価値が0になるというものです。
減価償却による会計処理をする理由は、正しく企業損益を把握するためです。資産購入時に一括で費用を計上した場合、資産の取得金額が大きいほど、その年の利益を圧迫します。
しかし、費用を一括計上すると、資産を購入した翌年度は損金への算入がないため利益への影響はありません。
資産の購入によって利益の変動幅が大きくなると、企業の経営や資産状況を正確に認識することが困難です。
そこで、資産を購入したタイミングで全額費用として算入するのではなく、資産の種類によって決められた耐用年数で導き出した費用を、減価償却費として計上します。
車の取得金額の計算方法
正しく減価償却費を計算するためにも、まずは車の取得金額を導き出さなくてはいけません。新品でも中古でも、資産である車を購入したときには、車本体の費用に加えて諸費用がかかります。そのため、車本体の費用及び諸費用を全て含めて取得金額として計算します。取得金額には以下の費用が含まれます。
- 車両本体の価格
- 付属品
- 納車費用
車の購入時にかかる下記の費用も取得金額に含めることが可能です。ただし、取得金額に含めるかどうかは、個々の判断に任せています。そのため、購入時の費用として処理するか、取得金額に含めるかは自社の状況によって決めます。
- 自動車税
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自賠責保険料
- 車庫証明書
- 検査登録費用
車を購入するときに、購入した車を廃車にするときにかかるリサイクル関連費用を支払います。リサイクル費用については、購入時は預託金として処理するため「長期前払費用」「リサイクル預託金」の勘定科目を使います。
関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
車の減価償却費を求める方法
法律で定められた方法で正しく計算することで、車の取得費用を経費として計上できます。ここからは、減価償却費を計算する主な計算方法を押さえておきましょう。
定額法
取得した資産の法定耐用年数に応じて、毎期均等に減価償却費を算出する方法です。定額法による計算方法は以下の通りです。
定額法の減価償却費=車の取得価格×定額法の償却率 |
年度の中途で車を購入した場合は、月数で按分して減価償却費を計算します。
定額法の減価償却費=車の取得金額×定額法の償却率×事業年度内で使用した月数÷事業年度の月数 |
減価償却費を定額法で導き出すメリットは、計算のしやすさですが、耐用年数が長い資産については、毎年計上できる経費が少なくなるのがデメリットです。
定率法
取得した資産の未償却残高に対して、一定の償却率を用いて減価償却費を算出する方法です。
初年度
定率法の減価償却費=車の取得価格×償却率×使用した月数÷事業年度の月数 |
2年目以降
定率法の減価償却費=(車の取得金額-減価償却累計額)×償却率×使用した月数÷事業年度の月数 |
定率法は、資産購入初期の償却費が大きいことが特徴です。経費をできるだけ多く計上したい期に資産を購入し、定率法で減価償却をすると、高い節税効果が期待できます。
車の法定耐用年数について
車の減価償却費を計算するためには、資産ごとに定められている法定耐用年数に基づいて計算します。また、新車と中古車でも法定耐用年数が異なります。ここでは、新車と中古車の法定耐用年数について解説します。
新車の法定耐用年数
新車は、車種と使用目的によって法定耐用年数が異なります。普通車の法定耐用年数は6年、軽自動車については4年です。しかし、運送業者やレンタカー業者のように、業務での使用頻度が高い場合は例外となり、以下の耐用年数が適用されます。
車種 | 法定耐用年数 |
普通自動車 | 4年 |
貨物自動車(積載量2トン以下) | 3年 |
このように、事業の内容に応じて耐用年数が異なります。減価償却費の計算時に必要となるため、車を購入するときは、事前に耐用年数を確認しておくことをおすすめします。
中古車の法定耐用年数
新車と比較して、中古車の法定耐用年数は短い傾向にあります。中古車の法定耐用年数は、法定耐用年数が経過している場合と、経過していない場合に分けて、それぞれ異なる計算式で導き出します。
法定耐用年数が経過している場合
中古車の法定耐用年数=法定耐用年数×0.2 |
上記の計算式に当てはめる場合は、年数ではなく月数に換算してから計算してください。
法律で定められた耐用年数が経過していない場合
中古車の法定耐用年数=(新車の法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2 |
法定耐用年数を経過していない中古車は、法定耐用年数が経過している中古車と比べて、法定耐用年数が長いです。つまり、法定耐用年数が経過していない中古車を購入した方が、節税につながる可能性が高いでしょう。
新車と中古車で減価償却費を比較
事業に使う車を購入するときに、新車で購入するか、中古で購入するかで迷うことがあるでしょう。中古車と新車とでは、減価償却費にも違いが出ます。そこで、新車と中古車、それぞれの減価償却費について、モデルケースを参考にしながら解説します。
新車の減価償却費
取得金額400万円で普通車の新車を購入したときの減価償却費を、定額法・定率法それぞれで計算する場合は以下の計算式で行います。
定額法
新車の減価償却費=400万円×0.167 |
上記の式に当てはめると、66万8,000円が減価償却費です。
定率法
新車の減価償却費=400万円×0.333 |
上記の式に当てはめると、133万2,000円が減価償却費です。定額法よりも定率法で計算した方が、初年度の減価償却費が高いです。
中古車(2年落ち)の減価償却費
初年度登録から2年経過した普通車を400万円で購入した場合の減価償却費を、定額法と定率法で計算します。
定額法
2年落ち中古車の減価償却費=400万円×0.25 |
定額法の場合、100万円を減価償却費として経費算入できます。
定率法
2年落ち中古車の減価償却費=400万円×0.5 |
定率法では200万円を減価償却費として計上できます。定率法で計算した方が、購入初期の減価償却費を多く計上できます。
中古車(4年落ち)の減価償却費
初年度登録から4年経過した車の減価償却費について、それぞれ定額法と定率法で計算してみます。
定額法
4年落ち中古車の減価償却費=400万円×0.5 |
200万円を減価償却費として、損金算入が可能です。
定率法
4年落ち中古車の減価償却費=400万円×1.0 |
定率法の場合、資産を購入した年度に、車の取得金額を減価償却費として全額経費算入できるのです。
関連記事:【税理士監修】任意償却と減価償却とは?法人・個人事業主での違いやメリット・デメリット
車の減価償却するときの注意点
事業用として車を購入するときに、さまざまなケースが想定されます。状況によっては、減価償却費の計上の際に注意が必要となるため、ここでは、注意が必要なケースと対策について紹介します。
ローンを組んで車を購入した場合
事業で使用する自動車を一括払いではなく、ローンで購入したときは経費の処理に注意が必要です。ローンを組んだ場合、毎月一定額を利息と共に金融機関へ返済します。
ローンの返済額は経費にならないため注意してください。
経費計上できるもの
- 車の取得金額に応じた減価償却費
- ローンの利息
経費計上できないもの
- ローンの返済額
ローンを組んで車を購入した場合、経費として算入できるものと算入できないものを明確に押さえておきましょう。
中古車は耐用年数を確認
中古車を購入するときは、正しい耐用年数で減価償却費を計算するためにも、初年度登録日を確認してください。以前のオーナーが車を手放してから、購入に至るまでに一定の期間が経過しているはずです。
初年度登録日は車検証で確認できます。初年度登録日から経過している期間から、正しい耐用年数を導き出します。
関連記事:事業用自動車を導入するメリットとは?自家用車との違いや節税について
節税につなげる車の購入と減価償却のポイント
事業のために車を購入するとき、購入する車の種類や年式によって、節税効果に影響が出ます。ここでは、車を購入するときの減価償却のポイントについて、実務と節税の面から詳しく解説します。
事業用の車の維持費は全て経費に
事業用として車を購入した場合、車にかかる全ての費用は経費として計上できます。
- 税金
- 自賠責保険料
- 車検費用
- ガソリン代
- 任意保険料
- 洗車代
- 高速代
- 駐車場代
車の購入時に支払う各種費用についても、経費として計上できます。車購入時にかかる費用や維持費の計上について不安があるときは、税理士に相談することがおすすめです。
車の取得や維持費の正しい会計処理でお悩みなら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
適切な車種を購入する
事業に適した車種を購入することを心がけてください。事業のために必要な車として購入し、使用することで減価償却費や車の維持にかかる税金などを経費計上できるからです。
そのため、事業の内容に適さない車種を購入してしまうと、取得費用や減価償却費など車に関する費用が、経費として認められない可能性が高いです。
事業での車の必要性、活用法、ビジネスとプライベートの両方で利用している場合は、それぞれの使用割合と活用法について明確な説明が求められます。
購入のタイミングに注意
節税を意識するなら、車を購入するタイミングに配慮しましょう。年度途中で車を購入した場合、減価償却費は月割りで計算します。
車の購入費用をできるだけ経費として多く計上したいときは、年度の最初の月に購入することで、減価償却費をフルで計上できます。
減価償却費の計算方法を選ぶポイント
車の減価償却費を計算する方法で迷ったときは、自社の経営や財政の状況によって決めましょう。
定額法は毎年一定額を減価償却費として算入するため、資金計画の見通しが立てやすいこと、計算が簡単なのが特徴です。一方で、定率法は、車を購入してから最初の1、2年の減価償却費の額が大きいです。
近い将来の経営や資金の状況を予測し、早期に高い節税効果を求めるなら定率法、しばらく安定した経営が見通せるなら定額法といったように、それぞれの状況で判断します。
定額法と定率法の切り替えは頻繁にできるものではありません。一度減価償却の計算方法を決めたら、同じ計算方法を継続するのが一般的です。自社にとってどちらの計算方法が適しているのか、判断がつかないときは税理士に相談することをおすすめします。
減価償却費の計算方法でお悩みなら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
節税効果を高める車の購入
事業で使う車を購入するときに、何年落ちの車を購入するかで節税効果が変わります。
減価償却費は車の年式や計算方法に関わらず、経費算入できる総額に違いはありません。ただし、年式と計算方法によって、その年度の減価償却費が異なります。
新車よりも中古車の方が耐用年数が短く、短期間で減価償却できます。また、普通自動車を購入するなら、初年度登録から4年以上経過した車が短期間での節税効果が最も高いでしょう。
定率法で減価償却した場合、年度の最初の月で購入すると取得金額のほぼ全額を年度内に経費計上できるため、その年度内で支払う税金を減額できるからです。
車の購入や減価償却による節税効果を期待するなら、近い将来の経営や資金状況を踏まえて、自社にとって最適な対策を選ぶことが大切です。
関連記事:事業用車両は登録が必要?ナンバープレートの違いや手順、注意点を解説
まとめ | 新車と中古車それぞれの減価償却費を正しく計上し節税につなげよう
ここでは、新車と中古車を購入した場合の減価償却費について詳しく紹介しました。事業用の車を購入した際、購入年度に取得金額を一括経費として計上するのではなく、減価償却費の計上で処理します。
また、新車と中古車では、耐用年数が異なります。そこで、節税効果を期待するなら、購入する車の年式、減価償却費を計算する方法を検討することが大切です。自社の経営や資産状況を鑑みて、妥当な資産や減価償却の方法を選びましょう。