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中小企業の税制優遇とは?令和5年度の改正内容と活用方法のポイント

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中小企業の税制優遇とは?令和5年度の改正内容と活用方法のポイント

中小企業は大企業に比べて経営環境が厳しく、資金繰りや人材確保、技術革新などの課題に直面しています。そこで、政府は中小企業の経営を支援するために、さまざまな税制上の優遇措置を用意しています。しかし、中小企業の税制優遇はその種類や内容が多岐にわたり、中小企業の経営者は自社が受けられる優遇措置を把握し、有効に活用することが難しいと感じるかもしれません。この記事では、中小企業の税制優遇について分かりやすく解説します。中小企業の経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

中小企業の税制優遇を有効に活用しよう

フリーランスの税金がやばいイメージ

税制上の優遇措置は、中小企業の税負担を軽減したり、設備投資や研究開発などの経営活動を促進したりすることを目的としています。

ここでは、中小企業の税制上の優遇措置について、基本的なポイントをまとめます。

租税特別措置法上の中小企業者等とは

中小企業の税制優遇を受けるには、まず自社が「租税特別措置法上の中小企業者等」に該当するかどうかを確認する必要があります。租税特別措置法上の中小企業者等とは、以下の条件を満たす事業者のことを指します。

  • 資本金または出資総額が1億円以下であること
  • 資本金が1億円を超える法人(大規模法人)から発行済株式の1/2以上を保有されていない
  • 複数の大規模法人に発行済株式の2/3以上を保有されていない

詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。

中小企業者等と中小法人等の違いと注意点

中小企業の税制優遇には、中小企業者等と中小法人等という2つの区分があります。中小企業者等とは、前述の租税特別措置法上の中小企業者等のことで、中小法人等とは、以下の条件を満たす法人のことを指します。

  • 資本金または出資総額が1億円以下であること
  • 資本金が5億円以上の法人による完全支配関係がないこと

例えば、中小法人では所得のうち年800万円以下の部分については法人税率が軽減され、15%に設定されていますが、これは普通法人には適用されません。普通法人の場合、所得全額に対して23.2%の税率が適用されます。

このように、税制優遇措置は中小企業者等と中小法人等で異なり、それぞれの企業形態に応じて適用されるため、注意が必要です。自社が中小企業者等か中小法人等かを正しく把握し、受けられる優遇措置を確認する必要があります。

中小企業の優遇措置のメリットとデメリット

中小企業の優遇措置には、以下のようなメリットがあります。

  • 税負担を軽減し、経営資源を有効に活用できる
  • 設備投資や研究開発などの経営活動を促進し、競争力を高められる
  • 経営状況や事業計画に応じて、最適な優遇措置を選択できる

一方で、中小企業の優遇措置には、以下のようなデメリットもあります。

  • 優遇措置の種類や内容が多岐にわたり、複雑で分かりにくい
  • 優遇措置の対象や要件が毎年の税制改正によって変更されることがある
  • 優遇措置の申請や届出には、手続きや書類が必要で、負担がかかることがある

関連記事:【節税の基礎知識】所得税や消費税の節税方法やポイントを紹介!

中小企業が受けられる税制上の優遇措置

中小企業が受けられる税制上の優遇措置には、主に以下の3つの種類があります。

  • 法人税率の軽減
  • 欠損金の繰越・繰戻
  • 交際費等の損金算入の特例

それぞれの優遇措置の内容と対象となる中小企業の区分を説明します。

法人税率の軽減

中小企業は、一定の要件を満たす場合、法人税率が軽減されます。具体的には、次のような場合に法人税率の軽減が適用されます。

  • 資本金が1億円以下である場合、所得金額の800万円に対しては15%の法人税率が適用されます(通常は23.2%)

これらの法人税率の軽減は、中小企業の利益を増やし、再投資や設備投資などに活用できるようにすることを目的としています。

欠損金の繰越・繰戻

中小企業は、一定の要件を満たす場合、欠損金を繰越・繰戻して損金算入できます。具体的には、次のような場合に欠損金の繰越・繰戻が適用されます。

  • 資本金が1億円以下である場合、欠損金を10年間繰越して損金算入が可能(通常は9年間)

これらの欠損金の繰越・繰戻は、中小企業の経営の安定化や事業の拡大に資することを目的としています。

交際費等の損金算入の特例

交際費等の損金算入の特例とは、中小企業が取引先や顧客との交際のために支出した費用の一部を、損金として所得から差し引くことです。具体的には、次のような場合に交際費等の損金算入の特例が適用されます。

  • 資本金が1億円以下である場合、交際費等の損金算入の上限額が年間800万円となります

これらの交際費等の損金算入の特例は、中小企業の営業活動の促進や競争力の向上に資することを目的としています。

関連記事:株式投資にはどのような税金がかかる?節税方法や税制優遇措置についても解説

中小企業の設備投資に対する税制上の優遇措置インボイスの経過措置のイメージ

中小企業の設備投資に対する税制上の優遇措置とは、中小企業が生産性向上や技術革新などのために設備を購入したり改良したりする際に、その費用の一部を減価償却費として所得から差し引いたり、固定資産税を減免したりすることです。この優遇措置は、中小企業の設備投資を促進し、経営の効率化や競争力の強化を目的としています。

中小企業の設備投資に対する税制上の5つの優遇措置について、それぞれの優遇措置の内容と対象となる中小企業の区分を説明します。

中小企業投資促進税制

「中小企業投資促進税制」とは、中小企業などが新品の機械や装置などを取得した場合に、特別償却または税額控除を受けられる制度です。この制度は、中小企業の設備投資を促進し、生産性や競争力の向上に寄与することを目的としています。

中小企業投資促進税制の適用を受けるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 青色申告法人であること
  • 資本金または出資金が1億円以下の法人、常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主などであること
  • 指定期間(平成10年6月1日から令和7年3月31日まで)内に新品の機械や装置などを取得し、国内にある製造業や建設業などの指定事業の用に供すること
  • 取得した機械や装置などが一定の規模や品質を満たすこと

中小企業投資促進税制の優遇措置は、特別償却と税額控除の2種類があります。特別償却は、取得価額の30%を特別に償却できる制度です。税額控除は、取得価額の7%を法人税額から控除できる制度です。

ただし、税額控除は資本金または出資金が3,000万円以下の法人や個人事業主などに限られます。また、税額控除の上限は、調整前法人税額の20%です。税額控除の上限を超える場合は、翌年度に繰り越せます。

参考:国税庁|No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

中小企業経営強化税制

「中小企業経営強化税制」とは、中小企業や小規模事業者などが、経営力向上のための計画を策定し認定を受けることで、さまざまな税制優遇や金融支援を受けられる制度です。

中小企業経営強化税制の主な内容は以下のとおりです。

  • 特別償却:新品の経営力向上設備等を取得した場合、その取得価額の全額を即時償却できます。
  • 税額控除:新品の経営力向上設備等を取得した場合、その取得価額の7%または10%を法人税額から控除できます。
  • 登録免許税・不動産取得税の特例:経営資源集約化のために不動産を取得した場合、登録免許税や不動産取得税が軽減されます。
  • 金融支援:経営力向上計画に基づく設備投資や事業承継などに対して、低利で融資を受けられます。
  • 法的支援:経営資源集約化のために事業再編を行う場合、株式交換や合併などに関する法的手続きが簡素化されます。

中小企業経営強化税制の適用を受けるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 中小企業者または農業協同組合等もしくは商店街振興組合であること
  • 青色申告書を提出すること
  • 経営力向上計画を策定し、事業所管大臣に申請して認定を受けること

参考:国税庁|No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

少額減価償却資産の特例

「少額減価償却資産の特例」とは、中小企業者等が取得価額が30万円未満の減価償却資産を事業の用に供した場合に、その取得価額を全額損金に算入できる制度です。

この制度の目的は、中小企業者等の設備投資を促進し、経理処理の負担を軽減することです。一般型の減価償却とは別に、中小企業者等に対して優遇的に適用されます。

少額減価償却資産の特例の適用を受けるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 青色申告法人であること
  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人、常時使用する従業員数が500人以下の法人(令和2年3月31日までの取得などについては、1,000人以下)であること
  • 取得価額が30万円未満の減価償却資産であること(貸付けの用に供したものは除く)
  • 事業年度内の取得価額の合計が300万円以下であること

参考:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

固定資産税の特例措置

「固定資産税の特例措置」とは、市区町村の認定を受けた中小企業が先端設備等を導入した場合に、固定資産税を一定期間軽減する制度です。

この制度の目的は、生産性向上や賃上げの促進に資する中小企業の設備投資を支援することです。

具体的には、以下のような要件を満たす場合に、固定資産税の課税標準を2分の1または3分の1に軽減します。

  • 資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人、または常時使用する従業員数が1,000人以下の法人や個人であること
  • 市区町村の策定する「導入促進基本計画」に基づき、「先端設備等導入計画」の認定を受けたこと
  • 年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる投資計画に記載された設備を導入したこと
  • 設備の取得時期が令和5年4月1日から令和7年3月31日までであること
  • 賃上げ方針を従業員に表明した場合は、より有利な軽減率が適用されること

固定資産税の特例措置を利用するには、固定資産税の申告の際に、必要な書類を提出する必要があります。

関連記事:障害者雇用での税金優遇措置ってなに?分かりやすく解説

そのほかの税制上の優遇措置

電子マネーの経費計上のイメージ

中小企業が受けられる税制上の優遇措置は、上記のものに限らず、そのほかにも多数あります。ここでは、その中から代表的なものを紹介します。

交際費等の損金算入の特例

「交際費等の損金算入の特例」とは、法人が支出する交際費等の一部を損金として計上できる制度です。

交際費等とは、得意先や仕入先などに対して接待や贈答などを行うために使う費用のことです。通常は、交際費等の全額は損金になりませんが、特例措置により、一定の条件を満たす場合には、損金として認められる金額があります。

特例措置の内容は、法人の規模や種類によって異なりますが、大きく分けて以下のようになります。

  • 資本金が1億円以下の中小法人の場合

接待飲食費の50%相当額以下の金額を損金にできるまたは、交際費等の年間800万円以下の金額を損金にできる

  • 資本金が1億円超100億円未満の大法人の場合

接待飲食費の50%相当額以下の金額を損金にできる

  • 資本金が100億円超の大法人の場合

交際費等の損金算入はできない

この特例措置は、令和6年3月31日までの間に開始する事業年度に適用されます。

研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)

「研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)」とは、中小企業者等が研究開発を行っている場合に、法人税額から試験研究費の額に税額控除割合(12%~17%)を乗じた金額を控除できる制度です。控除できる金額は、原則として、法人税額の25%が上限です。

この制度の目的は、中小企業者等の研究開発活動を促進し、技術力の向上や新たな事業の創出につなげることです。この制度は、一般型の研究開発税制とは別に、中小企業者等に対して優遇的に適用されます。

この制度の適用を受けるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人、常時使用する従業員数が 1,000 人以下の個人事業主 等であること
  • 試験研究費の額があること(製品の製造や技術の改良、考案や発明に係る試験研究や、新たな役務の開発に係る試験研究などが該当します。)

参考:中小企業庁|中小企業向け研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)

消費税の特例

「消費税の特例」とは、消費税の納税義務や計算方法について、中小事業者や特定の事業者に対して優遇的な措置を設ける制度です。主な特例には以下のようなものがあります。

  • 事業者免税点制度:基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者については、消費税の納税義務を免除する制度
  • 簡易課税制度:基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者については、消費税の計算方法を簡略化する制度
  • 2割特例:インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった事業者については、仕入税額控除の金額を特別控除税額とすることができる制度

参考:国税庁|2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

令和5年度の税制改正のポイント

令和5年度の税制改正では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた経済や社会の回復・再生を目指し、さまざまな施策が講じられました。その中でも、中小企業や個人事業者に関係する重要な改正内容を3つ紹介します。

生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置

中小企業が生産性を高めるための設備投資を促進するため、固定資産税の特例措置が創設されました。この特例措置のメリットは、固定資産税の負担が軽減されることで設備投資の回収期間が短縮されることや、設備投資による利益増加分を賃上げや雇用拡大に活用できることです。また、先端設備等導入計画の認定を受けることで、設備投資の効果や目標を明確にすることが可能です。

消費税インボイス制度の導入

消費税の仕入税額控除の適用を受けるための新たな方式として、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始されました。インボイス制度とは、売手である登録事業者が買手である取引相手(課税事業者)に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝える「適格請求書(インボイス)」を交付し、買手はそのインボイスを保存することで、仕入税額控除の適用を受けられる制度です。この制度は、令和5年10月1日から導入されています。

この制度のメリットは、消費税の仕入税額控除の適用に必要な書類やデータの管理が簡素化されることや、消費税の複数税率に対応した正確な消費税額の計算が容易になることです。また、インボイスの交付や保存を電子的に行うことで、ペーパーレス化や業務効率化にも貢献できます。

その他の改正内容と影響

その他にも、令和5年度の税制改正では、以下のような改正内容があります。

  • 相続税法の改正:

生前贈与の持ち戻し期間が3年から7年に延長されました。これは、相続発生時において、相続人が相続財産に加算される生前贈与の対象となる期間を長くすることで、相続税の公平性を高めることを目的としています。この改正は、令和6年1月1日以降に相続が発生した場合に適用されます。

  • 法人税法の改正:

国際最低課税額制度が創設されました。これは、日本の多国籍企業が海外の低税率地域に子会社を設立し、利益を移転させることで、日本での法人税負担を軽減することを防止することを目的としています。この制度は、令和6年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。

関連記事:2024年(令和6年度)の税制改正|改正のポイントをわかりやすく解説

中小企業の優遇措置を有効に活用するポイント

中小企業の税制優遇は、中小企業の経営を支援するためにさまざまな税制上の優遇措置を用意しています。これらの優遇措置は、中小企業の税負担を軽減したり、設備投資や研究開発などの経営活動を促進したりすることを目的としています。

しかし、中小企業の税制優遇は複雑で分かりにくいという問題があります。また、毎年の税制改正によって、優遇措置の対象や要件が変更されることもあり、経営者にとって制度を有効に活用することは簡単なことではないでしょう。

そこで、中小企業の優遇措置を有効に活用するためには、以下のようなコツやポイントがあります。

  • 自社が中小企業者等か中小法人等かを正しく把握し、受けられる優遇措置を確認する
  • 優遇措置の種類や内容を理解し、自社の経営状況や事業計画に合わせて、最適な優遇措置を選択する
  • 優遇措置の対象や要件を満たしているかどうかを確認し、必要な手続きや書類を用意する
  • 毎年の税制改正の内容をチェックし、優遇措置の変更点や影響を把握する
  • 税理士や税務署などの専門家に相談し、優遇措置の活用方法や効果を確認する

中小企業の税制優遇は複雑で分かりにくいことも多く、経営者にとって自力で判断することは難しいこともあります。有効に活用したい場合は、税理士などの専門家に相談し、優遇措置の活用方法や効果を確認することがおすすめです。

中小企業の税制優遇について詳しく知りたい方は、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。

税制優遇を有効に活用しよう

この記事では、中小企業の税制優遇について、その概要や令和5年度の改正内容、活用方法などを解説しました。

中小企業の税制優遇は、中小企業の経営にとって大きなメリットがあります。ぜひ、この記事を参考にして、中小企業の税制優遇を有効に活用してください。

税理士は、中小企業の税制優遇に関する最新の知識や経験を持っており、自社の経営状況や事業計画に合わせた最適なアドバイスを提供してくれるでしょう。中小企業の税制優遇について詳しく知りたい方は、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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