フリーランスの方の売上に占める経費の割合は、業種によって異なります。経費の割合が高すぎると税務調査の対象となる可能性があり、正しく経費を計上するのは重要なことです。
今回は、フリーランスの方の売上に占める経費の割合の目安や算出方法、経費として認められるものなどを解説します。最後まで読めば、経費について疑問に感じやすいポイントを理解できるでしょう。
目次
フリーランスの売上に占める経費の割合
フリーランスとして働いている方の中には、経費の適切な割合がどのくらいなのか知りたいと思っている方もいるでしょう。まず、基本情報として押さえておきたいのは以下の点です。
- 業種別経費の割合
- 経費の割合の計算方法
それぞれについて、詳しく見ていきます。
業種別経費の割合
フリーランスの方の経費の割合は業種によって異なるのが特徴で、一般的な数値は以下に示します。
- 卸売業:90%
- 小売業:80%
- 製造業:70%
- 飲食業:60%
- サービス業:50%
メーカーや生産者から商品を仕入れ、企業や小売業者に売る卸売業や小売業の場合、経費率は特に高くなる傾向にあります。
一方で、以下の通り「目に見えない」ものを提供するサービス業の場合、経費の割合は低くなるのが特徴です。
- 美容院
- ピアノ教室
- 俳優
- デザイン事務所など
業種別経費の割合はあくまでも目安で、実際の数値が異なるケースもあるでしょう。特に、税務上に経費率の概念があるわけではありません。経費の割合よりも、経費として計上した背景を明確にしておくのがポイントだといえます。
経費の割合の計算方法
フリーランスの方が経費の割合を計算する方法は、具体的に以下の通りです。
経費÷収入×100
例えば、経費500万円で、売上1,000万円のフリーランスの方の場合、経費の割合は50%と算出できます。上記の通り、計算方法がシンプルで、経費の割合を簡単に把握できるといえます。
個人事業主の経費はいくらまで?経費にできる上限と割合について解説
フリーランスの売上に占める経費の割合が高すぎるとどうなる?
フリーランスの方に限りませんが、売上に対して経費の占める割合が高すぎると、税務調査の対象となる可能性があります。
税務調査とは、正しい税額を申告しているのか調査するため、税務署によって行われているのが特徴です。企業のみでなく、フリーランスの方も対象となり、基本的に税務調査を断ることはできません。
税務調査の結果、申告内容のミスや無申告を指摘されると、以下の通りペナルティを課されるケースがあります。
- 追徴課税
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税など
税務調査の対応には時間や労力がかかるほか、ペナルティを課されると余分にお金を納めるなど、さまざまなデメリットが発生します。特にフリーランスとして働き始めたばかりの方にとって、経費の計上は複雑に感じやすいポイントかも知れません。
税金を減らそうと、意図的に経費の割合を高めるのは避けるとよいでしょう。
フリーランスの経費に認められるもの
フリーランスの方が経費として算入できるものとは、具体的に以下の表の通りです。
業務で利用するPC代 |
|
サイト運営費 | 制作費やサーバー代、ドメイン代、広告費など |
会食費 | クライアントとの食事や、インターネット使用目的でのカフェの滞在など |
事業に関連性のある税金 | 固定資産税(土地や建物にかかる税金)や印紙税(文書作成時にかかる税金)など |
本代やオンラインサロン加入費 | スキルアップや知識の習得、同業者との交流を目的とするものなどが該当 |
水道光熱費 |
|
移動費や宿泊費 |
|
贈答費用 |
|
フリーランスの経費に認められないもの
フリーランスの方の経費として認められていないものは、具体的に以下の表の通りです。
プライベートな出費 |
|
健康保険料・国民年金 |
|
一部の税金 | 住民税や所得税などが該当 |
医療費 |
|
本人・家族の給与 | 生計を一にする家族に対する給与は、フリーランス本人への給与と同じだと見なされるため※青色事業専従者給与者の場合は除く |
個人事業主はなんでも経費にできる?注意すべき5つのポイントも解説
フリーランスが経費を計上するときのポイント
フリーランスの方が経費を計上するときは、税務調査に備えレシートや領収書を適切に管理するのがポイントです。確定申告ではレシートが不要なものの、税務調査ではチェックされるのが特徴であるためです。
調査官にレシートの提示を求められたときに対応できないと、計上している数値全体を疑われる可能性があります。以下の通り、法律でもレシートの保管期間が定められており、フリーランスとして事業を営むうえで対応が求められます。
青色申告のフリーランス |
|
白色申告のフリーランス |
|
冠婚葬祭費や自動販売機の利用費など、領収書を発行してもらえない場合は、以下の出金伝票を起こすのがポイントです。
領収書が発行されないときの対処法 | 概要 |
出金伝票の起票 |
|
経費の申告以外で節税に効果的な控除
フリーランスの方が節税するには、以下の通り控除制度を利用すると効果的です。
控除制度 | 概要 |
基礎控除 |
|
医療費控除 |
|
雑損控除 |
|
社会保険料控除 |
|
小規模企業共済等掛金控除 |
|
生命保険料控除 |
|
地震保険料控除 |
|
寄附金控除 |
|
障害者控除 |
|
寡婦控除 |
|
勤労学生控除 |
|
配偶者控除 |
|
配偶者特別控除 |
|
扶養控除 |
|
フリーランスの方にとって、特に要チェックなのは以下の青色申告特別控除です。
青色申告特別控除 |
|
売上3,000万円の個人事業主の所得税はいくら?法人とどちらが良い?
個人事業主に適用される所得控除はいくつある?控除の種類や注意点を解説
経費算入など税務に関する相談は税理士へ
フリーランスの方の売上に占める経費の割合の目安や算出方法、経費として認められるものと認められないものなどを解説しました。業種によって経費の割合はある程度決まってくるものの、人によって異なると知っておくのが望ましいです。
経費の割合よりも重要なのは、正しく経費として算入できているのかという点だといえます。経費の割合が高すぎると税務調査を受ける可能性があるものの、調査官に納得してもらえる説明ができるでしょう。
一方で、日々の業務で忙しいフリーランスの方にとって、正しい経費の取り扱いなどは負担に感じやすいものです。
経費の計上を始めとする税務全般の相談は、税理士を頼るのが賢明です。