節税や社会保険料の軽減などのメリットが多くある「マイクロ法人」。しかし、法人を設立したせいでむしろ苦しくなり、後悔するケースも。この記事では、マイクロ法人でよくある後悔の例と、対策を紹介します。万が一法人の運営に失敗した場合、解散にどのくらいの時間や費用が掛かるのか、といった疑問にもわかりやすくお答えします。
目次
マイクロ法人は事業拡大ではなく節税などが目的
マイクロ法人とは、経営者1人で出資・運営し、従業員を雇わず代表者のみで事業を行う小規模な法人を指します。事業拡大は目指さず、主に社会保険料の軽減を目的とします。
マイクロ法人の基礎知識や設立の流れ、おすすめの業種など詳しくは下記の記事をご確認ください。
マイクロ法人とは?マイクロ法人設立のメリットやデメリット、設立の流れを徹底解説
マイクロ法人でよくある後悔例4つ
マイクロ法人の主な目的は節税ですが、準備を怠るとむしろ損をします。ここでは、後悔しやすい例を4つ紹介します。
- 維持費を事前に見積もっておかなかった
- 経理や税務が想像以上に複雑だった
- ミスの修正で手間や費用が掛かった
- 年金への影響を考えなかった
以下1つずつ解説します。
後悔例①:維持費を事前に見積もっておかなかった
法人の維持に掛かる費用を正確に把握していないと、後悔しやすいです。費用の一例を挙げます。
税金(法人税、法人住民税など) | 法人住民税(最低70,000円)は赤字でも発生 |
社会保険料(健康保険、厚生年金など) | 報酬に応じて保険料が上がる |
専門家への報酬 | 例えば税理士や社会保険労務士など。法人の決算申告、経理、税務、社会保険関係の手続きなどの依頼で発生。 |
これらの維持費を事前に見積もっておかないと、経営を圧迫してしまいます。
法人に掛かる税金や社会保険料の詳細は下記の記事をご確認ください。
法人税は最低いくらから必要?法人にかかる6つの税金について解説
マイクロ法人で節約できるのは収入いくらから?社会保険料最安を狙おう
後悔例②:経理や税務が想像以上に複雑だった
法人を運営してみて初めて、経理や税務の複雑さに驚く方が多くいます。個人と比べて、法人の経理や税務は難易度が高いからです。具体的には、以下のような業務が挙げられます。
税金の申告 | 法人税や消費税の申告は、個人の確定申告よりも複雑。法人税の申告には貸借対照表や損益計算書などの決算書類が必要。 |
法定調書の作成 | 自分自身の源泉徴収票、外部への支払調書など。法定調書の作成や提出が必要。 |
毎月の経理業務 | 毎月の経理業務や決算処理、書類の管理など。社会保険料の計算も難しい。 |
これらの業務をミスなく行うには、知識も経験も必要です。自力で対応できない方は、税理士や社会保険労務士などの専門家に依頼しましょう。自力で対応しても後からミスが発覚すると、ミスの修正に手間や費用が掛かってしまいます。
法人税の申告や、法定調書、経理業務について詳しくは下記の記事をご確認ください。
【税理士監修】法人税の申告期限は?基礎知識から注意点まで詳しく解説
【税理士監修】支払調書と源泉徴収票|その違いと使い方を徹底解説!
経理業務の効率性をアップする会計ソフトの選び方
後悔例③:ミスの修正で手間や費用が掛かった
専門家に頼らず自力で設立や税務申告などをした後で、ミスが発覚するケースがあります。具体的には、以下のようなミスです。
定款の作成ミス | 定款に未記載の事業を行う場合などに定款修正が必要。場合によっては法務局への登録免許税や司法書士報酬など数万円掛かる。 |
設立時の登記ミス | 誤った内容で登記した場合、更正登記が必要。更正登記申請は株式会社の場合、法務局への登録免許税20,000円が掛かる。 |
税務申告のミス | 税務申告でミスすると、修正申告の手間と追徴課税の費用が掛かる。 |
ミスの修正には時間もお金も掛かるため、「最初から専門家に依頼すればよかった」と後悔する例があります。
会社の設立登記や追徴課税について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
会社の変更登記は自分でできる?手続き方法や費用を解説
会社設立登記(法人登記)とは?申請の方法や必要な費用などをご紹介
追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説
後悔例④:年金への影響を考えなかった
設立後に年金受給額が少なくなることに気付き、後悔する例もあります。
マイクロ法人は、自分への報酬を低くして社会保険料を少なくするのが一般的ですが、これにより将来の年金受給額も少なくなります。よって、老後に備えるには自分自身での運用が必要です。
後悔しないように!マイクロ法人を作る前の対策2つ
後悔を避けるには、事前準備が必須です。ここでは、具体的な対策を紹介します。
難しい業務は早めに専門家に依頼する
自分が少し調べても分からなそうな事柄や、膨大な時間を割く結果になりそうな業務は、早めに専門家に相談しましょう。そうすれば自分は本業に集中できる上、手続きミスによる手間や出費もなくせます。
例えば税理士は、会社設立のサポートを始め、決算書作成や税務申告のサポートが可能です。頻繁に変わる税制を正確に理解し、適切な経費計上や税務申告のアドバイスをします。また、登記関係は司法書士、社会保険関係は社会保険労務士がサポートできます。
税理士への報酬について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
専門家への報酬も含めて初期費用と維持費を見積もる
事前に初期費用や維持費を正確に見積もり、予算を確保しましょう。
設立時には、以下の支出などが必要です。
- 登録免許税
- 証明書など取得費用
- 専門家への相談料
また、維持費には主に以下が挙げられます。
- 自分への報酬
- 社会保険料(自分の分・会社分)
- 役員社宅・固定資産税・出張旅費などの経費
- 税理士や社会保険労務士などの顧問契約料
- 法人税・法人住民税・法人事業税・消費税など税金
設立前には、初期費用と年間のランニングコストを見積もっておきましょう。状況によっては、設立しない方が良いケースもあります。
正確な見積もりを自力でするのは困難です。法人を作るか否かを判断するための重要な計算は、税理士に依頼しましょう。
登録免許税など、設立時の出費について詳しくは下記の記事をご確認ください。
会社設立時にかかる登録免許税はいくら?計算方法・納税方法を解説
また、維持費についてはこちらをご確認ください。
【税理士監修】一人で会社を作る際の費用と維持費について
法人成り後にかかるランニングコストとは?種類と費用の目安を解説
マイクロ法人で失敗したらすぐにやめられる?
失敗した場合すぐにやめることは可能ですが、解散の手続きに時間と費用が掛かる点に注意しましょう。
手続きには短くても3ヵ月ほどの期間と、10万円程度の費用が掛かります。法人が廃業する流れについて、詳しくは下記の記事をご確認ください。
廃業の手続きと費用、廃業後の確定申告について
会社の解散手順は?手続きや清算期間、流れについて紹介
後悔しないよう専門家と事前に計画を!
この記事では、マイクロ法人の後悔例と対策を紹介しました。
法人を設立するべきか否かは、事業形態や家族、考え方などによって異なります。
事前準備と計画は、ぜひ税理士にご依頼ください。また、当税理士法人では、司法書士や社会保険労務士など税理士以外の専門家のご紹介もできます。事業運営支援や会計業務など、会社設立のサポートはすべてお任せください。