民泊経営を始めたものの、節税対策について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。収益が上がるにつれて税金の負担も増えるため、節税対策は重要な課題です。本記事では、民泊経営で発生する税金の種類と、その負担を軽減するための具体的な節税方法について分かりやすくご紹介します。民泊ビジネスの安定経営を目指したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
民泊経営にかかる税金とは?
民泊経営には様々な税金がかかります。それぞれの税金には異なるルールや計算方法があるので事前に理解しておきましょう。
税金の種類 | 内容 |
所得税 | 収益に対する税金で、本業の収入と合算され累進課税の影響がある |
住民税 | 地方税で、前年の所得に基づいて課税される |
事業税 | 一定規模の収益で発生し、事業とみなされるかが判断基準となる |
消費税 | 2年前の年間課税売上高が1,000万円を超えると納税義務がある |
固定資産税 | 所有する物件の評価額に基づき課税される |
所得税
民泊の収益は、所得税の対象となり、他の所得(給与収入や他の事業収入)と合算して課税されます。所得税は累進課税であるため、収益が高くなるほど税率が上昇し、税負担も増加します。
青色申告制度を利用した場合、最大65万円の控除が受けられ、節税対策として有効でしょう。また、副業としての民泊収益も年間所得が20万円超ある場合は確定申告が必要となるので注意してください。
住民税
住民税は、前年の総所得に基づいて課税され、税率は10%です。民泊経営が本業・副業であるかにかかわらず、収益が増えることで住民税の負担は増加します。
また、住民税は通常翌年に一括で請求されるため、事前に収益に応じた納税準備を行っておくと安心でしょう。
事業税
民泊経営が一定の規模に達すると、事業とみなされて事業税が課税されます。一般的に、10室以上の物件管理や、事業として継続している場合に事業規模と判断されるケースが多いでしょう。
事業税の税率は事業の内容により異なり、民泊が旅館業に該当する場合は5%です。また、副業であっても、事業とみなされる条件に該当すれば課税対象となるので留意しておいてください。
消費税
年間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2年後は消費税の課税事業者として、民泊収益に対して消費税の納税義務が発生します。
これは民泊経営が本業か・副業かを問わず適用されるため、特に規模拡大を目指す場合や長期間の営業を行う場合には、消費税対策が求められるでしょう。
固定資産税
民泊物件を所有している場合、物件の評価額に基づいて固定資産税が課されます。物件の評価額に関係なく毎年支払う必要があり、民泊経営が本業か・副業かを問わず税負担として計上されます。
また、不動産投資としての一環で購入した場合にも、固定資産税がかかるので留意しておいてください。
民泊経営で認められる経費
民泊経営ではどういった経費が認められるのでしょうか。経費の計上は節税に繋がるため、事前に把握しておきましょう。
勘定科目 | 内容 |
賃借料 | 民泊物件の賃借料 |
減価償却費 | 備品や設備の減価償却 |
修繕費 | 物件の修繕やメンテナンスにかかる費用 |
広告宣伝費 | 集客のための広告費用 |
水道光熱費 | 物件で使用する光熱費や水道代 |
消耗品費 | アメニティや日用品などの消耗品購入費用 |
通信費 | インターネット回線の使用料 |
保険料 | 物件にかかる火災保険や賠償責任保険などの保険料 |
賃借料
賃借料は、物件を賃借して民泊運営する際に支払う家賃や管理費などで、必要経費として認められます。
賃貸借契約に基づく定期的な支払いが対象となるため、支払額の証明ができる領収書や契約書を保管しておきましょう。また、管理費が別途発生する場合も同様に経費として計上できます。
減価償却費
減価償却費は、民泊で使用する家具や家電、設備の購入費用を複数年にわたり経費計上するための費用を指します。
一度に全額を経費化せず、耐用年数に応じて少しずつ経費として計上することが認められています。具体的には、1台あたり10万円以上のソファやベッド、テレビなどが該当し、税務上の耐用年数を基に計上する必要があるので、事前に耐用年数を調べておきましょう。
減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
修繕費
修繕費は、物件の損傷を修理し、通常の使用状態に戻すために必要な費用です。壁のペンキ塗り直しや設備の交換など、修繕であれば経費として認められやすいです。
一方、大規模な改装や資産価値を増加させる修繕は「資本的支出」とされ、減価償却の対象となる場合があるため注意しましょう。
広告宣伝費
広告宣伝費は、民泊物件の集客や宣伝を目的とした費用で、経費として計上できます。具体的には、インターネット広告、SNSでのプロモーション、チラシ制作費などが含まれます。
水道光熱費
水道光熱費は、物件で使用される電気代、水道代、ガス代などで、民泊運営の経費として認められます。定期的な請求書が発行されるため、記録を管理し、適切な経費処理を行うことで、支出の根拠を明確にしておきましょう。
消耗品費
消耗品費は、日々の民泊運営で必要となるアメニティや日用品などの購入費用です。具体的には、トイレットペーパーやシャンプー、洗剤、清掃用品など、短期間で消耗するものが該当します。
これらは継続的に購入する必要があるため、記録をきちんとつけることで経費として認められやすくなるでしょう。
通信費
通信費は、民泊物件で提供するインターネット回線やWi-Fiの使用料などが含まれます。ゲストに快適なインターネット環境を提供することが民泊の魅力向上に繋がるため、通信費も運営に必要な経費として計上できます。
保険料
保険料は、民泊物件にかかる火災保険や損害賠償保険の費用です。ゲストの利用中に発生する可能性のあるトラブルに備えるため、適切な保険を契約しておくことは経営リスクの低減に繋がります。
民泊経営で認められない経費
一方で、民泊経営で認められない経費もあります。基本的に私的な支出は経費として認められないので注意しましょう。
勘定科目 | 内容 |
地代家賃 | 個人的な使用にかかる費用 |
水道光熱費 | 民泊以外の個人的利用にかかる電気代や水道代 |
贈答品費 | ビジネスに直接関係しない贈答品やお土産 |
罰金・違約金 | 法律違反や契約違反による支払い |
交通費 | 事業とは関係ない個人的な移動費用 |
娯楽費 | 個人の趣味や娯楽にかかる費用 |
給与 | 親族に対する不明確な給与支払いなど |
地代家賃
個人利用の住居や家族用の物件の家賃は、民泊経営とは関係ないため、経費として認められません。例えば、自宅の家賃や住宅ローンの支払いは私的な生活費とみなされるため、事業経費に含めることができません。
経費計上できるのは、事業として利用するための賃借料や管理費などに限定されます。
水道光熱費
水道光熱費についても、民泊運営に必要な物件にかかる分のみ経費として計上できますが、個人的に利用する自宅の光熱費や水道代は経費にはなりません。
自宅が民泊と共用である場合は、事業に使用する分と個人的に使用する分を按分し、事業部分のみを経費として計上することが求められます。
贈答品費
ビジネスに直接関係しない贈答品費やお土産の費用(友人や家族へのプレゼントやお祝いなど)は経費として認められません。取引先への贈答品であっても、一定の範囲を超えると経費とみなされない可能性があるため、支出内容と金額に注意が必要です。
罰金・違約金
罰金や違約金は、法律違反や契約違反に伴う支払いであり、税務上の経費として認められません。例えば、交通違反に伴う罰金や契約解除時の違約金などが該当します。これらの支出は民泊経営の経費にはならないため、個人的な負担として扱われます。
交通費
私的な交通費(プライベートな旅行や家族との外出にかかる交通費など)は、民泊運営とは関係のない個人的な移動にかかる費用であり、経費としては認められません。経費計上するためには、業務に直接関連した移動であることが求められます。
娯楽費
私的な娯楽費(スポーツ観戦や趣味に関連する支出など)は、個人の趣味や娯楽にかかる費用で、経費としては認められないため、個人の負担として管理しましょう。
給与
雇用している従業員に対してではなく、親族に対する給与は経費として認められない可能性があります。
実際に業務に従事している場合には、青色申告者が青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書を提出すると給与として認められます。しかし、不明確な業務内容や実態のない支払いである場合、税務調査で指摘される可能性が高いため注意しましょう。適正な雇用契約と業務実態の明確化が求められます。
民泊経営で経費計上以外でできる節税対策
経費計上以外にも、民泊経営における節税対策はいくつか存在します。以下に例を挙げます。
- 青色申告特別控除の活用
- 小規模企業共済の加入
- ふるさと納税の利用
- NISAやiDeCoによる資産運用
- 固定資産の減価償却方法の見直し
青色申告特別控除の活用
青色申告を選択することで、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。これは収益から控除できる額として大きく、特に複式簿記で帳簿管理をしている場合にはフルに活用できます。
適切な帳簿付けが条件ですが、節税効果を求めるのであれば青色申告を活用してみてください。
小規模企業共済の加入
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業経営者が将来の退職金を準備するための共済制度で、掛金が全額所得控除の対象となります。掛金の上限は月額7万円で、将来的に積立金として受け取ることも可能です。
老後資金の準備と同時に所得控除が得られるため、民泊経営者にもメリットの大きい節税対策と言えるでしょう。
ふるさと納税の利用
ふるさと納税を活用することで、実質的な負担が少ない寄付金として地方の特産品などを受け取りつつ、住民税の控除が受けられます。ふるさと納税を利用することで、納税額の一部を控除として活用できるため、節税対策の一つとして検討してみてください。
【税理士監修】寄付金控除の上限はいくらまで?ふるさと納税を含めて説明
NISAやiDeCoによる資産運用
NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、資産運用による利益にかかる税金が非課税または控除となる制度です。
民泊経営者が個人資産を増やす手段として、こうした税制優遇制度を利用し、節税と資産形成を図ることができます。特にiDeCoは老後資金の準備にもなるため、長期的な視点で活用すると良いでしょう。
iDeCoを活用した節税とは?いくら節税できる?効果的な運用方法・シミュレーション・注意点などをご紹介
固定資産の減価償却方法の見直し
民泊物件の固定資産は、減価償却を行うことで経費として計上できると前述しました。
減価償却の方法には「定額法」や「定率法」など複数の方法があり、適切な方法を選択することで節税効果を最適化できるでしょう。例えば、パソコンやエアコンなどです。しかし、建物や建物附属設備などは、定率法による方法を選択できないため注意しましょう。
民泊経営の会計処理で注意すべきポイント3つ
民泊経営の会計処理で注意すべきポイントは以下の3つです。
- 収入と支出の正確な記録と分類
- 領収書・証憑書類の保管と管理
- 減価償却資産の適切な処理
1. 収入と支出の正確な記録と分類
民泊経営では、多くの収入や支出が発生するため、取引を正確に記録し、事業関連と私的な支出をしっかりと分類しましょう。
前述したように、個人利用分の光熱費や家賃が含まれる場合は、事業用の経費として按分する必要があります。収入と支出の正確な管理が行われていないと、税務調査で指摘されるリスクがあるため、支出内容を明確にしておいてください。
2. 領収書・証憑書類の保管と管理
経費を適切に計上するためには、領収書や請求書などの証憑書類をしっかり保管し、支出の裏付けを明確にしておきましょう。
税務上、経費の証明ができない支出は認められないため、各支出ごとに証憑を揃える必要があります。また、領収書は一定期間保管が義務づけられているため、紛失しないように管理方法も工夫してください。
3. 減価償却資産の適切な処理
民泊で使用する家具や設備、物件そのものは、耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。減価償却資産として適切に処理しないと、経費として計上できないだけでなく、税務上のペナルティが発生することもあるため、資産ごとに適切な耐用年数を設定し、減価償却費を行いましょう。
民泊経営における節税対策でお悩みの方は専門家に相談
民泊経営では、経費計上や減価償却の処理、青色申告の活用など、さまざまな節税対策がありますが、税務知識がないと複雑な会計処理や税務申告で悩む方も多いでしょう。税務リスクを減らしながら最大限の節税を実現するためには、税務や会計の専門知識を持つプロフェッショナルに相談するのが安心です。
小谷野税理士法人は、民泊をはじめとする不動産関連の税務に精通した税理士法人で、豊富な経験と知識に基づき、民泊経営者が直面する会計や節税の悩みに対応しています。個別の状況に応じた最適な節税対策や、会計処理のサポートを提供し、スムーズな経営を支援しています。