予定納税で払い過ぎた税金が返ってくるとき、どのような手続きをするのかご存知でしょうか?今回は、予定納税とは何か、その対象者と納税手続き、予定納税の適切な対応などについて徹底解説します。前年度の納税額を基準に対象者となるかが決まる予定納税ですが、手続きを忘れてしまうとペナルティを受ける恐れがあります。予定納税について適切に理解し、正しい納税につなげましょう。
目次
予定納税とは?その対象者と納税方法を解説
予定納税とは、税金を前払いする制度ですが、すべての納税者が対象となるわけではありません。自身が対象者となるかどうかを見極めるためにも、まずは予定納税について正しく理解しましょう。
予定納税の目的
予定納税は、支払いを分散することで、納税者の経済的負担を軽減することが主な目的です。税額が大きいほど納税の負担が大きいため、分散による納付で負担を和らげます。
また、予定納税の制度は税務署にもメリットをもたらします。段階的に納税をしてもらうことで、一括で納税するよりも効率よく、計画的に税金を回収できるからです。
予定納税は、主に税額の多い法人や個人を対象とします。前年度の税額に応じて対象となるか否かが決まるため、すべての納税者に適用されるわけではありません。
予定納税の対象となるケース
予定納税は、法人と個人のどちらも対象となり得ます。対象となるかどうかを見極める基準は、税金の種類によって異なります。前年度の納税額によって、税金ごとに予定納税の必要可否が決まるため、対象となる基準額を押さえておきましょう。
所得税
予定納税基準額が15万円以上あること
消費税
前年度の年税額が48万円以上であること
法人税
前年度の年税額が20万円以上であること
予定納税の対象となるかは前年度の年税額でもある程度判断できます。ただ、対象となる場合は、6月頃に税務署から書面やe-Taxにて通知があるため確認してみましょう。
必要な手続きや納付期限など納税に関する詳細は、税務署からの通知に明記されているため、それに従って手続きを進めます。
予定納税の納税額と期限
所得税、消費税、法人税の予定納税の対象となった場合、どの程度の額を納税するのか、また、税金の納付期限について理解しておくことが、適切な納税につながります。以下に、納税額の算出方法と、納付期限を税金ごとに紹介します。
納税額の計算方法 | 納税期間 | |
所得税 | 前年度の予定納税基準額の1/3 | 1期(7/1~7/31) 2期(11/1~1/30) |
消費税 | ・前年度の年税額に応じる予定申告方式 ・自社の状況に応じて計算方法を選択する仮決算方式 | 納付金額によって納付回数が決まる(年間で1~11回) |
法人税 | 前年度の年税額の1/2 | 1年に1回 |
予定納税の対象となる場合は、上記の情報を参考にしながら、納税額がどの程度となるのか導き出してみましょう。
関連記事:法人税の予定納税とは?対象者や計算方法などについて幅広く解説
予定納税での主な納税方法
予定納税の対象となった場合、税金の種類に応じて納付期限までに税金を納めなくてはいけません。そこで、税金を納める方法を理解し、適切な手段で納税しましょう。
e-Tax
確定申告でe-Taxを使用している場合は、銀行口座振り替えを利用して納税できます。e-taxはパソコンやスマホから手続きできるため、手間や時間がかからないのがメリットです。ただし、事前の登録をしておく必要があります。
金融機関
事前に準備した納付書を使って窓口で納付します。納付書を正しく記載する必要があるため、記載例を参考にしてミスがないように記載してください。
また、個人でほぼ毎年予定納税をする場合は、事前に振替納税の手続きをすると便利です。自動的に税金が引き落とされるため、納税の手間を省けます。他にも、インターネットバンキングからも納付手続きが可能です。
コンビニ
税務署から送付された納付書を持参すれば、コンビニで納税できます。ただし、納税額の上限が30万円と決まっている点に注意が必要です。仮に納税額が30万円を越えている場合は、別の方法で納税してください。
税務署
税務署にて予定納税を済ませる場合には、窓口に納付書と現金を持ち込んで納付します。納税のついでに税務署に相談したいことがあるときなどは、便利でしょう。
クレジットカード
専用サイトを通じて、クレジットカードで納税します。主要なブランドのクレジットカードが使えること、利便性が高いことがメリットです。しかし、一方で決済手数料がかかるといったデメリットもあるため注意しましょう。
QRコード
専用サイトから、QRコードでの納税も可能です。国内で流通している主要なQRコード決済をほぼ網羅しています。しかし、納付金額が30万円超の場合は利用できない点に注意が必要です。また、スマートフォン専用の決済サイトのため、パソコンからの利用はできません。
予定納税の勘定科目
予定納税を行った際、税金の種類によって使用する勘定科目が異なります。
所得税の予定納税時の仕訳では「事業主貸」、法人税の予定納税の際には「法人税等」「仮払い法人税等」の勘定科目を用います。
消費税の中間納付では、税込経理の場合は「租税公課」、税抜経理の場合は「仮払金」「仮払消費税」の勘定科目を使います。
予定納税で払い過ぎた税金が返ってくるケースとは
予定納税は、今期の利益が確定する前に税金を前払いする制度です。そのため、実際の納税額と誤差が生じることがあります。
ここからは、払い過ぎた税金が返ってくる主なケースと、税金を還付する手続きについて紹介します。
予定納税後に税金が返ってくるケース
予定納税は、税金を前払いする制度のため、必ずしも納税額が前年度と同じとなるわけではありません。本来予定していた納税額よりも確定した税額が少なくなるケースとして、以下の理由が考えられます。
- 所得が前年より低かった
- 経費が前年より多かった
- 税額控除が適用された
納めすぎた税金は、適切な手続きをすることで戻ってきます。税額を正しく計算し、必要に応じて手続きをしましょう。
払い過ぎた税金を戻すための手続き
予定納税で納めた税金よりも、実際の納税額が少なかった場合、確定申告をして払い過ぎた税金を還付してもらいましょう。
確定申告を行うと、払い過ぎた税金が還付金として受け取れます。確定申告の手続きをしてから、約1カ月~1カ月半程度で、指定した口座に還付金が振り込まれるでしょう。
e-Taxによる手続きの場合は、専用画面で還付金の状況を把握できます。e-Tax以外の方法で手続きをした場合は、税務署からのはがきで還付金振込日と金額が通知されます。
なお、予定納税で払った税金が、本来納めるべき税金よりも多くても税務署から通知が来るわけではありません。そのため、正しく確定申告をしなければ過払い分が返ってこないため注意しましょう。
過去の予定納税で、過払いが見つかった個人の場合は、予定納税をした翌年の1月1日の5年後を期限に還付申告手続きが可能です。確定申告で使用している申告書を使って、通常通り手続きを行います。
予定納税で、税金を過払いしている可能性もあり得るため、過去に遡って納税額を確認してみましょう。
関連記事:【税理士監修】法人税の中間納付とは?時期や計算方法について
予定納税の減額や支払いの延滞が起こったときの対応
予定納税の対象になった場合は、事前に税務署から通知がきます。しかし、事情によっては、税金が支払えない、納税を忘れてしまったとういことも出てくるでしょう。そこで、予定納税の減額は可能なのか、期日までに支払いができなかったときの対応について解説します。
予定納税の減額
資金繰りの悪化などを理由に所得税の予定納税が困難となったとき、減額申請の特例の利用を検討しましょう。
減額申請とは売上の大幅減少や取引先の倒産などが発生した場合に、納税者の負担を軽減するための制度です。
減額申請が適用される主な理由は以下の通りです。
- 廃業や休業、失業をした場合
- 業況不振などのため、本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる場合
- 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受けた場合
- 本年分の所得控除額や税額控除額が前年分と比較して増加する場合
予定納税において減額を希望する場合は、所得税の予定納税の第一期締め切り前の7月15日、第二期の締め切り前の11月15日までに、それぞれ減額申請をしてください。
締め切りまでに手続きできるように、6月末、10月末までに今期分の税額を計算しておき、必要に応じて減額申請の手続きをしましょう。
出典:国税庁 A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続
税金滞納の注意点
予定納税の対象であるにも関わらず、締め切りまでに手続きをしなかった場合、ペナルティがあることに注意しましょう。納税忘れや遅延には、延滞税が発生する可能性があります。
また、延滞した期間によって税率が異なります。
延滞期間が2カ月以下
- 年7.3%
- 延滞税特例基準割合+1%
延滞期間が2カ月以上
- 年14.6%
- 延滞税特例基準割合+7.3%
延滞税の計算方法は2通りありますが、実際に計算して税額が低い方を選べます。延滞税は大きな負担となるため、期限通りの納税を徹底しましょう。
また、支払いが難しい場合は、減額申請を行うなどして適切な対応をとることをおすすめします。
予定納税の相談なら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
予定納税の支払い忘れや延滞によるペナルティを防ぐための対策
予定納税を忘れたり、延滞したりすると延滞税がかかる可能性があります。無駄な出費を削減するためにも、納税準備預金の開設で支払い忘れや延滞を防ぎます。
納税準備預金とは、納税のための資金を貯めておく専用口座です。しかも、納税時のみお金を引き出せるため、資金不足に陥るリスクも低減できます。納税分の口座を作成しておくことで、資金計画が立てやすくなるだけでなく、以下のメリットも期待できます。
- 預金利息にかかる税金を免除
- 金利の高さ(銀行によって違いあり)
資金繰りを安定させるため、正しく納税をするための手段として、納税準備預金の口座開設を検討してみましょう。
予定納税を忘れたり、支払いが遅れたりすることで、延滞税が課された場合、金額によっては負担が大きいです。
少額の延滞税だったとしても、ルールに従って支払いや手続きをしておけば、発生しなかった費用であるため、適切な対策で払い忘れや延滞を防ぎましょう。
関連記事:中間申告によって納税する消費税はいくら?計算方法や納付時期について解説
還付加算金の額により対策を決める
還付加算金の金額を計算し、金額によって対策を決めることも効果的な手法の一つです。
還付加算金とは納め過ぎた税金に対して付加される利息のことです。還付加算金の利息は、銀行預金の利息よりも高いです。
本来支払うべき税金よりも、予定納税額が多かった場合、還付加算金を受け取れることがあります。
予定納税した税額よりも実際の納税額が少なくなるとき、確定申告で過払いした税金が戻ってきます。
売上減少などにより予定納税が難しい場合、減額申請をするよりも、確定申告をして還付加算金を受け取った方が得することもあります。還付される税額、還付加算金を計算し、資金繰りも考慮して自社にとって適切な方法を選択しましょう。
まとめ | 適切な手続きで過払いした予定納税が返ってくる
前年度の税額に応じて対象となり得る可能性が高い予定納税について、払い過ぎた税金が返ってくる事例と手続きについて詳しく紹介しました。個人、法人共に予定納税の対象となる可能性があります。
税金の種類に応じて予定納税の額や納付の締め切りが異なるため、確認して忘れずに納税しましょう。また、税金の払いすぎが発覚した場合は、確定申告をすることで税金が返ってくる可能性が高いです。手続きや制度を理解し、正しい納税につなげましょう。