インボイス制度は、中小企業の経営者や経理担当者にとって重要な制度です。この制度では、信頼性のある請求書が求められるため、電子帳簿保存法との関係についての理解が重要でもあります。インボイス制度と電子帳簿保存法の関係を理解し、必要な対応を行うためにも、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
インボイス制度の概要
インボイス制度は、適格請求書等保存方式とも呼ばれます。消費税の課税仕入れに関する仕入税額控除を受けるために、適格請求書(インボイス)が必要となる仕組みです。
インボイスは、売手が買手に発行する請求書であり、消費税の適用を受ける取引において、取引額や消費税額を正確に記載することが求められます。具体的には、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が発行する請求書であり、この請求書を適切に保存することで、仕入税額控除が可能となります。
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電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法は、日本国内の企業が電子化された証憑書類を適切に保存・管理するための法令です。インボイス制度とは異なり、電子帳簿保存法は電子化された帳簿や書類を法的に保存するためのさまざまな要件が設定されています。
具体的には、電子データが完全であること、検索できること、保存期間などが厳しく定められており、適切なシステム導入が求められます。また、税務調査時には迅速に対応できるように電子データの保存方法を整備しなければいけません。適切な管理体制を整えることで、法改正や監査にも柔軟に対応しやすくなるでしょう。
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インボイス制度と電子帳簿保存法の関係性
インボイス制度と電子帳簿保存法はそれぞれ関係があります。インボイス制度に関連した請求書は、電子帳簿保存法のルールに則って保存しなければなりません。
つまり、インボイス制度に基づいて適格請求書を作成するのであれば、電子帳簿保存法の理解は不可欠であるといえます。
電子帳簿保存法のルールの一部には、電子帳簿を保存する際、タイムスタンプや改ざん防止対策などが定められています。そのため、電子帳簿保存法に対応できるシステムの導入が必須であるといえます。
インボイス制度と電子帳簿保存法の要件を満たす方法
インボイス制度では、適格請求書としての記載事項が求められ、取引の透明性と正確性が重視されます。具体的には、取引先名称、取引日、商品やサービスの内容、単価、消費税額などを漏れなく記載する必要があります。ここからは、インボイス制度と電子帳簿保存法の要件を満たす方法について解説します。
電子データでやりとりした適格請求書の保存要件は?
電子データでやりとりされた適格請求書の保存については、電子帳簿保存法に基づく要件を満たさなければいけません。
まず、データの真実性の確保が求められます。これは、電子データが証拠力を持ち続けるために適切なタイムスタンプを付与し、データの改ざんを防ぐことを指します。
また、データの確認が可能であるか否かも要件の一つです。保存されたデータが容易に確認できなければいけません。例えば、PDF形式など一般的なフォーマットで保存し、必要な情報が明確に閲覧できるようにすることが推奨されます。
他にも、検索機能の確保が求められます。特定の取引先や日付に基づいて迅速に情報検索ができるデータベース構築が必要でしょう。
紙でやりとりした適格請求書の保存方法は?
紙でやりとりした適格請求書についても適切な保存が求められます。電子帳簿保存法に基づいてデータで保存する場合は、紙の請求書をスキャンして電子データとして保存する方法をとります。その場合、注意すべき点がいくつかあります。
まず、高解像度でスキャンすることが重要です。解像度を高めることで情報が読み取れなくなるリスクが軽減されます。スキャンしたデータは、定期的にバックアップを行うことも必要です。定期的なバックアップはデータの喪失を防ぎます。
また、セキュリティ対策も重要です。不正アクセスやデータ消失を防止するため、適切なセキュリティソフトウェアの導入やアクセス権限の管理を徹底し、企業の大切なデータを守り、信頼性を確保しなければいけません。
紙のまま適格請求書を保存する場合はどうすればよい?
紙で適格請求書を保存する場合は、以下の具体的な手順に従って適切に保存・管理することが重要です。
1.関連する請求書は火災や水害に備え、安全な場所に保管します。湿気が多い場所や高温になる場所は保管に適しないので、環境の安定した場所を選びましょう。
2.請求書を事業年度ごと、または取引先ごとに分類・整理します。こうすることで、必要な書類を迅速に取り出しやすくなります。分類には、インデックスを作成したファイルやバインダーを利用するのが効果的です。
3.法律で定められた保存期間(通常は7年間)を厳守します。保存期間が満了するまで、すべての書類がきちんと保管されていることを確認しましょう。
紙で適格請求書を保存するのであれば、上記のポイントをしっかりと守る必要があります。
保存方法の社内ルールを決める
適格請求書の保存については、企業内で社内ルールを策定し、全従業員がそのルールに守れるように整備することが重要です。請求書の取り扱いと保存方法を文書に明記し、全社員に周知しましょう。
また、スキャン作業やデータ入力を行う担当者を決めるなど、役割分担を明確化しましょう。あわせて、法改正や業務変化に迅速に対応できるよう、定期的にルールを見直し、必要に応じてルールを更新することも大切です。こうした体制を整えることで、円滑にインボイス制度と電子帳簿保存法の要件が満たせます。
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インボイス制度と電子帳簿保存法は同時に対応しておくと安心
インボイス制度と電子帳簿保存法は、それぞれ異なる猶予措置がありますが、早めの対応が必要です。特に電子取引のデータ保存に関しては、一定の要件を満たす場合に限り、猶予措置の対象となります。この要件には、システムの導入が間に合わないケースも含まれます。
これらの猶予措置が適用される企業でも、将来的には完全対応が必要となるため、早期に準備を進めることが重要です。適切なツールやシステムを導入し、業務フローを見直すことで、インボイス制度と電子帳簿保存法の双方に対応する体制が整いやすくなるでしょう。
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まとめ
インボイス制度と電子帳簿保存法は、中小企業の経営者および経理担当者にとって重要なトピックです。これらの制度を正しく理解することは、効率的な業務運営と法令遵守にとって重要です。疑問点があれば、早めに税理士に相談をしましょう。
なお、小谷野税理士法人では、インボイス制度や電子帳簿保存法に関する相談を承っております。ぜひお気軽にご相談ください。